とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

14-13

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kinsho_second

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 その頃、当麻の身が心配な土御門は上琴新居二号の前で、五和と対峙している最中だった。


「あれっ?何で土御門さんがここに?確かここは当麻さんのお宅では?」

「それはこっちのセリフだ、五和。そろそろカミやん達に手を出すのはやめろ。毎回毎回火消しをしなくちゃならんこっちの身にもなれ。」
土御門がにゃーにゃー語を封印しているだけでも毎回毎回どれだけ大変か想像がつくというものである。

だが、五和はこともなげに言う。
「無理ですよ。私はあきらめません、この命尽きるまで。」
この台詞にはさすがの土御門も イヤ………さすがにそれはやりすぎじゃね? と思いつつ尋ねる。
「何でそこまであきらめないんだ?」

五和は答える。
「それは私の心は聖ペトロのように堅いですから。」
ペトロとは「岩」の意味である。
実際聖ペトロは岩のような心で信仰を貫き、ローマで殉教した。その地に立つのがサン・ピエトロ大聖堂である。

五和は己が決意の固いことを示した。
だが。


上条宅から五和を引き剥がすことを第一義とする土御門はその言葉尻をとらえ、にやりと笑って言う。
懐に忍ばせてあったトランシーバーを取り出して。
「トランシーバー!?誰と話してるんです!?」
と驚き尋ねる五和にも聞こえるようにゆっくりと




「なぁ、ステイル、自分のことを聖ペトロとかいう奴は異端審問にかけるべきじゃにゃいかにゃー??」
『全くだ。早速彼女を所属しているロンドンに連れ戻し、アークビショップのもとで異端審問にかけねばならない。』
上条の恐ろしさを知る赤毛の神父は即答する。


ちなみにこの会話、土御門がボリュームを最大にしていたために五和にもしっかりと聞こえている。

「オッケー、んじゃレッサーにでも連絡して異端者の捕縛に入るぜい。」
『…まだ「異端の可能性がある」だがね。まああの審問は』

ステイルは驚愕の事実を言う。



『100%異端判決が出るけどね。』


「ええ!?言葉のあやです!!言葉のあやですから!!ローマ正教の手下でもなんでも無いですから!!」
『もう遅い、すでに腕のきく魔術師達は君を包囲している。まあ、死刑にならない様にせいぜい頑張るんだね』
「天草式の多宗教の知識がアダになったにゃー」
「そ、そんな~!!」

五和はグッタリとうなだれていると、二~三人程の黒い修道服に身を包んだ男達に囲まれ拘束された。
五和は抵抗してもすぐに捕まるとわかっており、何も抵抗はしなかった。
だが、行動では何もできないものの、言葉では諦めきれなかったらしく、

「……私は諦めませんよ」
「あっそう、お大事ににゃ~」
「簡単にスルーしないで下さい。それまで当麻さんをお願いします」
「安心するぜよ、カミやんの安全はこの土御門元春に任せるぜい」

すると五和は安心したようにして、ゆっくりと歩き出した。
土御門は上条を探そうとしたが、

「土御門様」

さっきの魔術師の一人が土御門に話しかけてきた。

「なんぜよ?」
「先程必要悪の教会から資料が届きましたので一度目に通してほしいとのことです」
「何の資料だ?」
「『神の右席』の残党についてと……、上の方はそうおっしゃっていました」
「そうか、さっさと行くぞ」
「はっ」

土御門は何でこんな肝心の時に重大な資料が届くんだと、頭を悩ませていた。



その頃、上琴はと言うと、またもや危機に陥っていた。


「見つけたぞ上条当麻! 我らの天使、美琴たんをたぶらかした外道め!」

 『スパリゾート安泰泉』に向かっている途中、今度は男共の群れに囲まれた上琴、数はおよそ100程度。
 本来ならこの程度の数はものともしない二人なのだが、先ほどの第一三学区争乱の疲れが残っているので戦うのは少し厳しかった。
 しかしそれ以上に気になったのは美琴に対する呼び方だった。

