とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part3

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だれでも歓迎! 編集


「へー、結構美味しそうじゃない。」
「ふふーん、とうまはこう見えて料理が上手なんだよ。」
「なんでお前が威張ってるんだ。まあお嬢様の口に合うか分からないけどな。
 ほらインデックス、今日の食材は御坂のおごりだからいつもよりグレードが高いんだぞ!ちゃんとお礼をいっときなさい。」
「短髪ありがとうなんだよ!」
「感謝するならその呼び方何とかしなさいよ…。まあいいわ、お腹も空いたし食べましょうよ。」
「それもそうだな。それじゃあ」
「「「いただきまーす」」」
「むむ!いつもより味噌汁の具が多いんだよ!それにこのお肉もすごいんだよ!」
「な、なんてこった!これは本当に同じ肉なのか!?」
「あんたら普段どんな食生活してるのよ………。」


「ふー食った食った。」
「ごちそうさま。結構美味しかったわよ。」
「お嬢様のお口にあったようで何よりです。俺も久しぶりに美味いものが食えたよ。」
「それにしても、あの子よく食べるわね…。あんたがいつもお金で苦労してる理由がわかったわ…。」
 もはや良く食べるという範疇に収まらない食べっぷりを見て、心底上条に同情する。
「ごちそうさま、美味しかったんだよ!短髪、またご飯かってくれるならここに来るのを認めてあげてもいいんだよ!」
「あーはいはい、それはどうもありがとう。(食べ物が絡んだら急に機嫌よくしちゃって、わかりやすい子ね。)」
「さー約束の夕飯も食べさせたわけだし、御坂はそろそろ帰らなくていいのか?」
「うーん、どうせだし何かしない?(せっかく部屋にあがったんだしこのまま帰ってたまるもんですか!)」
「いや、上条さんはこれから宿題をしないといけないんですよ。補習でない代わりに明日までにやらないと。とほほ。」
「あ、そっか、ごめん私のせいで…。」
「い、いやいやいや!御坂はなんにも悪くないぞ!俺が勝手にそうしただけだ!」
 上条は自分の発言に後悔していた。
 以前ならいざ知らず、最近の御坂は妙にしおらしい所がある。
(いい事なんだろうけど、やりにくいんだよなぁ…。)
「じゃ、じゃあさ。また私が宿題手伝ってあげるわよ。」
「え、いいのか?」
「まあ、私にも責任はあるわけだし。それに宿題終わらないで明日以降に影響出たら、お詫びもしてもらえなくなるし。
 だ、だから別にあんたのためってわけでもないのよ!」
「そっか、それもそうだよな。じゃあお言葉に甘えてお願いしますミコトセンセー。」
(ま、また美琴って!こいつはなんでいつも不意打ちなのよ!)
「もしもーし。どうかしたか?」
「な、なんでもないわよ!ほら、ちゃちゃった片付けちゃうわよ!」
「…………なんだか私のこと忘れられてるみたいなんだよ。」

「………つまりここは…で…………Xが……………ってわけよ。」
「うーん、ごめんここをもう1回。」
「だああああ!なんで分かんないのよ!だーかーらー、あーもう、ちょっと隣あけなさい!」
 そういって御坂は正面から上条の隣に移動する。
 ちょっと動くだけで肩が触れそうな距離だ。
 いつもの御坂ならば恥ずかしくてとても近づけない距離だろうが、今日の上条の物分りの悪さにイライラして周りが見えていないようだ。
「ちょ、御坂!ちかっ!」
「ちょっと、アンタ聞いてるの!?」
「は、はい!聞いてます!」
「だからここは…………で……が……」
(まったくコイツは、無防備すぎるんだよな…。この間の事故といい、不用意に近づきすぎるから。)
「それでここが……になって………」
(あ、なんかいい匂いがする。こいつもやっぱり女の子なんだよなぁ。こうやってる分には可愛いし。)
「それでここがって、ねえ!私の説明聞いて…る…………。(え、あれ?なんで私見つめられて…。)」
(この間のこいつの唇、柔らかかったな。あの時はすぐ離れちまったけど、出来ればもう1回…)
「え、ちょ、待っ(え、うそ、なんで?コイツの顔が近づいて…。まだ心の準備が。)」

