ついにこの小説も全体の4分の1まで行きました
第7話 狂乱
癒依と藍香を病院から救いだし、羽嶋の家へと戻った僕と蔵田と稲見。僕たちは怪我が全くない彼女達の姿に安心したが、彼女達は羽嶋の家に戻るまでは変わり果てた冴川市の異様な姿に震えるばかりだった。羽嶋の家の近くにあった花屋から漂う麗しき香りは悪魔によって痛めつけられた人間から出る忌まわしき腐臭に変わり果て、レンガの壁に“冴川市役所”から許可を得たアーティストが書いた美しい絵は狂人が血濡れた手で描いた様な名状しがたき絵に変異されてしまい ――それらの様な物を見る度に僕たちは心が痛めつけられたのだ。
「突然で悪いが――お前達が病院にいる間は何があった」
「聞いていて狂いそうになるフルートの音と嘲笑う様な声に誘われる夢を見た後に気が付いたら暗い部屋の中にいて――扉の奥から聞こえる呻き声がずっと怖かったんです――」
「聞いていて狂いそうになるフルートの音と嘲笑う様な声に誘われる夢を見た後に気が付いたら暗い部屋の中にいて――扉の奥から聞こえる呻き声がずっと怖かったんです――」
藍香の様子は前よりは落ち着いていたが、それでもとても強く恐怖に対して震えていた。そんな状態でも事情を話している彼女を心配に思ったかのように癒依は彼女を見守るばかりだ。にしても、聞くだけでも狂いそうなフルートの音に嘲笑う様な声――彼女達を夢の中で誘き寄せたその声の主はどういう意図で彼女達を病院まで誘き寄せたかは分からないが、断言しよう――その声の主は想像を絶する程に残酷な性格であることを。もし、もう少しでも助け出すのが遅かったら、彼女達は本当に狂っていた筈だろう。
「葉月、病院から例の物は持ってきたか?市川さんの足はそろそろ大丈夫だが、用心しておかないと命がいくつあっても足りないからな」
「ああ、それなら俺が持っているぜ。ほらよっ」
「ああ、それなら俺が持っているぜ。ほらよっ」
そう言いながら蔵田は羽嶋に包帯とギプスと軟膏を手渡した。中田によって見せつけられた圧倒的な力の差によって生み出された恐怖と自分の妹を救いだす事が出来た嬉しさ――その交わる二つの感情によって市川さんの足を治療する事を忘れそうになったが、病院を出た所にある庭で包帯とギプスと軟膏が同じ所に落ちてあるのを見つけた途端にそれを思い出したのだ。恐らく、あの男が置いておいたのだろう。中央病棟への扉の前で彼に初めて会った時には恐怖ばかり感じていたが、今では一種の好意すら持てた。それが本来の性格であるのかは定かではないが――
市川の足を治療している羽嶋が口を開いたのはその時だった。
市川の足を治療している羽嶋が口を開いたのはその時だった。
「これは夢――そして、この悪夢を醒ますのを妨げるは旧支配者か――俺も今すぐこんな夢から逃れたいが、親父を救いだすまではここから逃げる訳にはいかん。鬼原組の在り処が分かればいいんだがな――」
その言葉を聞いた癒依は何か思い返したかのように立ち上がった。
「鬼原組!?この中に入っている時にそういう組織が"金岡区の工場街"にあるのを聞きました!」
金岡区といえば、唯一海に面している街であるが故に色んなメーカーの工場が集まっており、その為に冴川市の中では下台区と肩を並べるほどの重要な地域と言われている。その中にある中小工場が密集している部分が"金岡工場街"と呼ばれていて、それは期待の工場群とも呼ばれているが、まさかそこを縄張りにしてあるとは――となると、もしかしたら坂東淳子が探していた実の弟である坂東彰人もそこにいるのではないか?
――とりあえず訪れる必要は有りそうだ。
――とりあえず訪れる必要は有りそうだ。
「そうか――そこにいるのだな。だが、もしも中田とお前達が言っていた男ほどの実力を持つ敵と戦うとなると――ああ、流石にこれは俺も自ら行かなければならない。白河、お前はそこら辺にいる悪魔を倒せる自信はあるか?」
羽嶋が質問したにもかかわらず、白河はそっぽを向いて彼を完全に無視した。
「返事をしないという事は別に倒せる自信があるという事だ――いいだろう。俺も同行するぞ」
「おいおいっ、本当にそれでいいのかよ?確かにアイツは結構強いかもしれねぇけどよ――」
「いや、俺はアイツを信じよう。それにこんな状況で『自信はあるか?』と聞かれて否定しないという事は自分が強い力を持っている事の裏付けへとなるからな。それにアイツの他に市川さんと5人の生き残りだっている」
「――行っている最中に悪い事が起こらなければいいんですけどね」
会話の最後に躊躇った口調でそう言ったのは稲見だった。
「おいおいっ、本当にそれでいいのかよ?確かにアイツは結構強いかもしれねぇけどよ――」
「いや、俺はアイツを信じよう。それにこんな状況で『自信はあるか?』と聞かれて否定しないという事は自分が強い力を持っている事の裏付けへとなるからな。それにアイツの他に市川さんと5人の生き残りだっている」
「――行っている最中に悪い事が起こらなければいいんですけどね」
会話の最後に躊躇った口調でそう言ったのは稲見だった。
冴川市金岡区にある、海の傍にある屈強な男に占領された工場街――その入口の前に一台のオートバイが停まった。ちょうど、見張りとして銃器を持ちながら立っていた屈強な面をした男はオートバイの運転手が敵の兵装をした故か、それを警戒したがそのオートバイの運転手が腰につけている刀を見せつけるかのように軽く振るわせると、途端にその男は銃を下げた後に「すいませんでした」と頭を下げながら、オートバイの運転手だった男をみすみすと通す――
沢山の屈強な男達がビシッとした姿勢で見守る中で彼は他の工場よりも一回り大きい工場に入り、その工場のとある一室に入った。
沢山の屈強な男達がビシッとした姿勢で見守る中で彼は他の工場よりも一回り大きい工場に入り、その工場のとある一室に入った。
「待たせたな。"風間"」
"風間"と呼ばれたその男は少し馴れ馴れしくも、凛々しい態度で男を迎え「若、例のターゲットは見付かりましたか?」と待ち兼ねたかのように質問する。男は「そいつらの兄が丁度来たからな――渡しておいたよ」と何気ない口調で答え、それを聞いた風間は少し驚いた様な表情をした。
「渡したって、そんなんでいいんですか。彼女達の兄を装った天羽教会の回し者かもしれねぇですし――それに仮に本物だとしても旧支配者の連中なんかが来たら明らかにやられると思いますぜ。まぁ、グラーキは若が倒しに行く前に誰かによって倒されたらしいですがね。“坂東彰人”副組長」
