カミヤンを探せ!
美琴は上条の部屋の前にいる。今晩上条宅でご馳走を振る舞う約束をしたためだ。
右手に薄っぺらな学生鞄、左手に上条ごひいきのスーパーで購入した食料を入れたビニール袋。
しかし今回は美琴の隣には白井黒子がいる。
上条と美琴の関係は白井も認めていて昨夜美琴がついポロリと発言してしまい、
「お姉様の手料理を上条さんだけいただくとは許せないですわ。
上条さんのご自宅にあがるのも気がひけますがお姉様の貞操を守るためわたくしもご一緒しますわ。」
そんなこんなで部屋の前にいるのだが一向に上条が部屋から出てこない。
居候のシスターも出てこない。
ブザーを何度も押しているのだが部屋から人の気配は感じとれない。
「こんなに呼んでも出てこないってどういう神経してるのかしらあの馬鹿。
まさかまた事件に巻き込まれてんのかしら。どう思う黒子?」
「上条さんの事ですから事件絡みで見知らぬ女性と何かしら起こってるかもしれませんわね。ってお姉様!?」
美琴は自分の靴を黙って見つめてパチパチと電流を放っている。
「黒子?もしアンタの言っていることが正解だったら遠慮なくあの馬鹿に能力使っていいからね。」
白井がビクビクしながらですの。と返事した所に、
「にゃーカミヤンの部屋の前で何してるぜよ?まさか部屋をぶっ飛ばしにきてるのかにゃー?」
声がする方に二人が振り向くと金髪頭、青いサングラス、地肌にアロハシャツととんでもない格好した男、土御門元春がたっていた。
「にゃー、警戒しなくていいぜよ。俺は土御門元春。カミヤンのクラスメートで部屋もカミヤンの隣だにゃー。」
「え?土御門って名前は・・・もしかして舞夏のお兄さんですか?」
「そうぜよ。義妹なんだがにゃー。」
「そうだったのですか。わたくし白井黒子と申します。
ご挨拶が遅れて申し訳ありませんですの。そしてこちらが・・・」
「初めまして。御坂美琴です。よろしくおねがいします。」
「にゃ?御坂ってどこかで・・・・・・・・・・
にゃ――――!!常盤台のレベル5でカミヤンの彼女!!!」
最後の彼女という言葉に美琴はビクッとなり、白井は「けっ」としらを切った。
「そうかい。ここで御坂さんと会うなんてにゃー。カミヤンから耳に穴が空くくらいラブコメストーリーを聞いてるぜよ。」
その言葉に美琴はボンと顔が赤くなる。良い彼女と言われて嬉しくてたまらない。
美琴がショートしているのに気づいた白井はため息をつきながら
「それで失礼ですが上条さんがどこにいるかわかりますでしょうか。」
土御門は(ツインテールのこの子も舞夏には劣るがいい線いってるぜよ)と思いながら
「カミヤンとは一緒に帰ったんだがいないとなれば学校に戻ってるはずだぜい。」
土御門は二人の「「え?」」というリアクションを見てから
「さっき俺の携帯に小萌先生から電話がかかってきてにゃー、補習のプリントを渡し忘れたから取りに来いと言われたんだにゃー。俺とカミヤンともう一人いるんだがこの三人は補習の常連ってわけで。俺も今から学校に行くし多分カミヤンは一足先に行ってるという俺の予想ぜよ。」
なるほどな~と美琴と白井は納得した。
美琴は上条に会いたいがために、
「ご一緒してもいいですか?」
と訪ねる。土御門は
「喜んでだぜい。御坂さんからもカミヤンとの話聞いてみたいからにゃー。」
白井はあからさまつまらない表情をしているが美琴がまんざらでもない顔をしていたのでついて行くことにした。
このときまだ誰も違和感に気づいていない。
上条、土御門の通う高校に三人は足を進める。
土御門は質問をする度に顔を真っ赤にする美琴を見て楽しんでいる。
白井は全くお姉様、わたくしには貞操を守れなかったのですねとぶつくさ言っている。
すると美琴のふくらはぎあたりに何かがぶつかる。そのあたりから、
「お姉様久しぶりー!てミサカはミサカは久しぶりの再会に感動してみたり。」
打ち止めが御坂の足に抱きついていた。
白井はすかさず
「小さなお姉様が!こんな小さな頃から色々仕込めば・・・・げへへへぶごぉ!!!!」
美琴の鉄拳がすかさず入る。
「あなたはここで何してるの?」
「あの人とお散歩してるだけ!てミサカはミサカはあの人を指さしてみる。」
打ち止めが指した先には白髪で杖をつきながらこちらに歩いてくる少年がいた。
「よお土御門にオリジナル。お前らが仲良く歩いてるってよォ、デキてんのかァ?」
「何平和ボケしてるにゃー一方通行。御坂さんはカミヤンの彼女ぜよ。」
「カミヤン?あの三下かァ。」
