2008年の大賞「魔法少女アイ参」、2009年の大賞「りんかねーしょん☆新撰組っ!」
前者はクソゲーの新基準、後者は難解かつ超展開なシナリオを武器にKOTYの覇者となった。
2010年はどのような武器を持つ作品が大賞に輝くのだろうか……。
最初のエントリーは1月29日に発売した「鬼まり。~鬼が夢見し常の世に、至る幼き恋の始まり~」(130㎝)である。
2009年のKOTYにもエントリーした「鬼うた。」のFDであったが、肝心のエロシーンが薄く唯一の挿入シーンは妄想だった。
更に代表が「これじゃ、あきまへんか」等と公式blogで失言した為、blogは炎上。
半年近く後に追加シナリオパッチを配布しクソ度合いは幾らか下がったが、この騒動は今年が波乱の年になるのを予感させた。
2月、休まることなく「戦極姫2 ~戦乱の世、群雄嵐の如く~」(げーせん18)、「オレの妹のエロさが有頂天でとどまる事を知らない」(ZERO)、
「恋刀乱麻~わたしが、アナタを、守るからっ!!!」(アーベルソフトウェア)の3作がエントリーする。
「戦極姫2」は一昨年のKOTYで次点、昨年の据置&携帯版KOTYで頂点に輝いた戦極姫」の続編である。
前作で見られた様な致命的なバグは無かったが、小さいバグが幾つか存在しており、CGの塗り・主人公の一人称&性格が
複数シナリオライターの影響で相変わらずバラバラという整合性の無さを見せ付けた。
「-100点かと思ったら-10点でほっとしたけど、よく考えてみたらマイナスなことに変りない」とは本スレ住人の言葉である。
某ライトノベルをパク……いやインスパイアしたとしか思えない「オレの妹のエロさが有頂天でとどまる事を知らない」は、
純愛を謳いながらトゥルーエンドで「寝取られ」「レイプ」「男の娘が女体化」を実装し、「BADエンドが一番幸せ」などと評価された。
「恋刀乱麻」は昨年の次点に入った「MQ~時空の覇者~」のアーベルソフトウェアが2010年最初に送り込んだ作品である。
本作は「五行戦闘システム」という変則的なジャンケン型戦闘システムを用いているが、この戦闘システムが曲者だった。
何しろ、敵の行動にはパターンらしきものが欠片も窺えず、予想するヒントも一切ない潔すぎるランダムぶり。
しかも、ストーリーそのものは「MQ」同様一本道ルートの為、プレイヤーはクリアまで延々クリックを続けるという運&苦行ゲーに仕上がっている。
ついでに、ボイスこそあったものの「Fin」で終わるのも「MQ」と同じだった。
本作は演出強化アドオン・プログラムをDLする事でCG、イベント、演出強化が可能だが、プレイヤーが欲しかったのは苦行いや五行戦闘システムの改善パッチだろう。
3月に入ると「CrossDays」(オーバーフロー)がエントリーする。
色々な意味で狂っていると評価されている「Daysシリーズ」の最新作。
過去の「鮮血の結末」「ギガパッチ配布」「nice boat」という悪しき前例から「今回も何かやらかすに違いない」誰もがと思っていただろう。
そして、発売後は「今作の主人公が女装して前作ヒロインから前作の主人公である誠を寝取る」というルートが
全ルートの約半数存在するという予想の斜め上を思いっきり突っ走ることとなった。
他にも「Theガッツ!のタカさんみたいなマッシブ女二人に逆レイプされる」「Badエンドで不良に監禁されて自暴自棄になりセルフフェラ」
という展開も存在し、作品スレは阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
更にオーバーフロー代表のメイザースぬまきちがニコ生でユーザーの神経を逆撫でする発言を行なうオマケが付いた。
後日、まともに攻略出来ない不具合に対する修正パッチが配布されたが、アクチ認証付きの為中古に売却することも出来ない
という極悪仕様に加え13440円の高額で売られていた事も忘れてはいけないだろう。
同じ頃、あるソフトが発売前ながら有力候補としてささやかれていた。
