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ほうかちろん 【法価値論】 legal axiology <日本語版ブリタニカ> |
法的な価値について考察する研究分野。 法的な価値は正義という言葉で表現されることが多いから、正義論といってもよい。 古代ギリシア以来、法哲学の主要分野をなしてきたが、最近は、①規範的倫理学と、②分析的倫理学の区別に対応して、①規範的法価値論と②分析的法価値論(メタ法価値論)とが明確に区別されるようになった。 | |||
せいぎ 【正義】 <広辞苑> |
① | [荀子(正名)]正しいすじみち、人がふみ行うべき正しい道。「-を貫く」 | ||
② | [漢書(律暦志上)]正しい意義または注解。「尚書-」 | |||
③ | (justice) | (ア) | 社会全体の幸福を保障する秩序を実現し維持すること。 プラトンは国家の各成員がそれぞれの責務を果たし、国家全体として調和があることを正義とし、アリストテレスは能力に応じた公平な分配を正義とした。 近代では社会の成員の自由と平等が正義の観念の中心となり、自由主義的民主主義社会は各人の法的な平等を実現した。 これを単に形式的なものと見るマルキシズムは、真の正義は社会主義によって初めて実現されると主張するが、現在ではイデオロギーを超えた正義が模索されている。 | |
(イ) | 社会の正義に適った行為をなしうるような個人の徳性。 | |||
せいぎ 【正義】 justice <日本語版ブリタニカ> |
人間の社会的関係において実現されるべき究極的な価値。 | |||
▽ | 善(※注: agothos, bonum, good)と同義に用いられることもあるが、 | |||
(1) | 善が、主として人間の個人的態度にかかわる道徳的な価値を指すのに対して、 | |||
(2) | 正義は、人間の対他的関係の規律にかかわる法的な価値を指す。 | |||
▽ | 正義とは何か、という問題については、古来さまざまな解答が示されてきたが、一般的な価値ないし価値基準に関する見解と同様に | |||
<1> | 正義を客観的な実在と考える客観主義的・絶対主義的正義論と、 | |||
<2> | 正義を主観的な確信と考える主観主義的・相対主義的正義論とに大別できよう。 | |||
法思想の領域では、だいたいにおいて、自然法論が<1>前者に、法実証主義が<2>後者に、属する。 | ||||
▽ | 従来の正義論のうちでは、アリストテレスやキケロの見解が名高く、与えた影響も大きい。 | |||
(ア) | アリストテレスは、道徳と区別される正義(特殊的正義)について、①配分的正義と、②交換的正義(平均的正義、調整的正義とも訳される)とを区別し、 | |||
① | 前者は、公民としての各人の価値・功績に応じて、名誉や財貨を配分することにおいて成立し、 | |||
② | 後者は、私人としての各人の相互交渉から生じる利害を平均・調整することにおいて成立する、とした。 | |||
(イ) | キケロは、この①配分的正義と同様な内容を、「各人に彼のものを」という公式で表現した。 | |||
ほうてきあんていせい 【法的安定性】 Rechtssicherheit <日本語版ブリタニカ> |
法の支配ないしは法治主義の思想のもとにおける一種の法価値。 法的安全、法的確実性ともいわれる。 | |||
▽ | この言葉は、 | |||
(1) | 法による安定性、つまり、法による社会秩序維持がもたらす社会生活の安定、という価値と、 | |||
(2) | 法の安定性、つまり、法それ自体の安定からもたらされる法価値、という2つの意味に用いられる。 | |||
(1)前者は、(2)後者を前提にして成り立ち、しかも、①平和、ないしは、②秩序、と同意義であるので、(2)後者の「法の安定性」が、固有の意味で法的安定性である。 | ||||
▽ | (2)この安定性は、次の要求を満たすことによって確保される。 | |||
第一は、 | 法が実定法であること、 | |||
第二は、 | その法の解釈・適用が客観的であること、 | |||
第三は、 | その法の実効性があること。 | |||
▽ | 法的安定性は、また、法の目的でもあり、法が追求すべき正義・衡平などの高次の諸価値を達成するために、まず実現すべき卑近な第一次的な目的とされている。 | |||
こうへい 【衡平】 equity <日本語版ブリタニカ> |
具体的事件に法を適用すると実際に不当・不公平な結果になるようなとき、それを是正する原理。 | |||
「法は善と衡平の術なり」ともいわれ、この原理から、 | ||||
<1> | 古代ローマ法では、 | ①市民法に対する、②法務官法が、 | ||
<2> | イギリスでは、 | ①コモン・ローに対する、②エクイティー(衡平法)が、生まれた。 |
デュー・プロセス・オブ・ロー 【due process of law】 <日本語版ブリタニカ> |
法によって定められた適正手続のこと。 | ||
(1) | アメリカ合衆国憲法は、「法の適正手続によらなければ、①生命、②自由、または、③財産を奪われることはない」(修正5条)と規定している。 | ||
これは、マグナ・カルタ39条中の「自由人は、同輩によって構成された合法的な法廷および国法によるのでなければ、①逮捕、②監禁、③差押え、④法外放置、もしくは、⑤追放を受け、または、⑥その他の方法によって侵害されることはない」の規定に淵源をもつ、といわれている。 | |||
この修正5条は、個人の憲法上の権利を侵害する州の行為には適用できなかったので、1868年に、さらに修正14条が追加され、州の行為にも適正手続の拘束が及ぼされることになった。 | |||
<1> | デュー・プロセス・オブ・ローは、アメリカでも当初は文字通り手続的制限規定と解されていたが、 | ||
<2> | 19世紀末頃より、実体的適性の意味にも解されるようになり、連邦最高裁判所は、その中に契約の自由などを読み込んで、社会経済立法の多くを違憲と判示した。 | ||
