とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part04

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12:31

御坂美琴はファミレスの近くに来ていた。
理由はもちろん、上条当麻に会うため。

(今日はバイトしてるわよね…?)

上条がファミレスにいるかどうか確認しようと思った時、背後から声をかけられた。

「あ! 御坂さん!」
「こんにちはー!」
「初春さんに佐天さん!?」
「今そこのファミレス覗こうとしてましたよね?」
「気になる人でもいるんですかー?」
「いっいやっ、そそんなことないわよ!」

思い切り慌てはじめる美琴をみて初春と佐天は顔を見合わせる。
そして、なにか思い付きましたよ的な笑みを浮かべると、美琴の腕を掴んでファミレスへと向かう。

「えっ!? ちょっ、ちょっと!?」
「お話はファミレスの中で聞きましょうかね~」
「そうだね~」

(うそ~っ!? い、嫌な予感がひしひしとー! ……バ、バイトしてたら許さないわよあの馬鹿ーっ!)

先ほどとは真逆のことを考えながら、初春達のされるがままにファミレスの中へと入る。

「いらっしゃいませーって今日は3人できたのか」

中には、普通に上条当麻が立っていた。

「あ! 上条さんだったんですかー。へー」
「ほほう。これは詳しく聞く必要があるね初春?」
「そうですねー佐天さん。詳しくねー、うふふふ」

(こ、怖い……! 初春さんと佐天さんがいつになく怖い……。えーい! これもそれも全部アンタのせいだーっ!)

美琴はとても理不尽なことを考えつつ上条に八つ当たりをする。
それを察知したのか初春と佐天は既に美琴から離れていた。

「なんでアンタは今日に限ってバイトしてんのよーっ!!」
「なんでいきなり怒りだすんだお前は! しかも意味分かんねえし!」
「うっさい!」
「うおあぁ!? て、店内で電撃はやめてくださいですよ御坂サンっ!?」

電撃が一発放たれて、上条はそれをなんとか防いだ。
それを見た初春と佐天は呆然とした。

「……わかったわよ。席ついてるからね。ほら、初春さんに佐天さん。行くよ」

クビにしたことを再び思い出した美琴は途中で電撃をやめて、席へ向かう。
初春と佐天は我ここにあらずといった状態のまま美琴についていく。
席につくと、我にかえった初春達が一斉にまくしたてはじめた。

「いっ、今のは一体なんなんですか!?」
「御坂さんの電撃止めましたよね!? 今!」
「あ、えっと、それは………」
「この前はいきなり連れて行きましたけどアレはなんだったんですか?」
「レベルはいくつなんですか?」
「年上ですか?」
「どこの学校なんですか?」
「ちょ、ちょっと。そんなに一気に質問されたら答えようが……」

美琴はすごい勢いで質問されて戸惑いながらとりあえず二人を止める。

「あ……。そうでした。ちょっとあまりにびっくりしたもんですから」
「あははー気になっちゃったんだよねー初春?」
「そうそう、そうです」
「…そ、そう……」
『それで? どうなんですかっ!?』

初春と佐天の声がハモった。
美琴は僅かに身を引く。
そこへ、幸か不幸か。

「注文は決まりましたか?」

上条当麻がオーダーを持ってやって来た。
美琴はなんで来んのよ、見たいな顔をして上条をみている。
初春と佐天は目を輝かせていた。

「さっき電撃防ぎましたよね? なんだったんですか?」
「へ? …ああー、俺の右手にそんな感じの力があるからな」
「レベルはいくつなんですか?」
「ん? 0だけど?」
「ええぇ!?」

初春たちが驚いているのを聞きながら、上条は後方からの恐ろしい気配で震え上がる。
かなり後ろの方には、いかにも怒ってますオーラを出す店長が腕を組んで立っていた。
上条は少し震えながらも初春達に営業スマイルを見せて。

「……ご、ご注文が決まったらまたお呼びくださいー」

そう言って上条は逃げるように初春達のもとを離れた。

「…逃げられちゃいましたね。じゃあ、御坂さんに聞きますかー!」
「え?」

矛先が美琴に向けられたのを察知して、美琴は少し身構える。

「上条さん、でしたっけ? あの人、私たちが入ってきた時『今日は3人できたのか』って言ってましたよね?」
「そうそう! ということは、御坂さんは何回もここへ来てるんですか!?」
「ぅ……」

美琴は言葉を詰まらせる。
いきなり痛いところを突かれた。
なんとかごまかすことにする。

「ま、まあねー。な、なかなかおいしいからよく利用してんのよ。この店」
「ホントですかー?」
「っ!? ほ、ホントよ」
「上条さんって人が目当てじゃないんですか?」