「ねえ、宿題してるんじゃなかったの?」
「「!!!!!!」」
 ハッと我に帰り急いで距離を取る二人。
 二人とも顔を真っ赤にしたまま視線は宙をさまよっている。
 そんな二人をインデックス睨みつけている。
「ねぇ短髪、もう遅いしそろそろ帰った方がいいんじゃないの?」
「そ、そうね!もうコイツの宿題もほとんど終わったし、そろそろ帰るわね!」
「あ、ああ。後は一人でできるしな!そろそろ帰った方がいいぞ!それじゃ寮の近くまで送って…。」
「いい!大丈夫だから!ちょっと全力で走りたい気分だから!それじゃあまたね!」
 そう言い残し常盤台のお嬢様は慌てて部屋を後にしていった。

「………。」ジー
「(うう、インデックスの視線が痛い。)な、なあインデックス、どうしたんだそんなに睨んで?そんな顔より俺は笑ってる方が好きだなーなんて…あは、あはは…。」
「………。」ジー
「あ、もしかして腹へったのか?それじゃ俺何か買ってく「とうま!」はい!」
「…………。」
「…………(ち、沈黙が辛い…。)」
「………ハァ。なんでもない。もう私は寝るから今日はもう話しかけないで…。おやすみなさい。」
「あ、ああ、おやすみ…。」
 いつも以上にインデックスは怒っている。
 それぐらいは上条でも分かる。
 怒った原因も何となく分かるが、さすがは鈍感な上条である。理由は分かっていなかった。
「(さっきのアレも御坂が怒るなら分かるけどなぁ。まあとりあえず明日の朝謝っておくか。…問題は御坂の方だよな。)」
 冷静になって、先程の事を思い出し頭を抱える。
 インデックスが止めなければあのまま止まらなかったかもしれない。
(あーもう!俺は昨日の今日で何をやってんだ!せっかく御坂が水に流してくれるって言ってたのに。)

『すごい、大事な友達なの!だからこんな事で関係壊したくないのよ!』

 御坂の言葉を思い出す。
 大事な友達
 関係を壊したくない
「俺だって壊したくねーよ…。俺はなんであんな事をしようと…。なんて謝ればいいんだよ…。」
 いったい自分はどういうつもりであんな行動に出たのか?
 御坂にはどう謝ろうか?
 朝までその事を考え続け、今日も眠れない夜を過ごすことになった。

 御坂美琴は走っていた。
 だが自分の寮に向けて走っているわけではない。
 先程の事を考えないようにするためにひたすら街中を走っているのだ。
(あああああああ!!!!なんなのよさっきのは!なんでアイツが私の顔を見てそれで…ああああああ!!!)
 まあいくらは全速力で走ったところで、先程の強烈な事件が頭から離れるわけもなく。
 結局明け方まで走り続けるのであった。

「ハァ…ハァ…つ、疲れた。って日が登ってるじゃない!アホか私は…、何時間走ってたのよ…。」
 あれから数時間走り続け、ようやく寮まで帰ってきた。
 昨日の事が忘れられた、と言うわけでなく疲労で考える余裕がなくなっただけなのだが。
 走り続けた代償か髪の毛は乱れ、疲労困憊全身汗まみれであった。
 もちろんこんな時期にこんな状態になれば
「ヘクチッ…。寒い…、風邪引いたかしら。」
 風邪を引くのも当然である。
「もうだめ、限界…。」
 そういってそのままベッドに倒れこみ意識を失ったのであった。


「まーったくお姉さまは。一体こんなになるまで何をしていらっしゃったんですの?」
「ちょっと、無性に夜の街を走りたくって…ヘクチッ。」
「…お姉さまは漫画の読みすぎですの。もう少し常盤台のエースとしての自覚を…、まあお説教は今度にしておきましょう。」
 御坂は倒れてからしばらくして起きてきた白井に介抱されていた。
 その時苦しげな御坂を見て一瞬理性のタガが外れかかったが、ギリギリ踏みとどまれたようだ。
「でも良かったですわ。昨日遅くなると連絡をいただいたままお帰りにならなかったので。
 てっきりあの殿方と何かあったのでは無いかと黒子は心配で心配で。」
「な、なんで私がアイツなんかと!」
「あら、私はそのアイツ様の事など申してはおりませんのよ?やっぱりあの殿方と何かあったんですのね!
 おのれあの類人猿めええええ!!!!」
「だ、だから何にも無いってば!…ヘクチッ」
「お姉さま、お体に触りますので興奮してはいけませんわよ?…仕方ありませんわね。
 昨夜何があったかはお姉さまが治った後に、きっちり聴かせていただくことにしましょう。」
「だから、本当に何にも…。」
「(本当にお姉さまは分かりやすいですわね。風邪を引いてても顔が赤くなるのが丸わかりですわ。)
 それでは学校には私から伝えておきますので、お姉さまはゆっくりお休みになって下さいまし。行って参りますわ。」
「うん、ありがとう黒子。いってらっしゃい。」
 白井が出ていったのを確認して、ベッドに横たわる。
 そうしてボーッとした頭で昨日のことに思いを馳せる。
(昨日のあれってやっぱり、アイツが私に、キス、しようとしたのかな…。)
(女扱いされてないと思ってたけど、意外と脈アリなのかな?…この間も可愛いって言ってくれたし。)
 そうしてだらし無く顔を破顔させ、ベッドの中で身悶える。
(いやでもあの鈍感馬鹿の事だからなんか別の理由があったのかも…。でも、もしそうじゃないなら…。)
 キャーとかなんとか言いながら乙女チックに頬に手を当て妄想に耽るのであった。

