2013年度 総評案5修正版

2013年総評案5 大賞:明日もこの部室(へや)で会いましょう

クソゲーオブザイヤーinエロゲー板(KOTYe)。
「修羅の国」とも揶揄されるエロゲー界の中でも一際暗く澱んだ最下層で覇を競いあい、苦痛と笑いが相見える場所。
KOTYe5周年となる2012年は世代交代を感じさせたものの、過去に引けを取らない激戦が繰り広げられた。
惜しくも2011年に単独大賞を逃したsofthouse-sealのゲー無『くのいち』と、急成長株スワンアイの大型地雷『SEX戦争』の大賞争いは、
KOTYeの理念というある種「最後の切り札」を持ちだすまで決着がつくことがなかった。
辛うじて大賞の選出を終え疲弊したKOTYe住民は、恐怖と期待の混ざった心持ちで2013年のクソゲー来襲に備えるのだった。



1月、まだ2012年の大賞も決まっていないうちに乗りこんできたのは、
SEX戦争の生みの親スワンアイが送り込んだ刺客、
『リア充爆発しろ! ~変身能力手に入れたんだけど質問ある?~』(通称『リア充』)である。
本作は、変身能力を手に入れた主人公がその能力を使い、彼氏持ちのヒロイン達を手篭めにして見返してやるという、
SEX戦争同様の「バカゲー+抜きゲー」である。
だが、これまたSEX戦争同様舞台設定の説明は殆ど出てこない。
今作では一応能力を入手した経緯については辛うじて説明しており多少の進歩がみられるものの、
たった数行の説明では無いに等しいといっても過言ではないだろう。
シナリオの中身も酷いものであり、
「主人公が変身して捏造したハメ取り写真が見つかったら、何故か女子同士でのハメ取り自慢大会が繰り広げられる」、
「ヒロインが教室で失禁したら男子生徒が自慰を始め出し、それを見つけた教師が男子生徒に廊下で自慰をするよう指示」、
などといった訳のわからない寸劇を度々見せつけられる。
また、抜きゲーの肝は勿論エロシーンとなるわけだが、そのエロシーンも惨憺たる有様である。
殆どが20クリック程度で終わる短さにも関わらずその大半がコピペであり、実用性があるとはとても言い難い。
シーン中に頻出する「ずっぷ!ずっぷ!ずっぷ!ずっぷ!ずっぷ!」「ああ…もう出そう」のフレーズは、
このクソゲーに新愛称『ずっぷ』をもたらしただけでなく、
冒頭の説明の「そして…僕は変身能力を手に入れたのだった」の行と併せて
「3行で表せるゲーム」としてAA付きでスレ住民に温かく受け入れられた。
斯くして、SEX戦争同様超展開なこのバカゲーは、2012年のくのいち同様2013年の門番として君臨するのであった。



しかし、今年のクソゲーは門番が現れた程度で怯むほど軟では無く、幾多ものクソゲーが次々に門を乗り越えた。
2月にはモテも修羅場も殆ど無くとんとん拍子に1対1恋愛に縺れ込む『モテすぎて修羅場なオレ』が先陣を切り、
気味が悪い日本語で紡がれる駄文と存在意義が怪しいゲームパートからなる『星彩のレゾナンス』がそれに続く。
3月には最終痴漢電車の設定をパクった上に、選択肢次第で男に痴漢行為を働き男の喘ぎを聞かされる
『淫獄痴漢列車 ~A Molestertrain Named Desire~』が立て続けに侵攻。
同じく3月には、2011年にKOTYeを賑わせたTEATIMEの姉妹ブランドFULLTIMEが
『UNDEROID』という挑戦状をスレに叩きつけてきた。
ウェイト調整や衝突判定の手抜きによるグラフィック崩壊はクソ3Dゲーの嗜みとして当然持ち合わせている上に、
ウリであるアクションパートは硬直が長すぎる関係で大半のアクションが死に要素。
更には被ダメージによる脱衣システムも頻繁に体力回復を挟まないと脱げる前に死ぬという笑えない事態であり、
低クオリティなボイスやシナリオを含め、全方面で何がしたいのかわからない仕様であった。



