とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part4

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だれでも歓迎! 編集


 御坂の寝顔を見ながら、先程までの自分の行動を思い直す。
 今思えば自分は相当テンパっていたみたいだ。
 一昨日の御坂へのキス未遂後、御坂に連絡が取れなかった。
 嫌われてしまったんではないか?そう思うと心穏やかではいられなかった。
 後は延々と悪い方へ思考が進み、終いには御坂と会いたくない、などと言う逃げに走ってしまった。
「まったく、俺らしくないよな。」
「ほんとそう思うわ。」
 いつの間にか起きたようで、御坂は上条の隣に座っていた。
 だがその表情はこわばって、声も震えている。
「アンタってあの手の問題は馬鹿正直に真正面からぶつかってくる人間だと思ってたけど?」 
「馬鹿正直ってなあ…、まあ確かにさっきまでの俺はどうかしてたよ。お前と連絡取れなくって、嫌われたかなって焦っちまったんだな。」 
「…アンタって意外と肝っ玉小さかったのね。連絡取れなかったのは、ちょっと風邪引いて寝込んでただけよ。」
「そうだったのか…。風邪はもういいのか?」
「もう大丈夫、って話が逸れたけど。…アンタの話聞く限りだと、もう会わないって言うのは、撤回されたと思っていいのよね?」
「ああ、撤回させてくれ。本当におれはどうかしてたよ。ごめんな。」
 御坂はその言葉を聞いて安心したのか、大きなため息と共にこわばっていた表情を緩めた。
 それと同時に何かを思い出したようにハッ!として顔を赤くする。
「そ、そう言えばアンタ!何よさっきのは!」
「ん?さっきのって?」
「だから、その、私が泣き出したときに…。」
「え、あー。あは、あはははは。あれはですね、体が勝手に動いたというか…。」
「泣いてる女の子を手篭めにしようと、体が勝手に動いたわけね。へー、ふーん。」
「ち、違う!ああするしかお前を落ち着かせられないと・・・!そもそもお前だって抱きついてきたじゃねーか!」
「な!あ、あれは頭の中ぐちゃぐちゃで分けわかんなくって嫌々!そう、嫌々抱きついたのよ!
 (ああもう何でいつも素直になれないのよ私は!)」
 そう、御坂の反応はいつも通りだった。
 しかし上条の反応が違った。
 御坂が嫌々と言ったのに反応して落ち込んだように顔を暗くした。
「…そうだよな、嫌だよな。好きでもない男に抱きs」
 好きでもない男に抱きしめられたくないよな、そう言いかけた上条の体が御坂の視界から消えた。
 正確には今の話を聞いていた白井に吹っ飛ばされた。
「お、お、お姉様になにしとんじゃこの若造がァァァァァァァあああああああああああああああああ!!!!」   
「え、く、黒子!?」
「昨日お姉様の様子がおかしいからと探してみれば!お姉様、もう大丈夫ですの!
 お姉様を汚したあの類人猿に黒子が裁きをぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!」
「…ってぇー。し、白井!?違う、これは違うんだ!違わないけど違うんだ!だから落ち着いて話を!」
「死ねぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええ!!!!!!」
「不幸だあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」
 そう叫んで追いかけっこをする二人はあっという間に御坂の視界から消えていった。
「ちょ、ちょっと!私を置いてくなーーー!!!」
 そう叫んだが後の祭りである。
 もっとも、叫んだぐらいで止まるわけも無いだろうが。
 諦めた御坂は二人が去っていった方向を見ながら、先程上条が見せた表情を思い出す。
 自分の言葉を聞いて落ち込んだ、暗い顔。
「なによあんな顔しちゃって……。なんでアンタが悲しそうな顔するのよ…ばか。」