その言葉をまるで聞き流したかのように彰人と呼ばれた男はヘルメットを脱いだ。そのヘルメットの下に隠されていた顔は一見荒々しく見えていたが、同時に真っ直ぐな眼差しを常に突き通している。
「確かにアイツらは未熟だったな――でもよ、決して弱そうには見えなかったぞ。それに本当に天羽教会の回し者――いや、鷺月京谷の回し者だったら俺なんかに決してビビりはしなかった筈だ。案外グラーキを倒せたのもアイツらかもしれないな」
そんな言葉を聞いた風間は呆れる様に彰人から目を逸らした。すると一本の受話器が鳴りだし、それをダルそうに手を取り「こちら風間将十だ。どうした?」と彼が言ってから暫く立った時の事だった。彼は表情をしかめながら「くそッ――面倒な事になりやがった――」と言い放ち、気になった彰人は「どうした、風間」とききかえした。
「"例の奇病"のせいで厄介な事になっちまいました。皮肉な事に例の奇病で狂っちまった収容所の看守が、例の奇病に掛かった奴らの檻の鍵を全て開けちまったらしいんです」
それを聞いた坂東は一気に驚いた表情を見せて焦りながら「おい!それは、"金沢光行"も含めてか――!」と聞いたが、その答えは結局彼らにとっては不都合な物だった。
「あぁ、その様ですぜ」
「チッ!」と舌打ちをしながら壁を強く叩いた彰人は風間に「お前は入り口にアイツらが出るのを防げ!俺は仲間を助ける。いいか!親父の待機命令とかには従うんじゃねぇぞ――部下共の責任くらい俺が全部取ってやるさ」と指示し、足早に部屋を出た。風間も溜息をついた後「仕方ない、俺も行くか」と言い、落ち着いた様子で部屋から出て行った。
蔵田、稲見、羽嶋――そして僕が金岡工場街の入り口の前まで辿りつくと、二本のタガーナイフを構えた長身の男性が狂った様に襲いかかってくる屈強な男をその刃を用いて軽々となぎ倒している姿が見えた。
「おいおい、一体何が起こってんだよ?」
蔵田の声に反応した長身の男性は狂乱に陥った全ての男を片付けた途端に「誰だ」と小さい声で叫びながらタガーナイフを静かに僕たちの方へ構える。暫くは僕たちと男との真剣な睨めっこになっていたが、それが馬鹿らしく感じたのか男はナイフを回した後に気だるそうな表情で「お前達は一体何しにここに来た。天羽教会の連中だったら速攻で斬り伏せてやるぞ」と質問と脅迫を交えながら言い放った。命の危険を感じた稲見はすぐに「わっ、私達は坂東彰人さんと羽嶋博文さんへ会いに――」と半分パニック状態になりながら答えたが、それを聞いた彼は少し驚いた表情を見せ、「お前ら――博文はともかく何処で若の名前を聞いた?」と警戒を交えながら返事を返す。それに対して羽嶋は淳子から貰った坂東彰人の写真を見せながら「これは彰人の姉である淳子先輩から貰った物だが―― これで信じてもらえるか?俺は彼女から彰人を探すように言われた」と、この先を通して貰えるように長身の男を促すことを試みた。
その途端に長身の男性は考える。僕達を通すか、通さないか――その思考の先に出てきた答えがこれだ。
その途端に長身の男性は考える。僕達を通すか、通さないか――その思考の先に出てきた答えがこれだ。
「実はある"奇病"によって狂ってしまった奴らが全員脱出して暴れ回ったんだが、その中にとてつもなく厄介なのが混ざっている。そいつは鬼原組の三大幹部の一人である"金沢光行"だ。そいつを黙らせたら、若にあわせてやろう」
鬼原組三大幹部――京崎ショッピングホールで淳子が言っていた。『敵に回したら厄介』だと――しかし、ここで博文さんを連れて帰れば後はもう下台総合通信塔へ行けばいい。ここは彼に従っておこう。その僕の決定に対して蔵田が「おい、大丈夫かよ?先輩でさえも言ってただろ?『鬼原組はとんでもない奴ら』だって」とそれを止める様に言い放ったが、それを聞いた長身の男性は「確かに俺の言う事を信じるも信じないも勝手だが――それ以外に条件は出せないな。と言ったらどうする?力ずくで行ったら若や“俺達”三大幹部まで敵に回す事になるぞ。それでもいいなら俺と戦ってから通れ」
彼が三大幹部の一人だったのを知ると、蔵田は口の動きをピタリと止めた。また沈黙の時間が始まったが、羽嶋が前に出て「分かった。あんた達に従っておこう」と彼に答える。すると、男はニヤリとしながら「ということは、条件を呑んだとしてみてもいいんだな?」と聞くと、羽嶋は躊躇もせずに頷いた。
彼が三大幹部の一人だったのを知ると、蔵田は口の動きをピタリと止めた。また沈黙の時間が始まったが、羽嶋が前に出て「分かった。あんた達に従っておこう」と彼に答える。すると、男はニヤリとしながら「ということは、条件を呑んだとしてみてもいいんだな?」と聞くと、羽嶋は躊躇もせずに頷いた。
「いいだろう。ならまずは金沢の現在の居場所を教えてやる。奴はこの入り組んだ工場街の中央にある倉庫で俺の舎弟共に取り押さえられている筈だ」
「質問がある。その金沢光行とか言う奴の持っている悪魔はどんな能力を持っているんだ。それを聞きたい」
「アイツの使う悪魔は特に特別な能力とかは持ってない。だが、アイツの使う悪魔はダイアモンドの様に硬くて山の様にでかい。だからアイツの悪魔を止めるのは若でも結構手間取るぞ」
「質問がある。その金沢光行とか言う奴の持っている悪魔はどんな能力を持っているんだ。それを聞きたい」
「アイツの使う悪魔は特に特別な能力とかは持ってない。だが、アイツの使う悪魔はダイアモンドの様に硬くて山の様にでかい。だからアイツの悪魔を止めるのは若でも結構手間取るぞ」
羽嶋は「分かった。では、そいつを倒しに行こう」と言い残し、後は無言で先へ進もうとした。僕たちも彼を追うように先へ進んだが、微かに僅かな殺気が遥か遠い場所から届いた様な気がするのだ。少なくともあの男からの殺気とは到底思えないが――気のせいであって欲しい。
僕たちは己の方向感覚を頼りにして地図も何もない工場街の中央にある倉庫まで向かった。坂東彰人に会う為に――金沢光行を倒す為に――。
「にしても、坂東彰人か――あの男がこの異変にどんな関係性を持っているのかが知りたいものだ。親父を何故保護するかという点も含めてな」
そういえば、そもそも何で博文が九頭精神病院に連れてこられたのか――『実はここはコンピューター上の仮想空間』だったならば技術者として利用できるかもしれないが、なにしろこれは仮想空間どころか人が眠る時に見る“夢”だ。プログラムで何とかなる物ではない。だが、個人的に何よりも謎なのが『春山が博文の仕事部屋の鍵を持っている』と言う事だ。あんな小物臭い男と博文にどんな関係があるのだろうか?