新年度が始まり春の陽気になる4月になると、softhouse-sealからくのいちを彷彿とさせる
『エルフと淫辱の森』(通称『エルフ』)が暖かさに寛ぐスレ住民を襲撃する。
元々「ゲー無」であったくのいちから更にアクションを削ぎ落とした本作は、予想通り中身も無いに等しい。
また、プレイヤーだけでなく敵もアクションを削除されたのか殆ど攻撃せず、接触以外ではまずダメージを受けない。
くのいちで問題視されたジャンプ中無敵は流石に削除されたものの、
被ダメージ後の無敵時間がやたら長いので、無敵中に攻撃を連打すればボスすら瞬殺という世紀末的な戦闘バランスである。
肝心のエロについては、非難轟々だったくのいちの反省を受けてか改善する姿勢が見られる。
アクションパート中のミニアニメ以外にきちんとしたHシーンを用意し、
ミニアニメにも射精ボタンを設置し任意のタイミングで終了できるように進化したのだ。
しかし、ミニアニメは何故かくのいちより小さくなった上に、
キャラの手前に配置された背景テクスチャに頻繁に隠されるので、相変わらず実用性には難が有る。
一つを直せば別の箇所で粗が出るという有様は、sealのクソゲーマイスターぶりがよく現れていると言えよう。

また、4月のクソゲーでは『少女神域∽少女天獄』も見逃せない。
Lassお得意の鬱グロ系異能力ファンタジーかと思いきや、シナリオの大半は料理の話と作中の街の観光案内。
これらは終盤に殆ど関わってこない為、只々冗長な文章と意味なく打たれる強調記号に辟易することになる。
料理や観光案内の中に設けられた数々の選択肢も、ルート分岐に何の影響を及ぼさないどころか
CG差分すら存在しないという無価値ぶりである。
そして、いざ終盤に入り待望の異能力バトルになるかと思いきや、
突如として新設定が次々に現れた後は駆け足でエンディングまで一直線。
頻出する難読漢字、無駄にころころ変わる視点と相俟って理解が追いつく前に終わっていることが大半である。
理解できなかったが他のルートで補完があるかも…と期待して別ルートに行っても、
ヒロインが変わっただけで同じ内容を読まされる一本道シナリオが露呈するだけという二段オチまで仕込まれている。
ヤマもオチも無く面白味のない本作だが、唯一面白いとすれば、
とあるルートでの妹凌辱からのダイナミックフルチン自殺という超展開に苦笑する程度だろう。
ライターの脳内設定と雑学を適当に書き連ねたかっただけとしか思えない本作は、
要点不足で蛇足は満載というクソシナリオの王道を驀進しており、
絵や音楽は良いにも関わらず買い取り価格が一時期100円まで暴落したのも頷ける出来栄えであった。



5月になってもクソゲー達は五月病になることもなく平然とスレへの侵攻を繰り返す。
まず、デタラメな経済論をベースに、トンデモ設定の登場人物達(主人公含む)が
好き勝手に暴れる『お嬢様はご機嫌ナナメ』が颯爽と登場。
続けて、フルアニメーションを謳いながらWin98時代を彷彿とさせる画質・インターフェースに加えて、
携帯小説の寄せ集めのような超展開で購入者を落胆させた
『Qualiaffordance-クオリアフォーダンス-』が来襲するのだった。

また、マスターアップ後に延期宣言と発売前から注目を浴びたEx-iTの『逃避行GAME』(通称『逃避行』)は、
その出来の酷さからプレイヤーが逃避行したいくらいであった。
ゲームを起動すると飛び込んでくる[START][LOAD][END]のみの徹底的に簡素化したスタート画面はほんの軽いジャブ。
不安を胸にゲームを進めると、尺不足と伏線の投げっぱなしで要領を得ないシナリオと多数のバグに頭を抱えることとなる。
特にバグの方面では優等生で、不意の背景暗転、ボイスの再生不良、セーブデータロード時の不具合、
特定ルートへの進行不能など多岐に渡り、それらのバグの中でも有名なのが後に本作の通称ともなる「イラッシャイマセー」バグである。
これは、名前が「???」のキャラ(所謂モブ的なキャラ)の台詞が、
全て「イラッシャイマセー」という女性のボイスで再生されるというものである。
その結果、身長2mを超える巨漢の殺し屋がドスを効かせた顔で「イラッシャイマセー」と言い出し、
モブ同士の会話では「イラッシャイマセー」を浴びせ合うといった狂気の沙汰としか思えない会話が繰り広げられるのだった。
絶大なインパクトを誇るこのバグにスレは一気に盛り上がり、ようかんマンを改変したAAまで誕生する程であった。
また、既に説明した通りこのゲームには[START][LOAD][END]しか存在しない為、回想モードといったものはない。
その為、予約特典の「ヒロイン視点のHシーン回想モード追加」も機能するはずが無く、無用の長物と化す。
幸か不幸かバグや予約特典の不具合などは概ね現行パッチで修正済みであるが、
その現行パッチを出すまで発売から2ヶ月を要しており、企業体質に問題が有ると言わざるを得ないだろう。



