2012年度 総評案4

2012総評案4 大賞:華麗に悩殺♪ くのいちがイク! ~桃色ハレンチ忍法帳~


578 名前:総評4 ◆fie2FdgopM [sage] 投稿日:2013/02/14(木) 13:52:14.30 ID:GfROF2/e0 [2/11]
…『革新』。2011年を一言で称するならば、この言葉こそ適切であろう。紙芝居ADV一辺倒と称される闇の大陸から生まれた3DやRPGといった別ジャンル。
そして年明けに行われた「最凶のクソゲー」と謳われた『ゾンビ』と「最高のクソゲー」と謳われた『学園迷宮』の頂上決戦は、
一ヶ月の議論の末に決着つかず異例のダブル受賞となった。そしてその決着を見届ける前に、
かつて天才と謳われたクソゲーマイスター・管野ひろゆき氏は早すぎる生涯に幕を下ろしたのである…。

一つの世代交代が終わり、新たな一つの時代が始まる…。
無限に地雷が湧いて出てくるこの大陸において、散りゆく戦友に鎮魂を遺しながら進む男達の戦いが新たに始まったのだった。

そして、平穏は年明け早々に打ち砕かれた。前年度覇者の一角・softhouse-sealが、新時代の覇権を取るべく、年明け早々の1月28日に大賞級をもって
KOTYeに突撃を仕掛けてきたのである。こうして生まれた会心の地雷手裏剣…その名は『華麗に悩殺 くのいちがイク! ~桃色ハレンチ忍法帳~』。
某同人Flashアクションゲームのオマージュとして作られた本作だが、起動ファイルまでAdobe Flash playerそのまんま。
元がFlashなので、セーブは勿論、オプションで操作キーを変更する事すらできない。
シナリオは、今より昔の山の奥という斬新な文章表現で、忍術を学ぶ必要がなさそうな平和な時代の忍びの里を襲った、最後まで謎の忍者集団と戦うという
はじめから真面目に話を練る気がないのが丸分かりな超投げっぱなしストーリー。
アクションゲームとして見ると、「異常なまでに少ないモーション」「やる気が微塵も感じられないボイスと効果音」「性能に違いがない2キャラ」
「ジャンプ中は完全無敵」「自機は右側、敵は左側にしか攻撃できない」「そもそも左右に振り向くことができない」「行動パターンが2つあるのはラスボスのみ」
等々、バランス以前の欠陥だらけであり、ファミコン時代のクソゲーにも劣る化石同然の仕様には開いた口が塞がらないほどである。
エロゲーとして見ると、まず前提として本作にはまともなHシーンが存在しない。
Hシーンと呼べるものは、アクションシーンにおける雑魚忍者とラスボスから受ける計6パターンの陵辱アニメーションのみで、CG付きのHシーンは1枚もない。
全CGはステージ間に挿入される申し訳程度の半裸10枚のみで体験版に全部入ってるので回収に手間はかからないという有様だ。
その凄惨極まりない出来は、発売後KOTY内外問わず話題が沸騰。某エロゲ批評サイトでは一時2012年度評価点最下位を独走、怖いもの見たさで購入した人々からは、
「核地雷どころかスペースコロニーが堕ちてきた」「門番どころか破壊不能のバキュラ」「チーターマンか何か?」と多大な反響を呼び、絶大な虚無と絶望を植え付けた。

さらにsealは春先から連投を開始する。2月には別ブランドDevil-sealから『獣ノ躾 ~本能と理性の狭間で悶えるケモノ~』を発売。
調教したケモノっ娘に売春させてお金を稼ぐ経営シミュレーションという、相変わらずコンセプトだけは面白いが、
「所持金900万から500万返済したら、残金が0になってゲームオーバー」といった闇金業者も素足で逃げ出すバグで台無しにする客の舐めっ振りも相変わらず。
他にも「音声とセリフの不一致」「作る意味が微塵もない調教アイテム」「別ゲーのセーブデータを当てるとCGと回想が全て埋まる」などシステム面もガタガタである。
幸い本作はパッチによって何とか遊べる代物に進化成功したものの、年明けから敷かれた磐石の体制は多くの住民にある種の不安を抱かせた。
このままでは、ノミネート作品が全てseal作品で埋まってしまうのではないか、と…。
そんな空気もあってか、2012年は『何処がsealの座を脅かすか』に注目されながら月日が流れていった。