それに旧支配者――分からない事ばかりだ。
それに旧支配者――分からない事ばかりだ。
「おいッ!前から敵が来るぞ!」
蔵田の呼びかけによって僕たちは身構えた。そう、前から屈強な男が狂った様な顔つきをして襲ってくるからだ!武器を持たない羽嶋はそこら辺にあった鉄パイプを拾い、それで屈強な男の腹を槍の様に強く着いた。しかし、それで強く吹っ飛ばされても男はまだ襲いかかってくる。
「仕方ない」
羽嶋は「来い――"オモイカネ"」と静かに呟きながら、自分の正面に全身に様々な文字が書かれてある巻物を包帯の様に巻き、そして古い書物を黙々と読んでいる悪魔を召喚した。
「知恵有りし者よ――汝に夢求めし力があるならば、我はその力を持ちて汝に力を貸そう」
オモイカネと思われるその悪魔が重みのある声で呟いた途端に、彼は呪文を唱えた。すると、男は何も触れていないのにも拘らず、壁まで吹き飛ばされて唾を吐きながらその場で倒れ込んだ。羽嶋がオモイカネを自身へ還した後に彼は「どうやら俺の悪魔は気流を変えることができるらしいな――」と呟く。僕たちは彼の力に感心した様だ。これなら中田も倒せるかもしれない――
――◇――
あの時から結構歩いた後の事だった。狂乱に陥った男の相手をしながらも、退屈になった僕はこれまでの出来事を振り返る事を彼らに提案する――
「そういや、俺達って何からこんな事になったんだっけな――」
「確か、朝に先輩達と一緒に九頭公園で待ち合わせしていた時です。冴川市があんな事になってすぐに私は死にそうでしたけど、先輩達のおかげで助かりました」
「本当に稲見ちゃん危なかったよなぁ――もう少しでゾンビ共の仲間入りする所だったぜ。俺だってもう気が狂っていると思うんだけど、よくここまで保てたよな。正直、自分でも結構驚いているんだぜ」
「敵や悪魔も沢山いたが、お前達を助けてくれた人だって結構いた筈だ。気が保てたのはその人たちのおかげではないのか?」
「市川さんに、淳子先輩に、見張りの兵士に紛れた人――誰も私の中では輝いて見えました」
「その内の一人の弟さんにもこれから会うんだろ?そう、暴れている奴を止めてな――」
「確か、朝に先輩達と一緒に九頭公園で待ち合わせしていた時です。冴川市があんな事になってすぐに私は死にそうでしたけど、先輩達のおかげで助かりました」
「本当に稲見ちゃん危なかったよなぁ――もう少しでゾンビ共の仲間入りする所だったぜ。俺だってもう気が狂っていると思うんだけど、よくここまで保てたよな。正直、自分でも結構驚いているんだぜ」
「敵や悪魔も沢山いたが、お前達を助けてくれた人だって結構いた筈だ。気が保てたのはその人たちのおかげではないのか?」
「市川さんに、淳子先輩に、見張りの兵士に紛れた人――誰も私の中では輝いて見えました」
「その内の一人の弟さんにもこれから会うんだろ?そう、暴れている奴を止めてな――」
蔵田はそれを言い終えたと同時に立ち止まった。そう、正面に見える中央倉庫の前から沢山の死体と、金沢と思われる荒々しい表情をした屈強な男が立っていたからだ。
「殺す――何もかも殺す――」
羽嶋は「来るぞ。気を付けろ」と言いながらさっさと身構えた。僕たちも金沢の荒々しい瞳をじっと見つめながら、強く身構える――その途端に僕の脳裏にはある光景が見えていた。
――◇――
どこかで見た事がある様な病院の庭にて、両生類の様な肌を所々に露出させた頑丈な鎧を着た3m位はある人型の悪魔が一人の兵士の顔を強く握っている姿と、周りにとてもこの世にあるとは思えない程酷い殺され方をされた死体が沢山転がっている光景が見えていた――
「何処だ――憎き"クタニド"の魂を宿す女は――」
その声は怨念がこもった様に低く、そして震えるほどに威圧感がある声だった。そして、その声は顔を掴まれている兵士へと呼びかける
「だっ、誰だよ――そいつ――葉月癒依と葉月藍香というガキの女なら――さっき連れてかれ――グバゥ」
兵士の首は悪魔によって握りつぶされた。そう、グシャッという音を大きく立てながら。最後に悪魔は「ああ、大いなるクトゥルーよ――私は貴方の騎士として生きる"オトゥーム"の名にかけ、必ずやクタニドをこの手で永劫の狂気へと陥れてみせましょう」と言い残し、九頭病院を去って行った――僕はある程度分かっていた。これがこの夢を取り巻く真の恐怖が僕たちの元へと訪れる前兆である事を――
イア、ダゴン――イア、ハイドラ――イア、イア、クトゥルー――
To Be Continued...