梅雨に入る6月の空気を一掃したのは、MBS Truth -Cherish Pink-の
『クラス全員マヂでゆり?!~私達のレズおっぱいは貴女のモノ・女子全員潮吹き計画~』(通称『マヂゆり』)であった。
タイトルを見てもわかる通りレズ物の抜きゲーなのだが、
何をトチ狂ったのかエロシーン中のBGMがRPGの序盤マップを彷彿とさせる軽快なものであり、
エロにも6月の空気にも合わない爽快なBGMに唖然とすることになる。
また、抜きゲーなのにボイスを徹底的に削減しているのも本作の特筆すべき点であり、
20-30クリックごとにやっとボイスが1回入るかどうかという程度である。
当然これでは話として成立しないのだが、会話の少なさを補うように主人公の独白や妄想が事あるごとに挟まるため、
話のテンポが非常に悪いという問題も抱えている。
この流れは抜きゲーの肝であるエロシーンでも続き、行為に及んでいるというのにほぼ無言なヒロインに対し、
主人公はマシンガントークを炸裂させるという抜きゲーにあるまじき状態が出来上がるのだった。
百歩譲って、本作の主人公は「心にチ○コが生えている」と例えられる程に性欲だだ漏れである為、
独白やマシンガントークが多挟まるのは已むを得ないと許容したとしよう。
それでも、それらの内容が、溢れる性欲を「ボクの中の雌ライオン」と表現したり、
突如「にゃあああん!」と叫んだりという訳のわからないものでは、最早抜くどころの話ではない。
「雌ライオン」に至っては事あるごとに登場するため、本作の新たな通称にもなる程であった。
ボイスやシナリオだけでなく、システム面でも低質さには抜かりない。
ゲームを終了する以外に止める術の無いスキップ機能、個別セーブ参照な為にコンプリート不可能な立ち絵鑑賞機能、
レズゲーなのに白濁液発射システム搭載などといった不可解な仕様が並び、只々乾いた笑いを浮かべるしかないのであった。



7月、スレは一転して陰鬱な空気に包まれた。
門番を抱えるスワンアイが黒鳥ブランドで出した『雨音スイッチ~やまない雨と病んだ彼女そして俺~』がやってきたのである。
一見してヤンデレかと思いきや、本作のメインヒロインは「ヤンデレ」ではなく「病んでる」のである。
つまるところメンヘラと言われるような狂人なのだが、その狂いようはなかなかハイレベル。
「主人公の母親の葬儀中にヒロインがウェディングドレス姿でブーケトス」はその最たる例で、
当然エンディングも陰鬱なものばかりである。
狂ったシナリオに釣られてか、作画もデッサンが崩れていたり塗りがおかしかったりと至る所で狂っている。
ヒロインが足蹴にされたり絞首されたりする場面、果てはリストカットする場面などにばかり
アニメを使用する開発陣のセンスは、最早狂気としか言いようがない。
昨今乱造され気味なテンプレヤンデレではなくメンヘラに焦点を当てた本作は、一部では評価する声が上がった。
とはいえ、絵やシナリオのボリューム等は到底フルプライスの域には達しておらず、クソゲーの謗りを免れないだろう。