3月に話題を集めたのは地雷エロゲーの老舗・戯画マインこと戯画の『マテリアルブレイブ』。
非常に短い伏線未回収の一本道シナリオ、周回プレイの無意味さやフラグ回収の面倒臭さという駄作の王道で攻めつつ、
日常パートにおける「ヒロインにジュースを奢り続けていたらオチた」というパターンの多さから、媚薬でも盛ってるんじゃないか? とツッコまれるも、
バトルパートはまともな出来ゆえにやはり印象としては物足りない印象だった。
他を見ても不快すぎて彼女どころか友人にすらなりたくないヒロイン勢が登場する『Friends』や、シナリオが酷すぎて戦評を書く気力が中々起きないと言わしめた『Princess-Style』、
インストーラーがバグっていて内容がプレイできないことから始まり、完全に寝取られを舐めていると評された『NTR48 ~俺の家族が寝取られるまでの48日間~』が軽いジャブを
続けながら住民達は安堵混じりのため息を漏らしながら地味な日々を過ごしていった。

そんな閉塞感が漂い始めたKOTYeに鬼才が現れたのは6月29日…。あかべぇそふとすりぃの『JOKER-死線の果ての道化師-』。
同人出身から始まり、解散宣言、復活、姉妹ブランド統合と動きが絶えないあかべぇが送り出した本作は「JOKER(切り札)」の名に恥じない圧倒的存在感を持っていた。
有象無象の中から唯一無二のテキスト郡が生まれるエロゲ業界に突如現れた一人の男「小山田伸」。彼が書き記した
「ざざーんざざーんごごうごうばばばば」「ごごろぴごーーん、なんてときどき落雷」「びひゅおうおうおうおうびひゅおうおうおうおうおう」
「僕は迷子だ。 世界的迷子だ。」「そそそそそそそそそそそとセイタカアワダチソウののオーケストラ。」(全て原文まま)といった数々のテキストは発売後
作品スレ住民を阿鼻叫喚と抱腹絶倒の渦に巻き込んだ。その他にもルール厳守のデス・ゲームなのに登場キャラがことごとくルールを無視したり、
夜間に腹をナイフで深々と刺された主人公が翌朝何事もなかったかのように登校するというフラグ管理の杜撰さも相まって、
人々に国語と読解の大切さを改めて理解させたのだった。

これを受けてsealも3度動く。7月には『変態勇者』『学園迷宮』に続くエロRPG第三弾『魔物っ娘ふぁんたじ~』を投下。
何も成長していないを通り越し、成長する気がまるでないという本作の出来は悪い意味で必見である。
まずsealお得意のバグであるが、宝箱が開かない、特定の場所で逃げると進行不可の場所に飛ばされ「いしのなかにいる」状態と化したり、
パッチを当てたら当てたで今度はボスのイベントフラグが消滅して実質クリア不能になるなどもはやお家芸状態である。
苛烈極まりないザコ敵と数歩でエンカウントするバランスは苦行に等しく、まともにやればクリアは困難であるが、
幸い主人公は最初から最強武器を持っているので、「チートで固めて物理で殴ればいい」のは某KOTY大賞に対する盛大な皮肉だろうか…。

そして夏の問題作といえば、スワンアイの『SEX戦争 ~愛あるエッチは禁止ですっ!~』は外せないだろう。
SEXの強さによって序列が決まる世界観でありながら、上位陣は処女という矛盾したストーリーから分かるように、
本作は「おバカなノリを意識した抜きゲー」を狙って完全に外した出来損ないである。
前述の理解に苦しむ設定もさることながら、本作はフラグ管理の杜撰さと地の文と補足説明すらないダイジェスト展開がとかく多く、
SEX勝負で負けたはずなのに後日では勝ったことになったり、一度もHしていない女性が主人公の子供を妊娠していたり、
破瓜シーンで主人公が「使い古しのマンコなのに気持ちいい!」と発言したりと、人間の理解の限界に挑戦するかのようなシナリオが延々と続く。
Hシーンも10~20クリック程度で終了する程の早漏振りで抜きゲーとしても使い物にならず、フルプライスでありながら4時間あればコンプ可能な極薄さもさることながら、
トドメに特典ディスクをインストールすると本編が上書きされてプレイ不能になるという特大の不具合をかまし、満場一致のKOTYe入りを果たした。