「あのさぁ、その『美琴たん』って何……? 確かに俺の美琴は天使、異論は無い。でもお前らに美琴のことをそんな風に言われるのは腹が立つ!」
「黙れ! これは我々の愛の形の一つなのだ! 他にも『美琴サマ』、『ミコちゃん』、「エンジェル美琴』があるが、『美琴たん』が我らのブームなのだっ!」
「……頭痛くなってきたわ。で、あんたらは結局何者なの? 私を狙うなんて何が目的? 当麻の命? それともお金目当て?」

 自分に対する呼び方に寒気が走りながらも美琴はこの集団の正体を問いただすが、目的が物騒なのは当麻の影響だったりする。
 上琴は自分達を狙うちょっと変わった連中だと思っていたが、彼らの正体を聞いてその方がマシだったと思い知らされることに。

「とんでもない! 我々は美琴たんを陰日なたと応援する『御坂美琴ファンクラブ』のメンバーです!」
「ファン……クラブ? わ、私、そんなもの許可した覚え、全く無いんだけど……」
「そりゃそうですよ、だって非公式ですから。我々としては大っぴらに活動したいんですけど、初代会長の白井さんの教えを現会長が引き継いだ次第でして」
「白井の奴、そんなことしてたのかよ……。ところでさ、今の会長って誰がやって」

 勝手に自分のファンクラブを作っていた黒子を後日、お説教することを決意する上琴だった。
 現会長の存在が気になった当麻は美琴ファンクラブの一人に尋ねようとしたが、もの凄く嫌そうな顔で拒絶されることに。

「黙れ鬼畜! 美琴たんを独り占めするような奴の質問など誰が答えるか!」
「今の会長って一体誰なの?」
「海原会長ですよ、美琴たん」

 自分と当麻との態度の違い、現会長の正体を知った美琴は気のせいでなく頭痛がするのを感じていた。
 上琴は海原がエツァリの方だと直感的に感じ、すぐさま周囲を警戒するがファンクラブの一人から予想外の言葉を聞くことに。

「海原会長は今日はいません。美琴たんにお会いしたがっていたようですが、あの方は多忙なお方ですから」

 今現在、海原はショチトルに捕まり、バレンタインを満喫させられている最中だったりする。
 上琴は海原が居ないなら何とかなると思っていたが、気の緩みを突かれて離れ離れにされてしまう。

「きゃあっ! と、当麻っ、大丈夫?」
「あ、ああ……って美琴! てめぇら美琴を放しやがれ!」

 ファンクラブの男達に拘束されてしまった美琴、本来なら彼らなどすぐさま倒せるのだが、麦野との激闘の後なので力が入らないのだ。
 美琴を拘束された当麻はなす術無しの状態に陥るが、危機的状況を打破する者が文字通り上空から降って来た。

「すみませーーーーーーんっ! そこどいてくださーーーーーいっ! 危ないですよーーーーーーーっ!」

 上空から聞こえてきた声に美琴ファンクラブ達は上を見上げると、誰かが空から降ってきて自分達の方へと迫ってくるのを確認すると散開しようとした。
 しかし空から降って来た何者かの方が早く、10名ほど「ギャーーーーッ!」という叫び声を上げながら吹き飛ばされてしまう。
 その混乱に乗じて美琴は拘束から脱出、すぐさま当麻の所へと駆け寄る。

「美琴! 大丈夫か? 何か連中に変なことされなかったか?」
「うん、私は平気。それよりさっきの声の人にお礼言わないと」
「そうだな。にしても今の声、どっかで聞いたことあるような……あっ」

 美琴ファンクラブの連中を巻き込んで空から降って来た人物の声に聞き覚えのある当麻は、自分の思ってる通りの人物ならチャンスと判断する。
 その判断は正しく、起き上がってきた人物(正しくは人物たち)だったことに幸運を感じることに。

「いてて……。何人か巻き添えにしちゃったなぁ、後で謝らないと。真昼さん、赤音さん、怪我は無い?」
「おう、俺なら大丈夫だぜ♪ 真夜がちゃーんと守ってくれたからな。つーかこいつら何なんだ? こんな所で固まりやがって」
「私も大丈夫だよ真夜君♪ それと謝らなくてもいいんじゃないかな? 真夜君は注意したんだし、避けられなかったこの人たちが悪いんだから」

