とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/未来からうちの子がやってきた/01章-1

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第一章 泣きっ面に核ミサイル But_it_is_a_happiness,isn't_it


「はぁ…不幸だ…」
時は二月。いつもの自動販売機の横にあるベンチで上条当麻が呟いていた。上条はいつものごとく口癖を呟いているわけだが、口癖と言えばただなんとなく言っているようなニュアンスがあるかもしれない。しかし決してそんなことはなく、これまた不幸なことがいつも通りに起こり、その結果、不幸だ…と呟いているので、意味もなく言っているわけではない。何がどう不幸かと言うと、一年生も残りわずかとなり、いよいよ進級が危ないと悟った上条は彼の担任(合法ロリ)に補習をしてもらいなんとか単位を稼ごうとしていたわけだが、いつの間にか担任がロリッ子からロリドジっ子にクラスチェンジしていたらしく、補習に使うはずのプリントが行方不明になったとかで3時間ほど教室で放置プレイ。その後何とか補習を終え、「今日くらいうまいもんでも食いたいなぁ」と思い、ATMでお金を下ろそうとしたところ、故障か何かは知らないがカードを認識してもらえず、そればかりかカードが戻ってこなく危うく警察沙汰になりかけた。結局カードは再発行で、なけなしのお金でヤシの実サイダーでも飲もうかとボタンを押したら、イチゴおでん(何故かアツアツ)が出てきたのだ。どうやら、ヤシの実サイダーの場所にイチゴおでんがはいっていたらしい。ならばそのイチゴおでんをいただくまで!と飲んでみたら大の甘党もびっくりな甘さでとても飲めたもんじゃなかった。そして今に至るというわけだ。
「…あ~…」
時刻は18時30分。そろそろ完全下校時刻なわけだが、このまま家に帰ったら今日一日なにもいいことがなかったのを容易く受け入れているようで、上条はどうも納得がいかない。
とそこに。
「かみじょうとうま………だよね?」
「………ん?」
後ろから幼い声が聞こえた。振り向くと上条の4,5メートル後ろの草むらに少し茶髪で、頭のてっぺんにピョコっと妙な髪が生えている男勝りな少女が立っていた。服装は可愛らしいカエルのイラストがプリントアウトされているいわゆるお子様ブランドだ。何故か半袖だが。電灯の僅かな光が少女を蜃気楼のように切なげに映す。上条の知る限り、その少女はシスターズの上位固体であるラストオーダーのはずだ。だがラストオーダーより髪がわずかに黒く、髪型も違う気がする、と上条は思う。それにどこか妙な気持ちだ。例えるなら『懐かしい』や『久しい』の反対のような。言うならば『やっと』と言ったところか。
「そうだけど。あれ??ラストオーダー…………だよな?どうした?こんなところで」
「らすとおーだー?なにそれー?」
「?」
少女はニコニコ笑ってザッザッと草むらから出てきて、いきなり上条にとびついた。
「どおっ!?」
「きゃははは」
上条はその少女に飛びつかれ危うく、ベンチから転げ落ちそうになり、
(………あれ?ラストオーダーじゃねーのか?)