その1つが、発表から実に10年の歳月を費やし遂に発売に至ったExceptionの『白神子~しろみこ~』。
伝記モノとして月並みながら、明らかに生まれた時代を間違えている本作は、絵、キャラ描写、演出、全てが10年前と比較してもその水準にすら届いていないという彷徨う白骨死体である。
その特徴の1つが「肛門の筋肉がゆるゆるで、身体から汚物の匂いを漂わせている」という時代を先取りし過ぎた設定もさることながら、
本作をクソたらしめている最大の要素、それは百科事典並みのテキスト量で構成された地獄の耐久シナリオである。
選択肢は優に100を超え、エンディング数は34。総プレイ時間はボイスなしにも関わらず約45時間というからその長さたるや尋常ではない。
数々の小粒のクソ要素を冗長すぎる話で包んだ本作は、「単純な苦痛度」でいえば歴代KOTYe作品屈指の代物であることは間違いないだろう。

もう1つがEMUの7年半ぶりの新作となる『パジャマさんこんにちは』だ。選評者をして「そのまま永眠していればよかったのに」と言われた本作は、
なんと容量が僅か201MBという搾りカス振り。しかも体験版と容量が変わらないことから「製品版は体験版のルートを開放しただけなのでは?」と邪推される事になる。
おまけに初回特典のおまけが製品版より上の642MBと、傍から見ても何故発売したのか問うてみたいほどであり、戦う前から既に負けている感がひしひしと伝わってくる。
シナリオは、心の闇を抱えたヒロインの問題を解決してHするという中学生のダークパワーが感じられる各20分弱のSSをもって展開され、フルコンプまでは僅か2時間程度である。
挙句真エンドは「実は引きこもり主人公の夢の中のお話でそれまで出てきた女性キャラは全部妄想の産物」という救いようがない夢オチで締められる。
虚無でありながら最後に後味の悪さを持って存在感を示すという制作側の底意地の悪さが伺える本作の出来に住民からは多くの失笑が浮かんだ。
パッケージ裏には、アイ惨よろしく「嘘だろ?騙された・・・」という迷言が載っているが、それはこっちのセリフなのは間違いないだろう。

そんな邪霊の駆逐を目論見、sealも4度動く。11月には『欲情トマランナーズ ~エルメロスは絶頂した~』を発売。
強制スクロールアクションゲームなのに、肝心のジャンプボタンと攻撃ボタンがたまに機能せず、しかも攻撃中はジャンプできないので、
敵の配置次第では穴落ち即死確定というメロスでなくても激怒仕様の有様。
Hシーンはまともなため『くのいち』ほどのインパクトこそなかったが、そろそろ走るのを止めて一休みしたらと思うのは大きなお世話だろうか。

こうして身に沁みる秋風が一区切りついたところで、いよいよ彼らが蠢きだした。
そう…、KOTY界の安心と伝統の天邪鬼「年末の魔物」である。

その中でも特に住民の心を掴んだのが、FLATZの『Cross Quartz』だ。
昨年度『シークレットゲーム』がエントリーしたFLATの別ブランドだが、そのゲーム性は悪すぎる意味で大きく異なっている。
古来より、面白いものに面白いものをまぜても更に面白くなるとは限らないのは普遍の定理であるが、
なんと今作はエロゲに即死級鬼畜アクションを混ぜるという邪神融合を成功させた快作である。
まず本作は仕様上、『被弾すると立っている場所をすり抜ける』という特徴があり、その下には大抵針山があるので、被弾=即死というパターンが異常に多い。
更に根本的な操作性もハシゴを昇り降りするだけでも一苦労というほど極悪極まりなく、
プレイヤーはファミコンの最弱神スペランカーやメガドライブの大魔王・ソードオブソダンの如く死体を積み重ねていくことになる。
このように即死ゲーの常識だけはしかと受け継いでいる本作ではあるが、救済措置としてセーブポイントが存在する。
しかしそれも約500フロアのうち精々30ポイント程度で、仮にボスを倒せたとしても戻る途中にうっかり死ぬと実質ボスと再戦を余儀なくされる。
エロゲーとしてもコマ落ちするエロシーンや、紙より薄いシナリオなど散々で、
挙句登場キャラが作中で「クソゲーじゃねぇか」と発言するなど正直褒めるところがない惨状。
それでも歴戦の勇者たちが突貫し「次やればもう少し先に進めるかも」「この攻略パターンならいけるはず」などと言い出す猛者が現れるのもやはり伝統というべきか…。

