再会
敵対組織からの襲撃――つまり学園都市の外からの攻撃で学園都市は多大なる被害を受けていた。
だが幸いなことにとある少年のおかげでその事件は幕を閉じ学園都市は危機から救われた。
「あーあ、アイツ…何で帰ってこないのよ…もう戦争は終わったっていうのに…」
美琴はとある少年を待ち焦がれている。自分のやるべきことをすべて終わらせて帰ってくると約束した少年を。
「あの類人猿…お姉さまをこんな風にしてしまってぇええええ!!!」
「ちょっと黒子!べ、別に私はアイツの事なんて…」
「お姉さま…先ほどからずっと『アイツ』とおっしゃっておりますのよ?気づかれていません??」
「うっ…言われてみれば…」
「はぁ…お姉さまったら。黒子は今から風紀委員の会議がありますので出かけてきますがくれぐれも『外』には出ようとしないようにしてくださいまし。」
「わかってるってば。もう抜け出そうとなんてしないわよ。」
美琴は一度学園都市から抜け出そうとしたところを警備員に見つかり厳重注意を受けていた。
「まぁそれならいいんですが…では行ってまいりますお姉さま。」
「うん。気をつけていってらっしゃいね。」
「まぁまぁまぁ、お姉さま、黒子の事を心配してくださっていますの?でしたら黒子が帰ってきたら熱ーいベーゼを」
「馬鹿言ってないでさっさと行きなさい!!」
「もう…お姉さまったら恥ずかしがってしまって。では本当に行ってまいりますわ。帰りは少し遅くなるので。」
「わかったわ。」
ヒュンと黒子はテレポートで部屋から出て行った。
「さて…立ち読みにでもいこっかな…」
と美琴が独り言をつぶやいたとき携帯の着信音が鳴った。
「だれかし…え!?あのバカ!?嘘でしょ?」
美琴は慌てて電話に出る。
「ちょ、ちょっとアンタ今どこに居んのよこっちは心配し――」
「御坂・・・だよ・・な?」
上条の声はとても弱弱しかった。
「アンタどうしたのよ…まさか」
「い、いや別に大した怪我とかはしてねぇんだけどさ、何ていうか…今暇か?」
「暇じゃなくてもアンタのとこ行くわよ。」
「あーそりゃ助かる。じゃあいつもの自販機の前まで来てくれ。」
ブツッと通信が途切れる音がして相手の声は聞こえなくなった。
「あの馬鹿…やっと帰ってきたんだ。」
美琴の顔はだれから見ても緩みきっていて、白井が見れば卒倒は間違いないだろう。
あたりはちょうど人気もなく二人で話をするにはうってつけの場所だった。
「アイツ…人を電話で呼んどいて遅れてくるってどういう神経してんのよ。」
美琴が一人でブツブツと文句を言っていると後ろから声がかかった。
「おー御坂、久しぶりだな。最後に会ったのが『あの日』以来だからな―」
「アンタ!!今まで連絡もよこさないで…心配したのよ!!」
「それは本当に悪い。でもキチンと帰ってきただろ?」
その言葉を聞いて美琴はとある銀髪のシスターを思い出す。
『とうまは絶対帰ってきてくれるんだよ?』
そう言って笑っていた彼女が信じられなかったが美琴はようやく彼女が笑っていられた理由<わけ>がわかった。
「バカ…」
「悪い…ところで御坂には彼氏とかできたのか?」
「…出来てるわけないでしょバカ…」
「ならよかった。なぁ俺の話聞いてくれるか?少し長くなるけどさ」
「長話なら聞いたげるわよ。」
「そりゃどうも。じゃあ俺そこの自販機で飲み物買ってくるよ。」
「私が蹴りいれたほうが早いわよ?」
「まぁ今回は奢らせてくれよ。」
「なんか調子狂うわね。」
「ハハハハ…あんた本当に運悪いわね…まさかまた飲み込まれるなんて。」
「う…うるせー。上条さんはこんなのなれっこだい!」
上条は見事お金を飲み込まれ美琴が代わりにジュースを買った。
「で?話って何?も…もしかして『あの日』の話?」
「いや、まず一つ言っておくことがある。あいつ…インデックスが『ありがとう』だってさ。」
「あの娘が?私に?なんで?」
「えーっと…上条さんの口からはなんとも…ただお前にこれ渡してくれだってさ。」
上条はポケットから一枚の封筒を手渡した。
「なにが書いてるのかしら…」
拝啓 短髪へ
とうまの事よろしくなんだよ。とうますぐ女の子のとこいっちゃうし危ないことはするし大変だけど
戦争中いつもこっちで短髪の話ばっかしてたんだ。だから薄々感じちゃった。
二人ともこれからも仲良くしてね。たまには遊びに来てほしいかも。
で?なんて書いてた?」
「今度遊びに来てだってさ。」
「へー、じゃあ今度の夏休みにでも行ってやるかなー」
『あの娘もこいつの事…せっかくあの娘がくれた機会だもん。大事にしなきゃ』
二人のしばらく沈黙が続く。その沈黙を破ったのは上条のほうからだった。
「なぁ御坂。『あの日』言おうとしてたことだけどさ。」
「えっ…うん」
「俺さお前といるとすっげー楽しいんだ。追いかけっこやビリビリは簡便だけどさ。でも本当に楽しかった。でも俺はそれ以上を望んでんだ。」
上条は美琴のほうへと体を向けて
「御坂…好きだ。もしこんな俺でよかったら付きあってほしい。」
「……ずっと…待ってたんだから…バカぁ…」
美琴は上条に抱きつくと上条の胸の中で泣いた。これでもかというくらい泣いた。
「ハハ…こりゃOKってことでいいのか?」
「いいに…決まってるじゃ…にゃい…ふにゃー」
「ちょ!?御坂さん漏れてる電気漏れてますから―」
「へへへ…当麻…」
「…まぁ…今日くらいいいか心配かけちまったしな…ったく緩んだ顔しやがって…」
この日は二人にとって忘れられないい日となった。 fin