第八話 憤怒
(マジグロ描写注意)
金沢光行は発狂していた。だが、彼には明らかにまだ感情が残っていた。そう、憤怒の感情を持ち――そして、蔵田の挑発によってその怒りが最高潮になった時に彼は遂にその恐るべき悪魔を呼び寄せてしまった。
「"カリカンツァロ"ォォォォォォォォ!」
その叫びと共に眼前に現れた圧倒的な巨体を持つ怪物は人間の面影はあるものの、黒い顔に紅い目にロバの様な耳、それに吸血鬼を連想させる様に血を垂らしている巨大な牙を持っていた。その強大なる姿は蔵田のホノカグツチの5倍はある様な気がする――
「確かにこんな奴らを一遍に敵に回したらヤバいかもな――」と蔵田は震えながら笑っている。カリカンツァロと呼ばれた悪魔はその巨大な腕で僕らを押し潰そうとしたが、間一髪で蔵田が召喚したホノカグツチがそれを受け流した。しかし、強大な腕の予想を遥かに上回るパワーにホノカグツチはもうカリカンツァロの攻撃を受け止められそうになかった。
「確かにこんな奴らを一遍に敵に回したらヤバいかもな――」と蔵田は震えながら笑っている。カリカンツァロと呼ばれた悪魔はその巨大な腕で僕らを押し潰そうとしたが、間一髪で蔵田が召喚したホノカグツチがそれを受け流した。しかし、強大な腕の予想を遥かに上回るパワーにホノカグツチはもうカリカンツァロの攻撃を受け止められそうになかった。
――奴の使う悪魔はダイアモンドの様に硬い
その言葉を思い返した僕はそれが本当か確かめる為にイザナギを召喚し、カリカンツァロの足を斬り裂こうとしたがやはり傷一つもつかなかった。すぐにイザナギを離れさせようと思ったが、カリカンツァロに蹴られたイザナギはとても強く奥まで吹っ飛ばされる。
確かにカリカンツァロはダイアモンドの様に硬かった。なら、どうすればいいか――それは宿主である金沢光行を直接食い止めるしかない。金沢を倒す事を提案した僕は他の3人からの賛同を得て、自ら金沢のすぐ近くまで向かった。しかし、すぐにカリカンツァロの巨大な手によって道が塞がれてしまい、イザナギに金沢を止めてもらおうとしたが足で蹴られた時によるダメージが余りにも深刻で一歩も動く事ができなかった。僕をふさいでいたカリカンツァロの手は僕を握りつぶそうとする――
「危ない!」という稲見の叫び声と共に現れた彼女の悪魔であるアメノウズメの魔術によってカリカンツァロの手は凍り、僕は彼女に感謝しながらすぐにこの場を離れて3人の元まで戻った。だが、振り向けばすぐにカリカンツァロの手は自らを覆う氷の呪縛を振り払っていた。その時に生じた隙で僕たちは全員でコンテナ置き場の陰に隠れる事に成功したがここもすぐに見つかるだろう――。
確かにカリカンツァロはダイアモンドの様に硬かった。なら、どうすればいいか――それは宿主である金沢光行を直接食い止めるしかない。金沢を倒す事を提案した僕は他の3人からの賛同を得て、自ら金沢のすぐ近くまで向かった。しかし、すぐにカリカンツァロの巨大な手によって道が塞がれてしまい、イザナギに金沢を止めてもらおうとしたが足で蹴られた時によるダメージが余りにも深刻で一歩も動く事ができなかった。僕をふさいでいたカリカンツァロの手は僕を握りつぶそうとする――
「危ない!」という稲見の叫び声と共に現れた彼女の悪魔であるアメノウズメの魔術によってカリカンツァロの手は凍り、僕は彼女に感謝しながらすぐにこの場を離れて3人の元まで戻った。だが、振り向けばすぐにカリカンツァロの手は自らを覆う氷の呪縛を振り払っていた。その時に生じた隙で僕たちは全員でコンテナ置き場の陰に隠れる事に成功したがここもすぐに見つかるだろう――。
「どこだあああああああ!ゴミ共はああああああああ!」
金沢の激しい叫び声はいつまでも続いている――
「クソ――こんな化け物どうやって相手すりゃいいんだよ!金沢の奴を倒そうとしてもデカブツが邪魔してくるしよぉ!」
「確かにアイツの使う悪魔がこれほどまでに強大だとは思わなかったが、俺に単純な作戦がある。まず、俺が悪魔を使って強風を起こしあの悪魔を怯ませておく。その隙に葉月と蔵田で金沢を潰してこい。稲見はそれのサポートだ」
「本当にそんな作戦で行けるんですか?」
「それは『この夢を本当に脱出できるか』と言っているのと同じだ。諦めていいのは、本当に選択肢が無い時だがな」
「確かにアイツの使う悪魔がこれほどまでに強大だとは思わなかったが、俺に単純な作戦がある。まず、俺が悪魔を使って強風を起こしあの悪魔を怯ませておく。その隙に葉月と蔵田で金沢を潰してこい。稲見はそれのサポートだ」
「本当にそんな作戦で行けるんですか?」
「それは『この夢を本当に脱出できるか』と言っているのと同じだ。諦めていいのは、本当に選択肢が無い時だがな」
蔵田はニヤリと笑いながら「いいじゃねぇか、死を覚悟したつもりでアイツの所まで突っ走ってくるぜ」と自信ありげに言った。すると羽嶋は3つの指を立てながら「作戦開始の合図は立てた指の数が0になってからだ」と言った後に「3,2,1――」と指を一本ずつ曲げる――やがて来た「0」という掛け声と共に、羽嶋は再びオモイカネを召喚してこの建物の屋根すら紙同然と思えるほど強い強風を巻き起こした。余りの強風に思わず怯んだカリカンツァロと金沢を見た蔵田は「さあ行くぜ!葉月!」と叫びだし、僕と共に金沢まで全力で走り出した。
金沢まではそう遠くない――そう思いっていた時に前からカリカンツァロの手が羽嶋の悪魔であるオモイカネが作り出す強風に耐えながら必死に道を閉ざそうとした。しかし、稲見の指示によって魔術を使ったアメノウズメによりカリカンツァロの手は凍りつく――
金沢まではそう遠くない――そう思いっていた時に前からカリカンツァロの手が羽嶋の悪魔であるオモイカネが作り出す強風に耐えながら必死に道を閉ざそうとした。しかし、稲見の指示によって魔術を使ったアメノウズメによりカリカンツァロの手は凍りつく――
――あともう少しだ!