その名を「Floating Material -The hill where the star born-」という。
新ブランドbiscottiの処女作であったが、その中身はは発売前からパクリとトレスに埋め尽くされていた。
その範囲は原画、背景、デモムービー、体験版に留まらず、OHPのキャラ説明、背景テクスチャ、copy right、特典テレカの構図等と膨大な数にのぼり、
体験版配布の次点で検証Wikiや
まとめ動画が作られるという巨大な祭りとなった。
OHPの一時閉鎖とパクリ元への謝罪に延期を経て4月30日に発売された頃には祭りも収束しつつあったが、製品版も誤字脱字やシステム面の不具合等が存在し未完成品だったことが判明した。
biscottiは「優雅な雰囲気をかもし出しつつ、ブランドカラーを強く出した、明るくて華やかな作品です」と称していたが、
どうすればそう見えるのかお聞かせ願いたいものだ。
4月は他にも、シリーズ完結編のはずがバグ・誤字脱字だらけの未完成品で一番罪深いのは製作スタッフだった「暁の護衛~罪深き終末論~」(しゃんぐりら)と、
前人気が好評だったにも関わらず、製品版では変態エロ馬鹿主人公と100を超える選択肢、極めつけはヒロインが「前後おォォン♪」と絶叫しながら裸踊りするイベントで
プレイヤーを呆然とさせた「色に出でにけり わが恋は」(ういんどみる)がエントリーした。
平穏だった5月を挟んで6月、「デュアル・エム―空の記憶―」(アーベルソフトウェア)がエントリーする。
「恋刀乱麻」から僅か4ヶ月でのリリースというのは驚異的なスピードだが、その中身は相変わらずのアーベルクオリティだった。
この作品、本来は「4話完結」のストーリーなのだが、製品版には第3話までしか入っておらず、4話目は後日配布されるアドオンプログラムを
DLすることでようやくプレー可能になり物語が完結するが、これでは未完成商法となんら変わらない。
この後更にアドオンプログラムのver.2.00が発表されるが、こちらは過去のセーブデータには未対応でクリア済みの人に対してはなんとも不親切な設定だった。
また、本作のジャンルは「ちょっとHな本格推理ADV」とのことだが、「本格推理」とは到底言えない内容である。
なにしろ、主人公のパートナーが勝手に犯人を追い詰めてくれる上に相変わらずの一本道シナリオによりBADENDが存在せず、
選択肢を間違えてもプレイヤーの選択を無視して真犯人に辿り着くという面白味の無い作り。
更にボイス無し・エンディングにスタッフロールも歌も無く「Fin」と出て終わる相変わらずそっけないエンドで真っ当なクソと言えた。
ミステリーものはアーベルの十八番だったはずなのに得意分野がこの有様では今後、菅野ひろゆき氏の何に期待すればいいのか。
夏のクソゲーは、8月にエントリーした「この歌が終わったら -When this song is over-」(hourglass)ぐらいだった。
ジュブナイル・ホラー・アドベンチャーと称していた本作だったが、本編に出てくる「闇」よりも「妹と付き合ってたら姉とセックスしていた」という
不具合や、ロード後に「絶対に殺す……ぶっ殺す……」等の音声がリピートするバグの方がよほどホラーと言えた。
そして秋に入ると夏の小康状態が嘘だったかのようにクソ度の高そうな新作がエントリーしてくる。
9月に入り最初にエントリーしたのは「Orange Memories」(Purple software delight)。
この作品を出したPurple software delightは、老舗Purple softwareが萌えとエロ特化を謳って立ち上げた姉妹ブランドである。
本作は、その姉妹ブランドの処女作だったが、肝心の内容はというと「看板に偽り有り」というものだった。
いずれのキャラも最初から好感度MAXであり「ツンデレのデレをほとんど見せないまま、足を捻挫して保健室に連れてもらっただけで即落ちする生徒」に
代表されるよう我先にあっさり股を開く為、攻略の面白みも無くストーリーも薄っぺらい。