短い夏休みが過ぎ、秋の様相が見え始めた9月、スレにはクソゲーの秋とばかりに大作が押し寄せることとなる。
その先陣を切ったのは、SAGA PLANETSの『カルマルカ*サークル』(通称『カルマルカ』)。
本作のあらすじは、「魔可」と呼ばれる七つの大罪になぞらえた超能力を持つ主人公とヒロイン達が協力しあい、
過去から未来まで自由に改変できる「カルマルカ」と呼ばれる存在を手に入れようとするものである。
上記の様な設定や体験版の終わり方から多くの期待が寄せられていた本作だが、
いざ蓋を開けてみれば矛盾だらけの電波なシナリオがプレイヤーを襲うこととなった。
怒った時のみ身体能力が向上する憤怒の魔可を持つ主人公は、とあるルートでは平常時でも石を易々と砕く上に、
「暴力では何も解決しない」と言った傍から平然と殴り合いをおっ始める。
カルマルカに相当な思い入れのある別のヒロインに至っては、別ルートで
「ぶっちゃけカルマルカなんかどうでもいい(要約)」と、本作の根幹設定を全否定する有様である。
このように各ルート間での整合性をとる気が微塵も感じられない本作のシナリオは、
クリア者から「個別ルートはTrueエンドと整合性がとれないからスキップした方が良い」と言われたり、
選評者をして「笑い所のないチャージマン研!」と評されるあたり、その酷さに察しがつくというものだろう。
また、シナリオだけでなく、本作の根幹設定であるはずの魔可も相当いい加減なものである。
大半がただのキャラ付けにしかなっていないだけでなく、「嫉妬」の魔可に至っては
発動時に主人公に欲情するなどといった理解に苦しむ内容である。
矛盾と投げやりに満ちた本作のシナリオは、紛れもなく複数のシナリオライターによる弊害であり、
システムにバグは無いがライター間の意思疎通能力がバグっていると言われるのも仕方の無い話だろう。
なお、主人公ではなくプレイヤー自身が憤怒の魔可を獲得しかねない本作だが、
それに反してジャンル区分が「ハッピー&スマイルADV」という何とも言えない名前であることも付け加えさせて頂く。
この煽りともとれるジャンル名がスレ住民に受けてハッピー&スマイルマンなるAAが誕生し、
カルマルカのエントリーを聞いたお客様の無礼な振る舞いにいきり立つスレに一時の癒やしを与えることとなった。


その癒しの一時を盛大にぶち壊すが如くゴリ押しでKOTYeの門を粉砕したのが、
戯画の『バルドスカイゼロ』(通称『バルスカゼロ』)である。
練られた世界観とシナリオ、爽快なアクションで人気のバルドシリーズは戯画の代表作でもあり、
発表時にはシリーズのファンを始め多く人の注目と期待を集めることとなった本作。
公式はアクションパートの新要素を大々的に押し出し、製作陣も「『分割するほどでは無いが』大作」と絶賛するも、
製作陣が過去作と異なることや、半年間の延期などといった不安要素も存在した。
そして、いざ発売されると見事不安だけが的中する形となり、期待は悉く裏切られたのだった。
公式サイトで散々煽っていた新要素満載のアクションパートは、
「強化したハズの射撃攻撃は微妙、一部の誘導ミサイルは静止した敵にも当たらない」
「ノックバックが存在しない為にバルドシリーズの売りであるコンボの概念が消滅」
「ラスボスですら格闘攻撃でゴリ押すだけで圧勝 、この間僅か数秒」
「3D描写したが故に、配置物の陰でユニットが見えない事態が多発」
「武装装備数も総武装数も何故か過去作より減少」
などと、前作から進化した部分が皆無という惨状であった。

一方、シナリオの方はシステムに輪をかけて酷かった。
回りくどい言い回しばかりで肝心の説明はまるで足りず、伏線は全力でぶん投げている。
また、大抵の出来事はドラ○もん的な便利キャラが出てきて何とかするご都合展開か、
「実は~~だったんだ」と後からこじ付けて終了するかのどちらかであり、緊張感も感慨もゼロである。
その上、登場人物は総じて理解し難い言動ばかりとり、中でも主人公の言動が高圧的かつ
常識と礼節に欠けているため、真面目にシナリオを読んでも不快な思いをするだけで何の得も無い。
更には、前日譚であるにも関わらずどう考えても前作バルドスカイには話が繋がらない上、
人気の高かった前作主人公が悉く詰られるだけでなく大量殺戮犯の設定まで追加されるという散々な扱いであり、
シリーズものにおけるタブーをこれでもかと破りまくってシリーズファンすら敵に回すこととなった。
画力もボイスも高クオリティとは言い難く、プレイしようにも頻繁に襲う強制終了や特定箇所での100%強制終了など、
まともにプレイすることが困難な本作であるが、一通り炎上して鎮火に向かおうかという矢先に新たな燃料が投下された。
そう、公式からの『バルドスカイゼロ2』の発表である。
続編は無いような発言をしておきながらのこの仕打ちには、
ファンだけでなくスレ住民も呆れかえる他なかったのは言うまでも無いだろう。
多数の犠牲者を出したバルドスカイゼロは、名立たるギガマインに堂々と名を連ねることとなったのであった。