「うう、酷い目にあった…。」
 あれからなんとか白井の追跡を振り切り、寮の自室まで帰ってきた。
 制服に所々穴が開いているが、奇跡的にケガはしないで済んだようである。
「夕飯遅くなってインデックスの奴怒ってるだろうな…。っていうか元々機嫌直ってないし…。」
 一昨日から静かな怒りを纏うインデックスに言い知れぬ恐怖を感じている。
 これならまだ噛み付かれた方がマシだ。
 このままだと精神が噛み砕かれてしまうかもしれない。
 だからと言ってばっくれたら余計に後が怖いので覚悟を決める。
「ただいまー、すまんインデックス今から夕飯作るぞ!」
「あ、とうまおかえりなさい。でももう遅いんだよ!」 
「お帰りー、遅かったわね。」
「……なんでお前がここに居るんだよ。」
「とうま、その発言はみことに失礼かも!みことはわざわざ御飯作ってくれたんだよ!」
「アンタ黒子に追いかけられてしばらく帰って来ないと思ったから、わざわざ御飯作りにきてあげたのよ。感謝しなさい。」
「とうまとうま!みことのご飯すっごいおいしいんだよ!特別にとうまの分もあるから早く食べるんだよ!」
「あ、うん。さんきゅー。じゃなくて!なんかお前ら急に仲良くなってない!?」
「あの後ここに来たらインデックスがお腹減った~って倒れててね。それでご飯作ってあげたら懐かれちゃった♪」
「私はみことの事誤解してたんだよ!こんなにおいしいご飯作ってくれるなんて!」
 餌付けされたのかよ!と心の中で突っ込む。
 それに自分よりもインデックスと仲良く見える事になんだか釈然としない。
「まあ二人が仲良くなってなによりだ。上条さんの心の重荷が一つ減りましたよっと。それじゃお嬢様の料理とやらをいただきましょうかね。」
「ふふん、食べて吠え面かくんじゃないわよ。」


「「ごちそうさまでした。」」
「ねぇ、私の料理、どうだった?」
「想像以上に美味かったよ。正直御坂がこんなに料理上手とは思わなかった。これなら毎日作りにきて欲しいぐらいだ。」
 一緒にたべる人が増えるのも良いもんだしな、と付け加える。
 たしかに御坂の料理はうまかった。
 だがそれ以上に目の前の少女と食卓を囲めるのがなんだか嬉しかった。
「ほ、ほんと!?じゃ、じゃあまた作りに来てあげよっか…?」
「みことの料理ならいつでも大歓迎なんだよ!ね、とうま?」
「けどこれ以上迷惑掛ける訳にもいかないしなー。」
「べ、別に私が好きでやってるからいいの!せっかくインデックスとも仲良くなれたんだから。」
「んーでも悪いし…。」
「じゃあアンタ、私になにか恩返ししなさいよ。っていうかアンタまだこの前の約束だって全然果たして無いじゃない。」
「わりぃそうだったな。分かった何か考えとくよ。」
「素直でよろしい。」
「よかった、またみことの料理が食べられるんだね!」
「ふふ、期待してなさい。それじゃ今日はもう遅いし帰るわね。」
「とうま、ちゃんと美琴を送ってくんだよ。みことに変なことしたら承知しないんだからね!」
「お前御坂への態度変わりすぎだろ…。んじゃ寮の近くまでお送りしますよ姫。」
「はいはいお願いしますね。じゃあねインデックス。」
「ばいばいみこと。」