体勢を立て直しつつ、やはり自分の違和感が正しいのだと確信する。
「ラストオーダーじゃねーの?悪ぃ悪ぃ。じゃあお前の名前は?」
「………………………、はは」
一体少女は何を思ったか。それは上条の知るところではないが、少女は上条の隣に座りなおし「……ま……そうだよね……」と何かに押しつぶされそうな表情で呟く。上条は何か異様な物を感じつつも何も言えなかった。
「?………」
「………、えーと、ミエ(美栄)!うつくしいのウツクってかいて、えいようのエイってかくんだー!ちなみに5さい!」
バッと美栄と言う少女は右手を大きく広げ自分が言った歳の数だけ指を広げる。つまり完全なパーだ。
「………………、か(……い、いやいや落ち着け上条当麻!)」
一瞬よく分からないピンク色の花園で上条の友人、青ピアスと土御門が「こっちにおいでーカミヤ~ン!」と自分をイケナイ所へ誘っている光景が見えたような気がするが、上条は気にしない事にする。
「コ、コホンっ………と、とりあえず俺のコート着ろって。つうかこんな寒い時期になんで半袖なんだよ?………って、うおっ!?なんだ!?おまけに濡れてるじゃねーか!?こんなクソ寒い日に水遊びでもしてたのかこれ!?風引くぞ!」
上条は少女の服をもう一度よく見てみる。どこかで見た事があるキャラクターだと思ったら、自分の携帯に付いているストラップ『ゲコ太』とか言うカエルのキャラクターに類似してる。ちなみに「なんでそんな子供っぽい物、携帯につけてるのー?」と言う質問は受け付けない。別に上条は自らそれを付けた訳ではないのだ。『レールガンノミコト』と言う音速の三倍でコインをブッ飛ばしてくるちょっとお茶目な知り合いに付けているように義務付けられているだけだ。
そしてこの少女が着ている服。先ほど上条が言ったように濡れている。びしょ濡れだ。どうやら無理やり洗ったようでイラストの色が所々落ちている。まだ洗って間もないのだろう。冷気を吸ってまるで氷のドレスのように冷たい。
「あはははは!」
しかし少女は特に気にしていないようだ。笑っていた。
(?……確か男より女の方が寒いのに強いとか何とかって聞いた事があるぞ……、って!っにしても限度があるだろ!見てるだけで寒くなってきた………!)
ちなみにそれは間違った知識である。むしろ女性は寒いのにとても弱い。しかし上条がそう思ってしまうのも無理はない。何故ならこの美栄と言う少女はこの4℃と言う極寒の気温の中、服が濡れているのにもかかわらず寒がっているようにはまるで見えないのだ。それどころか少女はこちらの心が温かくなるほど嬉しそうに騒いでいる。まるで少女の周りだけ空気が温かいと錯覚してしまうほど。しかし上条には少女は何処かぎこちないと言うか、何か嘘をついているにも見えた。
この美栄の表情によく似ている顔を持っている人を上条は知っている。しかしその推測が正しいとすると余計に意味不明なことになるので、上条は考えるのをそこでやめた。
(なんだろこの子……よく分からねーって言うか……不思議な子だな……迷子か何かかな?)
「……あのー美栄ちゃん?パパとママは?場所が分かってんならそこまで送ってやろうか?」
「……………ママはわかんない…………たぶんがっこうのりょうにいるとおもうけど………」
「???」
なにかおかしいな、と上条は思う。
学園都市では10~20歳くらいの若者が能力開発のため一人で移住してくることは多々あるがそれに親が同行してくるのはかなり稀なケースだ。全くいないと言うわけではないが学園都市で家族揃って移住してくるのは決まって金持ちのみ。となるとそんな成金候補の少女がこんな時間にしかもこんな寒そうな格好で夜の街をうろうろするなんておかしな話ではないだろうか。それに母親が学校の寮にいるとはどういうことだろう。学園都市の全人口の二割ほどしかいない大人たちの比率は三割は教師、残りは研究者、商売に来た者、その他諸々で大体私的に来た者を除いて職業ごとに用意された専用の寮のような所に住んでいる。つまりその母親とやらは寮の管理人か何かと言うことになるわけだがそうすると本当に金持ちなのか?と言う疑問が浮上する。