僕は心の中で叫んだ。何故なら金沢の元まであと少しなのだから――しかし、突然僕の心からは勝利の予感を全く実感しなくなった。
何故か僕の真下に金沢の姿が見える。
何故か僕は彼を通り過ぎる。
何故か蔵田は僕に向かって唖然とした表情を見せている。
何故か僕は彼を通り過ぎる。
何故か蔵田は僕に向かって唖然とした表情を見せている。
――背中に激痛が走る。
――◇――
イア、ダゴン――イア、ハイドラ――イア、イア、クトゥルー――
視界は魚の目の様に歪んでおり紅く染まっていた。その視界は"ベチャ"という足音を気味悪く立たせながら前へ進んで歩いてくる――
ベチャ――
ベチャ――
ベチャ――
ベチャ――
ベチャ――
ふと意識を取り戻すと、目の前にに蔵田と稲見と羽嶋の顔が見えた。まだ視覚と聴覚がぼやけている――だが、稲見が
驚いた様な顔をしながら「せっ、先輩!?気が付きましたか!?」と言われたのには気付いた。遂に自分が倒れている事に気付いた僕はその場をすぐに立ち上がろうとしたが、その時に背中から激痛を感じた。その時に僕は思い出す。金沢を倒せるあと一歩の所でカリカンツァロの手に後ろから吹っ飛ばされ、気絶した事を。そして――「ごめんなさい、先輩――私が油断なんてしなければ――」と謝る稲見を止める様に羽嶋は「自分を責めるより先にこの勝負に勝った事を喜べ」と彼女に言い放った。
驚いた様な顔をしながら「せっ、先輩!?気が付きましたか!?」と言われたのには気付いた。遂に自分が倒れている事に気付いた僕はその場をすぐに立ち上がろうとしたが、その時に背中から激痛を感じた。その時に僕は思い出す。金沢を倒せるあと一歩の所でカリカンツァロの手に後ろから吹っ飛ばされ、気絶した事を。そして――「ごめんなさい、先輩――私が油断なんてしなければ――」と謝る稲見を止める様に羽嶋は「自分を責めるより先にこの勝負に勝った事を喜べ」と彼女に言い放った。
「結論から言おう――俺たちではカリカンツァロを止める事は出来なかったが、蔵田が金沢光行を殴る事によって金沢光行を止める事は出来た」
金沢は倒したが、結局カリカンツァロはどうなったのか――その答えは周囲を見渡した途端にすぐに分かった。そう、縦に真二つに切断されたカリカンツァロと鎖で縛られている金沢の傍に刀を持った男が立っているからだ。すると、男は「また会ったな」と言いだす。何の事かサッパリ分からない僕に蔵田が教えてくれた。
「ほら!あの人だよ!病院で何度も俺達を助けてくれた人だよ!あの人が淳子彰人さんだったんだぜ」
そんな事を聞いた僕は男が腰に掛けている刀を見て、すぐに彼が病院で僕達を助けた男――そして、彼こそが淳子先輩の弟である"坂東彰人"である事を悟った。
「まさか、ここの位置が分かるとはな――誰に教えてもらったんだ」という彰人の問いに対して癒依の名前を挙げると、彼は考える様に一息吐き僕たちに近づいた。
「まさか、ここの位置が分かるとはな――誰に教えてもらったんだ」という彰人の問いに対して癒依の名前を挙げると、彼は考える様に一息吐き僕たちに近づいた。
「さて、ここに来たからには用件があるんだろう?さあ、用件を言え」
「俺の親父――羽嶋博文を返して欲しいのです」
「俺の親父――羽嶋博文を返して欲しいのです」
羽嶋の即答を聞いた途端に彰人は怒りの表情を見せた。すると彼は「羽嶋博文なら鬼原組の本部に居た」と言い、羽嶋はそれに対して「じゃあすぐに――」と言おうとしたが、彰人は更にこう言った――
「どういう目的でやってるか分からねぇがボスがよ――あの糞親父がよぉ――」
天羽教会の奴に羽嶋博文を渡しやがった――
羽嶋だけでは無い。僕たち全員が驚いた。
「どういう事なんですか!彰人さん!鬼原組は天羽教会の敵対組織じゃなかったのかよ!」
「知らねぇよ――あの糞親父は俺にさえもその目的を教えてくんねぇんだよ――」
「知らねぇよ――あの糞親父は俺にさえもその目的を教えてくんねぇんだよ――」
羽嶋は荒い息をもらしながら壁を強く蹴った。羽嶋のその様子を見た彰人は少し目を逸らした後に彼にあるプランを提案する。
「俺達が全力で天羽教会の本拠地を探してくる――その間にお前達には旧支配者の一人である"オトゥーム"を殺して欲しい。これは――お前達の実力を見込んでの頼みだ」
オトゥームという言葉を聞いた途端に僕は少し震え始めた。その時、微かに蔵田も震えた気がする――
「前から気になっていたんですけど――"旧支配者"って何ですか?」
「旧支配者――それは、太古に"沢山の宇宙"を作り、この地球を支配していた“恐怖と混沌をを好む”邪神達の事だ。全ての黒幕である“鷺月京谷”という男はこの夢を“弄ぶ”にあたって誤算が少し出てきてしまった。それが三体の旧支配者の出現だ。
これから倒すのが"オトゥーム"、所在地不明なのが"イタクァ"、そして既に殺されたのが"グラーキ"――」
「待って下さい!グラーキっていう奴なら、葉月先輩と蔵田先輩が私を助ける時に倒しました」
「やはりお前達が倒したのか――じゃあ、尚更だ。“京崎水族館”に住まう旧支配者オトゥームを殺せ」
「旧支配者――それは、太古に"沢山の宇宙"を作り、この地球を支配していた“恐怖と混沌をを好む”邪神達の事だ。全ての黒幕である“鷺月京谷”という男はこの夢を“弄ぶ”にあたって誤算が少し出てきてしまった。それが三体の旧支配者の出現だ。
これから倒すのが"オトゥーム"、所在地不明なのが"イタクァ"、そして既に殺されたのが"グラーキ"――」
「待って下さい!グラーキっていう奴なら、葉月先輩と蔵田先輩が私を助ける時に倒しました」