カルマルカ、バルスカゼロといった有名処からのクソゲー襲来に、秋のスレは活気立っていた。
更に、犯罪行為を軽々とギャグで済ませるだけでなく、女装モノなのに主人公がのっぺらぼうという問題児、
『ノブレスオブルージュ』の選評も加わり、スレの活気は更に高まってゆく。
そして、余所からのお客様の対応をしながら盛りあがっているうちに今年も恒例の季節となるのだった。
そう、年末である。
超展開のオンパレードに加えて赤さんの存在意義が疑わしい『赤さんと吸血鬼。』の選評を、
クリスマスプレゼント代わりにに喜ぶスレ住民達。
そんな住民達に、年末の魔物は容赦なく爪を振り下ろしたのであった。

その魔物の名は『雛といっしょ』(通称『雛遺書』)。『逃避行』を出したEx-iTが送り込んできたこの魔物は、
2012年初頭発表から実に2年近い期間をかけて孵化しただけあって、その戦闘力も尋常では無かった。
まず、12月13日マスターアップ、20日発売のはずがまたしてもマスターアップ後に27日への延期を発表。
『ひよこストライク!』から数えて実に3作連続でのマスターアップ後の延期という離れ業である。
そして、いざ27日に商品を受け取ってみれば真っ先に目につくのは異様に皺だらけの梱包である。
これは、後述するバグについての詫び状を入れる為に、
一旦開封して手作業で再梱包したことによるものとの事である。
詫び状を入れる事そのものは良い事だとしても、バグ修正も終わらぬままマスターアップした上で、
詫び状だけで許しを乞おうという姿勢には些か理解が追いつかない。
さて、純然たるADV形式のファンディスクにあたる本作であるが、
進めて10分も立たないうちにプロローグが終わり、
選択肢によって「記憶喪失編」「リハビリ編」「命令ごっこ編」に分岐する。
そして、記憶喪失編以外を選んだ場合、25クリック後に100%エラーで強制終了する。
また、記憶喪失編を選んでもやはり特定の位置で100%エラー落ちする。
つまりプロローグ以外無いに等しいのである。
この製品として明らかに成りたっていないという異常事態に住民は狂喜乱舞し、
スレは今年最大級の盛り上がりを見せることとなる。
体験版未満の出来な上に内容が不明なことから「シュレディンガーのエロゲ」「パンドラの箱」等と呼ばれ出し、
終いには製品失格な惨状を指して「ゲー無」をも超える「 ー 」などと呼ばれる有様であった。

そして製品失格の出来に盛りあがるスレを更に活気立たせたのがメーカーの対応だった。
「28日はイベントに出るのでパッチは無理。29日に修正して30日にを出す(要約)」という常識外れな声明にスレは湧きたち、
「完成したけど公開先のミラーサイトと連絡が取れないから公開できない」などといった
子供レベルの言い訳を行うメーカーを見ながら、賑やかに年を越すのだった。
最終的には宣言期日を大幅に過ぎた1日の午後にVer. 1.10パッチが公開されたものの、
そのVer. 1.10パッチでも記憶喪失編の強制終了は直っておらず、
オールクリアはVer. 1.10同様延期の末に出されたVer. 1.20パッチまでお預けとなった。
さて、強制終了が修正されたから問題が解決したかというとそうではなく、新たな問題が浮かび上がっただけであった。
既出の3編に加えパッチ修正後に存在が明らかとなった「覚醒編」を全て合わせてもフルスキップで10分程度であり、
ミドルプライスとはいえ非常に薄いと言わざるを得ない内容だったのである。
パッチの方も何故かVer.1.20公開前にVer.1.10を公開停止するといったきな臭い動きが見られ、
後にパッチを解析するとCGやシナリオを追加したような痕跡が見られることから、
バグを装って未完成を隠しただけなのではないかという憶測も飛び交うこととなった。
発売前の延期、新品とは思えない梱包とケースを開けると目に飛び込んでくる詫び状、回避不能の強制終了バグ、
そしてメーカーの杜撰な対応に未完成隠蔽疑惑と話題には事欠かなかった本作は、
改めて年末の魔物の恐ろしさをスレ住民に叩き込んだのであった。



