小ネタ スキージャンプペア
「ちょっと、どこ触ってんのよ!」
「しょうがないだろこの方法しかねえんだから!! てか失敗したら脚折るかもしれないから暴れんな!!」
「で、でもそんな、そんなに後ろから強く抱きしめられたら、私……」
「だー! だから動くなってば! 色々当たるから、上条さん耐えられなくなるから!!」
「私は、もう、とっくに駄目」
滑走が終わり二人の体が宙へ放り出される。 普通ならば恐ろしい状況なのに二人はそれどころじゃない。
「ふにゃー」
「おいいいいいいいいいい!! このタイミングはねーだろおおおおおおおおお!?」
上条は美琴のフニャフニャになった体を支えるため更に強く抱きしめる。
それに比例して地上十数メートルの高さに居る美琴の幸福指数はどんどん上昇していく。
スキーの板が地面に付くと同時に上条はどうにか二人分の体を支えようと踏ん張る。 が、予想を超える
重力が全身にかかり、更に美琴の靴がスキー板からはずれ大きくバランスを崩した。
「御坂ッ!!」
自分から離れかけた美琴の体を捕まえ直す。 上条の靴もバキッという音と共にスキー板から外れ、二人
の体は柔らかい雪の上を二十メートル以上転がった。
「……」
「……」
上条が美琴の頭を護るように抱きしめた状態で二人は横たわる。
真冬の山、しかも雪の上なのに、二人の体は妙に熱い。
「起きれるか?」
上条は胸の中の美琴に問いかける。
「………足が、痛い…………ような気がする………たぶん」
「……そっか。 じゃあもうちょっとこのままで居るか」
「うん」
それっきり二人は黙ってしまう。
美琴は上条の胸へ、静かに顔を押しつける。
上条は美琴の髪の良い匂いを静かに堪能する。
――――救助隊が来たのは、その二十分後であった。