とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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第3部 第18話 第四章(3)


9月28日(月) 中部欧州標準時(夏)午後6時
パリ市中心部ホテルの会議場

午前9時から始まった会議は約60分の昼食をはさみ午後6時に終わった
私は基調演説と、最後のまとめの報告を行い、会議の成功を大々的
に出席者の前で謳った。

AIを使った無人兵器開発について米英仏独ロの開発状況と今後の学園都市の開発方針に
ついて、質疑がなされる。各国を代表して6名の研究者が基調報告を行い、それについて
質疑応答がなされる。約200名の出席者は、最先端のAI兵器開発の進捗状況を熱く語っている。
それは、弾丸の飛び交わない戦場のような光景であり、自国の優位性を言葉と
ホログラフと映像で示す場である。

だがその内実を知っている私から見ると茶番にしか見えない。
私はつい厳粛に会議のなされているにも関わらず笑いかける口元を抑える。

もともとすでにほぼ完全な、実戦で有人兵器を圧倒する無人兵器を開発済みの
学園都市、その兵器の開発側の私にとって、もっともらしく、最先端兵器に関する
開発状況を説明するふりをしながら、学園都市では1世代遅れの兵器をもっともらしく
説明する作業は、笑いをこらえながらの作業となる。

学園都市にとって基幹産業である兵器産業の優位性をアピールしながら。
橋にも棒にもかからない周回遅れの外部公開用のそれを、もっともらしく最先端のそれと
装いながら紹介する。

(まあ演技力も社会人の適性の構成要件ようね・・)
私も相応な社会的地位につき、「組織」という枠で部下も、守るべき組織も
持つようになると、ただ切った張ったで済まない。自分の苦手分野の「演技力」
を身に着けないといけない。

私は、会議を終え退出する出席者への挨拶を終え、会場に一人残る当麻の姿を確認する。
当麻と目でアイコンタクトを交わし、歩み出す

「当麻、退屈だった?」
「え」「いや・・そうでもなかった」
私は、当麻の理解力に驚きながら話を続ける。講演内容は、兵器を制御するAIと
演算内容に関する研究成果の話で、一般人にはちんぷんかんぷんなはずだ
それに、会議はすべて英語で当麻には翻訳ソフト越しというハンデもある
「え・・でも結構専門用語多かったでしょう?」

「正直よくわからない言葉ばかりだった」
当麻がにこやかに笑顔を浮かべる
「だけど、美琴の一生懸命な姿を見るだけで退屈なんて吹っ飛んだよ」
「それに美琴の分かりやすい解説で内容がよくわかった」
私は当麻の心暖かい言葉に、心を揺り動かされる
一言感謝を伝える
「当麻・・ありがとう」
私は後援会の後で予定されている宴会に行くことを当麻へ促す。
私はしっかり腕を組み、当麻に体を密着させる
「じゃ・・行きましょう」
「ああ」

・・・・・・・・・・・・・・・・
午後9時30分 ホテルのバンケットルーム

午後6時30分から始まった、会議の夕食会は午後9時に終わりバンケットルームは
私と当麻だけが残されている。
正直、スーツを着て、未成年なので酒は飲まなくて済むが、社交辞令と顔色をうかがいながら、
会話をにこやかにすること自体がかなりのストレスになる。

体力には自信があるが、欲と利害で接触をする軍需産業の要人と腹の探り合いをしながら
にこやかに会話をするのはそれなりに緊張を強いられる。

しかも・・
「ああつかれちゃった」
パーティドレスの裾を直しながら当麻に話かける
当麻の顔が少し怒りに満ちている。
「美琴は、忍耐強いな」
「え?」
「仕事とは言え、あんなセクハラに・・」

私が、大手軍需企業のCEOに馴れ馴れしく肉体接触を強要されそうになったことを
当麻が怒っている。当麻はすぐに私の手を引っ張り、助けてくれた
「ありがとう助かった」
「だけど・・なんで」
当麻が、不思議そうな顔をする。御坂美琴なら生体電流を操り感情くらいコントロールできるはずだと。
「うーん、断るのは簡単なんだけど、角は立てたくないのよね」

「年間数兆円の取引を学園都市と行っている企業のCEOだし・・」
私は溜息をつきながら話を続ける。
「あの社長はすけべ爺-さんだけど、政財界の要人に顔が効くのよ」
「だから・・」
私は、会議場の監視カメラの映像を見せる、そこにはCE0が丁寧な言葉ながら、嫌がる
私に執拗なボディタッチをしようとするシーンがはっきりと撮影されている
「なんかの役にたつかもしれない・・自衛手段よね・・外ではか弱い女を演じる私にとって」
私は乾いた笑いを作る。

