地上に咲き乱れる花々と同様、クソゲーにも様々な色がある。
2008年の『魔法少女アイ参』、2009年の『りんかねーしょん☆新撰組っ!』はかつて見たことのない強烈な色を我々に見せつけてくれた。
3年目となる2010年は、一体如何なる色のクソゲーが姿を現すのであろうか?
節分間近の1月末、2010年の先陣を切って1匹の鬼が襲いかかってきた。
130cmの『鬼まり。~鬼が夢見し常の世に、至る幼き恋の始まり~』である。
2009年にまさかの超展開猟奇鬱ゲーとして話題になった『鬼うた。』のファンディスクである本作であるが、
Hシーンにおける本番がサブヒロインの妄想1回のみであるなど、ファンディスクで期待されていたことが華麗にスルーされていた。
さらにブランド代表が「あれじゃ、あきまへんか?」「つーか、本番ないとあかんのですか?」とブログで発言したことも大きく話題となった。
その後300MB以上の追加パッチを出したため騒動は収束したが、これを皮切りに2010年は多種多様なクソゲーが姿を現すこととなる。
続く2月には立て続けに3つの作品がエントリーした。
まず、げーせん18の『戦極姫2 ~戦乱の世、群雄嵐の如く~』は、2009年の本家KOTYで大賞を受賞した『戦極姫』にHシーンを追加した作品である。
致命的なバグはほぼなく、いい意味でユーザーの期待を裏切ったものの、細かいバグや絵の不統一などは健在であった。
「-100点かと思ったら-10点でほっとしたけど、よく考えてみたらマイナスなことに変りない」とは本スレ住人の言葉である。
続いて現れたのは、某ラノベの人気にあやかったようにしか見えない名前とパッケージで話題となったZEROの『オレの妹のエロさが有頂天でとどまる事を知らない』である。
本作は公式サイトに「純愛に限る」という煽り文句が書かれているにもかかわらず、トゥルーエンドで「寝取られ」「レイプ」「男の娘が女体化」が実装されており、
しかも選択肢による回避は不可能となっている。
このため本スレでは「BADエンドが一番幸せ」と評価されることとなった。
そして2月の本命は『恋刀乱麻 ~わたしが、アナタを、守るからっ!!!~』である。
2009年の次点作品『MQ~時空の覇者~』を生み出したアーベルソフトウェアの学園バトルものであり、戦闘モードにおける「五行バトルシステム」という独自のシステムを売りにしていた。
しかし、本作の売りであるこの「五行バトルシステム」こそがまさに問題であった。
公式サイトにおける主人公の紹介には「相手の技能や能力を鋭く分析し、戦略的な見地からパートナーの戦いをサポート」とあり、プレイヤーの工夫がゲームを左右するように見える。
しかし実際には、戦術性や駆け引きもなく、完全な運ゲーで戦闘中はスキップ不可であるため、プレイヤーには連打ツールを使用する以外ほとんど工夫する余地はなく、数分間クリックし続けるという苦行を強いられることとなる。
さらに戦闘回数は1ルートで平均10回程度と多く非常にしんどいこと、ラスボス前では連戦が発生して作業感に拍車がかかることも指摘された。
CG自体のクオリティは高く、またストーリー展開やキャラクター配置なども破綻なくギリギリのラインでまとまっているだけに、余計に「五行バトルシステム」のクソさが目立ってしまったのかもしれない。
季節は春。本スレには3つの春の嵐が吹き荒れた。
春の嵐第1弾はオーバーフローの『CrossDays』である。
「誠氏ね」「2Gパッチ」など数々の伝説を残してきたDaysシリーズの最新作として、鳴り物入りで登場したのが本作。
前作の主人公である伊藤誠がサブキャラとして登場することから、超展開もヒロインの寝取られも誰もが予想できたであろう。
しかし、「主人公が女装して前作ヒロインから誠を寝取る」という展開が全ルートの約半分を占めるとは誰も予想できなかったのではなかろうか?