<3> | しかし、1937年を契機に、最高裁判所は判例を変更し、ニュー・ディール諸法を合憲とするに至り(⇒私有財産制)、以後、学説・判例において、実体的デュー・プロセスの考え方には消極的ないし警戒的態度が一般的となった。 | ||
<4> | もっとも、1960年代なかばから、とりわけ70年代以降、実体的デュー・プロセス論の復活の兆しが見受けられる。 | ||
(2) | 日本では、日本国憲法は、「何人も、法律の定める手続きによらなければ、その①生命若しくは②自由を奪はれ、又は③その他の刑罰を科せられない」(31条)と規定している。 | ||
この規定は、今日では、 | |||
<1> | 「手続」とは、①純然たる手続のみならず、②実体要件までも含み、 | ||
<2> | 「法律の定める」とは、①ただ形式的に「法定」の意味ではなく、②内容的にも適正なものでなければならないことを意味している、という理解が確立している。 | ||
かくじんにかれのものを 【各人に彼のものを】 suum cuique <日本語版ブリタニカ> |
正義についてキケロが述べた言葉、「各人に彼のものを配分すること、それがまさに最高の正義である」suum cuique tribuere, ea demum summa justitia est や、ウルピアヌスの言葉を簡略化したもの。 アリストテレスの配分的正義とともに、正義に関する簡潔・的確な表現として名高い。 | ||
しかし、正義が問題となる際に議論の的となる「何が彼のものであるか」について明らかにしていない点で、内容の空疎な公式に過ぎない、と批判されることもある。 「何が彼のものであるか」を定めた既存の法秩序を前提してのみ機能する公式といえよう。 | |||
はいぶんてきせいぎ 【配分的正義】 dianemetikon dikaion; justitia distributiva <日本語版ブリタニカ> |
アリストテレスに由来し、トマス=アクィナスのラテン語への翻訳と注解によってスコラ学に定着した正義の分類の一つ。 交換的 commutative 正義に対置する。 すなわち、 | ||
<1> | ある共同体の権威者によって | ||
<2> | ①利益と②負担とが | ||
<3> | その共同体の各成員の業績や能力に比例して配分されること、を要求する正義。 | ||
今日の公法上の正義に近いが、業績や能力を評価する基準を何とするか、によって正義の内容も異なりうる。 |
かちじょうちょせつ 【価値情緒説】 emotive theory of value <日本語版ブリタニカ> |
価値判断は、判断主体の個人的な感情・情緒の表明に過ぎない、という説。 | |
この立場からすると、 | ||
<1> | 事実判断は、①対象が具備している実在的な性質を指摘するものであり、②その真偽が客観的に判定できるが、 | |
<2> | 価値判断は、①対象の実在的な性質を指摘しているわけではないので、②真理知を持たないことになる。 | |
従って、<2>価値判断の問題は、科学的認識の領域外にあり、価値についての争いは、実践的にのみ解決されるもの、とされる。 | ||
価値情緒説という名称は、現代のイギリス・アメリカの価値論ないし倫理学で用いられ、A.エイアー、B.ラッセル、S.スティーブンソンらによって代表されるが、M.ウェーバー、G.ラートブルフ、H.ケルゼンらの価値相対主義も実質的にはこれに近い。 | ||
かちそうたいしゅぎ 【価値相対主義】 value relativism <日本語版ブリタニカ> |
価値は各人の感情、意欲、信念に依存する相対的なものであるとする主張。 | |
善、正義などの価値あるいは価値基準が客観的に実在し、認識されうるとする価値絶対主義ないし価値客観主義に対する。 価値主観主義ともいう。 | ||
古代ギリシアのソフィスト以来さまざまな形態をとってきたが、近年では、M.ウェーバー、G.ラートブルフ、H.ケルゼンらが名高い。 この近年の価値相対主義は存在と当為・価値を峻別する新カント主義的な方法二元論に主たる基礎をおくが、実質的には価値情緒説に接近する。 なお、ラートブルフやケルゼンは、価値相対主義によって民主制を理論的に基礎づけている。 |
ほう-の-しはい 【法の支配】 (rule of law) <広辞苑> |
イギリスの法律家コークが、国王は神と法の下にあるべきである、として、ジェームズ1世の王権を抑制して以来、「人の支配」に対抗して認められるようになった近代の政治原理。 コークのいう法は、イギリスの判例法で、立法権をも抑制する点で、法治主義とは異なるが、後に法治主義と同義に用いることもある。 | |
ほうのしはい 【法の支配】 rule of law <日本語版ブリタニカ> |
法至上主義的な思想、原則。 | |
(1) | どんな人でも、通常裁判所が適用する法律以外のものに支配されない、あるいは、 | |
(2) | 被治者のみでなく、統治者・統治諸機関も、法の支配に服さなければならぬ、とする、「法のもとにおける統治」の原理。 | |
イギリスの伝統に根ざす思想であり、自然法思想にも淵源をもつ、法の権力に対する優位性の主張である。 | ||
A.ダイシーは、その著『憲法入門』(1885)のなかで、①議会主権と、②法の支配、がイギリスの2大法原理である、としたが、 | ||
<1> | ここから、人間とその自由を権力から守るイギリス型法治主義の原則が確立され、 | |
<2> | アメリカにおいては、司法権優越の原理を生んだ。 | |
20世紀に入り、経済・社会情勢の著しい変化につれ、伝統的な法支配の原則に対するいろいろな批判も起っている。 | ||
rule of law <collins> |
The rule of law refers to a situation in which the people in a society <1> obey its laws and <2> enable it to function properly. |
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