「おーっすカミやん!昨日はお楽しみだったみたいだにゃ死ねぇぇぇぇええええええ!!!!!」
「な、なんのことヘブッ!」
「ネタはあがってるからとぼけても無駄ぜよ!昨日カミやんが常盤台のお嬢様を部屋に連れ込むのをこの目できっちり見たんだからにゃー!」
「上条当麻!き、貴様と言う奴は、ついに中学生にまで!」
「カミやんの裏切り者!フラグは立てても回収はしないって信じてたのに!」
「ち、違う!誤解だ!違うんだああああああ!!!!!」
 クラスのほぼ全員から凄まじい殺気を浴びせられ、生命の危機を感じる。
 今日もいつも通り不幸だった。

 上条はいつもの公園に来ていた。
 連日の補習の辞退で小萌先生を涙目にさせてクラスから更なる袋叩きにあったのだが。
(居るわけない、よな。)
 あの後御坂に何度か電話をかけたが、すべて通じなかった。
 御坂が電話に出なかったのは単に風邪で寝ていただけなのだが、そんな事を知る由もなく。
 一縷の望みを託して公園まで来たがそこで姿を見ることはできなかった。
(無駄だと思うけど、ここで少し待って、それから探しに行こう。)
 結局居るはずも無い御坂を夜遅くまで探し回っていた。

「………ま、……えさま、お姉さま!」
「ん…?あ、黒子。私寝ちゃってた?」
「ええ、よくお休みになっていましたわ。もうすぐ夕食のお時間ですの。お加減もよろしいようですし、そろそろ参りましょう。」
 はっとして時間を見ると確かに夕食の時間だ。
(あの後寝ちゃったんだ。)
 そうしてまた昨日の事を思い出し顔を赤面させる。
「お姉さまどうなさったんですの?まだお加減よろしく無いなら、無理にとは申しませんが。」
「え?う、ううん!なんでもない、大丈夫よ!さ、さあ早く行きましょ!私なんにも食べて無いからお腹すいちゃったわ!」
 なにやら怪訝そうな顔の白井を無視して食事に向かうのだった。
(お姉さま、怪しさ全開ですの…。)

「んーさっぱりした!黒子ー、お風呂空いたわよ。」
 食事と入浴を済ませてベッドに飛び込む。
 まだ若干体はだるいが、明日の朝には治っているだろう。
「さて、携帯はっと…。げっ。」
 着信履歴を見ると上条当麻の名前が表示されていた。
(あちゃー、私携帯にも気付けないほどだったのか…。)
 せっかくの上条からの電話に気付かず寝ていた事を悔やむ。
(電話って…、やっぱ昨日の事よね。アイツどういうつもりだったんだろう。)
 気になるし電話かけてみようかな?と思ったがふとある考えが浮かんだ。
(どうせ電話だとはぐらかされるかもしれないし。明日直接問い詰めてやるんだから!)
 明日はもしかしたら御坂美琴と言う人間の決戦になるかもしれない。
 そう思うと緊張して動悸が激しくなる。
 以前までよりは関係が前進している。と思う。
 大丈夫、きっと上手くいく。
 何度も自分にそう言い聞かせながらもやはり不安は消えない。
 そんな不安を消すように布団に潜り込むと、気怠い体は程なく睡眠を求めるようになった。