 空から降って来たのはトライアングルカップルで、上琴と同じく『スパリゾート安泰泉』に向かって跳び、駆けている途中である。


「ところで、何で上条たちがいるんだ?」

真夜は着地したところに上琴がいることに気になった。

「いやー助かった。危うく美琴が連れ去られる所にお前達が跳んできたから。」
「そうだったのか?でも、何か方法でも無かったのか?」
「あったらこんなことになってないよ。って今はそんな話をしている暇は無かったんだ。おい美琴、走るぞ。」
「いや、ちょっと待て。」

上琴が走ろうとしたら、真夜に止められた。

「何だよ。こっちは早く逃げないといけないんだが。」
「いや、逃げなくても大丈夫だから。その代わり、これを耳に付けろ。」

上琴が真夜に渡された物、それは耳栓だった。
そして、上琴は何をするのか分かった。

「まさか、あれをやるつもり?」
「まあ、耳栓を渡しただけで分かるよな。ところで赤音さん、喉は大丈夫?」
「大丈夫だよ。じゃあ四人とも、耳栓付けてね♪」

赤音がそういうと上琴、井ノ原姉弟は耳栓を付けた。
そして次の瞬間、この場所は地獄絵図となった。


茜川赤音の能力は鼓膜破砕(ボイスシャット)である。
しかもこのところ調子がいいときている。


「「「「「「「「「うっぎゃあああああぁぁああああ!!!!!??????」」」」」」」」」」

上条たちを襲った集団は鼓膜を破られて気を失い、割れた周囲の窓ガラスが彼らの上に降り注いだ。
赤音が手振りで『もう外してもいいよ。』と合図したので耳栓を外した上条たちの第一声は。

「「「「ちょっとやりすぎじゃない??」」」」

そういうのも無理はない。
アンチスキルが出動しても不思議ではない惨状がそこには広がっていた。



五和を引き渡した土御門はその足で「グループ」の隠れ家に向かう。
ほかのメンツも今日はいない。海原がショチトルに捕まったことも知っている。
問題は結漂だったが今日は何か用事があるからと昨日珍しく顔を赤くしていたから多分来ないだろう。

そう考えた土御門はそこで例の資料に目を通す。
そこにはこうあった。

「極秘」
「現在、ローマ教皇が把握している2名以外の旧神の右席メンバーの消息を確認した。」
土御門は眩暈を覚えた。

そして次の一文でわが目を疑うのだった。

「当該人物は   健在。
 天使の術式の行使も    限定的ではあるが可能になっている模様。」

さらにまずいことには
「必要悪の教会並びに騎士派合同特殊部隊が潜伏先に突入するもすでに退去した後であった。
残されていた文書から

当該人物は現在 





学園都市に向かっているか すでに潜入した可能性がある。


「完全にまずい事になった…」

土御門は資料を見て最悪の事態になっていることを知った。

「とりあえず、学園都市に居る魔術師関連を協会に集めるか。」

土御門はまず神裂に連絡を掛けた。

『土御門、一体なんですか今飾利に私とシェリーのどちらが思いが強いか聞いていて暇が無いんですから。』
「ねーちん、そんな事を言っている場合じゃない!!今、学園都市に旧神の右席メンバーが一人進入したかもしれない自体なんだぞ!!」

