2010年 総評案10

総評案10:大賞 恋刀乱麻 ~わたしが、アナタを、守るからっ!!!~(本スレ11本目76氏)

76 名前:447 ◆8Z1yrKfTlWUh 本日のレス 投稿日:2011/02/21(月) 05:04:52.17 1efUzOKW0

焦土と化したクソゲー界にも、芽吹き綻ぶ花はある。
2009年覇者の『りんかねーしょん☆新撰組っ!』は、倫理の破綻した掃き溜めの底で、バグも手抜きも無くても凄いものは出来るという希望を見せてくれた。
しかし世の風は冷たいもの。2010年のKOTYinエロゲー板スレにも、数多のクソゲーが吹き荒んでいた。

先ず一番槍を勤めたのは130cmの『鬼まり。~鬼が夢見し常の世に、至る幼き恋のはじまり。~』である。
これは前年に変態バカゲーとして宣伝されていながら、蓋を開けると姉シナリオが「メインキャラが全員死ぬか狂う」
という救いの欠片も無い超展開欝ゲーだった「鬼うた。」の救済FDのはずだったのだが、
話が盛り上がる前に終わってしまう薄すぎるシナリオと本番はサブキャラの妄想Hのみという薄すぎるHシーンで批判を浴びる。
そんな中で代表が「あれじゃ、あきまへんか?」「つーか、本番ないとあかんのですか?」と致命的に空気の読めない発言をして、ブログ大炎上という騒ぎになった。

これ自体は「エロ薄のぼったくりFD」でしかなく、後日Hシーン追加パッチも出たためクソゲーではないとする声も多い。
だが同日には人気投票1位でパッケージ中央のキャラのHシーンが無いFD『花と乙女に祝福を ロイヤルブーケ』も出ており、
2010年に多発するガッカリゲーでは括れないほどユーザーのニーズを敢えて完全無視した展開──
思わず「どんな判断だ」と製作者に突っ込みを入れたくなる、 「どん判展開」とでも言うべき作品の先駆けとなった。

続く2月には前年本家KOTYで見事上洛を果たした『戦極姫2 ~戦乱の世、群雄嵐の如く~』が故郷に錦を飾るが、
CS版のユーザーを生贄にして特殊召喚した甲斐あってか猛威を振るった数々のバグの大半は駆逐され普通に遊べるようにはなっていた。
しかしバグ自体は相変わらず多く、主人公は複数ライターの弊害で性格や一人称がバラバラ、ヒロインはHシーンで原画が変わるとそのツギハギ感は健在。
「-100点かと思ったら-10点でほっとしたけど、よく考えてみたらマイナスなことに変りない」とは本スレ住人の弁である。
続いてタイトルとパッケージがまんま某ラノベで純愛を謳いながら「トゥルーエンド直前で妹が絶対にレイプされる」等の展開で
元ネタの妹がプレイしたらディスクを叩き割りかねない「エロゲ版恋空」ことZEROの『オレの妹のエロさが有頂天でとどまる事を知らない』が参上。

そして2月の本命、今やクソゲーメーカーとしての地位を確立したアーベルソフトウェアの『恋刀乱麻 ~わたしが、アナタを、守るからっ!!!~ 』が着弾する。
これは主人公を巡って美少女達の体を賭けた学園バトルロイヤル、というありふれたものだがゲームの根幹を成す「五行バトル」が曲者だった。
属性重視のシステムのはずなのに使用キャラは固定で相手の行動は完全なランダム、キャラごとの特殊行動等も無く駆け引きや戦略性はほとんどゼロ。
例えるなら「進化も捕獲も無くフシギダネ一匹で延々とたいあたりを繰り返すだけのポケモン」である。
演出スキップも不可で一人脱がしきるには15回程度の先取が必要、攻略法と呼べるものは連打ツールの導入くらいのテンポ最悪の野球拳であり、
ユーザーの気力と時間を無駄に削り取る苦行バトルとでもいうべきものだった。
また、パッケージにさもヒロインのように描かれている五人のうち二人はルートの無い脇役、公式で「体を重ねてしまう」と紹介されたキャラとはキスだけと宣伝詐欺も健在。
後日配信され後にアーベルの代名詞となるアドオンプログラムという名のパッチでもそれらは改善されず、各キャラエピローグも口調を変えただけのコピペと
存分にその手抜きっぷりも見せつけ、2010序盤の中でも直球のクソゲーとして住人達に支持された。