そう言った佐天は既にわかってますよというような目をしていた。
図星を突かれて御坂は慌てる。

「なっ、何言ってるのよ。そそそ、そんなことあるわけないじゃない」
「そうですか。そうですよねー」
「そ、そうよ」

初春が相槌をうったので、それに乗っかる美琴。
佐天は初春の耳に口を近づけて、小声で聞く。

「ちょっと初春!?」
「大丈夫ですよー佐天さん。何とかしますからー。うっふっふー」
「う、初春……? 私、聞かれる側じゃないのに寒気が出てきたんだけど……」
「任せて下さいー。うふふふふー」

小声での会話を終えると、初春と佐天は美琴に向き直る。
初春が質問を開始した。

「この前いきなり上条さんを引っ張ってどこかへ行きましたよね? アレはなんだったんですかー?」
「ぅっ!? あ、アレは……ちょっと、大事な話を、ちょっとねーあはははー」

まさか馬鹿正直に言えるわけもないので、適当にごまかすしかない。

「大事な話って、告白ですか!?」
「な、ななな何でそーなるのよ!?」
「違うんですかー。なんだか残念です」

佐天は初春に任せているので、美琴の様子を見ながら水を飲んでいる。
美琴は分が悪いと感じ、少しでもこの空気から脱するために店員を呼ぶ。
今度はあの馬鹿くるんじゃないわよ……と願いつつ。

「…ご注文が決まりましたか?」

上条がやってきた。
なんで上手くいかないのよーっ!と心の中で叫びつつ、美琴は注文する。
できるだけ平静を装ったが、隠しきれていない。
初春と佐天も同様に注文する。
上条は注文を受けるとすぐに戻ろうとして。
初春に呼び止められた。

「上条さん」
「は、はい? なんでしょう?」
「御坂さんのことどう思ってますか?」
「へ? あー……」

上条は一度ちらりと美琴の方を向く。
美琴は興味なさそうに水を飲んだりそっぽを向いたりと忙しそうだ。
だけど美琴は耳に意識を集中させていた。

「友達。かな」
「そうですかー。ありがとうございましたー」
「ん? ああ」

上条が奥の方へと戻っていくのを見送って、初春は美琴の方を向いた。
美琴は明らかに落ち込んでいた。
美琴の周りの空気だけなんだかすごく重そうな気がする。
初春は聞いちゃいけないこと聞いちゃったかなーと反省する。

「御坂さん。私たち、応援しますよっ!」
「そうですよっ! 上条さんは友達って言ってましたけど、まだまだ先はありますって!」
「ぇ……? ぅん。ありがと……」

すぐには立ち直れなさそうなので、初春はあるものを取り出した。

「実をいうとですねー。ここに遊園地のペア入場券があるんですよー」

それは遊園地の入場券だった。
ただ、有効日付は明後日以降となっている。
それを見た佐天は再び初春の耳に口を近づける。

「ちょ!? ちょっと初春!? それって―――」
「しーっ。いいじゃないですか佐天さんっ。お二人の仲の進展を願ってあげちゃいましょうよ」
「うーっ。それ私も楽しみにしてたんだけどなー」
「大丈夫ですよ。なんとか手に入れてみせますから」
「ほっ、本当に!? さっすが初春~!!」
「ちょっ、ちょっと佐天さん!? 抱き着かないで下さいー!」

佐天は初春に抱き着いたまま離れない。
初春は諦めて先程の続きを言う。

「それでですね、これを使って上条さんを誘ったらどうですか?」
「………誘うのはいいんだけど、鈍感だから気づかないわよ。あの馬鹿は」

気分が落ちた美琴は上条のことを好きであることを否定もせずに言う。

「あー。確かに、そんな気がしますねー」
「それなら、もっとアタックすればいいんじゃないんですか?」

ようやく初春から離れた佐天が提案する。

「……そうなんだけど。できたらとっくにやってるわよ」
「つまり素直になれないんですねー」
「ぅ……」

痛いとこを突かれて美琴は机に突っ伏した。
すると、そこへ。

「ご注文の品を持って参りました―――ってどうしたんだ、御坂?」

上条がやってきた。
美琴は慌てて起き上がると、ひったくるように上条から料理を奪う。

「うおっ!? あ、危ねえだろ!」
「い、いいからとっとと行きなさいよ! この馬鹿!」
「な、何怒ってんだ……?」

上条は頭の上に疑問符を浮かべながら奥へと戻っていった。
それを見た初春が注意する。

「だ、ダメですよ御坂さん! あんな態度とっちゃ!」
「ぇ? だ、だって……」
「あれじゃあ嫌われてると思われてもおかしくないじゃないですか!」
「っ!? 嘘っ!?」

