偏愛
by東京都
こなた「かがみん・・・どうしてこんな酷いことばかりするの?」
かがみ「・・・気づいてた?あたし、あんたの事が大好きなのよ」
こなた「え・・・?す、好きならどうして・・・」
かがみ「もうね、好きで好きでたまらないの。あんたの顔を見てると恋しくて恋しくて・・・。
そう、その顔を苦痛で歪ませたい。そう思うのよ」
最初の変化はいつだっただろうか?ある日かがみんが言った一言は今でも覚えている。
かがみ「ねぇ、こなた?あんたって結構かわいいよね」
こなた「へ?いきなり何を言い出すのさ」
かがみ「いや、ちょっとね・・・」
思えばこのときにかがみんの変化に気づいておくべきだったのかもしれない。
その日を境にして私の身の回りに変な出来事が起こるようになったから。
かがみ「おーい、早くしないと置いてくぞー!」
こなた「あ、ちょっと待って!今下駄箱から靴取ってくるから・・・。ひっ・・・!?」
かがみ「どうしたの?え・・・?なにこれ?」
放課後、かがみんと一緒に帰ろうとした下駄箱を開けた私の目に飛び込んできたのは
ぐちゃぐちゃに切り刻まれた猫の死体だった。そのときはいったい誰がこんなことをしたのか
は分からなかったけれど。
しばらく同じような悪戯が続いた。クラスで無視されるといった目に見えるいじめみたいな
ことはなかったけれど、流石に先生たちも事態を重く見たのか犯人探しに協力してくれた。
だけど結局犯人は見つからずじまい、体操服や教科書がゴミ箱に捨てられたり小動物の死骸が
下駄箱の中に入ってるという日がしばらく続いた。
こなた「・・・いったい誰がこんなことをやったんだろう」
かがみ「本当に気の毒ね。犯人を見つけたら私がとっちめてやるわ!」
つかさ「私たちにも何か協力できることがあったら言ってね」
みゆき「友達ですものね」
こなた「みんな・・・」
しばらくするとそんな嫌がらせも収まり始めた。正直、毎日嫌がらせをされたせいで学校に行く
のも苦痛になった日々が続いたけれど、かがみんやつかさ、みゆきさん達が励ましてくれたから
何とか学校に行くことができた。
けれど、嫌がらせが収まってから2週間ぐらいたった頃だろうか?
そんな彼女たちの態度がすっかり変わってしまったんだ。
こなた「つかさ、おはよー!」
つかさ「・・・」
こなた「どうしたの?」
つかさ「・・・かけないで」
こなた「へ?小さくてよく聞こえないんだけど」
つかさ「もう、私に話しかけないで!」
突然大きな声を上げたつかさに周りからの視線が集まった。
みんなびっくりしてたね。つかさもそれに気づいたのかほっぺたが赤くなってたし。
こなた「え?何で・・・?」
つかさ「ご、ごめんね、こなちゃん。でも、お願いだからもう私に話しかけないでほしいの」
みゆきさんの態度も急に変わったっけ。その前の日まで普通に話してたのに。
こなた「みゆきさーん、ちょっと教えてほしい問題が・・・」
みゆき「ひゃあっ!?」
こなた「み、みゆきさん?どうしてそんなに驚いてるの?」
みゆき「あ、泉さんですか。えっとどういった用件でしょうか?」
こなた「あのね、分からない問題があって・・・」
みゆき「あぁ、この問題ですね。ここは・・・」
そこまで言いかけて急にみゆきさんの表情が変わったんだったね、確か。
みゆき「す、すいません。やっぱり教えることはできません」
こなた「あー、みゆきさんにも分からない問題があるのか。確かにこの問題は難し・・・」
みゆき「すいません。・・・も、もう私に話しかけないでいただけますか?」
こなた「いきなりどうしたのさー?つかさといいみゆきさんといい何だか様子がおかしいよ?」
みゆき「・・・理由は言えません。ですが、ですがお願いですから、もうつかささんと私には一切話しかけないでください。
唐突だとは理解していますが、お願いします」
土下座までされそうな勢いでそんな事言われたら、もう何も言い返せないよね。
それから私はクラスで
一人ぼっちになった。そのときに初めて気がついたんだけど、
つかさとみゆきさんが私とクラスとの接点だったんだよね。
そしてまた嫌がらせが始まった。朝、学校に来たら机の中にゴミが入ってるのは当たり前だったし、
体操服や教科書、上履きはいつもゴミ箱の中に入ってた。誰がやったのかは結局わからないままだったけど。
だんだんと学校に行くのも嫌になったから、休む日も多くなったっけ。
学校の授業も分からなくなって私の居場所がどんどんと無くなっていくのが分かった。
そんな時にかがみんは優しく慰めてくれたよね。
かがみ「おじゃましまーす」
そうじろう「お、かがみちゃんか。こなたの奴最近塞ぎ気味なんだけど、学校で何かあったのか?