「やはりお前達が倒したのか――じゃあ、尚更だ。“京崎水族館”に住まう旧支配者オトゥームを殺せ」
京崎水族館――冴川市最大の京崎区にある水族館であり、かなりの土地面積を持っているが故に両生類の様な悪魔には打ってつけの住処だ。
――?何故、僕はオトゥームの姿を知っているのだろうか?その理由を思い出す度に頭が痛くなってくる――
「とりあえず、入口に俺の部下がいただろう?そいつに連絡を取るからお前達は先に入り口に向かえ。車で京崎水族館まで送ってやる。しかし――どうして俺の名前を知っていたんだ?」
「あっ、それは淳子先輩に『探してくれ』って頼まれて――」
「あっ、それは淳子先輩に『探してくれ』って頼まれて――」
その途端に彰人は冷静なイメージを崩壊させる程に顔を真っ青にしながら「姉貴がここにいるだと!?」と叫び、「いいか!姉貴を見つけたらすぐにここの場所を教えろ!」と僕達を早く行かせるように激しく促した。
入り口で会った長身の男が運転する黒い車に僕たちは乗っていた。夕暮れの空の中、京崎区にある水族館に向かい、オトゥームという謎の悪魔を倒す為に――
「まさか本当に金沢を止める事ができるとはな――奴の悪魔を止める事は出来なかったが、金沢を倒した事に免じて俺の名前を教えてやる。俺は鬼原組三大幹部の一人"風間将十"だ。
まぁ、京崎水族館までは“俺が全力で安全運転してやって後10分位”だがそれまで俺がお前達に情報をくれてやる。ついでに雑談だが、若は“淳子ちゃん”の名前を聞いたら焦っていただろ?若は淳子ちゃんの事になるとアホみたいに慌ててくれるからな。淳子ちゃんを目の前にした若をよく観察してみろよ。“面白いぞ?”」
「は、はい――」
まぁ、京崎水族館までは“俺が全力で安全運転してやって後10分位”だがそれまで俺がお前達に情報をくれてやる。ついでに雑談だが、若は“淳子ちゃん”の名前を聞いたら焦っていただろ?若は淳子ちゃんの事になるとアホみたいに慌ててくれるからな。淳子ちゃんを目の前にした若をよく観察してみろよ。“面白いぞ?”」
「は、はい――」
全力で安全運転と言っても車の時速は既に150kmを軽く越していた。とても安全運転とは全く言えないだろう。しかも、既にそこら辺の悪魔を何体か轢いており、流石無茶苦茶すぎると思った。
にしても、いくらなんでも目上の人を舐めすぎているだろう。
にしても、いくらなんでも目上の人を舐めすぎているだろう。
「俺が教えられる情報は2つある。"悪魔を召喚できる力について"と"黒幕について"だ。どっちから先に行って欲しいか言え」
「あっ、最初っから順番に言って結構ですよ」
「分かった。悪魔を召喚できる力を俺達は"夢見る力"と呼んでいるが――悪魔を召喚できる力が"夢見る力"と呼ばれている理由が理解できるか?」
「あっ、最初っから順番に言って結構ですよ」
「分かった。悪魔を召喚できる力を俺達は"夢見る力"と呼んでいるが――悪魔を召喚できる力が"夢見る力"と呼ばれている理由が理解できるか?」
僕は悪魔を召喚できる力を手に入れた時の話を思い返した。すると、仮面の男の顔が浮かんできた――そうか!この力を手に入れた者は全てこの夢を通して手に入れていたのか!
「その答えは正解と外れで半々だな。夢見る力を持っている者の名前を夢見る者と呼んでいるが、実は"純粋な夢見る者"と"魔術師としての夢見る者"で分ける事ができる。実は、鬼原組にも天羽教会にも関与してない人間は全員夢見る力を持っているが遂この間に、その一般人全員が『夢見る力を手に入れる前に仮面の男に話しかけられる夢を見た』と言いだした。
それに対し、俺達鬼原組や天羽教会の奴らは魔術によって夢見る者になった。俺も若も――そして念の為に淳子ちゃんにもその能力を使えるようになったんだ。その魔術を編み出した"春山学"にな」
「ハッ!?あんな奴がその魔法を編み出したのかよ!?」
「ん?アイツを知っているのか?」
それに対し、俺達鬼原組や天羽教会の奴らは魔術によって夢見る者になった。俺も若も――そして念の為に淳子ちゃんにもその能力を使えるようになったんだ。その魔術を編み出した"春山学"にな」
「ハッ!?あんな奴がその魔法を編み出したのかよ!?」
「ん?アイツを知っているのか?」
知ってるも何も――京崎ショッピングホールで敵かと思ったら、九頭精神病院で急にぺらぺらと情報を喋り出した噛ませ犬だ。あんなのがそんな魔術を編み出せるとは――
「ということは、まさか春山は若に仕返しをする為だけにわざわざ夢見る力を宿して此処に来たというのか!?はぁ――あの男もよく頑張るもんだ。まぁ、次に黒幕についてだが――結論から言おう。間違いなくこの夢の全ての悲劇の原因は"鷺月京谷"だ」
鷺月京谷――何度も聞いたことがある名前だ。博文が残したメッセージを見た時が最初だが、その男がどんな人間かまでは分からない――
「鷺月は人間でありながら全ての悪魔を遥かに超越する力を持っている。奴の強大な能力については明らかになってないが、現時点で明らかになっているのは奴が"軍隊"を持っているという事だ」
「」
「その軍隊は"フルートの従者(ATF)"と言うんだが、たったの"23人"しか居ない少数軍隊にも拘わらずあらゆる次元や空間を超えて、フルートを狂人の様に吹きながら“そこの宇宙”を混沌なる世界に戻した気味の悪い軍隊だ」
「」
「その軍隊は"フルートの従者(ATF)"と言うんだが、たったの"23人"しか居ない少数軍隊にも拘わらずあらゆる次元や空間を超えて、フルートを狂人の様に吹きながら“そこの宇宙”を混沌なる世界に戻した気味の悪い軍隊だ」
次元――?