 すっかり暗くなった道を二人で歩く。
 静かな道を二人で並んで歩くのも悪くない。
 そういえば周りからは俺達はどう見えるのだろう。
 恋人、は無い。片やさえない高校生で、片や常盤台のお嬢様。どうみても釣り合わない。
 そう思うとなんだか凹んでくる。
(って!なんで俺は落ち込んでるんだよ!しかも自分の妄想で!)
「アンタなに百面相してるのよ…。気持ち悪いわね。」
「き、気持ち悪いって、それはあんまりだろ…。」
「ぷっ、何本気で落ち込んでるのよ。ジョーダンよ。何か考え事?」
「え、えーと…。」
 自分達がどう見えるか考えてた、なんて言えるはずも無い。
 必死で頭を働かせると、先程の御坂とインデックスの事を思い浮かべた。
「あーそうそう、インデックスとお前の事だよ。なんかあっただろ?明らかに不自然だったぞ。」
「あー、やっぱりわかる?」
「いくらインデックスでも飯だけでああはならんだろ。んで、何があったんだよ?」
「(そういう事には敏感なのよね…。)んー実はね。あの事全部喋っちゃった…。」
「あの事って、ま、まさか!あれ全部しゃべったのか!?」
「し、仕方なかったのよ!なんかあの子の様子がいつもと違って、話さざろう得なかったって言うか…。」
 その言葉に上条は頭を抱える。
 おそらく帰ったらその事でインデックスから追求されるだろう。
「その事を話したら、意外にもあの子怒らなくってね。正直な人は好きなんだよ、なーんて言われてね。私も毒気抜かれちゃった。」
 その時一瞬悲しそうな顔をしたのよね、と心の中で付け加える。
「いいよなーお前らは仲良くなれたから…。そのしわ寄せは全部俺にくるんだからな!お父さんお母さん、先立つ不幸をお許し下さい。」
「自業自得よ。自分の行動を反省して諦めなさい。骨は拾ってやるわよ。」
「不幸だ…。あの時の俺の馬鹿野郎…。」
 不幸だ、と口では言っているが内心それほどでも無かった。
 一時は御坂と友達でいられなくなると悩んだのに、今ではこうやって軽口をたたきあえる。
 それだけで不幸じゃなくなるな、と思った。
「(よくビリビリしてくるけど、根はいい奴だからな。)でも、お前と友達でよかったよ。」
「な、何よ急に!そんなのああ当たり前じゃない!私と友達なんだからもっと感謝すべきよ!」
 そういって顔を逸らす御坂を見て苦笑する。
「( いつまでもこうしてられたらいいのにな…。)…っと、もう寮の近くか。」
「あ、うん。それじゃあ後は黒子に迎えに来てもらうから。ありがとね。」
「ああ、分かった。…、なあ御坂。」
「なに?どうかしたの?」
「えー、あー、いや、なんというか。」
「何よ、はっきりしないわね。」
 呼び止めたものの、特にコレといって何か有るわけでもない。
 なんで呼び止めてしまったのか、上条自身よくわからなかった。
「(えーと、なにか話題を…。)そ、そうだ。恩返しの事だよ!」
「ああ、その事?焦んなくていいわよ。アンタの甲斐性にはあんまり期待してないし。」 
「それはさすがに上条さんも傷つくんですが…。それで、次の日曜日空いてるか…?」
「へ?なんで?」
「その日一日付き合って、お前に少しでも恩返ししようかなーと。うん。」
 これは恩返しだから、他意はないから。
 そう自分に言い訳をする。 
「俺にできる事なんてそれぐらいだしな。こういうのじゃ、ダメか?」
 不安そうな表情で御坂を見る。
(これってもしかしなくてもデートの誘いよね!こいつからなんて信じられないけど、夢じゃないわよね!?)
「だ、ダメだじゃない!けどこれってもしかして、・・・デ、デ、デ、デートの、お誘い…?」
 おそらくデートだろうとは思うが、なんといっても相手は上条だ。油断はできない。
 流行る気持ちを抑え恐る恐る聞いてみる。
「一応、そういうことになるか、な?じゃ、じゃあ、またあとで連絡するから、またな!」
 上条は落ち着かない様子でそそくさと立ち去ろうとする。
「ま、まって!」 
「どうした?…やっぱ、だめか?」
「ううん、そうじゃなくて……日曜日、楽しみにしてるから………。」
 消え入りそうな声だったがなんとか上条の耳に届いた。
 楽しみにしている。
 その言葉に自然と笑顔になる。
「お、おう!任せとけ!日曜日は楽しませてやるからな。それじゃまたな。」
「あ、うん、またね…。」

 そのまま上条は足早に去っていった後、御坂はしばらくその場に立ち尽くしていた。
 上条からのまさかのお誘い。
 現実感が無くて体がふわふわしているように感じる。
(これって、夢じゃないわよね。私も素直になれてたと思うし。なんか話が上手すぎて怖いなぁ…。でも、アイツとデートかぁ…。えへへ。)
 その後ぼーっとした頭で日曜日のことを考え続けていた。
 しばらくして我に帰り白井に迎えを頼んだが、にやけたままの顔だったため、白井から執拗な追求を受けるのであった。