こうして年の瀬も近づき、役者が揃いつつあった年末の12月28日…そこにREALの『いたずらっ娘 ~うちの娘にかぎって~』が変死体と化してKOTYeに滑り込んできたのである。
本作は3Dエロゲであり、その破壊力は昨年度の『修羅恋』『恋愛+H』で多くの人々を畏怖させてきたのだが、7月27日に世に送り出されて以降、
DLCを含めパッチを当てるたびにバグを倍プッシュしていくという悪夢のような逆サポートで年末の魔物に変貌しこの度見事エントリーを果たしたのだ。
発売当初から動作が重すぎたり、環境次第ではプレイすることすら出来ないと一部の人々を絶望させてきたが、初期はまだ「壁に埋まる」程度に過ぎなかった。
だが、地獄はここから始まる。Hシーンでゲームが落ちる、ロードが行われなくなる、座標がズレる、触手のように髪の毛が伸びる、尻が荒ぶる、首があらぬ方向に曲がる、
胸が崩壊する、垂れた乳が地面に張り付く、髪がちらつく、服が伸びる、腕が複雑骨折する、etc、etc…、
その総数は最終的に30の大台に乗り、メーカー側も完全にバグの完全駆逐を諦めた模様。その有様は有料デバッグを通り越し、
怪しげな幻覚鑑賞ソフトと化してしまった。バグはドラに過ぎないとは本家KOTYの言葉だが、
バグのみのストロングスタイルで住民の目を汚し続けた本作もまた、KOTYe界の友(とも)であったと断言できる。

今年を振り返ってみると、飛びぬけた個性にはやや欠けるものの、突き抜けた酷さがそれを上回るという苦難に満ちた一年であったと言える。
その中で次点は、
『SEX戦争 ~愛あるエッチは禁止ですっ!~』『Cross Quartz』『いたずらっ娘 ~うちの娘にかぎって~』
そして大賞は、
『華麗に悩殺 くのいちがイク! ~桃色ハレンチ忍法帳~』とする。

昨年度に続き、今年もプレイヤーの生命すら脅かしかねない駄作が数多く発売された2012年。
その中でも激寒変態設定バカゲーの『SEX戦争』、鬼畜系アクションエロゲという新ジャンルを開拓した『Cross Quartz』、
バグを上乗せし続けることで更にレベルアップを重ねていく『いたずらっ娘』は特筆するに値し、大賞に選ばれてもおかしくないゲームだった。
だがそれらは低水準ではあるがまだ「エロゲー」であろうとしたし、また「エロゲー」であることは間違いなかった。
対して『くのいち』はどうか? 本作にはまともなHシーンがなく、まともなアクションシーンもなく、そしてまともな開発体制すらないことが垣間見える。
言うまでもなくエロゲーとは極めて得意な嗜好品であり、そこには人々の性的趣味と業界の規制のせめぎ合いがある。
その中で『くのいち』は、これはエロゲーと呼べるのか? とまで言わしめるほどの魔性の虚無を持っていた。
本家KOTYでも『ゲー無』と称されるジャンルが存在するが、ここにきて遂に性的嗜好品の世界から『ゲー無』が生まれたことは紛れもない負の歴史の1ページであろう。
故にその無価値の追求を実践し、それを体現してみせた本作に大賞という不名誉を授与したい。

2012年はsealを始めとする元同人勢力の台頭もあってか、無料の同人未満作品が数多く市場に出回った。
一方で実績がある大手・中小もやや精彩を欠き、期待を裏切る報告が挙がる等、全体を見ればやや不作に終わった年と言えるだろう。
アイ惨ショックから始まった当企画も今年で5年目を迎えたが、世に何が起こるのか分からないように、どんなクソゲーが現れるか、それは誰にも分からないのだ。
たった1つ間違えるだけで供給する側が邪悪な魔物と化す。そんな暗黒大陸での戦いは、来年も、再来年も続くことだろう…。

最後に、『華麗に悩殺♪ くのいちがイク! ~桃色ハレンチ忍法帳~』を送り出し、事実上のKOTYe2連覇を獲得したsofthouse-sealに
次の苦言を呈することで2012年クソゲーオブザイヤーを締めくくりたいと思う。

「エロゲーから、エロとゲームを忍んだら何が残るんですか?」
最終更新:2014年08月02日 23:09