(うーん………ますますもって意味が分からん………)
「………んー………じゃあ父親は分かんの?」
「パパは“とうま”」
あ、なんだ分かってんのか、と上条はとりあえずほっとする。どうやら父親は『Toma』というところにいるらしい。しかし学園都市で『Toma』なんて所は聞いたことが―――――――――
「………………でぅえ?今何と言ったのでせうか?」
「だからアナタがパパ」
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………、はい?」


2 19:30


現在、上条当麻は自分の寮でとある少女と二人でレトルトのご飯を食べている。二人で、というよりは少女のほうが一人で食べているような感じだが。上条はその少女にいくつか質問をした。しかし少女は質問されるたびに不快そうな表情をした。今ご飯食べているから後にしてくれよ、と言いたげに。
「それじゃあ、美栄ちゃんは未来から来たってことでいいのか?」
「そうだってさっきからいってんじゃん!!」
ガツガツとものすごい勢いでレトルト食品を平らげながら、補助食品としてクッキーを食べている。上条としては意味不明な構図だが、少女にとってこれが普通のスタイルらしい。
だいたい少女のおかれた状況が呑み込めた。話をまとめるとこうだ。
少女が来たのは10年後の学園都市で、その未来では能力開発が現在よりさらに発展しており、実際この少女(仮に自分の娘だとするなら上条美栄)は、時間捜査(タイムエラー)とかいう能力で、あらゆる時空を行き来できるぶっとんだものらしい。まぁかなりの制限、制約、規制があるようだが。それでわざわざ未来から参上なさった理由が、「パパとママのはつデートをみる~」ためらしい。なんでも母親から初デートの惚気話を聞いてしまって、気になってわざわざこの時代に来たとか。なんともハタ迷惑な母親だ。
「ねーママは?なんでいっしょじゃないのー?ラヴラヴなんでしょー?」
「…………………えーっと…一応聞くけどママの名前って…………?」
「あれ?もしかしてまだそこまでいってないのー?みらいのパパ、いつも『みこと、あいしてるよ』っていってるよ?ほらぁーこれー!それよりママはー?いばしょくらいしってるでしょ?」
と少女は一枚の写真をよこしてきた。
「…………………、」
(……まぁある程度予想はしてたが……)
少女こと上条美栄に手渡された写真を見て上条はやっぱりと思いつつも唖然としていた。
美栄が渡してきた写真の中には一組の男女が写っていた。
男の方は180センチくらい身長で黒いスーツに身を包み、硬そうな髪をオールバックにしている。女の方はセミロングくらいの長さの茶髪のヘアースタイルで大きいお腹を擦っている。二人とも頬を染め苦笑いしているが本当に幸せそうだ。
(………………、)
未来の写真だからか僅かに違和感を覚えるがそこに写っているのは確かに上条当麻と御坂美琴だった。
そして美琴が着ている服は学園都市ではあまり見ない、体のラインが分からなくなるくらいのダブダブな服。しかしその服越しからでも美琴のお腹はかなり大きくなっており、写真の中の美琴が妊娠している事が伺える。出産間近に撮った物なのだろう。
(………………………、マジですか………)
写真の隅を見れば5年後の日付が刻まれていた。写真に使われている紙はどこにでもある普通の物で逆にそのせいで上条に美栄の話が本当のように思わせる。それ以前に少女がこんな嘘をつく意味も分からない。
(………………なんと言うか、………これは………………不幸………なのかな………)
上条は写真を胸ポケットにしまった。時計を見る。時刻は19:50。インデックスはどこへ行ったのかまだ帰ってこない。
(このまま匿ってもインデックスにばれてめんどーなことになる。かといって小萌先生に預けようものなら“若いっていいですねーカミジョーちゃん”と言われるに決まってる………………けどそれが一番被害を最小限に抑えられるか…?)