こうしてスレも日差しも暖かくなってきた3月、いよいよKOTYスレにも春一番が吹き荒れる。
数々の伝説を持ち「あの」伊藤誠が登場するDaysシリーズ最新作・0verflowの『CrossDays』が登場。誰もが修羅場や寝取られといった超展開を予想した。
……だが、それでも、「主人公が女装して前作ヒロインから誠を寝取る」という展開を一体誰が予想できただろうか。
これは後半の約半分が「主人公が女装して誠とセックスし、誠が事情を知らないまま溺れていく」という展開となっており、
例えそれに耐えてもTheガッツ!のタカさんばりの筋肉女とゴエモンインパクトのようなアヘ顔を晒す贅肉女に逆レイプされるエンドに心を折られる事になる。
これだけならまだ怪作で済まされたのだが、これらで全Hシーンの4割を占めている上に雑誌で紹介されていたはずの姉・乙女・光のHシーン等は存在せず、
代表のメイザーズぬまきちは「雑誌やサイトのCGは開発中のモノだから削除ではなくボツ」と釈明、更に発売直後の某動画サイトでの生放送では
「ホモ」「ガッツ」「クロスゲイズ」等をNG指定した上「アンケート葉書以外の意見は見向きもしません」「2ちゃんで宣伝ありがとうございます」等の火に油を注ぐ発言を連発。
ゲームの方も内部数値にバグがあり一時は18個中11のEDに行ける可能性は11億6226万3515分の11とまで言われ、「手元のものにはバグは無いが製品版にはあった」と言い訳する有様だった。
これが定価13440円の高額タイトルかつアクチで中古不可だったものだから、ユーザーの怒りは逆鱗を剥ぎ取られたかの如しだっただろう。

しかし、奇しくもこの時期には更なる春嵐が巻き起こった。biscottiの『Floating Material -The hill where the star born-』の登場である。
元々無名だったこの作品は、OPムービーに『明日の君と逢うために』の背景に似たものが見つかったことからその正体が暴かれていくことになる。
『Flyable Heart』『遥かに仰ぎ、麗しの』ウィキペディアの「とある魔術の禁書目録」の記事に『明日の君と逢うために』『School ぷろじぇくと』
『シュガーコートフリークス』アニメ版『プリンセスラバー!』『借金姉妹2 AfterStory』『id [イド] - Rebirth Session -』背景はググれば簡単に見つかる各種写真……
果てはメーカーロゴ・必要スペック・コピーライト・OHPの各種パーツに至るまでトレースとコピペで構成されたそれは正にその名に違わず、
ネットの海に浮かぶ素材を継ぎ接ぎしたフランケンシュタインの如き化物だった。
パクリ元が見つかる度に延期と差し替えと言い訳とOHP404を繰り返した結果、製品版ではそれらは全て修正されていたものの
なんの起伏も愛も無いシナリオ、大幅に減ったCG、難易度は理不尽に高く既読・演出・EDスキップが無いため周回プレイには極めて優しくなく、
差し変えられたCGも「両方左手」「肩脱臼」「チャックからほど遠い場所からこぼれる超空間チンポ 」など
全てにおいて低クオリティであり、トレス無しでも2010の底辺を担う一作としてスレでも再評価されることとなった。

この年末の魔物ならぬ年度末の化物2匹のせいで同時期目立ったのは「無料の風俗がモンスターハウスだった的な」と例えられた無料DLタイトル『se・きらら』くらいだが、
それでも4月のういんどみるの『色に出でにけりわが恋は』を忘れるわけにはいくまい。
萌えゲーメーカーの安牌・ういんどみるの新作がこのスレに来るとは、誰も予想しなかっただろう。
体験版ではごく普通の萌えゲーだったのに、それが終わるや否やお嬢様のはずのヒロインは風呂場で「前後おォォン♪」と腰を振りながらダンスして気絶するわ、
主人公は「勃起ン勃起ンの、ボッキンボッキンスティック☆ 」等言い出すわと知性と品性を全力で投げ捨てたかのようなお下劣極まる言動を晒しまくるのである。
このあまりに酷いセリフ群のせいでメインヒロイン役の声優が逃げた、とも噂されている。
共通ルートもダラダラ長い上選択肢の数は100以上。既読スキップを用いても延々と同じようなシーンが続くと苦行じみている反面、
ある個別ルートでは重要イベントの学園祭をわずか2クリックで片付ける等シナリオのバランスも明らかにおかしく、シナリオの出来は惨憺たる有様だった。
CG・音楽・演出等のクオリティは従来通り高く、シナリオも一部ではバカゲーとして評価する者もいるにはいるが、このメーカーはういんどみるである。
ういんどみる本家とういんどみるOasisでは作風の違いはあるものの、曲者集団13cm系列や0verflow・クソゲーの雄アーベルやげーせん18とは違い
安心感が武器のブランドから出てしまったこれはどん判極まる本年最悪の不意打ちだったと言えるだろう。