美琴は言われてとても驚く。
もしかしたら上条が自分の好意に気づいていないのは自分の態度にも原因があるかもしれないからだ。
よく考えてみると、会う度に電撃を浴びせることが多かった気がする。
美琴は素直になれない自分にため息をつく。

「ですので、これをあげますから明後日以降に誘って、アタックしてください」
「素直になればきっと気づいてくれますって!」
「ぅ…ん、そ、そうかな……?」
『そうです!』

初春と佐天は再び同時に言った。
美琴は勢いに負けて、頷いて初春から入場券を受け取る。
受けとってから、ふと気づく。

「あれ? 今、初春さん明後日以降って……」
「あ、気づきましたかー。そうです。今日のこの後と明日は御坂さんは上条さんに会っちゃだめです」
「ぇ? な、なんで…?」
「その間に御坂さんは素直になる努力をしてもらうからです!」
「ぇ? えぇえ!?」
「そして、明後日に、遊園地に誘うんです!」
「よーし! そうと決まったら早く食べて行こーっ!」

佐天が片手を上に突き出して言った後、すぐに食べはじめる。

「へ? えぇえ!? わ、私まだやるって言ってな」
「ほら! 御坂さんもはやく食べるっ!」

美琴の言葉を遮って佐天が急かす。
佐天は既に半分食べ終わっていた。
美琴は言われるがまま食べ始める。

3人が食べ終わるとすぐに初春と佐天は立ち上がって美琴の手を引っ張ってファミレスから出ていった。(お金はちゃんと払った)

「な、なんだったんだ。一体……」

すごい勢いでファミレスから出ていった美琴達を見送った上条は呆然としながらそう呟いた。


翌日。


従業員室。

美琴と初春と佐天がファミレスからすごい勢いで出ていった次の日。
上条当麻はバイトをしていた。
現在は休憩時間である。
ただ、今日はいつもと違い、御坂美琴が店に来ていない。

(今日はなんかあったんですかね。珍しい)

そんなことを思っていると、後ろから声がかけられた。

「おーぅ、上条。今日はあの常盤台の子、来てないんだな」

バイトの先輩だった。
手を上げてきたのでこちらも同じく返す。

「あ、先輩。そうっすね。でもまあ、いつも来てたら飽きるからたまには別の場所で食べてるんじゃないですかね」
「その理由はないな」
「え?」
「お前、気づいてないのかよ? 鈍感だなぁ。あの子はお前が目当てで来てるんだぞ?」
「へ? なんで俺?」
「おまっ……鈍感にも程があるぞ。あの子は、お前に好意を持ってんの」
「み、御坂が? 俺に? いやいやいや、ないですって」

そんなのあるわけないといった風に上条は切り捨てる。
バイトの先輩はそれを見て憐れむような目で見てきた。

「お前のその思考回路を正常に戻してやりたい。…何をどう思ったらそう思えるんだ」
「いやいや、他にも人はいるじゃないですか」
「お前、知らないのか? あの子はお前がバイトをしている日にしか店の中には来てないぞ? 一回を除いて」
「一回?」
「ん。普通に入ってきたんだけど、その日は食べ終わるとすぐに出ていったぞ。ちなみにお前がいるときはそんなに早くない」
「でも、もしかしたらただの偶然……」
「一度お前をぶん殴って目を覚まさせたくなってきた。…お前がバイトに来てるときはよくお前の方を向いてるし、注文するときはわざわざお前を呼んでるんだぞ」
「そ、そうなんですか。ぜ、全然気づかなかった」
「いや、さすがに気づけよ。そこは。あ、もうすぐ時間か」

ちょうどそこで休憩時間が終わったので、二人は準備をすぐに済ませて従業員室から出ていった。

バイトは全然はかどらなかった。
土御門と青髪ピアスが冷やかしに来たのもある。(適当に相手してやって放置した)
だが、それ以上に。
先輩に言われた言葉が気になったからだ。

(もしかして御坂は本当に俺のことを……? いや、そんなはず。…でも、先輩の言ったことはよくよく考えると筋が通っているというか…)

一度気になりだすとそう簡単には止まらない。
もしかしたら、いやそんなはずは。の繰り返しをずっと行っていたせいで、手元が狂って水を入れるのに失敗したりした。

(あーもう! なんで今日は御坂が来てないんだよ! 本当かどうか確かめられないじゃねえか)

そんなことを思いつつバイトを頑張ろうとするが、気づいた時には手を止めて、御坂がいるんじゃないかと店内と店の入口を眺めてしまっていた。
そして慌てて仕事に戻り、気づいたらまた眺めているの繰り返し。
こんなのでバイトがはかどるわけなかった。

(会いたい)

何故だか分からないが不意にそんなことを思った。
すぐにその意味を理解して、慌てて心の中で否定する。

(な、何を考えているんだ俺はっ! バ、バイトだバイト!)