上条はポケットから携帯を取り出し、小萌に電話をかける。しかし待てど暮らせど電話に出てくる気配がない。10回目のコールではっと自分の成績のことが頭をよぎる。たぶん先生は今自分の成績の尻拭いをしてくれているのだろう、と上条は推測する。
「……ねぇーはやくママにあいたいよー……ばしょわからないの?たしかトキワダイってがっこうのりょうにいるとおもうんだけど……」
「…………………………………会わないって選択肢はないでせうか?」
「っ!?…………ごほごほ………………………な、なんでよ!?」
美栄は右手にスプーン、左手にクッキーと言う暴飲暴食を絵にしたようなスタイルで荒ぶる悪魔のごとくカレーとクッキーを食い散らかしていたが、上条の一言にピクッと反応しゴホゴホとむせ、食べるのを一旦やめる。
「………………、なんでよ?」
「……………………、」
上条ははっきり言って美琴をここに招くのには極度の抵抗がある。
子供と言うのは何というか恋人がとことん愛し合ってそれで最後に出来る愛の結晶みたいなものだ………、と上条はよくは分からないが何となくそう思う。それなのに自分と美琴はどうだ。他人とまではいかないが、と言うか助けたり助けてもらったりとかなり深い関係ではある。だからと言って「なんか未来から子供が来たよ~」とか言って「いやーんダーリンったら///」とか笑い合える仲でもない。
それに。
もし美琴が美栄を見たらなんて思うか。嫌だと拒絶されないだろうか。もし拒絶されたら………。そう思うと上条は何故か最後の一歩が踏み出せない。
「……あのな。もしかしたら俺と御坂は……その……そういう仲になるかもしれない。でも……まだ……と言うか、なんて言うか、色々順番をぶっ飛ばしてるわけでだな……」
「ダ、ダメ!!それだけは!!ぜったいにあう!!ぜったい!!」
「えー………(なんか相当強固な意志でいらっしゃいますが)」
上条には美栄の幼い瞳がどこか邪悪な黒い光が鈍く光っているように見えた。
「………えーと、それは何故でございましょうか?」
「は、はつデートみるためだって!!!!」
美栄はスプーンをバンッとテーブルに叩きつける。
「……………、じゃあジャンケンで先に美栄ちゃんが三回勝てたら御坂に連絡する。でも三回負けたらとりあえず今日は勘弁してくれ………」
「え?……ふ、ふん。い、いいよ。どうせアタシがかつもん。パパこういうのすごくよわいもん。ふこうだもん」
上条の目が尖ったナイフのように鋭くなる。「んだとこのクソガキャー!!言わせておきゃいい気になりやがって!!ジャンケンなんざやめだやめ!!虐殺だ!!」とキレているわけでは当然なく。自分が不幸だと知っているところを見ると、やはり美栄が自分の娘と言うのは本当なのかもしれないと思っているのだ。
「んじゃ早速」
「うん。かくごしてよねパパ」
「……、いくぞー!最初はグー、じゃんけ―――――」
「パパ?やさしくしてね……」
「ん――――――ポ、パン!?」
グーを出そうとしていた上条だが拳から力が抜け、思わずパーを出してしまう。
美栄 チョキ
上条 パー
「わーい」
まんまと上条を貶めた美栄は「あ、やっぱ弱」みたいな表情をし、勝利の余韻からかカレーを再び食べ始める。
「ひ、卑怯だろ!?今のなしだろ!?5歳児にしてそんなオトナな手口使ってくるなんて!なんか全然喜んでないし!勝って当たり前みたいな顔してるし!!」
「みえ、よくわかんなーい。ママのごはんはやくたべたいなー」
「納得できねー!」
「つぎつぎ!(モグモグ)」
テーブルにスプーンをドンドンドンと叩きつけ次の勝負を急かす美栄はけっして可愛くない、と上条は思う。顔はカレーを口いっぱいに頬張ってプクッと膨れており、ぴょこんと飛び出ている髪が自由気ままにゆれている。そしてカレーのルーが口の周りに大量に付着しており表情も最初上条と会った時より柔らかくインデックスの数少ない私服を着ていてつまりやっぱ可愛かった。
「(何だろこの気持ち?なんか妙に……)……ったく……、最初はグー、じゃんけ――――――」
「ねぇ?……きす、しよ……?」
「んぱぴょんぱ!!??」
美栄 チョキ
上条 パー
「よしよしーつぎでラストだよー(モグモグ)」
「……………………………………………………………………………………………………………………、なんかおかしくね?」
「はーいつぎつぎー」