「学園都市なら紫電一発で威嚇すればおしまいだけどね」
当麻が顔を引きつかせる、幻想殺しでも全方位からの飽和電撃攻撃は対処できないことを私は知っている。
「それは・・あんまりやらないほうがいいんじゃないか?」
私は、苦笑いを口元に浮かべる
「冗談よ、でも明日は・・」

私は突然決まった、協力都市での能力実演デモを思い浮かべる。珍獣みたさか?
怖い物みたさか、最初は予定にないのに、突然フランス政府の要望で組まれた
能力実演デモ。結局、どこへ行こうが私は学園都市の広告塔という立場から逃れることはできない。
(色物扱いは慣れているけど・・しょうがないわね)
当麻は少々怒ったように私に語り掛ける、14歳の少女に重要会議の議事進行を押し付け
夜は、セクハラまがいの接待をさせることにだ。
「人遣い荒いね・・学園都市も?」

「まあ、人権無視の旧暗部よりはいいでしょ」
「それに・・」

「まあ、せっかくフランスに来たんだからもう少しいろいろ行きたいじゃない
モン・サン・ミシェルとか」

「ああそうだな」
「で、いつまでいれるんだ?」
「まあ明日デモやって、明後日の午後6時に帰国」
「そうか・・」
当麻の顔がぱあと明るくなるのが私にもうれしい。そして・・・
「よし・・最高の婚約旅行にしよう」
さりげない一言が、セクハラや商談の疲れでささくれだった私の心を癒してくれる
私は、感動を抑え一言で返す
「ありがとう」
そして、2人でスイートルームの寝室へ向かう

・・・・・・・・・

9月29日(火)正午前 フランス北部協力都市

パリからヘリで1時間ほどにて協力都市へ到着し、そこで午前10時から、始まった能力実演デモは
約60分で終え、清掃ロボットや駆動鎧破壊された無人機や、無人ヘリや、無人戦車が散乱している。

その前に模擬弾による疑似戦闘で有人機を圧倒した無人戦闘機。その性能が観客の
度肝を抜くとともに、その無人戦闘機を地べたから私が撃墜することで、いわば
2段階で観客を驚かせるという仕掛けだ。

(まったく・・本気でやれば秒殺なんだけどな・・)
本当は、マイクロ波やEMPで瞬殺するのは容易だが、それでは面白くないので
少し観客受けすることをやらないといけない。

最初は、数十人のスナイパーが乱射するライフル弾を磁力で防御するところから始め、駆動
鎧を投げ飛ばし、地面から数万トンの大量の砂鉄を巻き上げ、高さ100M以上の人型の巨人を
拵え、ヘリを叩き潰したり、人型の砂鉄から、砂鉄砲を放ち10KM先の戦闘機をぶっ壊す。
そのまるで怪獣映画のようなシーンに観客が沸き立つ。50両の無人戦車を磁力で止め、
ひっくり返し、砂鉄巨人で踏みつぶして戦車をぶっ壊す。

できるだけゆっくりやったつもりだったが完全武装の1ケ師団に相当する武装は1分ほど
で無力化され、残骸に変わり果てる。

ひととおり観客に挨拶を終え、清掃中のフィールドに当麻が駆け寄ってくる
「美琴、お疲れ」
「まあ・・マイクロ波や赤外線レーザーでつぶすほうが簡単だけど・・」
「映像では意味わからないでしょう」

「美琴はそこまで考えているのか・・」

「まあこれでも一応学園都市の顔みたいなpositionだしね・・230万人のためにもね・・」
「加減は難しいのよ、一応1位だからしょぼくてもいけないし、かと言って外ですべての
手をさらけ出すわけにもいかない」
「だから外では基本は電撃と砂鉄と磁力しか使わないわけ」
私は苦笑いを浮かべる
「なるほど・・」

「私が電撃と磁場しか扱えないと思わせておけば・・」
「敵への対処がしやすくなるか・・」

「そう」
「じゃ・・そろそろいきましょう」
「モン・サン・ミシェルへ」

・・・・・・・・・・・・・・・・

16時 モンサンミッシェル

フランス北部の海岸沿いの協力都市から車で1時間世界遺産モンサンミッシェルへ到着する。モン・サン・ミシェルは8世紀、フランク王国時代に
大天使ミカエル(サン・ミシエル)
がこの地に修道院を開けという夢を見たサン・オペールにより開設されたと伝えられる
島全体が修道院である世界遺産である。英仏海峡の要衝で英仏100年戦争時実際には
要塞として使用された。修道院とともに大砲が見ものの世界遺産である。