「お姉様、土御門さんが一方通行と呼んでますがまさか・・・」
「うん。でも何もしてこないわよ。この子もいるしね。」
そう言いながら美琴は打ち止めの頭を撫でる。
「お姉様がもってるビニール袋私が持ってあげる!てミサカはミサカはいい子だとアピールしてみる!!」
「えぇ?嬉しいけどあなたには重いわよ?」
「大丈夫!疲れたらこの人が持ってくれるから。てミサカはミサカは袋を受け取った矢先あなたにわたしてみる!」
「チッ、クソガキが。」
結局美琴は悪いと思い白井に持たせた。
こうして右から土御門、一方通行、打ち止め、美琴、美琴の後ろに白井、と並び上条がいるであろう高校に足を進める。
土御門と一方通行は真剣な顔で何やら話し合い、美琴と白井は打ち止めのたわいもない話を聞いてあげている。
一方通行と美琴は打ち止めの手を握ってあげてる。なんとも奇妙な光景だ。
「お姉様、何でわたくしがこの重い食材を持たないといけないのでしょうか。」
「あら珍しいわね、いつもだったら奪うように持とうとするのに。それともこの子に持たせるつもり?学園都市最強のレベル5に持てと言えるわけ?」
「・・・・なんでもありませんの。」
やれやれと息を吐く白井。一番離れている土御門がふと思いついたように
「にゃー白井さんだったかにゃ?御坂さんはカミヤンと付き合ってるが白井さんは彼氏とかいないのかにゃー?」
「わたくしはお姉様がご一緒なら殿方なんか必要ありませんの。しかしお姉様が上条さんとお付き合いを始めてからお姉様はわたくしに目もむけてくれませんわ。」
あのねえと美琴は言うが白井の耳に入らない。
「そうかい。御坂さんにも振り向いてもらえないとは完全にフリーだにゃー。白井さんにお似合いの奴がいるんだけどにゃー。」
「結構ですの。」
白井はぷいとそっぽを向いた。
この時点で違和感を感じたのはまだ白井黒子だけ。
高校に到着。
打ち止めがみんなと学校に入りたいとリクエストして土御門はあっさりOKを出し、こそこそする素振りも見せず、どうぞお入りくださいにゃと正面玄関から一方通行、打ち止め、美琴、白井を招き入れた。
打ち止めは学校だ!学校だ!と大はしゃぎで下駄箱のドアをバタバタ開閉やっている。
美琴は(ここが当麻の学校・・・)とポワ~ンと校舎にうっとり。
一方通行と白井はくだらんと言わんばかりに無表情。
すると5人に声をかけてくるエセ関西弁の声が。
「土御門やないか!お前も小萌センセーのプリントもらいにきたんか?早速小萌センセーに怒られたで~」
くねくねしながら土御門に報告してるのは青髪ピアス。土御門除く他の4人はうえ~とした表情をしている。
「青髪、カミヤン知らないかにゃー。」
「俺が職員室行った時に会ったで。携帯を机の中に忘れてたとか言って多分教室にいるはずや・・・・てなんやねん土御門!こんな可愛い子ぎょーさん連れて!ちょっとお姉さん綺麗やし可愛いでー。ツインテールの子もペタペタのスタイル、捨てがたいわ~。一番ちっこいお嬢ちゃん、お名前はなんて言うねや~?」
打ち止めは怖く感じたのか、一方通行の後ろに隠れ、美琴と白井は何喋ってんだこいつ・・・と呆然として動けなかった。
すると青髪の前に一方通行が立つ。右手で首筋のチョーカーに触れたと思うと同時に左手でぽんと青髪の背中を叩く。
次の瞬間強烈な爆風が起こり、美琴達の視界が回復した時には青髪の姿はなかった。
あれ?と数秒不思議に思っていると土御門が笑いながら指を指す。
正門のところで青髪が伸びていた。
「ちょっと!暴力はだめだってミサカはミサカは怒ってみる!」
「うるせェな。お前があいつに触れられなかっただけでも感謝しやがれ。」
「・・・・・白井さん、今のがお似合いのやつだったんだけどにゃー。」
「わたくしはあんな変態さんには興味ありませんの。」
それを聞いた美琴は苦笑していた。
「さて俺は職員室に行ってくるからみんなはカミヤンの所に行ってくれ。教室は最上階に行けばすぐわかるにゃー。」
そう言って土御門は職員室の方へ去って行った。
「チッ、面倒くせェ。とっとと行くぞ。」
先頭に一方通行が階段を上って行く。おどおどしながら一方通行について行く打ち止め、美琴、白井。
一方通行がスタスタと上るため三人はワンテンポ遅れて上る。
一方通行が二階に到着し、三階に上ろうとしたとき、ドドドドドと階段を猛スピードで降りる音が聞こえ一方通行と衝突する。
完全にノーマークだった一方通行は吹っ飛び、廊下に倒れる。
ぶつかった相手はもちろん上条当麻。
