大戦が天変地異によってなし崩しに終結し、混沌とした状況下でも
国家というシステムは動いていた。
そしてそれは、最大の脅威であり恐怖であった存在の調査から始まっていた
旧帝國軍要塞跡地
帝國が本当に消えたのか、最低でも自国の領域から撤退したのか、それを確認するまでは
彼らに安息は無かった。
「…これが帝國の装備か」
キン
軽く打ち合わせた銃身が立てた音は彼らの知る鉄では出しえない澄んだ音だった。
「これほど良質の鋼見たことが無い…」
「おい、こっちの機械を見てみろ!」
「なんだ…これは?」
「
機械竜の装甲が剥がされて内臓が丸見えの状態だが…」
「なんと醜悪な…」
「醜悪?お前にはそう見えるか?」
「なんだと?」
「俺には、芸術品のように見える。みろこの鋼で作られたとは思えぬ優美な曲線を」
「何を馬鹿な、異界の邪法による技術など神は決して認められぬぞ!
その証拠に帝國の連中は、そろって神罰によって消えうせたではないか!」
「お前こそ坊主の世迷言を鵜呑みにするな!これほどの技術をもった奴らが
消えうせるなどありえん。きっと今でも何処かで牙を磨いているに違いない。
俺達は奴らの技術を逆手にとって奴ら以上の装備を作らなくてはいけないのだぞ!」
「いや、ここにあるのは邪法の粋だ。世界が汚染される前に全てを消すのだ!」
「馬鹿なこれほどの先進技術の粋を!我らにもいつか再現可能な知識を処分するだと!」
「お前達、そこまでにしておけ」
「「隊長!」」
「我らの仕事はここにあるものをありのまま伝える事だ。
そこから先の判断はもっと御偉いさんが決める事だ!
解かったら、さっさと作業に戻れ!」
小走りで作業に戻る部下を見送った後、彼は背後の機械竜を見上げた。
「かつて、我が国の
竜騎士達の恐怖の化身だったのにな…
なぁ、お前の主は本当に消えちまったのか?」
機械竜「烈風」は黙して語ることは無かった。
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最終更新:2007年07月21日 13:30