とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part04

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~エイント・ノー・リバー・ワイド・イナフ~


上条当麻は携帯電話を前に唸っていた。

二人のこれからのためにはやらねばならないことなのだが・・・

いかんせん、気が重い。


御坂美琴と上条当麻が恋仲になってから、一月と少し。

その間、周囲の人たちにはその関係をずっと隠してきていた。


上条の周囲には土御門、青ピをはじめとしたクラスメイト。

美琴の周囲には初春と左天、そして白井黒子。



流石に、初心な二人の前に超えるべき波乱が多すぎる。

そのため、二人してその関係をしばらく隠すことに決めたのだ。


そして、一ヶ月。上条の部屋には同居人が帰ってこようとしていた。

そう、インデックスに二人の関係を説明せねばならない。

そして、美琴にもインデックスとの関係を説明せねばならない。


避けて通れないのは解っていたのだが、そのときがくるとなると、しりごみするのが人間というもので・・・


「・・・どうしたもんでせう」


やるべきことはわかっているのだ。というか、やる以外の選択肢はない。

何の説明もなしに、美琴とインデックスとがはちあわせしてしまったなら・・・

それはもう、ビリビリガリガリバチバチガブガブと恐ろしいことになるのは確定なのだから。


命のかかった修羅場を幾度となく乗り越えてきた上条だったが、こんな経験は初めてだった。

情けのない話だ。大の男が女の子二人に板ばさみで、ビクついているだなんて。


「上条さんったら、なさけないですね・・・・」


ガックリと肩をおとしてうなだれる。しかし、そんなことをしている間にもタイムリミットは近づいてくる。


意を決して携帯電話を取り、電話をかける。


上条当麻の明日は、どっちだ。




            ―とある少年の猛烈恋慕その4―
             ~エイント・ノー・リバー・ワイド・イナフ~



そのしばらく後、学生寮の一室を紫電が貫き、家主の絶叫が響いた。

それはもう、何度も何度も。



「アンタは・・・そんな大事なことをよくも黙っていてくれたわね・・・」

「・・・・・申し訳ございません」


二人は床に座り、上条は土下座、美琴は憮然とした表情で上条を見つめ、その左手を握っている。


上条は洗いざらい喋った。いや、喋らされたというべきか。


―――――――――


美琴を部屋へ招き、頃合を見計らって「インデックスと同居していた」と、説明をはじめたわけだが、そこでまず一発電撃を喰らった。


「・・・ホントは超電磁砲叩き込みたいところだけど、話を全部聞くまでは我慢してあげる。」

「ありがとうございます御坂様」

「その呼び方はやめて。で、まだあるんでしょ?聞いてあげるから左手出しなさい。」

「へ?どうしてでせう?・・・・まさか電撃浴びせて、この間みたいなことをしようっていうんじゃ」

「ち、ちがうわよ!いい機会だからアンタの隠し事全部聞いてやろうってだけよ!
覚悟しなさいよアンタ・・・あたしに隠し事できると思ったら、大間違いなんだから。」ニヤァ

