例えば仮に、その存在が明らかな悪だとして。
理由の無い繁栄と報復は存在しないというのが原理であり定理だ。それ以上それ以下は存在しない。
だからこそ、戦うという意思があるものは皆公平に幸福でなければならない。そうでなければ戦う意思など存在する事すら難しいハズだからだ。
「だからといって、伯父上は間違っている。
シュトリと
シトリーは二つで一つ。言うなれば錠前と鍵だ。シトリーが何でも開く鍵ならば、シュトリは何でも閉じる錠前になる。二人は一緒に居なきゃ意味が無いのに、どうして双子を引き裂こうとするのだろう。私には理解できかねるね、シュトリ」
「そんなことをいわれてもなぁ、ハルア。僕には選択肢が無いこと、君が一番理解してるじゃないか」
「そうなのかもしれない。ただ、本当に残念だと思っている。どうしてアークスなどと手を結びたがる。確かに我がエノワスにもダーカーの侵食は間違いなくあった。だが、その被害は最小限に収められたじゃないか」
その件に関しては、と言葉を挟む。自身の従妹にあたるイズハルアは、国王の子ではないが、それでも王族の血脈である。
彼女は体勢を読むことに長け、何よりもその《心情風景》を視覚化することで相手の心を測ることが出来る。
そんな特殊な能力を持つ彼女の前で嘘を吐くなど愚かな行為だ。だから嘘など吐かない。
「後にも先にもエノワスでダーカー侵食の犠牲者になったのはたった一人だ。
今は亡き、僕とシトリーの母は、来賓との接見中に侵食され、闇を纏ってしまった。陛下だって、実の妹だぞ?
殺したくはなかったはずだ。なのに殺すほか道が無かったってことは
ハルアにだって分かっていることだろう? 侵食しないはずの人間に普通に侵食している。
その事実をアークスだって隠したい。ただそれだけなんだよ」
「そして? 意外な数値を発見した。ダーカー侵食に耐えうる素体の存在だ。そうシトリーとお前だ。
国にとって、直系の王族がダーカーに侵食されたなんて事実は宇宙連邦に隠しておいて欲しい事実。
アークスにとってはダーカーに対しての研究対象が欲しい。だからお前かシトリーを寄越せ、っていうのは酷いじゃないか」
気持ちは分からなく無いが、ただ、感情的になるわけにも行かない。
妹には何も言わずに出て行く。大丈夫、何も怖いものなどないのだと信じ込むためにも。
「ハルアは、この国とシトリーをお願いするね。僕は行きますよ」
最終更新:2017年04月26日 23:07