さらに、姉の部活仲間である「Theガッツ!」のタカさんばりのマッシブ女、絶頂の瞬間にゴエモンインパクトのような顔になる女の2人に逆レイプされるバッドエンドも存在。
これだけならまだ怪作のカテゴリーに収まるが、真に問題なのはこれらのシーンで全Hシーンの約3分の1を占めているということである。
それ以外にも、某動画サイトの生放送における「2ちゃんで宣伝ありがとうございます」等の発言や、定価13440円と高額であるにもかかわらずアクティベーション付きで中古売却不可、
後日修正パッチが出されたものの、全18エンド中、11個のエンドにいける確率は単純計算で11億6226万3515分の11となるバグなど、ゲーム内容以外でも何かと話題となった作品であった。
話題性という面ではbiscottiの『Floating Material -The hill where the star born-』も負けていない。
発売前に公開されたデモムービーと体験版から、原画や背景のパクリ、トレスが発覚。
さらにキャラクタープロフィール、HPの構成やcopy rightの部分に至るまでコピペであることが指摘され、「把握しておくべき引用元が多すぎて予習できない」とまで言われた。
延期の末に発売された製品版においては、指摘されていたパクリやトレスは全て消えていたが、
シナリオが薄い、CGのできが悪い、BGMやSEが不足しているなど、クオリティ面での不満が指摘されている。
『色に出でにけり わが恋は』は思わぬ方向からやってきた春の嵐である。
TVアニメ化された『はぴねす!』『祝福のカンパネラ』などの手堅い作品で、萌えゲーメーカーとして確固たる地位を築いているういんどみるからのまさかの刺客。
まずプレイヤーを待ち構えるのは、ほぼ同じ内容のやり取りが何回も繰り返されるなど、起伏がなく無駄に長いシナリオである。
さらにシナリオ中には、本当に好感度が上下しているのか疑問に思えてくる、無駄に多い100以上の選択肢が散りばめられており、プレイヤーはプレイのテンポを乱される。
しかし何よりも特筆すべきこの作品の問題点は、言動がキモ過ぎるキャラである。
共通ルートにもかかわらず、主人公の入浴中に「前後ぉぉぉん♪」などと言いながら主人公の目の前で腰振りダンスをするヒロインには開いた口がふさがらないだろう。
また、共通ルートが長い割に個別ルートが短く、あるルートでは要のイベントと言える学園祭が僅か2クリックで終了するというシナリオのアンバランスさも存在する。
このようにシナリオの問題点を挙げればきりがないが、これらのことは体験版や公式サイトからはほぼ知ることができず、「いつものういんどみるのゲーム」程度にしか感じないため、多くの人が不意打ちを食らうこととなった。
音楽・CG・システム等、シナリオ以外のクオリティは従来通り非常に高く、ただシナリオがダメという1点のみで「プレイすること自体が苦痛」となる正統派クソゲーであるといえる。
春の嵐が過ぎ去った後、6月にやってきたのは『デュアル・エム―空の記憶―』である。
2月の『恋刀乱麻』に続くアーベルソフトウェアの2010年2本目となる本作。
本格推理ADVをうたいながら、推理よりも消去法であっさり犯人に辿り着いてしまうため推理の意味を成さず、投げやりともいえる一本道シナリオ、無意味な選択肢に加え、
「4話完結」のはずが製品版には第3話までしか入っておらず、後日4話目のアドオンプログラムを配布するという、未完成品売りつけといわれても仕方が無い有様であった。
夏の間に発売された作品では
本編に登場しない主人公の女装姿をパッケージに載せていた『げきたま! ~青陵学園演劇部~』
ホラーとしては別に怖くなく、ロード後に「絶対に殺す……ぶっ殺す……」といった音声がエンドレスリピートするバグの方が怖いといわれた『この歌が終わったら -when this song is over-』
フルプライスにもかかわらずフルインストールで僅か468MB、漫画の設定を丸パクリしたような設定と内容の『ふぇいばりっとSweet!』
がエントリーしたが、いずれもクソゲーとしては小物であった。
記録的な猛暑が一段落した9月、暑さが過ぎ去るのを待っていたかのように『Orange Memories』が姿を現した。
Purplesoftwareが新たに立ち上げた抜きゲーブランドであるPurplesoftware delightの1作目となる本作。
抜きゲーのはずなのにエロが薄い、文章とCGがかみ合っていない場面があることに加え、
未使用のエロボイスが内部に残存していたということから実は未完成だったことが判明。
ブランド名とかけて「大喜び(delight)なのはこんな未完成品でも金が入るメーカー側だけであろう」と言われた。
9月にはもう1つ『萌恋維新!アタシら、じぇいけー、新閃組!』が着弾。
アーベルソフトウェアの2010年3本目となる本作は、ミニゲームが楽しめたりHシーンのボリュームが十分であったりと、前2作と比べ不満は少ない。
しかし、パッケージに書かれているヒロインのうち一人がパッチを当てないと攻略できないというアドオン仕様は健在である。
その後は