美琴達は二階に着いたら一方通行が倒れてたもので驚きを隠せない。
「すみません急いでいたもんで・・怪我はなかったですかっっっっっって一方通行!!それに美琴もなぜ?」
「三下ァ・・テメエはやっぱり俺の手で殺されたいよォだなぁぁぁぁ!!!くこけかここけき・・・・・」
「ななななな・・・上条さんは何回も死にかけてますしあなた様からも殺されかけたし・・・ごめんなさいでしたあああ!!!!」
土下座モードに突入する上条。
「暴力はいけない!てミサカはミサカは再びあなたに訴えてみる!」
「・・・・チッ、まあ目の前で彼氏殺されるのは見てらんねェだろ。なあ彼女ォ。」
ニヤニヤしながらチラっと美琴を見る一方通行。
美琴は吐き捨てるように言った。
「アンタは肝心な所がちっとも変わってないのね。」
上条と一方通行はお互いどっちに言っているんだろうど考えた。
土御門と合流した上条達は学校を後にした。(正門で伸びていた青髪ピアスに上条は驚いていたが特に気にしなかった)
「悪いな美琴。わざわざ迎えにまで来てもらって。」
「ホント、土御門さんと会わなかったら私と黒子は今の時間まで玄関前で立ち往生だったのよ馬鹿。」
「私と黒子って、白井お前も部屋まで来たのか?」
「お姉様の貞操を守るのがわたくしの使命ですの。」
「さいざんすか・・・」
「カミヤ~ン、今日は舞夏がいないし一人、だからご一緒してもよろしいかにゃ~?」
「そういうのは美琴に聞いてくれ。料理作ってくれるのは美琴なんだからよ。」
「御坂さ~ん。というわけでどうかにゃ~?」
「(本当は当麻と二人でアーンとかして食べたかったけど・・今日は黒子もいるし仕方ないか。それにみんなと食べると楽しいだろうし。)喜んで。学校までご一緒してもらったのでお礼といってはなんですがどうぞ。」
ニコっと答える美琴。
「感謝するぜよ御坂さん!カミヤン、いいお嫁さんゲットしたにゃー。デルタフォースは解散になってしまうにぜよ。」
美琴はお嫁なんてあはははと言いつつ真っっっっっ赤になっている。
「お姉様ったらなんでもすぐ顔に出ますのね。プククク・・」
そんな会話を聞いていた打ち止めがふと思いついたように、
「私も今日あなたに料理を作ってあげる!てミサカはミサカはやればできる子をアピールしてみる。」
「そうかい好きにしろ。不味いモン食わせたらテーブルひっくり返してやっからな。」
「いざとなったらヨミカワに手伝ってもらうから大丈夫!てミサカはミサカは腕を組みながら晩ご飯の献立を考えるふりをしてみる!」
「考えるふりかよ・・・・」
一方通行と打ち止めと別れ4人は上条のマンションへ。エレベーターに乗った。密室の中。
そこで全員違和感を感じ始めた。
上条の部屋の前に着いた時、
最後にエレベーターを降りた白井が悲鳴をあげる。
「どうしたの黒子!?」
「・・・お姉様・・今日は何を作るつもりでしたの?」
「えと・・ハンバーグとマグロの刺身を・・・それがどうしたの?」
「でしょうね。さっき初めて中身を見たのですが即座にわかりましたわ・・・」
「だからそれがどうしたっっっう!!!!」
白井が上条並みの負のオーラを出している。そして袋からも負のオーラが。
「この挽肉!!魚の切り身!!!冷蔵庫で保存せず長時間日にあてるとどうなるかおわかりでしょう!!!」
バッと挽肉の入ったパックを取り出す。取り出した瞬間異臭が広がる。
「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」
「この異臭はこの類人猿の脳そのもの!!あなたにはこれで十分ですの類人猿がああああああ!!!!!」
ひゅんと白井が消えて次の瞬間、上条の頭上に現れ、手に持っていた挽肉のパック(綺麗にラップは剥がされてる)を上条の顔面にスパアアンと投げつけクリーンヒットさせる。
「ぐぼぁ!?なんで俺なんだよ!?」
「そもそもあなたが学校に戻らなければこんなことしませんでしたわ!」
プチ戦争を目の当たりにしてる美琴はあたふたして何もできない。
土御門は、
「なんだか不味いことになってるぜい。ここは逃げるが勝ちだにゃ!」
こそこそと自分の部屋に逃げようとしているのを白井は見逃さず、
「類人猿の友も同じ類人猿!!金髪猿もこれをくらってなさい!!!」
テレポートしたマグロの切り身が土御門の顔面にヒットする。
「にゃあぁぁ!!カミヤンといるとろくな事起こらないぜい!不幸だにゃーーーー!!!」
翌日、美琴は珍しく上条に謝り倒した。