そして6月、アーベル第二の刺客『デュアル・エム―空の記憶―』が現れる。
「サイコメトリー能力制御のため常に手袋をしているはずなのに立ち絵は常時素手の主人公美香・ヴァーミリオン」といった頭を抱えるような厨二設定はまだいい。
ボイス無しも予想内、Hシーンがやたら少ないのもジャンルが「ちょっとHな本格推理ADV」なのだからよしとしよう。
だがそのトリックが囮捜査をしたら犯人が勝手に自白したり、犯人をヒント:左利きだけで探したりというおざなりさでは本格推理ADVとは言えまい。
後日修正されたものまで含めれば「左利きなのに右手で銃を撃つCG」「暗号そのものに誤植」と推理ものとして致命的なミスまであり、
また犯人指摘では身内や未登場人物や犠牲者まで含まれるため消去法で特定でき、そもそも犯人を間違えても相棒が正解を当てて全く同じ展開を辿るため推理する意味すら失われている。
そして製品として何より問題なのが、本作は本来4話構成の3話までしか収録されておらず、追加シナリオと言い切った最終話アドオン配信まで発売後1ヶ月もかかったこと。
加えると2ヶ月後に配信された追加シナリオは各話の合間にちょっとずつ挿入されるため最初から最後までやり直さないと見れないという不親切極まる作りであり、
アーベル本来のお家芸・『ミステリート』から追い続けた探偵紳士シリーズの最新作がこれではファンが打ちのめされた事は想像に難くない。

この夏は世間とは違いKOTYスレ的にはさほど熱くはならず、後はパッケージに作中に登場しない主人公の女装姿が堂々と載ってる『げきたま! ~青陵学園演劇部~』
ゲーム本編より「絶対に殺す……ぶっ殺す……」等の音声がリピートするバグの方が怖いと言われた『この歌が終わったら -when this song is over-』くらいだったが、
秋に入ると住人待望の大物・Purplesoftware delightの『Orange Memories』が現れる。

Purplesoftware(通称紫)の萌え・エロ特化ブランドから出た本作の特徴は、「薄さ」である。
シナリオに関しては共通ルートで「ツンデレが足を捻挫して保健室に連れていってもらっただけで股を開く」といえばその薄っぺらさが伝わるだろうか。
かといってハーレムものとしてはHシーンが薄く、回想モードの数自体は29とそれなりだがそれら全てエロCGが一枚しか使われていない。
というか、2枚使われたシーンは分割して収録されておりわずか36クリックで終了するものもある。
未使用のエロボイスや何事も無いのに「昨日のこと、とは、もちろん、後夜祭でのエッチのことだ。」というテキストからもエロシーンがカットされていると思われる。
ラブホテルでHしてたハズなのにピロートークは星空のCGの中と文章とCGが噛み合っていない箇所がある・作中に「心者」「伴心」といった意味不明の単語があり
その理由がヒロインの「心」の名前が「奏」から変更され全置換した結果こうなったという説が有力、などからも見切り発車で発売したことが伺える。
その萌えもエロも足るべきものが足りないあらゆる点での「薄さ」は凡作・地雷に慣れたはずの訓練された紫信者をして「紫の最底辺」と称された。

これに続いてアーベル×新撰組の黄金コンボと恒例のアドオンと全てにおいてはしょり過ぎたシナリオが特徴の『萌恋維新!アタシら、じぇいけー、新閃組!』
『JINKI EXTEND Re:VISION』『なないろ航路』『風ヶ原学園スパイ部っ!』等で場を暖めつつ、いよいよ年末の魔物達が襲来する。
ザッピングシステムを全く生かせず、使い辛いシステムや無理のある展開等で酷評された『アザナエル -AXANAEL-』。
「戦極姫はどれだけAVGが酷くてもSLG部分はマトモに遊べたが、これは本当に良い部分が見つからない」とも言われた3代目「姫」『三極姫 ~乱世、天下三分の計~』。
過去改竄ループものなのに「トゥルーエンドに辿りつく為にはそれ以外の17個全てのエンディングを順序通り見せられる」という一本道シナリオなうえ
ヒロインは父親が倒れても笑顔が張り付いたまま、アドオンでやっと表情差分追加という素材の足りなさが光るアーベル四天王最後の一角『まるめる ~ソウシンシャは@未来~』。

そんな中で一際輝いたのがHammerHeadsの低価格タイトル『熟処女~私、はじめてなんです~』である。
低価格タイトルは評価は甘くなりがちだが、それでも作中に選択肢がひとつだけだったり、寝取りゲーなのにヒロイン即落ちで寝取りの美学・快感・背徳感は皆無だったり、
それまで関係に悩んでいた相手と開始25クリックで何の脈絡も無く「思いに応えることにした」と処女を奪ったりする悪い意味でのお手軽さはどうかと思われる。
だが、それらもHシーンで「ひっかかかかかか ひっ か か んふ ひっか かれて うふっ テイクツー」というNG音声が収録されている事に比べれば些細な問題である。
加えて”東海林”香奈とのHシーンで「谷原さんの膣内、もう奥まで熱くなってますね……」「谷原さんがこの間よりも……締まってるんですよ」と
誰だよ谷原さんってと突っ込まざるを得ないセリフまであり、これは別ブランドの「熟恋願望 ~秘めた想いと淫らな愛のカタチ~」のサンプルテキストをそのまま転用している事が判明した。
これ以外にもテキストと音声が丸1クリックずれる・状況的にも日本語的にもおかしい地の文が入るなど
公式サイトのサンプルCGが未だ公開されていないことと相まってその手抜きっぷりを存分に見せ付け、誰がどう見ても評価できるクソゲーとして住人達に称えられた。