それでもまだ「エロ特化」の部分がブランドの公約通りならまだマシだったかもしれないが、この部分も問題だらけだったことが判明する。
具体例を挙げれば、個別ルートに入ったらHシーンが増えて当然なのに、「昨日のこと、とは、もちろん、後夜祭でのエッチのことだ。」の一文だけで済まされ
肝心のシーンは無いキャラがいる他、フルプライスなのにCGは僅か66枚でこのうちHCGは僅か31枚という驚きの薄さを披露してくれる。
一方で回想モードは29個あるが、本編では1つのHシーンをぶった切って二つに分割水増ししてるものが6つあるので実質23個しかなく、
その回想モードも29個の内27個がCG1枚の構成であり、CG2枚の回想もその内1枚はH中ではないCGがくっついてるというふざけた内容だった。
また、ある攻略攻略キャラの最後のHシーンが回想モード未収録だったりとHシーン関連でもこれだけの問題点が存在していた。
他にも「ラブホでHしていたのにピロートークは星空の下」「テキストでは中出ししているのに差分が無いのか外出しのCG」
という矛盾が指摘された。
更に「音声ファイルを展開したら未使用のエロボイスが出てきた」衝撃的な報告がなされた。
要するにCGが間に合わなかった分のイベントを丸ごと削除した未完成品を完成品と偽って世に出したわけで、これにより本作のクソ度は更に上昇。
Purpleの作品といえど酷すぎる内容で、よく訓練された紫信者をして「いつもの紫未満」と言わしめた。
そして、もう一作の9月エントリー作品は「萌恋維新!アタシら、じぇいけー、新閃組!」(アーベルソフトウェア)である。
2月に「恋刀乱麻」6月に「デュアル・エム」をエントリーさせたアーベルが間を空けず今年3作目の作品をKOTYにエントリーさせたのだ。
この作品もヒロインの一人がパッチを当てないと攻略出来ないというアドオン仕様や主人公の性格がルートごとにバラバラ等の問題が存在する。
しかし、ヒロインとのHシーン及びCG枚数が豊富であること、ミニゲームが概ね楽しめることから今年のアーベル作品ではクソ度が低い作品だった。
10月には、ヒロインが特殊な性癖を持ちばかりという「普通じゃないッ!」(ALL-TiME)がエントリー。
抜きゲーであり内容は好評だったのだが、独自システムの為かグラフィックボードやOSとの相性が悪く起動できない人が続出。
後に修正パッチ配布で起動しない不具合は解消したが、それまでの間購入者を「(システムが)普通じゃないッ!」と嘆かせた。
そして12月に突入し、年末の魔物が姿を現す。
一つは「熟処女~私、はじめてなんです~」(Hammerheads)。
パッケージ版3150円という低価格ソフトだが、「初心な熟女の性開発ADV」を謳っておきながら作中の選択肢は一つだけ、立ち絵も各キャラに一つという薄さ。
また、エロシーン中の音声に「ひっかかかかかか ひっ か か んふ ひっか かれて うふっ テイクツー」というNG音声が含まれており、
さらに「谷原さんの膣内、もう奥まで熱くなってますね……」「谷原さんがこの間よりも……締まってるんですよ」と、Hの相手どころか主人公の口調まで変わっているテキストが存在した。
これはミュスカデの「熟恋願望」のエロシーンからモロパクリしたものだったと判明。
もはや自己中な主人公のクズっぷりなぞどうでもいい話である。
それも一度延期していてこの有様だったのだから、再度の収録やテキストチェックをするだけの予算も無かったのかと思える作りだった。
もう一作は「まるめる~ソウシンシャは@未来~」(アーベルソフトフェア)。
すでにここまで3作を発表しているアーベルが性懲りも無く4作目をクリスマスイブにエントリーさせたのだ。
いわゆる「アーベル四天王」が勢ぞろいした瞬間でもある。
作品の内容は「過去の自分へとメールが送れる周回プレイでストーリーが変化する」というものであり本作のウリになっている。
しかし、本作は「恋刀乱麻」「デュアル・エム」同様の一本道シナリオであり、プレイヤーは新のエンドを見るまで17のBADエンドを繰り返し見るはめになる。