 次の日の放課後、御坂は流行る気持ちを抑え公園に向かっていた。
 本当は朝にでも上条宅に突撃したいところであったが、時間もあまり取れないだろうと想い踏みとどまった。
「って公園にいるとも限らないし。ま、居なかったら家まで押しかけてやればいっか。」
 どうやってシスターから引き剥がそうかなーなんて考えていると、お目当ての人物は公園のベンチに座っていた。
「い、居たわね…。ってなんでアイツボロボロなのよ…。まさかまた事件に!?」
 そう思ったが入院しなければ大したこともないのかな?などと思い、上条の不幸体質に自分も慣れてきているなと苦笑する。
「(とにかく平静を装って…)や、ヤッホー。元気?」
 さっそく声が裏返った。
「あ、御坂か…。」
「な、なによ人の顔見て暗い顔して!また不幸だー!なんて言う気!?」
「いや、そうじゃなくってな…。一昨日のことでな、お前が怒ってるんじゃないかって。」
「あ、あああれね!別に私は…、気にしてなんかないわよ…。」
 一昨日の事を思い出し顔を赤くする。
 恥ずかしさで徐々に言葉が弱々しくなる。
 それは発言とは裏腹に「気にしてます!」と態度で盛大にアピールしていた。
「ごめん!」
 そう言って上条は深々と頭を下げる。
「だ、だからいいってばそういうのは!…謝らなくていいから、なんであんな事したのか教えてよ……。」
 それは御坂が一番聞きたかったことで、上条にとっては一番聞かれたくないことであった。
「それは、その。なんていうか…。一時の気の迷いと言うか…。」
「ふ、ふーん。アンタは気の迷いで友達に手を出そうとしたわけ?(なによそれ、別に私に気があるわけじゃないんじゃない…。)」
 わずかに期待していた思いと違う上条の言葉に幻想を打ち砕かれる。
 まあ結局コイツはこういうやつだが、女と見てもらえただけ進歩だろうと思い納得する。
「本当にすまなかった!…それで俺は思ったんだが」
「思ったって、なにをよ?」
「もうお前と会わない方が、良いんじゃないかって…。」

「え、今、なんて・・・?」
「情けない話だけど、このままで居るとお前にまた迷惑かけちまいそうで。だから会わないようにしようと…。」
「じゃ、じゃあ!この前の約束はどうなるのよ!」
「それについても謝るしかないよな。もちろんなにか他の方法でお詫びはするつもりだ。俺の身勝手ですまないと思うが…御坂?」
「…だ。」
「え?」
「やだ、やだやだやだ!なんで?なんでそんな事いうのよ!?」
 そう叫びながら御坂は涙を流していた。
 嫌だ、絶対に嫌だ。
 そんな理由でコイツと離れたくない。
 せっかく仲良くなれてきたのに。
「なんでよ!私、ともだ、ちなんで、しょ…グスッなんで…ヒック…私が、きらい、ヒック…になった、の?」
 突然泣き出した御坂に狼狽える。
 正直電撃を浴びせられる事は覚悟していた上条だが、これは完全に想定外だった。
「お願い、わた、し…ヒック、何でもいうこ、と…ヒック、聞くから!だから、おねが、い…う、うわああああああああああん!」
 もう泣くのを抑えるのは限界だった。

「ッ!」
(くそ、なにやってんだよ俺は!御坂美琴と彼女の周りの世界を守るなんて、俺自身が傷つけてるじゃねーか!)
 そう思い気がつくと上条は御坂を抱きしめていた。
 その行為に驚き、御坂は体を硬直させるが、やがて自分からも上条を抱きしめた。
「ごめん御坂、お前を傷つけないようにしようとして、逆に傷つけちまって!」
「ば、ばかあああああ!!!うわああああああん!!!」
 その後しばらく抱き合っていたいたが、我に帰った御坂がふにゃーと言いつつ気絶してしまった。
 もちろんなぜ倒れたか分からない上条は
「泣きつかれて寝ちまったのかな?…ごめんな御坂。」
 なんて見当違いなことを言っていた。
(このままって訳にいかないし。とりあえずベンチで寝かせるか。)
 頭をそのままベンチに寝かせるわけにもいかないので、膝枕をする。
 下を向けば自然御坂の顔が目に入る状態だ。
「まったく無防備な顔しやがって。紳士上条さんじゃなかったら襲われてますよーっと。」
 完全に一昨日の件を棚に上げているが、生憎突っ込む人間はいない。
「………とぅま……やだ、よ……。」
「…………。寝言か。夢のなかだと名前で呼んでるんだな。」
 自分が彼女にとうまと呼ばれている場面を想像し苦笑する。
 御坂美琴は普段でこそ勝気で男勝りである。
 だがある一件で彼女の本質は脆く儚いものである事も知っている。
(俺はそれを知ってるのに、泣かせちまったんだよな…。)
 先程の事を思い出し、また、彼女に邪な感情を抱いた事を恥じる。
「ごめんな、もう2度とお前は泣かせないから。」
 そう言いながら頭をなでる。
 心なしか御坂の顔がやすらいだように見えた。


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