実際、周りを潮流の早い海に囲まれ、断崖絶壁の地形を利用した修道院は城として何度も
改修を重ね外観はむしろ要塞に見える。

元々は大天使ミカエルの巡礼地であったこの島は、1979年に世界遺産になっていらい
世界でも有数の観光地として知られる。

俺は仕事を終え、修道院や要塞の観光を終え終始ニコニコな美琴の
顔を見つめている
干潮で干上がった海の中野島と陸を結ぶ道路を2人で歩く。
今晩は島のホテルに泊まるのでゆっくりと島を味わう。

「まるで定番のフランス旅行コースね」
「天気もいいしな・・」
「それにしても・・」

「え?」
美琴はなんかの雰囲気に気が付いたみたいで少し口調が変わる
「なんでもない」
なんでもなさそうな美琴の口ぶりから容易ならざる事態を俺は感じ取る。
「また・・テロか?」
「ええ・・今回はなりふり構わないみたいよ」

「当麻・お客様よ」

どこから現れたのか、目に生気のない死体のような「人間」が
1000人ほど現れる

「美琴・・?」
「生体反応がほとんどない」
「え?」
「いや・・多分・・」

「誰かに遠隔操作されている」
「じゃ・・触れば解除できるのか?」
「理屈じゃそうだけど・・」

「え?」
「アレは・・ゾンビみたいな奴じゃないかしら」
「明らかに凶暴性を増しているし、それに・・」

ゾンビのような、人間は私と当麻へ噛みつこうと必死に飛んでくる。
人間離れした跳躍力で飛び跳ねてくる。それを高圧電流で撃ち落とすが、
回復力が増しているのか、あまり効果がないようだ。

一瞬で炭化させるのは簡単だが、これでも恐らくもとはまともな人間であった
事実がそれをためらわせる。
何秒か私は沈思したのち、脳を強力な電流でショックを与え、気絶させる選択を選ぶ

「しゃあない・・」
「多分・・意識を操作される術式とウイルスのようなものに感染していると思うわ・・」
「殺すのは簡単だけど・・」

「どうする?」
「まあ・・少し時間をかせぎしましょう」

美琴は、右手を操作し、地中から莫大な砂鉄を巻き上げる、その砂鉄が
磁化し、砂鉄をまぶせられたゾンビを地面を縛り詰める。さらに、砂鉄の鞭をからめ、1ケ所へかき集める。

「炭化させるのは・・簡単なんだけど・・だけど殺したくない」
美琴が苦笑いしながら、俺に語り掛ける。
それでも、生体電流を操作し、ゾンビの記憶を消せば終わる・・はずだった。

だが多数のヘリが状況をさらに悪化させる。バルカン砲が、ロケットランチャーが
俺たちを狙う。御坂美琴が、学園都市の顔が、外で全力をふるうことができず、市民
を殺す事ができないことに付け込んだ卑劣極まりない攻撃。

俺は、この攻撃を仕組んだ敵の狡猾さに歯ぎしりする。攻撃力では太刀打ちできない敵が
絡め手で襲ってくる。

「正直、私を殺す事はできないでしょう」
「だけど、このゾンビと・・当麻を守りながらヘリと戦うのはなかなか難しいわ・・」

「今一瞬でもゾンビの拘束を解けばゾンビが襲い掛かってくる
「生体電流を操れる私はともかく当麻にはウイルスの感染が予想されるからね・・」

「仕方がない」

俺は美琴が決意を固めたことに気が付く。
「美琴・・殺す気か?」
「通常の方法で倒れない奴は、再生速度を上回る速度で完全に炭化する意外に
ないじゃない、それに復活できると思うわ」
「だけど・・・それではお前の手が汚れるかもしれない」
抜群の操作性と汎用力を誇る美琴の電撃でも、加減を誤ると完全に殺すかもしれない
美琴もゾンビ相手に絶対の確信などないだろう。加減だって普段よりはるかに困難だ。
「じゃ・・どうするの?」

「美琴・・俺の右腕を切断してくれないか・・」
「え?」
美琴の顔が驚きに包まれる・・
「本当にいいの?」
「時間がない、すぐにやってくれ」
2秒ほど考え込んだ美琴は決意を固め、左腕を操作する。