だけど、気づいたら探していて、会いたいと思って、それを否定するの繰り返し。
やはり、こんなのでバイトがはかどるはずがなかった。
そんなこんなでバイトの時間は過ぎてゆく。


18:31

いつもよりも長いバイトが終わった上条はよく美琴と待ち合わせる喫茶店に来ていた。
もしかしたらいるかもしれない。と期待して。
だけどやはり、美琴はいなかった。
その事実に落胆している自分がいることに気づく。
そこでふと、普段の御坂の姿を思い出して。

(そういえば、こっちから御坂に会おうとすることなんてほとんどなかったな)

それはつまり、美琴の方から上条に近づいているということ。
やはり、御坂は俺のことが?と考えて、またそれを否定する。
この状態から脱却したい上条は連絡でもとって会おうかなと考えて、携帯を取り出す。
だけど、電話やメールは打つ気にならなかった。
特に理由も無いのに会いたいなんて言うのは何だか恥ずかしい。

(そういや、なんで俺はこんなに気になっているんだ?)

上条は自分の状態に疑問を覚える。
だが、答えは出ない。

(悩んでも仕方ないし、帰るか)

上条は諦めて帰ることにした。
喫茶店を出て、家に向かう。


18:51

(近くまで来ちまった……何で?)

気づいたら上条は常盤台の寮の近くまで来ていた。
自分のことなのに、自分の行動が理解できない。
もしかしたら、理解しようとしていないだけなのかもしれない。

(どうする……? ここまで来たし、一度会ってから帰るか?)

悩む上条だったが、そこで問題があることを発見する。

(会って何を話す? 理由を聞かれたらどう答える?)

話す内容は別に何だっていいのだが、理由に関してはさっぱり思いつかなかった。
ならば、帰った方がいいのだろうが、何故だかそんな気分にはならない。

(会う。か? ……いや、帰ろう。明日はきっとあいつも来るだろう。その時にでもいい。……けど、明日は来るのか? 今日は来なかったし)

既に、自分が何故こんなに気にしているのか?という疑問に埋め尽くされてしま
ったため、美琴が上条のことを好きかもしれないという可能性は頭から飛んでいた。
だからか、バイト先に来るという確信が持てない。
上条は悩んだ末に一つの答えをだして歩きだした。

次の日

結局、上条は帰ることを選択していた。
だけど、あまり眠ることができなかった。
今日は補習がないので昼からのバイトのみである。
なので、二度寝することにした。
だけど、あまり眠ることができないままバイトの為に出掛ける時間になったので、すぐに準備して出かけることにする。

バイト先に着いたのはギリギリになってしまった。
いつもの様に不幸な目にあっていたからだった。

(あの犬め……今度会ったら覚えてろ)

と、三度出会った犬に悪態をつきつつバイトをし始める。
1時間程経過したころ。

「いらっしゃいませー」

御坂美琴が来訪した。
どこか緊張した面持ちの美琴は、特に話すこともなく席に着く。
上条は頃合いを見計らってオーダーを持って美琴の所へと行く。

「ご注文は決まりましたか?」
「ぁ、ぅん。でも、その前に聞きたいことがあるんだけど……」

美琴はすごく緊張した感じで言ってくる。
だけど、顔は少し赤かった。
何か真剣な話なのだろうか。

「ん? 何だ?」
「バ、バイトが休みの日って、いつ?」
「確か明日が休みだったと思うぞ」
「そ、その日。よ、予定あいてる……?」
「ああ。上条さんはほぼ年中無休で予定はあいてるぞ」
「じゃ、じゃあ。明日、13時に公園の自販機前にきてねっ!」
「…りょーかい」

話が終わると美琴は普通に料理を注文して、上条はそれに応じ、奥へと戻っていった。
美琴は内心ドキドキしながらも喜んでいた。

(や、やった! な、なんとか言うことができたっ! ありがとう、初春さん! 佐天さん!)

(……なんか、今日の御坂はいつもと違った様な気がしたけど……ま、いいか。明日になったらわかるだろ)

と、そんなことを思いつつも、つい、何故だか美琴の方を向いてしまう。
ふと、そこで目があった。
上条はすぐに目を逸らす。

(あー! もう! なんで御坂の方ばっか見ちまうんだ俺はーっ!! な、なんだか気まずくなるだろーがーっ!)

頭をワシャワシャー!と掻いて紛らわす。
だが、5分もしない内に再び御坂の方を向いていた。
再び、目があってしまう。
上条は音速の速さで目を逸らす。
実を言うと美琴も同じタイミングで目を逸らしているので、お互い、相手が目を逸らしていることには気づいていない。
そのことを知らない二人は、勝手に気まずい空気を作り出していた。
そして、そのせいでこの日この後はまともな会話は一切することがなかった。






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