 御坂と別れた後うかれていた上条であったが、自室の前まで戻ってきたところで、自分の危機を思い出す。
 御坂とのここ数日のことがインデックスにすべてバレてしまった。
 どうやってご機嫌を取るべきか。
 食べ物は無理。自分より料理の上手い御坂に餌付けされている。
 他に方法はないか?
「うん、ないな。さようなら俺の人生、不幸だけどそれなりに楽しかったぜ。」
 そうすべてを悟った顔で扉を開ける。
「ただいまー。」
「…おかえりとうま。ちょっと話があるからそこに座って。」
 すわ来たぞ。
 だが悟りを開いた上条に恐怖はなかった。
 諦めたとも言う。
「うむ。さあ何でも聞きたまへ。今の上条さんは何でも答えますよ。」
「?へんなとうま。でも丁度よかった。これは大事な話だから、良く考えて、真剣に答えて欲しいんだよ。」
 いつになく真剣な眼差しのインデックス。
 その様子に上条は気圧されそうになる。
「単刀直入に聞くよ。とうまは、みことの事が好きなの?」
「………………………はい?」
(おかしいな、聞き間違えか?俺は悟りを開いたはずなのに、インデックの言葉が理解できないぞ?)
「えーと、インデックスさん?よく意味が分からないのですが?」
「とうま、私は真剣に答えてって言ったよね?」
「いや、だって。何言ってるんだよ、俺が、え?御坂を好きって?はは、そんなわけ…。」
 それ以上言葉を続けられなかった。
 御坂美琴は大切な友達だ。
 傷つけたくない、守るべき存在。
 だがそれだけだろうか?
 わからない。自分の心が分からない。
「俺、は…。」
「……さっきね、とうまとみことが一緒にごはん食べてたとき、とうまはすごい嬉しそうだったよ。」
「それは、御坂の料理が美味かったから…。」
「本当にそれだけ?」
「……よく、わかんねー。」
「…もう一度聞くね、とうまはみことといると嬉しい?」
 その問を受けて考える。
 たしかにあの時、食事を抜きにしても、彼女と居られることは嬉しいかった気がする。
「ああ。そうかもしれない。」
「とうまは、みことともっと仲良くなりたい?」
「…たぶん、そうかもな。実はさっきインデックスと御坂が仲良くしてるの見て、少し羨ましかった。」
「とうまは、みことの事が好き?」
「ああ…。」
 ああ、そうか。
 彼女を傷つけたくなかったのも。
 泣いている時抱きしめたのも。
 一緒にいて嬉しかったのも。
 恋人に見えそうも無くてがっかりしたのも。
「そっか、俺、御坂が好きだったんだな………。」
 インデックスはその言葉に一瞬だけ顔を曇らせる。
 だがすぐに優しい表情を浮かべる。
 その表情の変化に上条は気づくことができなかった。
「ふふ、とうまはやっぱり馬鹿なんだね。やっと自分の気持が分かるなんて。とうまはやっぱりとうまなんだよ。」
 よしよしと上条の頭を撫でる。
「ああほんと馬鹿で情けねーよな、インデックスに気付かされるなんて。」
 自分のことも気付けないなんてな、と呆れたように苦笑する。
「とうまの事は誰よりもよく見てるんだよ。最近みことの話しばっかりしてたしね。」
「そ、そうだったか?でも、インデックスが居なかったら、俺はずっと自分の気持に気付けなかったかもな。インデックス…ありがとう。」
「お礼はいらないんだよ。とうまにはいっぱい助けてもらったからね。だからちょっと恩返ししただけなんだよ。」
「そっか。はは、自分のこと不幸不幸って思ったけど、ぜんぜんそんな事無かったな。こんないい友達を持って、俺は幸せだよ。」
「これぐらいの幸せで満足しちゃだめなんだよ。明日からがんばって、みことを振り向かせるんだよ!」
「それが難しことなんだけどな…。まあなるようにしかならないし、当たって砕けてみるか。」
「みこともとうまの事は嫌いじゃないと思うんだよ。だからとうま、がんばってね。それじゃもう私は寝るんだよ。おやすみとうま。」
 そういってインデックスはベッドに潜り込む。
「おやすみ。俺は風呂でも入ってくるかなー。」
 上条が風呂に入ったことを確認してから、インデックスはひとり呟く。
「とうま、みことと、幸せになってね。恋人になれたら私は邪魔になっちゃうけど、それまではここに居させてね。」
 言い終わると我慢していた涙を流す。
 彼が出てくるまでに涙を流し尽くそう。
 絶対に自分が泣いているのを悟られてはならない。
 誰よりも大好きな彼のために。
 声を出さず一人泣いた。


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