右手でゾンビを封じ込め、頭から磁力と電撃で銃弾とミサイルを撃墜しながら、左腕を操作するという器用な事をしながら溶接ブレードを形成する

無音とともに質感を伴った美琴の溶接ブレードは、まったく痛みを感じさせることもなく
あっさりと俺の腕を吹っ飛ばす。
そこから幻想殺しにブロックされた俺の真の力 八竜が現れる。

八竜・・あらゆる異能を食い尽くし、無に還元する謎の力。
俺は正直いまだにその力を使いこなすことはできない。だが・・美琴に俺を守るために
その手を汚させるわけにはいかない。

考える必要もない、・・そして・・
俺の右腕からあふれ出た力が轟音と閃光が辺りを包み、八竜がゾンビ1000体を包む・・
刹那、異能でゾンビが発する異能を八竜が食らい尽くし、異能でゆがめられた空間から
発せられるエネルギーを吸収しつくす。

そして・・力を使い果たし俺はその場に倒れ果てる。

・・・・・・・・・

何分たったかわからない

俺は美琴に膝枕されていることに気が付く
俺が寝ている間に、事後処理はすんでいた。

美琴がヘリを磁力で無理やり着陸させ、事件を首謀した何者かは逃げたのか人払いの
術式は解除され、辺りは元の観光地の喧噪を取り戻す。フランス政府へ手を回し、
事件の後処理を終える。
表向きには何事もなかったように、すべてが収まる。

後から聞いた話だが、敵はロケットランチャーや、戦闘機を駆使し、戦争でも起こす構え
だったらしい。

だが、そんなものが美琴に通用するはずもなく、一切の攻撃は、届く前に無効化され
世界遺産モン・サン・ミシェルと観光客に何らの被害も発生がない。

あれだけ猖獗を極めたゾンビと化した1000名は八竜の力で、術式を解除され、元に戻っている。

俺の右腕は何事もなく復活している。一体そこにどんな秘密があるのか俺も全く
理解してはいないが、美琴は大した驚くこともなく現実として受けて入れている。

その間に、学園都市の統括理事会事務局と初春飾利へ電話をしていた美琴が通話を終え、俺の元へ歩み寄る。

「ありがとう、助かったわ」
俺は、これだけの事態を何事もなく収拾する美琴の手腕に舌を巻きながら、当然の疑問を
口から発する。

「だけど・・このまま放置していいのか?」
「え?」
「美琴を暗殺しようとした奴の件」

「そうね・・やっぱり事件の首謀者には相応の罪が必要よね・・」
「とは言えここはフランス、私が簡単に動ける場所でもない、だからフランス政府
に事件解決をお願いしたけど、フランス政府に裁けるかしらね・・」

「え?それは」
「当麻・・あのおっさん覚えているわよね、セクハラ親父」

「え?」
「今回の事件は、私に大量殺人の疑惑をかけ、なおかつ十字教の
聖地モン・サン・ミシェルの破壊をイスラム原理主義者に着せる
一石二丁を狙っていた」
「は?・・」

俺は、事態の奇怪さに驚愕させられる。
「それは・・」
美琴が明るい顔で奇怪な話を始める。
「まあ事実は小説よりも奇だったわね・・」
美琴が軽口のようにとんでもないことを話始める
「今回の事件の背後に、イスラムと学園都市の排除を唱える、
イスラム原理主義の皮を被った十字教魔術集団と、それと結託した
軍産複合体がいる・・まあそんな話」

「はあ?・・」
「ようは、現代の十字軍を学園都市と中東へ起こそうとした・・そんな話よ」

「それて・・悪辣だな・・」
「私が・・イスラム原理主義と手を組む?ありえない。だけどそんなねつ造をするのが
十字教と、十字教よりのマスコミのフェイクニュースなのよ」

「まあ、でも・・売られた喧嘩を私は買う主義」
「どうせあの糞爺さんはたたけば埃がでるでしょう」

「いいのか?」
「本来外の世界の政治に絡むのは、ルール違反だけど・・私の名誉棄損し、当麻を殺そうとしたことは絶対許せない」
美琴の顔が精悍な表情に変わる。
「行きましょう・・私に大量殺人者のぬれぎぬを着せ自分の
都合で大量殺人をする奴に鉄槌を食らわせましょう」
「ああ」

久しぶりに見る、正義感の塊の美琴、その誰もが見惚れる笑顔を守るため
俺も立ち上がる
俺と美琴の周りの世界を守るため

続く










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