「……………………、…………………、じゃんけ――――――――――――――――――――――、」
「……ちなみにいままでのはぜんぶママのマネです」
「―――――ん……………………、」
「………………………………、」
「「ポン」」
美栄 チョキ
上条 パー
「それじゃあ、ママにでんわしてね!だいすきだよパパ!」
「………………………………………………………………………………………………………はい」


3 20:00


「俺はロリコンだ!」

……と大声で言える人は少ないと思うし、少ないと思いたい。もしそんな世の中だったら真の意味で悪役の「リセットだよ!このくだらない世界を粛清する!」とか言う台詞も一層輝きを増すだろう。と言うかそれ以前にその悪役は絶対にいい人だ。そしてこの場合、美栄に色目とかエッチ(?)な言葉で貶められた上条はもしかしたら雑魚敵Aのような存在なのかもしれない。
結果的に縦三(しかも全てパー)で負けた上条は素直に美琴に電話をかけることにした。一度「もう一回お願い!!この通り!」と頭を下げたら「それじゃあ、あしたはママにあいしてるっていってね!きゃは☆」とか言ってきたのでこちら拒否権はなかった。
「パパーはやくでんわしてよ。……あ!そうだ!ねーねー!みらいのパパがママの21さいのたんじょうびにプレゼントしたものききたい?」
「…………………………………、(無視無視……どうせろくなものじゃねーだろ……)」
「そっかー!うーんとね!ミコトへ、おまえはおれのたいようだ。そしておれはたいようがなければいきていけないヒマワ――――――」
「(って!ポエムかよ!!??もしかして俺んち貧乏!?)で、電話するから許してください!!」
「あはははは!パパかわいい!!」
「あ、あんま大人をからかうんじゃねーよ!」
「プフフフフフ………!なんかアタシのなかでパパのキャラがほうかいしつつあるけど!おもしろいしいいや!あははははは!はやくママにかけて!」
「………………、ったく」
不思議なことだが上条の中の疑問はもうほとんど美栄の笑い声に払拭されていた。
(……本当なんだろうな……)
ぼんやりと『家族』と言う淡い光が上条の心を温かくする。
上条には『家族』と言う血のつながりが少し遠いもののように感じられる。それは記憶喪失だから。記憶を失ってから父母に一度も会わなかったわけではない。何度か会っているし、くだらない話で盛り上がったりもした。しかしやはり子供の頃の記憶がないと言う事は大きい。例え本当に親なのだろう人たちが自分に優しくしようとも、上条にとってそれは他人がずけずけと土足で自分の心の中に踏み込んで来るように思える。残酷な言い方だが上条の中で真の肉親と言うのは既にいなくなっている。言うならば今の親たちは果てしなく肉親に近いお義父さんお義母さんと言ったところだ。だから美栄の顔や、声、仕草が自分が分け与えたもののように感じられ、曖昧ではあるものの上条に本当の家族の温かみと言うものを実感させた。
しかし。
「あははははは!………はは…………ひっく………ほんとうに………ひっく………あはは………ほんとうにこっちにきてよかった………」
「っておい!?な、なんで泣くの!?」
「うぇ……?な、ないてないよ……ひっく……!だって………ひぇ………アタシいますごくうれしいもん………!あぁあ……!」
「?????だ、大丈夫かよ?ほらこっちおいで(なんかよく分からねー展開になったきたぞ………)」
疑問が再び色を濃くする。とりあえず上条は美栄を引き寄せ、よしよし~と頭や背中を撫でる。美栄はそれで幾分かは落ち着いたようだ。次第に泣き止んでいく。上条はもう一度美栄の顔を覗く込む。美栄は確かに嬉しそうではある。しかしそれは表情の一部を言った話。口や輪郭は正の表情だが、目は悲しみを彩っている。どうやらこの美栄と言う少女はまだ物心がついたばかりだからか、感情のコントロールがあまりうまくないらしい。公園でもそうだったが、上条にはさっきから美栄が二つの対極的な感情に振り回されているように見えた。上条はこの美栄と言う少女の事がますます分からなくなる。
……もしかして。
(……本当は未来の俺と御坂はすごく仲が悪くてそれでこっちに移住しに来ました~、って感じだったりして。……それでこっちに来たはいいけど……負い目を感じている……とか……?)