「・・・・!?」ゾク


―――――――――



「何故だ・・・何故こうもたやすく上条さんの話術が・・・・」



上条は美琴の発言どおり、ウソをつくことを許されなかった。

美琴は鋭く上条のウソを見抜き、嘘をついた罰にと、つないだ左手に電流を流すのだ。

何度も、何度も。


当然上条とて、黙って電流を喰らっていたわけではない。が、

表情を隠してみてもダメ、声を出さずに答えてもダメ、わざと動揺したフリをしてもダメ・・・


結果として、上条はすべてを正直に話すしかなかった。



「思い知ったかしら?これに懲りたら、あたしに嘘つこうだなんて思わないことね。」


美琴が左手を握ったのは、上条の生体電流を観察する為。それも脳の電流とそれがおこす磁場・・・すなわち『脳波』を。

嘘をついたときに生じる脳波の乱れを感知し、仕置きに電流を流す・・・いわば、『人間嘘発見器』のようなものだ。


LV5としての能力がこんなところで役に立つとは、と美琴は内心びっくりしていた。



「で、インデックスはいつ帰ってくるの?」

「七月の、六日だったと思います・・・ハイ・・・」

「そう・・・・・・ならちょうどいいわね。」

「・・・・なにがでせう?」



話が見えないといった風に首をかしげる上条。


「七月七日は七夕なのよ。」

「七夕・・・ああ、そういえばそんなのあるんだったな」

「だから、そこで親睦を深めるって名目でパーティでもやりましょ。
機会としてはちょうどいいし、口実としても十分だと思うけど、どうかしら?」

「・・・なるほど・・・」

「じゃあ、あとの細かいことは明日改めて話しましょ?
学校が終わったらいつもの自販機前にくること。いいわね?」


「・・・・・・ああ。わかった。」

「よろしい。じゃあ今日はこれで・・・」


門限も近くなってきたし、そろそろ帰ろうかというところで、


「ッ・・・待ってくれ」


右手でもって腕をつかまれ、引き止められる。


「・・・何?どうしたの?」


「・・・ちょっとだけ、御坂の時間をくれないか?」


そういって、携帯を取り出し、上条はどこかへ電話をかけた。


「・・・うん。」


上条の行動を理解した美琴は、そっと上条に寄り添った。


とぉ るるる
        とぉるるる
                とぉ るるる ん

ぷつっ


『もしもし?とうま?そっちから電話なんてめずらしいんだよ。』


「ああ、元気してるか?インデックス。」

『もちろんなんだよ。で、何の用なのかな?』


「ああ、ちょっと話があってさ。
まず、インデックスに話したかったんだ。大事な家族だから。」


後に引くわけには行かない。一呼吸置いて、口を開く。


「俺、御坂と付き合うことになったんだ。それで・・・」


インデックスの言葉を聞くがつらい。はやくすべて喋ってしまおう。
そう考え、矢継ぎ早に言葉をつなごうとした、が


『・・・・そう。やっと素直になれたんだね、とうま。
まったく、とうまは鈍感すぎるかも。相手にも自分にも。』


「ああ・・・・って、何ですかその全部解ってたようなくちぶりは!?」


予想外の反応が返ってきた。
思わず、マヌケな声が口から飛び出す。


『とうまの反応を聞いてたら、恋煩いなのくらい簡単にわかることなんだよ。
ちょっと前は電話してもうわのそらだったし。伊達に家族みたいに生活してたわけじゃないんだよ。』


「は、はは・・・・・・」


上条はがっくりと肩を落とす。安堵の感情もあるが、どちらかといえば情けなさの感情のほうが強い。
そんな上条の気持ちなど意に介さず、小さなシスターは核心をつく。


『・・・短髪を幸せにするって、約束できる?とうま。』


「ああ。俺が幸せになる自信もある。」


『うん。それならいいんだよ。結婚式はイギリス清教総出でやってあげるかも。
きっとそばにいるんでしょ?短髪にかわってほしいんだよ。』


「ちょ、インデックスさん?今すごい単語が聞こえた気があだっ」


寄り添ってこっそりと聞き耳を立てていた美琴が、上条から携帯電話を奪い取る。


『短髪?そっちの時間だともうこんばんわかな?』


「あたしには御坂美琴って名前があるの。名前で呼んでちょうだい。インデックス。」


『わかったんだよ、みこと。聞くまでもないと思うけど・・・みことは、とうまを幸せにする自信はある?』


「あいつの不幸、全部吹っ飛ばしてあげる自信もあるわ。これじゃダメかしら?」


少しの沈黙の後、電話口から嬉しそうな笑い声が聞こえた。


『・・・・それならいいんだよ。とうまはとうまだから、苦労するかもしれないけど・・・よろしくね?』


「でも、それも含めてアイツでしょ?」


『あはは、そのとおりかも!』


「ふふ・・・そうだインデックス?あなた、こっちに帰ってくるんでしょう?七日にパーティやるんだけど・・・来ない?
話したいこともあるしね。おいしいもの用意して、待ってるから。」


『本当!?絶対にいくんだよ!おいしいお料理いっぱい用意しておいてほしいかも!
こうしちゃいられないんだよ!おめでたいことも分かったし、荷物追加なんだよ!じゃあねみこと!とうまによろしくね!』


ばたばたとあわただしくどこかを走る音がしばらく聞こえた後、電話はぷつりと切れた。


「・・・なんだって?インデックス。」


「とうま『を』よろしくね、だって。」


「なぁっ!?い、いつのまにか保護関係が逆転している・・・何故だ・・・」


三度肩を落とす上条の頭を、よしよしと慰めるように美琴が撫でる。


「じゃあ、今度こそ帰るわね。」


「送ってくよ。寮の前まで。」


美琴が目を丸くして驚く。
いままでも送り迎えはあったのだが、関係がばれることを恐れたため、寮の近くまでにとどまっていたのだ。


「・・・・いいの?」


「イヤか?」


「ううん。うれしいけど・・・黒子とかにバレちゃうかもしれないわよ?」


「ハハ、そうだな。ただじゃすまないかもな。・・・でも、大丈夫だろ。」


「え?」


「インデックスが祝福してくれたんだ。もう恐いもんなんかねーよ。それに・・・その・・・
いつまでも、こんなに、か、かわいい彼女がいるのを自慢できないのもイヤだしな!」


「かわっ!?あああああアンタいきなりななななにいって!」

上条が顔を真っ赤にして言った台詞に、美琴の顔が真っ赤に染まる。
お互いまだ微妙に素直になりきれていないだけに、ストレートな言葉には弱いのだろう。


「ほ、ほらいくぞ!早くしないと門限に間に合わないぞ!」


「あっ!ちょっと待ちなさいよ!そんなテレ隠しアリ!?」


言いながら玄関へ駆け出し、靴を履いて外へ飛び出す上条。
それを追って外へ飛び出し、部屋のカギを電磁力で閉める美琴。


「ッ・・・!照れてなんかねーよ!」


「じゃあなんでこっち向かないのかしら?いっとくけど耳まで真っ赤で丸分かりなのよ?
あーらら、カワイイんだぁ当麻ったら!」


「えーいうるさいうるさい!そんなに確かめたかったら捕まえてみろ!」


「ほっほぉう、言ったわね・・・やってやろうじゃない!こらー!まっちなさーい!」

「やーなこったぁ―――――!」


夕闇の学園都市に、電撃に照らされて映える二つの影が踊る。

いつかとおなじ、追う影と追われる影。

いつかはしかめっ面で走っていた二つの影。でも今は二つとも楽しそうに笑っている。


七月七日、七夕まであと幾夜。

この二人は、天の川に何を願うのだろうか。

織姫と彦星に、どんな願いを託すのだろうか。



                                  ―とある少年の猛烈恋慕その4―
                                   ~エイント・ノー・リバー・ワイド・イナフ①~    ②へつづく


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