さて、本来ならこの後に2013年の次点と大賞の発表となるのだが、今年はそうはいかないのをご容赦願いたい。
何しろ、普段は総評前で特に話題の無い1月のスレに、選評〆切前に駆けこむべく
それまで埋もれていたクソゲーの選評が大挙して押し寄せてきたからである。
この予想外な事態にスレ住民は狼狽することとなるが、同時に新たなクソゲーの登場に胸躍らせるのであった。

遅れてやってきたクソゲー達はいずれも個性あふれるものであった。
姉妹ブランド故かマヂゆり同様の異常なまでのボイス削減策を徹底した上に立ち絵差分まで削った抜きゲー
『聖ブリュンヒルデ学園少女騎士団と純白のパンティ ~甲冑お嬢様の絶頂おもらし~』(通称『ブリュパン』)、
妹ゲーなのに妹要素0のヒロインも混在し、「いい肉な妹日」等の怪しげな日本語が爆発する『妹*sister -My sister-』、
シナリオもシステムもチープでプレミアムとは程遠い3D凌辱ゲー『プレミアムプレイ~ダークネス~』などジャンルも様々。
かつてはALcotハニカムの開発チームの1つだったGLaceの『Timepiece Ensemble』(通称『TE』)は、
長くてつまらない共通シナリオや文章と一致しないCGといった問題に加えて、
重要人物の真意や意図が本作の開発陣の前作にあたる『1/2summer』をプレイしていないと全くわからないという、
抱き合わせ商法のような意地汚さを見せつけた。
また古豪アーベルソフトウェアの姉妹ブランドであるRed Labelの
『JK辱処女~純粋な心の持ち主ほど処女を好むという法則~』(通称『枝豆』)は、
CG枚数を削ぎ落として製作費を浮かした上に、
「娘の幸せを願うなら娘の処女を俺が奪うのが道理(要約)」などと言い始めサブタイトルを全否定。
おまけにでかでかと表示した枝豆のCGでクリ○リスを表現するという、
前代未聞の表現方法でスレを沸かすこととなった。
この枝豆だが、ただクリ○リスの例えで出ているのかと思えば突如色がピンクや赤に変わり出すだけでなく、
更には主人公の性器やヒロインの腕の例えとしても枝豆が表示される。
終いには枝豆に注射器を打ちこむなどといった有様であり、
製作陣のサイケなセンスに只々戸惑うこととなった。
3D分野からは『プレミアムプレイ~ダークネス~』に続けと、
痴漢ゲーなのにも関わらず白昼堂々と場所を問わず本番を始めた上に、
バグでヒロイン絶頂時に首から上が消滅する『いたずら学園』が来襲。
更には、多くのユーザーお手製MODによって支持を得ていた前作とのMOD互換性を無くし、
低質なグラフィックのなかゴーストタウンを徘徊するだけの『3D少女カスタムエボリューション』が後に続くのだった。


それらの中でも他とは一線を画す破壊力を持っていたのが、
ミルクプリンの『明日もこの部室(へや)で会いましょう』(通称『部室』)である。
7月26日の発売から実に半年近くもの間潜伏していた本作は、
1月の時点でもネット上を探してもレビューが見つからないという無名な存在であったが、
いざ掘り起こしてみれば年末の魔物と対を成す夏の魔物に相応しい実力を持っていたのだった。