空間――?
空間――?
一体、それはどういう事なのか。“そこの宇宙”と言う言葉が全く理解できなかったが何かがそれの意味を聞くのを止めた――
――◇――
イア、ダゴン――イア、ハイドラ――イア、イア、クトゥルー――
また聞こえてくる。見えてくる。恐怖の悪魔の姿が――唱えながら近づいてくる――そこからは蠅が集る花屋が見え、狂人が書いた様な絵が見え、そして一回り大きい家の前で黄昏の空を見上げている背の高い青年の姿が見え――また唱える。
「見つけたぞ――憎きクタニドを宿す者よ――さぁ、永劫の恐怖に落ちるが良い――
見つけたぞ――全ての源"ウボ=サトゥラ"が失いし知能よ――さぁ、我々と一緒に戦おう――」
見つけたぞ――全ての源"ウボ=サトゥラ"が失いし知能よ――さぁ、我々と一緒に戦おう――」
悪魔はまず青年の傍まで走り出し、彼が驚いた表情を見せている内に腹を腕で――
前を振り向けば、偶然にも九頭精神病院の建物の姿が見えたが明らかにおかしい。所々が"赤のペンキ"に染まっているのだから――風間もこの病院を知っているのか、それが気になったのか、車を止めた後に僕達と共に九頭精神病院の庭を覗いた。すると、口を押さえる程の異様な光景が広がっている――
赤のペンキ?違う。狂気の腐臭を漂わせる"血肉"だ――
赤のペンキ?違う。狂気の腐臭を漂わせる"血肉"だ――
「どういう事だよ――これ」
庭は明らかに“不浄”をかき集めた血肉の海と化していた。死んでいる天羽教会の兵士は全てが、余りに酷すぎる姿を晒しながら怯え笑いと苦しみを混ぜた様な表情をしている――
――◇――
血肉(チニク)――
切断(カット)――
内臓(Organ)――
切断(カット)――
内臓(Organ)――
――Terror
IA DAGON―― IA HYDRA―― IA IA CTHULHU――
――◇――
もうイヤだ!こんな所に一秒たりとも居たくない!早く逃げよう!
「待て!」
そう叫んだのは風間だった――正面を向くと、血のついた50cmはある奇怪な形をした足跡がずっと奥まで残っている。蔵田の「おいっ、これ俺達が病院まで向かった時に通った道じゃ――」という言葉によってかなり嫌な予感がした。すると、羽嶋は告げる――
「どうやら既にオトゥームとかいう奴は殺しに行ったらしい――」
最早凍りつく気力すら無い――数々の恐怖によって狂気が絶頂に達しそうになり、正気を失いそうだったからだ。視界が大きく歪んで見える――
「手遅れだと思うが――葉月癒依と葉月藍香の居場所まで案内してくれ」その言葉と共に僕達は車に乗り、羽嶋の家まで向かった。どうか殺されないで欲しい――
「手遅れだと思うが――葉月癒依と葉月藍香の居場所まで案内してくれ」その言葉と共に僕達は車に乗り、羽嶋の家まで向かった。どうか殺されないで欲しい――
――◇――
あっという間に羽嶋の家に辿りついた僕たちは車からすぐに降りて正面を見上げた。その途端に心臓の鼓動がまるで金槌にでも打たれたかの様に強く震える――
「に、にげろ――!今すぐ――」
正面には白河が腹に流れる血を抑えながら苦し紛れに倒れていた。
正面には右手を切断された市川が何もできずに立っていた。
正面には5人の生き残りの内の一人が震えていた。
正面には5人の内の三人が狂った様にもがいていた。
正面には5人の内の一人が"見えざる何か"に首を掴まれていた。
正面には右手を切断された市川が何もできずに立っていた。
正面には5人の生き残りの内の一人が震えていた。
正面には5人の内の三人が狂った様にもがいていた。
正面には5人の内の一人が"見えざる何か"に首を掴まれていた。
そして、正面には癒依と両生類の藍色に近い肌を所々に露出させた古い黄金の鎧を付けた騎士を思わせる姿をした悪魔が立っていた――その悪魔の傍には癒依と藍香が倒れている――
「間違いない――アイツが旧支配者の一人"オトゥーム"だ」
僕も蔵田も稲見も羽嶋も、そして風間でさえもオトゥームのおぞましい姿に震えていた。すると、オトゥームは鎧によって見えざるその顔を僕たちの方へ見せる――
「貴様らか――グラーキを倒した愚かな夢見る者は――」
その声は呪文のように重かった――アイツが九頭精神病院を一瞬で血肉の海にさせた旧支配者――
「おいッ!てめぇ!これ以上この人たちになんかやったら本気で許さねぇぞ!」
蔵田の怒鳴り声に対してオトゥームは嘲笑うかのように言い放った。
「この私を見て屈せぬとは口だけは達者の様だ。だが、戦場を支配するのはおぞましい恐怖――そして、狂気であろう?それを今から私がお前達に見せつけてやる」
すると、“見えざる何か”に首を掴まれている若い男に向かってオトゥームは歩き出し、そして彼の"顔の周りを爪で深く刻んだ"。それを見た蔵田はいち早くオトゥームがこれからやる事に気付き、叫びながらオトゥームに殴りかかるが彼も“見えざる何か”に電信柱まで突き飛ばされる――
「さあ、見るがいい!そして感じよ!真の恐怖を!」
「やめろぉ!!」
「やめろぉ!!」
彼の叫びを全く聞かなかったのようにオトゥームは怯える男の額を鷲掴みにし後にそれを下に強く引っ張る――