「……、何か非常に申し訳ない気がするのですが……」
「ふぇ?そ、それより……ママ……」
「ん?あ、あぁ………」
上条は携帯を取り出した。やっと上条が連絡する事を決めたのに安堵しているのか、美栄は「ほ」と息を零した。しかし美栄のその態度に上条は何か違和感を覚えた。美琴に会う事に執着しているなら、ここは喜ぶべき場面ではないか?それに美栄は何やら使命感のようなものに駆られているようにも見える。加えて美栄はしばしば5歳児のわりには少し老けた表情をよくする。
「(まぁ俺と御坂が疎遠説なのは置いといて……)さて、じゃあ………」
上条は携帯のボタンをポチポチと押す。美栄は確認のためか携帯に耳を寄せてくる。
プルルルルルルルルル………プルルルルルルルルルルルル……
一分くらい経っても出てこなくて「あれ?もしかして留守?ラッキー」と思った上条だがしばらくして美琴は普通に出てきた。
『は、はわわ、はい!も、も、もしもし!?く、黒子!!邪魔しないでよ!!(ビリビリ!!)』
『お姉様!誰からの電話ですの!?携帯こっちによこしてくださいそんなに顔を赤くなさって!今すぐデリートですの!!』
「……?」
美琴の息がごー…ごー…と携帯にあたる音と電撃を発射しているような音が聞こえる。上条は結構前から疑問に思っていたのだが美琴の携帯はあんな弱っちぃそうなカエルのデザインで実は美琴の電撃に耐えられるほど相当頑丈な作りになっているだろうか?
それはさておき。
「???み、御坂さん?ちょっと頼みがあるっていうか………い、今からうちに来てくれねーか?」
(ちなみに御坂は「べ、別にアンタのためじゃないんだから!一端覧祭で料理作るからアンタで実験するだけよ!」と上条を締め上げ、なんだかんだで我が家の住所を知っているのだった、と上条さんは間髪いれず説明してみる)
『ふにゃああ!?!?!!ア、アンタのとこに!!??!?それって………!?と言うか、ど、どうして!?!??!って、黒子いい加減にしろー!!今大事な話してんだー!(ビリビリ!)』『あー!!!お姉様!!!いいですこれ最高ですわ!!!もっとこの黒子めに愛の鞭をー!!!』
ベッドのギシギシという音が聞こえ始める。美琴が今何をしているか分からない上条は5センチ横にいる美栄の頭を撫でながら、「……お楽しみ中………、………なのかな……?」とそっと呟く。
『はぁ………はぁ………き、気絶したか……部屋暗くしてロープで縛ればテレポートできまい……一応目ぇ塞いどくか』
「(……、)み、御坂さーん?もう一度言いますけど、い、今からうちに来てくれませんかね?べ、別に変な意味はないので………あ、いや、考えようによってはあるかも………と言うかあったのかも………」
『ふぇ!?!?!?にょ!!??へ、変な意味っ………!!』
「………と、とにかく、お、お前にしか頼めねーことなんだ」
『なわわわあわ………わあわわわ、わかったわ!いあわいいいい、今から30分くらいでそっち行くからそこ動くんじゃないわよ!!(ビリビリ!!)』
『あーお姉様!!く、黒子は………黒子はもう………!!アーッ!』
プツン・・・ツーツーツー・・・・・
「……、何してたんだろアイツ………」
「ママってテンぱるといつもこんなかんじだからねー。たぶんパパによびだされてうれしかったんだよ」
「………へぇー」


4 20:45


『取ったどー!』
と芸能人(売れていない。ただバラエティーの噛ませ役や危険な撮影、命がけの番組などでは重宝されておりよくテレビに出ている。一応某有名大学出身で芸能界に飛び込んできたはいいが周りからは「どうして芸能人やってるんだろうね。頭いいのに」と蔑まれている。ただしそのキャラクター性はかなり愛らしく一度嵌まるとタチが悪い。気付けばテレビ欄でその名前を探している。年歳は23歳だが30歳くらいに見える。しかし決して不細工などではなく、ファッションセンスがあればそこそこもてると思う。最近はクイズ番組や危険な番組によく出演。たまに恋バナになると何故か黙り込み、収録中にも拘らず明後日の方向を向き始める。常時パンツと言う奇妙なスタイルは最近はしない。)が極寒の冬にも拘わらず海で漁業をしている番組の音が上条宅のリビングに響く。