『それはどういうことですか!?』
「俺も今、頭がまわってないくらいだ!とりあえずねーちんは学園都市にいる天草式全員を協会に集めてくれ!」
『分かりました。』

というと土御門は電話を切った。
土御門はこの後、ステイル、闇咲、一方通行にも電話をした。

「さて、さすがに今回は月夜を巻き込むわけには行かないにゃ。」

土御門が電話を切った後、土御門は独り言を言っていた。



その頃、電話を切った後の神裂はというと…

「シェリー、緊急事態です。旧神の右席のメンバーが学園都市に進入した可能性が出てきました。」
「「な、何ですて!!」」

シェリーと初春は驚いていた。

「神裂、一体どういうことだ!!」
「私も良く分かってません。とりあえず協会に集合するようにと。」

「分かった。飾利はどうするんだ?」
「私も行きます!!これは緊急事態ですから。」

「分かりました。ではシェリーと飾利は先に協会に行っておいてください。私は学園都市にいる天草式に電話しなくてはいけませんので。」
「分かった。」

というと、初春とシェリーは神裂を置いて協会に向かった。
また、神裂は初春とシェリーを一緒に行かせたくは無かったが、緊急事態なので仕方なく一緒に行かせた。



その頃、キャーリサ、レッサー、ミサワはミサワの服を買い終え、第23学区にいた。
そして、偶然にも騎士団長に会っていた。


「キャーリサ様……」
「よー騎士団長、どうした?」
「どーしたもこーしたもありません……私の剣を返して下さい」
「いやいや、貴様の物は私の物、私の物は私の物……そーゆー言葉があるらしいぞ?」

騎士団長はしばらく考えている表情をして、

「……東洋の神秘ですね」
納得してしまった。

「「そこで納得するんかい!!」」

もちろん二人から突っ込みはあったことを追記しておこう。


「ってそんな事を言っている場合ではありません。キャーリサ様、今、学園都市に元神の右席が進入した可能性があります。」
「それはほんとーか?」

キャーリサはさっきまでの表情から真剣な表情へと変わっていた。

「はい、私もよく分かってませんが、ちょっと前に英国から電話がありましたので。」
「そーか。なら、私ものころーう。」

「分かりました。多分学園都市にある協会に召集されていると思いますから、そこに行きましょう。」
「分かった。じゃあ、レッサーとミサカワーストは英国に帰ってーろ。」
「ちょっと待ってください!!私も残ります!!」

キャーリサはレッサーとミサワを帰そうとしたが、レッサーが反対した。

「レッサー、今は緊急事態なんだ。頼むから二人で帰ってーくれ。」
「ですが、」
「それに、お前が残ったらミサカワーストはどーするんだ?」
「う、分かりました。ではキャーリサ様、私たちは帰りますので。」

というと、レッサーとミサワは二人が乗る飛行機に向かった。

「じゃあ騎士団長、私たちも協会に向かうーぞ。」

キャーリサと騎士団長も協会に行くために、第22学区から離れた。



「んじゃ、行くか。」
旧神の右席という非常事態なので久方ぶりに学園都市の「ウエ」にも話を通した土御門は呟いた。
ちなみにそのウエは逆さまで浮いたまま笑いかどうかよくわからない顔で
「そうか。ではようやく『アレ』の覚醒が見られるかもしれんな。」
という非常に不穏なつぶやきをしたのだが。

窓のないビルを出た土御門は
今日は都合があったのに。とブツブツ言って殺気を放っている仕事仲間にいい加減な礼を言うと(直後たらいが彼の頭上に降ってきた……ベタだな)
早速協会へと向かうのだが。

「元春、ちょっと待ちなさい。」

日頃は会いたいのに今日は一番会いたくなかった彼女に首根っこをつかまれる。


「よー月夜!!お目覚めかにゃ?」
「……どこに行こうとしてるの?」
「ちょっと引退したお偉いさんに花をそえてくる事ぜよ」
「嘘だね」
「月夜、即答は悲しいぜよ……今の俺はなーんにも嘘なんかついてないぜよ!!」
「また嘘、だっていつもと感じが違う」

土御門は何も言わない。どうやって突き放そうと考えているのだ。
だが月夜はそんなものお見通しだ。

「たとえ元春がどんなに突き放してもついてくよ?」
「じゃあ俺はどんなに月夜がついてきても突き放す」

そういうと土御門は月夜に口付けをした。
……………………………………………………………………………………睡眠薬つきの口付けを。
すると月夜はぐっすりと寝てしまった。

「さてと、花をそえられるのはどちらかにゃー?」

今回の敵はさすがの土御門もやばかった。
何せ敵は……人間どころか魔術師でもないバケモノなのだから。


「とりあえず月夜をここに置いとくか。」

土御門は近くにあったベンチに月夜を置いた。

「ん?誰か電話するのを忘れている気がするが、とりあえず協会に向かうか。」

土御門は誰か電話をする事を忘れたまま、教会に向かった。
しかし、土御門が電話するのを忘れていたのは当麻で、それにより、この後当麻が旧神の右席に狙われる事になるとは、知らなかった。