過去の自分にメールが送れるのを利用したシナリオ分岐もないので肝心のウリも意味が無い。
また、作中に出てくる黒幕に消去法であっさり辿り着けるのは「デュアル・エム」の真犯人探しと同じである。
今回も恒例のアドオンプログラムが存在するのだがこれによって追加されるのは表情の差分だけであり、作品中に存在する幾つもの誤植や不具合は一切修正されないというお粗末さだった。
以上を踏まえて次点に入った作品は
運頼みの五行戦闘システムと一本道シナリオでユーザーに苦行を強いた
「恋刀乱麻~わたしが、アナタを、守るからっ!!!」
斜め上の展開と中古買取不可のアクチ認証付きで、ユーザーの精神と財布に甚大な被害を与えた
「CrossDays」
発売前に壮大な祭りを起こし、発売後はトレスとパクリが無くてもクソゲーだったことを改めて証明した
「Floating Material -The hill where the star born-」
アーベルの得意分野であるはずのミステリー物なのにユーザーが推理する楽しみを排除して何を楽しめばいいかわからなくした
「デュアル・エム―空の記憶―」
他作品のシナリオ盗用、NG音声を収録したまま発売し、デバッグの大切さを改めて教えてくれた
「熟処女~私、はじめてなんです~」
真のエンドを見るまで一本道シナリオで延々BADエンドを見せつける「17の荒行」と、アドオンを導入しないとキャラの表情すら変わらない不条理を体験できる
「まるめる~ソウシンシャは@未来~」
そして、大賞は
「Orange Memories」とする。
今回、次点に入賞した6作品についてもなにかしらの不具合やパクリ・トレス騒動、スタッフの失言などの問題点は存在した。
この内、低価格だった為ユーザーの金銭的被害が小さくて済んだ「熟処女」を除く5作品のメーカーは、いずれ外に向けての謝罪やパッチの配布など
ある程度ユーザーへの対応を行なっている。
そんな中「萌えとHに特化した新ブランド」と謳っていたにも関わらず、どちらも薄っぺらで手抜きな上に未完成であることも発覚し、
紫信者からも「いつもの紫未満」「最底辺」などと叩かれた「Orange Memories」が大賞となった。
中身の薄さは受賞の大きな理由であるが、更に未収録Hシーンの追加パッチ配布はもちろん未完成品を出したことに対するユーザーへの謝罪も一切行なわず、
公式サイトを放置したかと思えばOrange Memoriesの発売から3ヶ月後に何食わぬ顔で新作の発表を行なうという「薄情」いや「酷薄」な対応をしたPurple software delightの
「ユーザーに対する誠意も反応も薄っぺらな態度」が透けて見えてしまったことも受賞の理由となった。
「Purple softwareが新たに立ち上げた『Purple software delight』であったが、大喜び(delight)なのはこんな未完成品でも金が入るメーカー側だけであろう」とは
選評に寄せられた言葉だが、まさにその通りだった。
2010年のKOTYは、マシンガン打線あるいはクラスター爆弾とでも言うべき小粒な作品が多数エントリーし、それに伴い大賞の先行も難航したが
最後は内容が薄ければユーザーに対するメーカーの対応も薄っぺらな「薄さを全方位に見せ付けたクソゲー」が大賞を獲得した。
「薄い」というのはクソゲーを構成する要素の一つではあるが、それ単体ではインパクトに欠けるのも事実だ。
しかし「Orange Memories」は薄さも極め抜けば強力な武器になることを証明し、クソゲーの新たな地平を切り開いたとも言えるだろう。
そして、今回大賞及び次点に入賞した作品のメーカーは今後もユーザーの顰蹙を買うクソゲーを製作し、クソゲーマイスターとしての地位を確立していただきたいと思う。
最後に「Orange Memories」を製作したPurple software delightの親会社であるクリアブルーコミュニケーションへこの言葉を送り2010年のKOTYを締めくくりたい。
「社名のせいか、金に汚い本性が透けて見えますね」