ちなみに上条宅のほとんどの電化製品が新しくなっている。これは天草式の人たちが「いつもお世話になってます。せめてもの恩返しに貴方の家の家庭用品を全て最新の物にしておきます」と総額500万相当の模様替え(?)をしてくれたおかげだ(補足しておくと今の天草式は結構機械頼りのグーダラの生活を送っている)。が、それは結構前のことなのでもう慣れてしまった。それよりも上条は、
(御坂のヤツ………美栄見たらなんて言うかな………)
そのことばかり考えている。すでに電話をかけてから40分くらい経つのでそろそろ来る頃だ。
「………パパー?ママほんとうにくるの?」
「あー多分もう来るんじゃね?」
「そ、そっかー………」
「?????」
もじもじしながら頬を染めている美栄はこの40分、ずっとこんな調子で何回も同じ事を上条に質問している。どうやら美琴に会えることがよっぽど嬉しいらしい。いや、別に未来でも会っているだろうから、ここは『若き日の母を見れる』という事にワクワクしてるのだろう、と上条は推測する。
「それじゃあアタシげんかんでまってる!」
「あ、おい…」と言う上条の声を無視し、トットットッと美栄は玄関に行ってしまった。何の事情も説明せずに美栄を見られたら、幼女を監禁しているロリコン野郎だと美琴に勘違いされてしまうので、上条も美栄を追い玄関の方に向かう。
「おーい、ちょっとリビングで待っててくれると上条さんは有難いのですが?」
「え?あ。そ、そうだね。お、おくでまってる」
「おー(御坂のやつもこれくらい物分りがよかったらもっと人生楽しく生きれるだろうな………)」
何か不満げだったが上条の言うことを聞いた美栄はポケットからビスケット(さっきインデックス専用のお菓子貯蔵庫から勝手に取った物。何故か一発で発掘された)を取り出し封を切り、ボリボリと食べながらリビングへ向かった。一見行儀が悪いように見えるが、それが美栄だと何故か納得させられてしまうところがある。だが上条は一応「行儀悪いぞー座って食べろーこらー」と美栄に言う。
「……さてと」
どう説明するか………と玄関で一人の上条は呟く。そもそも未来から美栄が来たのは美琴の惚気話を聞いたからであって自分がこんなに悩む必要はないと思う。いっその事「お前の子だ。大切にしろよ。愛してる」とか適当かつ堂々と言ったほうが手っ取り早いだろうか突如。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」
ドアがまるで爆弾で吹っ飛ばされたようにドバンッ!と開き、ジェットコースターに乗っている者の悲鳴に近い甲高い声で叫んでいる何かがいきなり上条宅に転がり込んできた。上条はいつもの癖で右手を前にかざす。
「どわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!………あ?………………って!!御坂かよ!!??」
その鉄砲玉の正体は。はぁ……はぁ……と息を荒くしている御坂美琴だった。上条は本気で魔術師か何かの襲撃だと思った。かざした右手が不自然に残る。
「はぁ…………はぁ…………き、来たわよ…………」
「バ、バカヤロウ!!いきなり人のうちにインターホンも押さずしかも叫びながら上がってくるやつがあるか!?って上条さんは上条さんは御坂さんの道徳的マナーに疑問を投げかけます!!」
「……な、なによ……はぁ……はぁ……こっちは15分も遅れちゃったから……走ってきたのよ……はぁ……す、少しくらい、いいじゃない………そそそ、それで?私にしかできないことって………?」
美琴は肩で荒く息をして、デコにキラッと薄く汗をかいている。いつも美琴の髪は綺麗なストレートだが今は前髪が少し寝癖っぽく、くるんっとなっている。
「あー……っと……い、いや……それなんだけどな。……うーん……その前に簡単に説明するからしばらくそこにいてくんねーか?寒かったか?あ、温かいお茶ならいくらでも用意するぞ?」
「え……あ、う、うん……な、なんか妙に優しくない今日のアンタ?」
「……、いやいや」