その頃、当の本人の当麻はというと…

「にしても、お前達まで『スパリゾート安泰泉』に向かっていたとはな。」
「それはこっちの台詞だ。」

当麻は美琴、トライアングルカップルと一緒に第22学区に向かっていた。

「それにしても、さっきからの不幸センサーが反応しているのは何故でせうか?」
「俺に聞かれても困るんだが、それとお前の不幸センサーってどのくらいで当たるんだ?」
「当たる確立は100%だが、何が起こるかは分からないな。」

当麻は真夜に不幸センサーがどのくらい正確なのか教えていた。

「そうなのか。」
「まぁ、そんな感じだな。って美琴!?いきなりどうした?」

当麻と真夜が話していたら、美琴が当麻の右腕を掴んできた。

「当麻、またこの後も何か起こるの?」
「そうだしい。まぁ、何が起こるとは分からないけど。」
「そうなの。ってそんなこと話していたら、第22学区に着いたわよ。」

当麻達はいつの間にか第22学区に着いていた。

「とりあえず中に入りますか。」

というと当麻達は第22学区の地下に入った。
だが、5人が『スパリゾート安泰泉』から出た後、当麻が後方のアックアと戦った時のように大変なことになるとは知らなかった。



「騎士団長、フィアンマの奴の目的は何か分かったのか?」
「いえ、それが良く分からないのです。奴の残したメモがどうにも要領の得ないものばかりで……」
「だが奴は学園都市に向かってることは分かってるのだろー? 少なくともフィアンマが目指すものがここにあるはずだ。話せ」
「メモに書いてあった文字は学園都市、幻想殺し、右腕、ライバル、勝利、友情、大親友、以上です」

 教会へ向かう途中のタクシーの中でキャーリサと騎士団長は旧神の右席ことフィアンマの目的について話し合っていた。
 騎士団長から聞いたフィアンマのメモにキャーリサはあの男のキャラに相応しくないワードがあったことを疑問に思う。

「……それが奴の潜伏先にあったメモの内容なのか? 何だかあのフィアンマのキャラと全く結びつかないんだが……」
「同感です。ですが奴の残したメモで分かったのが先ほどの言葉なのです。ですから私がこうして参った次第なのですよ」
「そーか。まーいくらフィアンマでも派手に暴れ回ることは無いだろーな。ロシアでの一件で奴も上条当麻の怖さは身を以って知ってるだろーし」

 キャーリサは今回、フィアンマが意外と大したこと無い理由で学園都市にやって来た、そんなことを思っていた。
 それは騎士団長も同じで下手したら自分の出番も無いのではと考えるほどで、思考を少しだけ別の件に回すことにした。

(さて問題はこのヴィリアン様のチョコだ。どうして初春さんに渡す必要があるんだ? そもそも彼女と一体どんな関係なんだ? ヴィリアン様は)
「なー騎士団長、気になってたんだがその包み、もしかしてチョコレートか? お前に渡すよーな相手がいるとは思わんかったぞ♪ 相手は誰だ?」
「ち、違います! これはヴィリアン様から初春さんに渡してくれと頼まれたチョコでして……」

 騎士団長からヴィリアンが初春にチョコを作っていたことを初めて知らされたキャーリサは少しだけ驚いた。
 しかし出発前のヴィリアンとレッサーが内緒話しているのを思い出すと、楽しげに笑みを浮かべた。

「ほほー、あの母上に怖いと言わしめた花飾りのメイドにヴィリアンがなー♪ なーんか面白い話が聞けそーだな、騎士団長」
「は、はぁ……(もしかして私、やってしまったのか? キャーリサ様が妙な真似をしなければいいのだが……)