顔の皮膚を亡くした彼は“見えざる何か”に遠くまで投げ飛ばされ、男の顔の皮膚は地面に捨てられた後にオトゥームによって踏み潰された。
顔の皮膚を亡くした彼は“見えざる何か”に遠くまで投げ飛ばされ、男の顔の皮膚は地面に捨てられた後にオトゥームによって踏み潰された。
「ヒヒヒ――あっ、ありえねぇ――ここは地獄の奥の煉獄だァ!早く遠くに逃げるぞォ!」
そう言ったのは、オトゥームの傍らでずっと震えていた男だ。彼は近くにあった灯油を自分に掛け、そしてポケットからライターを取り出す。
羽嶋と風間は急いで止めようとしたが、もう遅い。彼は自身にライターを付けて叫びながらゆっくりと命を絶った――
羽嶋と風間は急いで止めようとしたが、もう遅い。彼は自身にライターを付けて叫びながらゆっくりと命を絶った――
蔵田と白河は燃え尽きながら命を絶った男を見て悔んだ様な表情をし、稲見は涙を流しながらひたすら怯えている――
「さぁ――まだだ。まだ貴様らには私のもたらす恐怖をもっと体感してもらう必要がある――」
オトゥームは近くにあったマンホールの蓋を太い腕を使って軽々しく持ち上げ、その後に市川に向かって腕を向ける。すると、市川は操り人形のように浮き出し、やがて市川を“蓋が開いたマンホールが彼の腹の下に来る”ようにして倒した。稲見は涙を流しながら、アーチェリーの弓矢をオトゥームへ構える――
「これ以上絶対にあなたなんかにこの人たちを傷つけたりはしない――」
そういいながら、稲見はアーチェリーの矢をオトゥームに向かって放つ――しかし、オトゥームの「黙れ!」という叫びによって、その矢は呆気なく折られた。そしてオトゥームは「さあ、貴様らの願い――そして希望を私が見事に崩してやるぞ――」と言いながらマンホールの蓋を手に持つ――
そして遺言を吐くかの様に市川が唇を動かす――
そして遺言を吐くかの様に市川が唇を動かす――
「ハハッ、君達って強いんだね――僕が皆を守る立場の筈なのに――警察として全く情けない気がするよ――」
「おいッ――やめてくれよ――市川さん――」
「もし、"僕が死んでも絶望しないで欲しい"それが僕の――」
「おいッ――やめてくれよ――市川さん――」
「もし、"僕が死んでも絶望しないで欲しい"それが僕の――」
マンホールの蓋は凄まじい力で"ピッタリ"と閉められた。市川の上半身からは「願いだ――」という声が最後に一つだけ聞こえ――
そして、全てが絶望に染まる。
「フハハハハ!この表情はどうしたッ!?"強き"夢見る者共よ!この男が最後に告げた願いは『自分が死んでも絶望しないで欲しい』だろう!皮肉だなッ!せめてその最後の願いでも叶えてやったらどうだ!?」
「てめええええええええ!」
「てめええええええええ!」
この時になって、遂に最高潮の怒りを晒した蔵田はホノカグツチを召喚した。
「ぜってぇにぶっ殺ぉす!!」
蔵田は大きく叫びながらホノカグツチに渾身の力で殴らせたが、彼の身体に拳が触れようとした瞬間に“見えざる何か”によって、ホノカグツチの両腕は破裂し、次に首を斬られた。
「これが貴様の怒りの一撃か――愚かだ。そして余りにも貧弱すぎる。それに私は貴様――そう、"蔵田明義"の求めている物に限りなく近い存在だからな」
「どういう事だよ――?」
「それが知りたければ、黄昏に染まったこの陽が堕ちるまでに京崎水族館へ来い。だが、来なかった場合は憎きクタニドを宿す"葉月癒依"をさっきの様に殺してやる」
「どういう事だよ――?」
「それが知りたければ、黄昏に染まったこの陽が堕ちるまでに京崎水族館へ来い。だが、来なかった場合は憎きクタニドを宿す"葉月癒依"をさっきの様に殺してやる」
そういいながら、オトゥームは癒依と藍香――そして苦しんでいた三人を巻きこんで何処かに消えた。蔵田は無言のまま道を進もうとしたが、その時に「待てよ――」と苦し紛れ声が聞こえてきた。その声の主は白河救介だ。
「俺も行かせろ――俺もアイツが絶対に許せねェ――もうこれ以上、"恨み"なんて持ち切れねぇよ――」
そういいながら白河は立ちあがろうとしたがオトゥームに与えられたダメージが余りにも大きすぎて、また地面にひれ伏すだけだった――
「くそっ――!ッざけんじゃねぇぞ――」
彼が強く地面を叩いた直後の事だった――靴の足音が聞こえてくる。警戒しながら向こうを振り向くとそこには、お洒落な服装をした女性――坂東淳子の姿が見えた。気が付くと、彼女は悪魔――アマテラスを召喚し、光で白河の傷を癒している。
「ここに居たのね。"白河救介"」
「ばっ、坂東先輩ィ――久しぶりだなァ――」
「ばっ、坂東先輩ィ――久しぶりだなァ――」
To Be Continued...
ヒントが出た謎
- 夢の中に入った人間の使う能力(風間との運転中の会話にて)
- 黒幕の正体と戦力(風間との運転中の会話にて)
- 旧支配者の正体と目的(工場街での坂東との会話にて)
新たな謎
- オトゥームの能力(羽嶋の家の前でのオトゥームとの戦闘にて)
- 蔵田明義とオトゥームの関係(羽嶋の家の前でのオトゥームとの会話にて)
- 白河救介と坂東淳子の関係(羽嶋の家の前での淳子との会話にて)
- 幻覚の中での悪魔の台詞(葉月の幻覚より)
- 葉月の不可解な言葉(九頭精神病院前にて)