悪いけどかがみちゃん、慰めてくれないか?」
かがみ「ちょっと学校のほうで色々あったみたいで・・・。こなたに会えますか?」
そうじろう「おーい、こなたー?かがみちゃんが来てくれたぞー?・・・返事がないなぁ。
まあ、とりあえず上がって」
かがみ「こなた?大丈夫?最近、学校休み気味だけど・・・。何かあったなら私に話して」
こなた「うぅ・・・。もうつらいよぉ。学校に行くと嫌がらせされるし、誰にも相談できないし・・・」
泣きながらかがみんに事情を話した。本当につらくてつらくて仕方なかったんだよね。あの時は。
かがみ「・・・そう、そんな事があったの。私からつかさやみゆきには話しておくから、だから安心して?」
こなた「ううん。二人とも何か事情があったみたいだから・・・。きっと二人も不本意なんだと思う」
かがみ「分かった。大丈夫よ。私はずっとこなたの味方だから」
こなた「・・・かがみん、かがみん。うわああああああああああああん」
その時のかがみんの言葉、本当にありがたかったんだ。かがみんに抱きしめられて赤ん坊のように私は泣いてしまった。
だけどかがみんが味方だって思えたから、学校にも何とか行けたんだ。
それからも嫌がらせは続いて、頻度はだいぶ少なくなった。相変わらずつかさ達とは話せなかったけど、
かがみんがいるから学校にも行くことができた。
そんな私とかがみんの物語も唐突に終わってしまう。できるなら優しいかがみんだけを見ていたかった。
ある日、学校から帰る途中で私は車に乗った二人組みの男に拉致られてしまう。
気がついたときにはどこか見知らぬ山奥の倉庫で手を縛られた状態だった。
そして目の前にはかがみんがいた。
こなた「う・・・ここは?ここはどこなの?私、確か・・・」
かがみ「やっと目を覚ましたみたいね」
こなた「かがみん!?どうしてこんな所にいるの?私、確か二人組みの男に・・・。もしかして助けに来てくれたの!?」
かがみ「そう、大正解」
かがみんの右手には血がついた出刃包丁が握られていた。
よく見るとかがみん自身も返り血身まみれの学校の制服をきていた。そういえば、かがみんの後ろの方には、
誰か倒れている。私を拉致った人たちだろうか?
かがみ「本当につらかったでしょう?でももう大丈夫」
こなた「で、でもかがみん。私を助けるために・・・その人たちを・・・」
かがみ「ああ?この人たち?気にしないで。せっかく雇ったのにあんたに手を出そうとするから。
本当に男ってバカよね。自業自得よ」
こなた「や、雇った・・・?」
かがみ「都市伝説だとばっかり思ってたけど、インターネットってのは便利なものね。こんな人間の屑みたいな奴
を簡単に見つけられるんだから。一昔前じゃこうは行かないわよね。まぁ屑は屑ね。おとなしくしておけばいいのに」
こなた「ね、ねぇ。私の聞き間違いだよね?・・・今“雇った”って聞こえたんだけど」
かがみ「そうよ。私が雇ったの。この二人を。あんたをここまで連れてくるようにって。
もしかして気がついてなかった?みゆきやつかさにあんたと話さないように命令したのも、あんたにずっと嫌がらせ
してたのも全部あたし。あたしがやったんだよ?」
こなた「嘘・・・」
目の前が真っ暗になった。だってその時までかがみんのこと信じてたから。
こなた「かがみん・・・どうしてこんな酷いことばかりするの?」
かがみ「・・・気づいてた?あたし、あんたの事が大好きなのよ」
こなた「え・・・?す、好きならどうして・・・」
かがみ「もうね、好きで好きでたまらないの。あんたの顔を見てると恋しくて恋しくて・・・。
そう、その顔を苦痛で歪ませたい。そう思うのよ」
かがみ「初めて会ったとき、確か高校1年の春ぐらいだったかしらね。衝撃だったわ。一目ぼれって奴かしら。
こんなに可愛い人が世の中にいるのかって。お互いに話もよく合ったしね。
一緒にいて楽しかったわ。今までずっとあんたの笑顔だけを見てればそれで幸せだったんだけど、
ある日我慢できなくなったの」
かがみ「だからね、いっぱい嫌がらせもしたし、あんたを追い詰めるためにつかさとみゆきにも命令してやったわ。
可哀想なこなた。私しか味方がいないあんたを見てると幸せで幸せで仕方なかったわ」
こなた「ひ、ひどいよ。かがみん・・・どうしてこんなことするの!?」
かがみ「だから言ったでしょ。あんたが大好きだから。ただそれだけよ。
ここね、結構山奥なんだ。だから誰も助けにはこれないよ?ずっとここで一緒にいようね。私のこなた」
おしまい めでたしめでたし
最終更新:2022年04月25日 21:19