ゲームの内容自体は良く、後日修正パッチが出されたものの、発売時点では一部PC環境で起動すらできなかった『普通じゃないッ!!』
原作を知らない人は置いてけぼり、原作ファンを失望させた『JINKI EXTEND Re:VISION』
体験版の出来は良かったものの、蓋を開ければご都合主義満載な設定が忘れ去られ全く活かされていない上にエロが薄かった『なないろ航路』
がそれぞれエントリーした。
年末を迎えてもクソゲーラッシュは続く。
まずはHammerHeadsの『熟処女~私、はじめてなんです~』が着弾。
低価格の抜きゲーとして発売された本作。
しかし、誤字やスクリプトミスが多数見受けられる、HシーンでNG音声が収録されている、
さらに他作品からセリフを流用したのか、「東海林」香奈とのHシーンにおいて本作に登場しないはずの「谷原さん」なる人物が登場するなど、
低価格であることを差し引いても、クソゲーであることに異議を唱える人は少ないと思われる。
大々的に宣伝されていたザッピングシステムの良いところを全て殺した『アザナエル -AXANAEL-』
細かいバグやシナリオ、キャラ、グラフィックの不整合やフラグ管理の甘さなどは健在だった『三極姫 ~乱世、天下三分の計~』
がエントリーされ、2010年も残すところあと1週間となった。
最後に現れたのは、『まるめる ~ソウシンシャは@未来~』である。
本作の売りは「過去の自分へとメールが送れる携帯によって周回プレイでストーリーが変化する」というものであり、誰もがマルチストーリーを想像するであろう。
しかし、実際には「TRUEエンドに辿りつく為にはそれ以外の17個全てのエンディングを順序通り見せられる」という一本道シナリオであった。
また、毎度恒例のアドオンでは表情差分が追加されたが、本来ならば「修正パッチ」という名目で配布されるものではなかろうか。
なお、本作はアーベルソフトウェアの2010年4本目であり、前3作とあわせて本スレ住人の間では「アーベル四天王」と呼ばれることとなった。
それでは、2010年の次点と大賞を発表する。
次点は『恋刀乱麻 ~わたしが、アナタを、守るからっ!!!~』『CrossDays』『Floating Material -The hill where the star born-』『Orange Memories』『熟処女~私、はじめてなんです~』
そして大賞は『色に出でにけり わが恋は』とする。
2010年はエントリー数こそ多いものの、誰の目から見ても突出しているクソゲーは存在しなかったため、大賞の選考は難航せざるを得なかった。
次点以上についてはどの作品が大賞となってもおかしくはなかったことを予めお断りしておく。
この「クソゲーのクラスター爆弾」といえる状況の中で、今回大賞を選考するにあたっては「プレイすることが苦行であるといえるか」ということを基準とした。
そもそもある作品がクソゲーとされるのは、バグ、未完成、シナリオ・CG・システムの不出来などの原因を問わず、その作品をゲームとして楽しむことができないからであり、
さらに楽しめないを通り越して苦行にさえなってしまう作品は、まさにクソゲーの「模範」であるというべきである。
突出したものがない2010年においては、このような「模範」に忠実な作品こそが大賞を受賞するにふさわしいといえる。
この基準にしたがって各作品を検討すると、
『Floating Material』『Orange Memories』『熟処女』の問題点はそれぞれ決して小さくないが、積極的にプレイを苦行にするという性質を有するものではなく、
『CrossDays』は誰も予想できなかったであろう超展開こそあったものの、その存在自体は容易に予想できたこと、シナリオ展開を評価する見解も存在することを考慮すると、
超展開のみを理由として一般的にプレイが苦行であると判断することは必ずしもできない。
また『恋刀乱麻』は本作の売りである「五行バトルシステム」において数分間クリックし続けるという苦行を強いられるが、シナリオ自体は無難であるため、苦行に感じるのは作品の一部であるということもできる。
これらと比較して『色に出でにけり わが恋は』は、
キャラの言動がキモいだけにとどまらず、起伏がなく無駄に長いシナリオ、プレイのテンポを乱す無駄に多い100以上の選択肢、構成のアンバランスさなどシナリオが絶望的であり、
音楽・CG・システム等のクオリティは非常に高く作品として完成しているにもかかわらず、シナリオの1点のみによってプレイを苦行にした正統派のクソゲーであるといえる。
さらにこれらのクソ要素は、オープニング前などのごく一部を除いて作品のほぼ全体に満遍なく散りばめられているため、プレイヤーは長時間にわたり継続して苦行を強いられることとなる。
したがって、上記の基準に最も合致する『色に出でにけり わが恋は』が僅差で大賞に輝いた。
2011年は、満場一致で大賞とすることができる強烈な1本が生み出されるのであろうか?
最後に、見事大賞に輝いた『色に出でにけり わが恋は』のタイトルとメインヒロインの迷言を用いた一言をメーカーに贈り、
2010年クソゲーオブザイヤーinエロゲー板を締めくくることとする。
「前後ぉぉぉん♪不覚に陥ってこんな色を出さないでください。」