 フィアンマの件、初春とヴィリアンの件、二つの問題を抱えたキャーリサと騎士団長の目の前に教会が見え始めていたのだった。



 その頃、学園都市に侵入したフィアンマだったがいきなり大問題に陥っていた。

「学園都市ってのは思ったよりも遥かに広いんだな。まさかこの俺様が迷子になろうとは」

 迷子になっても自分のスタンスを全く崩そうとしないフィアンマはある意味で天晴れだが、普通に考えるとかなり間抜けだ。

「適当に学園都市をうろつけば幻想殺しと劇的な再会を果たせると思ったが上手くいかないものだ。さすがに幻想殺しの居場所くらいは確認すべきだったか」

 土御門を始め、殆どの魔術師がフィアンマが壮大な目的を持って学園都市に侵入したと思っているが、実はそうでもなかったりする。

「だが俺様の右腕ライバルとの再会は唐突でなくてはな。今回は奴と勝負して勝利を手にする。そこから俺様と幻想殺しの熱い友情ストーリが始まるのだからな」

 フィアンマ、単に当麻のことが気に入ってしまい、自分なりの友達としてのコミュニケーションを取りに来ただけだったりする。
 しかし彼は知らない、自分と当麻以外に凄い右腕を持った学園都市最強と当麻のライバルポジションを巡って戦うことになろうとは。



そして、協会には続々と集まっていた。

「とりあえず、今いるのはインデックス、ステイル、シェリー、初春と俺だけか。」

土御門は、今、協会にいるメンバーを確認していた。
そして確認を終えると…

「おー集まっているなー。」

協会にキャーリサと騎士団長がやって来た。

「あれ、キャーリサさんが学園都市に来ていたのは知ってたけど。なんで騎士団長が居るんだにゃ?」

土御門は、キャーリサが学園都市に来ている事は知っていたが、騎士団長が来ているのは知らなかった。

「いや、ちょっとヴィリアン様が初春に頼まれごとをされましたもので。」
「ヴィリアンさんが私にですか?」

初春は一体何のことだろう思った。
また、初春は一応キャーリサに自分がヴィリアンの義妹だとばれないようにヴィリアンさんと言った。

「いや、頼み事って言ってもこれを渡すことなんだが、」

騎士団長は初春にチョコが入っている包みを見せた。

「あ、そういうことですか。じゃあ、これは貰っときますね。それと私からもヴィリアンさんにこれを渡して置いてください。」

初春は騎士団長からヴィリアンが作ったチョコを貰い、騎士団長に自分が作ったチョコをヴィリアンに渡すように言った。

「分かった。これは私がヴィリアンに渡しておく。」

というと、騎士団長は初春からチョコを貰い、ヴィリアンに渡しておくと伝えた。

「初春さん、私もちょっと話があるだよなー。ちょっとこっち来てくれるかー?」

騎士団長との話が終わると、初春はキャーリサに呼ばれた。

「はい。良いですけど。」

というとキャーリサは初春を連れて協会の奥に行った。


「悪いんだけどキャーリサ様、そうゆうことは後にしてもらえると助かるぜよ。今は元・右方のフィアンマの件を片付けるのが先決だぜい」
「それもそーだな。じゃー初春、後でヴィリアンについてたっぷり聞かせてもらうから心しておくよーに」
「は、はい、分かりました。……あ、あのキャーリサ、さん?」

 フィアンマの件をそっちのけで初春にヴィリアンとの関係を聞こうとしたキャーリサだったが、土御門の説得で一先ず保留とする。
 しかし初春の無意識の上目遣いと少しオドオドした雰囲気がキャーリサの琴線に触れたのか、キャーリサが初春をハグしたのだ。

「ひゃあああああああああああああああああっ!」
「おー、こーゆー反応してくれるとは嬉しーなー♪ じゃーしばらくこのままだなー。構わんよな? 初春」
「ひゃ、ひゃい~~~~~~~~~~っ」

 キャーリサが初春を気に入ったのを見て騎士団長は呆然と、シェリーは相手がキャーリサだけあって怒りを堪え、それ以外の面々はまたかと思っていた。
 突然のキャーリサのハグに照れた初春だが、すぐに落ち着きを取り戻すことに成功したのは神裂とシェリーによる慣れが理由だったりする。



 その一分後、他の天草式学園都市支部のメンバーを集めていた神裂が戻って来た、何故か一人で。
 神裂一人で戻ってきたことに疑問を抱いた土御門はキャーリサの膝の上で座らされている初春が見えないように体で隠すと、神裂に真面目に尋ねる。