それでは一年を振り返ったところで大賞の発表に移る。
2010年は『アイ惨』『りんかね』並みの異形は現れず、系統も手抜きとどん判に二極化しながらも一年通してクソゲーが出続けた年となった。
そんな百鬼夜行の中、次点に選ばれたのは
『CrossDays』『Floating Material -The hill where the star born-』『色に出でにけりわが恋は』『デュアル・エム―空の記憶―』『Orange Memories』『熟処女~私、はじめてなんです~』
そして大賞は
『恋刀乱麻 ~わたしが、アナタを、守るからっ!!!~ 』
とする。

2010年は突出したクソゲーが存在しなかった年であり、大賞の選考は大変難航した。
そこでクソゲーがクソゲーたる理由・「プラス評価される点が無い」「プレイヤーに長時間の苦痛を強いる」という点を基準として評価した。
『CrossDays』『色に出でにけりわが恋は』はそれぞれごく一部のファンからは評価された上、アニメやCGなど見るところはある。
『Floating Material』は話題のピークが発売前のため、作品自体はクソゲーとして評価される事が少ない印象を受けた。
『デュアル・エム』『Orange Memories』『熟処女』は良い点は極端に少ないものの能動的にユーザーを苦しめるという点では弱い。
それらと比較し、『恋刀乱麻』は宣伝詐欺という外面・五行システムという内面の双方に悪質な点を持ち、
特に五行システムは読み進めた分は確実にクリアへと近付くノベルと違い、戦略性皆無で何の面白みもない上に
セーブ&ロードを繰り返した分は全くの「徒労」にしかならず、賽の河原の石積みの如き苦行でしかないという点が決め手となった。
ただそれでも『恋刀』が明確に一歩抜けているとは言えず、次点以上の作品はどれが大賞をとっても不思議はなく、またどれが大賞をとっても疑問が残ったという点は理解して頂きたい。

2010年はKOTYスレとしては大きな嵐もない平坦な年だった。
だが一般ユーザーにとって平穏な年だったかというと、それは断じて否である。
シリーズ完結の三作目にして未完成という原点に立ち返った『暁の護衛~罪深き終末論~』
麻枝氏の「で、どこで泣くの」の一言で萌え・泣き・人生度の全てが中途半端になった『クドわふたー』
初代メインヒロインの新規CGが一枚も無いかわりに内輪受けのスタッフコーナーを充実させた『真・恋姫†無双~萌将伝~』
9回10ヶ月に渡る延期の末に「未編集で垂れ流されるホームビデオみたい」と評された『星空へ架かる橋』
等々、年間売り上げトップクラスの作品群に片っ端から選評が届く有様だった。
また、インストール用シリアルキーを入れ忘れた『カスタードクリームたい焼き』
設定を固有名詞まで既存の漫画から盗用した『メルクリア~水の都に恋の花束を~』
同じくメインキャラの設定や終盤の展開を丸パクリした『ふぇいばりっとSweet!』
製品に他メーカーのムービーデータを混入させた上、謝罪文で迷惑かけたメーカーに対し「誠実な対応をして頂き」とのたまった(普通は『寛容』)『恋と選挙とチョコレート』
等々、ゲーム以前の問題を起こした製品も存在した。
単純な被害者数においては前二年など比べ物にならず、道義的にもとる小粒なクソゲーを大量排出したこの年はある住人から「クソゲーのクラスター爆弾」と例えられたほどである。
大作が次々と発表されている2011年はどうか表裏双方のユーザーにとって幸せな年になることを願ってやまない。
KOTYは権威などではなく、泣いた誰かの涙を拭って笑いへと昇華するもので、皆が笑えるに越したことはないのだから。

最後に、無計画な自転車操業を繰り返し一年を通して一本も外すことなくクソゲーをリリースし続け、見事KOTY大賞も受賞した
アーベルの社長・管野ひろゆき氏に以下の言葉を贈ることで2010クソゲーオブザイヤーinエロゲー板を締め括ろうと思う。

「燃える車輪でのサイクリングはもう終わりにしませんか?」

過去のコメントはコチラ
最終更新:2014年08月02日 15:59