上条はそれだけしか言わないが美琴の言っていることは的を射ていた。ただしそれは上条が妙に優しい、という所まで。上条が優しいのは、
(……傷ついたりしねーよな……)
美琴の事を心配しているからだ。上条は美栄の事を驚いただけで特にショックだったり嫌だとは思わなかったが美琴は女の子だ。もしかしたら今美琴には思いを寄せている男がいるかもしれない。普段の美琴を見ると恐らく付き合ったりはしていないと思うが、そんな花も恥らうお年頃の女の子にいきなり「未来から俺とお前の子供が来た」とか言って大丈夫なのだろうか、と上条は悩む。顔を真っ青にする美琴が思い浮かぶ。
仮に傷つくとしたら。
(…………、)
上条は自分の中の見えない何かが壊れるような気持ちになる。まるで自分の見えない所で親友に大切な物を壊されるような。分からないが体に悪そうな黒いもやもやが心の中を巡回する。

ドドドドドドドドドド!!!と床を思いっきり叩く音。ヒューと吹く疾風が上条の髪をそっと揺らした。

「ままああああああああああああああああああ!!!!」
「ふごっ!?」
美栄が美琴にロケットのような物凄いスピードで体当たりしたのだ。抱きついたと言うよりかは思いっきり腹を殴った、と言ったほうがいいくらいの体当たりだ。あまりの勢いで美琴は後ろに仰け反りドアに後頭部をバゴン!と結構いい音でぶつかる。
「ゲホ……いったー……な、何?」
「うぇぇぇぇ!!!ままああああ!!!う、うぇえ!!!」
美栄は美琴の胸でおお泣き。一方、尻餅をついた美琴は美栄を抱くべきか離すべきか迷っているようだ。ここは美栄を慰めてあげるべきところかもしれないが今の上条はそれどころではない。
「み、美栄!まだ御坂に何も言ってねー!!早く戻れ!!」
「ままああああああああ!!ままああああああああああああああああああああ!!」
しかしおお泣きしている美栄は聞く耳を持たない。というか聞こえてないのだろう。美琴の着ているコートの上にどんどん涙を落としていく。
「はぁ?マ、ママ?…………?……なんかこの子どっかで見たような……、……!!!ア、アンタ!!」
やはり美栄には微かに上条の面影があるのだろう。美琴は何かに気付いたらしく上条と美栄を見比べるように首をブンブンする。そして証拠を確保する警察のごとく美栄を抱きしめ上条を睨み付けた。いつでも電撃できるようにか微弱に帯電している。
「(ま、まずいか!?何してくる!?ビ、ビリビリ!?ビンタ!?「このロリコン!」って罵声!?……もしかしてナチュラルに通報!?)」
とりあえず助かりたいというか冤罪だろ!?と思う上条は右手を翳すがそれは電撃が来た時だけにしか役に立たない。仮に「アンタ、女垂らしだとは思ってたけどもう子持ちだったなんて!サイテー!!」とか通報とかされたらこの右手は何の意味も成さない。その前に美琴はそんなナマッチョロい事をしないだろう。今までの経験から上条は自分の身よりもむしろ新調したばかりの電化製品の数々の心配をした。もし電撃であの電化製品が破壊されるとしたら……、と上条が恐る恐る美琴の様子を伺う。
「アダワワ、アア、アアワアンタいつの間にわああわ私に、こどこ子供生ませたのよ!?今この子私の事、ま、あま、ママって言ったわよ!?ど、どういうこと?というか!!せ、責任!責任とってけ、け、結婚!!あれ!?私子供なんて生んだことあったっけあれ!?!?とにかく結婚しろ!!」
「………………………………、(自分で言っててなにか変とは思わないのか?)」
上条はなんか心配していた自分がバカらしくなった。多分美琴は驚いているのだろうが、にしたって意味が分からない。美琴は泣いている美栄の背中をぎこちなく上下運動している。擦っているのではなく高速でヤ擦っているといったような感じだ。
「……御坂……タイミング悪いけど……紹介する……。……この子上条美栄っていってな………俺とお前の………む、むす、娘らしい……」
「だよねやっぱりアンタと私の元気なふにゃああああああああああああああああああああああ!?!?!?!?!?」
上条は慌てて美琴の手を握る。それでなんとか電化製品と美栄は守った。