「ねーちん一人か? 他の連中はどうしたぜよ?」
「建宮は第一三学区で大規模な事件があったようでアンチスキルとして事後処理で来られません。対馬と浦上は常盤台の寮で待機してもらってます。ですが五和は連絡が取れず……」
「五和なら来ないぜい。どーやら異端審問に引っかかる発言をしちまったよーでな、ちょっとロンドンに行ってるぜよ」

 土御門が自分で五和を異端審問送りにしたのにいけしゃあしゃあと真実を隠してることにステイルは呆れていた。

「あの子は何をやってるんですか……。繚乱家政女学校の講師の仕事も土御門の妹の護衛もあるというのに何と情けない……」
(やべっ! すっかりそのこと忘れてたぜよ! こっちの事情の辻褄合わせのが面倒だにゃー……。仕方ない、数日で戻れるように手配するか)

 土御門は失念していた、五和の件で考え込んでる間に神裂が初春とキャーリサを発見していることに気付かなかったのだ。
 初春を楽しそうに弄る神裂のシスコンジェラシーが爆発するかと思われたが、騎士団長に止められることに。

「何をしてるんだ神裂! キャーリサ様に向かって七閃を放とうとするとは!」
「離して下さい騎士団長! 私は飾利のお姉ちゃんなんですよ! それをポッと出のキャーリサ様に……キャーリサ様? それに騎士団長?」
「少しは頭が冷えたようだな。私達がここに居る理由なら後で話してやる。それよりも今は気持ちを落ち着かせろ、いいな?」
「は、はい……。キャーリサ様、何て羨ましい……。ですがシェリーも我慢してる様子、私も我慢しましょう」

 騎士団長は神裂の取り乱しように驚きを隠せずにいたが、事態が事態なのでその件については後で神裂本人に聞こうと思った。
 それからすぐに闇咲も合流、土御門を中心としたフィアンマ対策を論じ始めるのだった。



 一方こちらは第七学区、渦中の人物ことフィアンマは勝手にピンチに陥っていた。

「腹減ったな。今までの俺様なら踏み倒すことなど日常茶飯事だが、ここは日本だ。イタリアならいかようにも出来たんだが」

 イタリアでは傍若無人な振る舞いをしていたフィアンマだが、日本でそれはマズイという意識があったのか控えているのだ。

「持っているのはユーロのみ。カードは俺様のアシが付くから使えん。ツケや食い逃げ、踏み倒しは幻想殺しの右腕ライバル、ひいては幻想殺しの名前に傷が付くからな」

 食い逃げ等を思いとどまった理由がかなり微妙な気もするがフィアンマも当麻と出会って以来、人が少しだけ変わったようである。
 しかし空腹に耐え切れずにフィアンマは道端に倒れ込み、一歩も動けなくなってしまう。

「ふっ、俺様としたことが空腹でダウンとはな。だが幻想殺しの右腕ライバルとしてこの程度の試練など突破してみせる」
「おィ、大丈夫かァ? こンな所で行き倒れるたァてめェ、自殺志願者かァ?」

 空腹で行き倒れたフィアンマに声をかけたのは打ち止めを芳川に預けて、教会に向かってる最中の一方通行だった。


「……安心しろシロモヤシ、俺様はこの程度で死なん」
「嘘つけトウガラシ野郎、テメェ今にも死にまァすって顔してンだよ。あとシロモヤシは余計だぞォ?」
「シロモヤシはシロモヤシだ。異論は認めん」
「……オマエそォとォ変わってンなァ」
「よく言われる」

「「………………」」

しばしの沈黙が続く。だがその沈黙を破ったのはフィアンマの『グゥ~』と、いう腹の音だった。

「……ハァ」
「何だその目は!!俺様にそんな目を向けるな!!」
「これから教会行くんだけどよォ、オマエも着いてくるかァ?」
「連れてけ」

即答だった。
と言ってもフィアンマにも考えがないわけでは無い。

(ローマだろうがイギリスだろうがロシアだろうが……俺様に恐れて食料の一年分や二年分謙譲するかもしれんしな。それに抵抗すれば最後の審判にでも行ってもらおう。……あっ、ついでに活動資金も手に入れておくか。)

右方のフィアンマはいつも計画的なのだ。

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