劣悪なインターフェースや、キャプション名を「明日もこの部屋で会いましょう」と思い切り間違えているのは序の口。
異様に腰が細く逆三角形の胴体をしたヒロイン達や、公式HPと名前が一致しないだけでなく
作中で自らを「主人公」と名乗る主人公、寒いパロディや作中キャラのメタ発言、エロシーン後も延々と鳴り響くBGV、
更には我々の知りうるデジタルカメラとは程遠い何かが陳列されたカメラ屋などに頭を悩ませることとなる。
既に頭が痛くなる本作だが、細かいことで悩むなとばかりにシナリオの方はこれらが霞むほどの問題の山であった。

本作は設定自体は「主人公が所属する写真部が実績不足の為廃部の危機に陥ったので、
誰かと仲良くなって写真を撮らせてもらい実績を作ろう。」と普遍的で、
進め方も毎日誰のところへ行くかを選択するだけの比較的オーソドックスなものである。
だが、その中身は普遍的どころか革新的な何かに満ち溢れている。
全体の9割を占める共通ルートは、冗長な雑談かカメラ関連の雑学披露など、
大半のエロゲーマーには不要で退屈なもので占められている。
しかし、退屈だからといって適当に進めていると、100%バッドエンドに直行する罠が本作には仕掛けられているのだった。
大抵の選択式ADVの場合、目当てのヒロインをストーカーしていればルートに入ることができるが、
本作ではそのような方法をとると漏れなくバッドエンドに直行する。
何故なら、ヒロイン毎に「見てはいけないイベント」が存在し、
それらを踏むと問答無用でバッドエンド送りとなるからである。
その見てはいけないイベントというのも、「ヒロインがチャラ男から飯に誘われているのを目撃する」、
「ヒロインがモブキャラから告白されて断る」、「ヒロインが兄弟らしき男と車に乗っている」など、
余程の独占厨を除き一見してわからないものばかりである。
タチの悪いことに、これらのイベントを踏んでも以降のイベントは平常通り進むので、
特に違和感もなくヒロインと良い雰囲気になれてしまう。
そのため、気付かないうちに罠にかかったプレイヤーは、
「ヒロインと仲良くなりいざ被写体の申し入れをしたら、無下に断られた挙句に主人公が自殺」という、
理不尽極まりないバッドエンドに打ちのめされることとなる。
ちなみに、あらすじで既に述べた通り主人公が実績を残さないと廃部になるはずなのだが、
バッドエンドでは主人公が何もしていないにも関わらず部は平然と存続し続ける。
己の必要性を失った主人公が自殺するのも已むを得ないことだろう。

これだけでも相当なクソであるにも関わらず、残り1割の個別ルートではその短さにも関わらず共通以上のインパクトを誇る。
個別ルートでもどうでもいい淡白な話が目立ち、キャラ紹介で張られた伏線を完全に無視。
主人公の方も「無害な草食系男子」という設定はどこ吹く風で、序盤からヒロインを名前で呼ぶだけでは飽き足らず、
個別では突如としてベッドヤクザ化するといったタカ坊を彷彿とさせる有様であり、
「無害な草食系男子」どころか「害な男子」である。
短い個別ルート中にエロを複数詰め込んだため、エロシーンが終わればすぐに別のシーンが立て続けにといった
エロシーンわんこそば状態が発生し、それが終わったかと思えばいきなり数年後に飛んでエンディングになる。
そのエンディングも決して褒められたものではなく、サブヒロインの1人のルートを除いて
写真部の存廃や主人公の成果などは一切出てこないという、清々しいまでの設定の丸投げぶりである。
更には幼馴染エンドでは「一緒にいる時は衣服の着用禁止」、メインヒロインエンドでは
「5年分の飲食料と燃料が備蓄された施設に引き籠り、2年間服を着ずにひたすら性行為に及ぶ」
などといった主人公の裸族への目覚めが、プレイヤーに残っていた最後の理性を根こそぎ奪うことになる。
既に常人には理解し難い何かだというのに、追い打ちとばかりにメインヒロインエンドの方では
「2年ぶりに学園祭に行こうと思ったけど、何か世界は細菌テロで壊滅らしいよ」
「それは大変、弓矢とか持っていく?2年前の服も着られるかな?」などと唐突な新設定と電波な会話が矢継ぎ早に繰り広げられ、
「果たして、無事に明日、部室で会えるかどうかは、誰にもわからない」とツッコミ所しかない一文で〆られるのであった。

この電波に満ち溢れたシナリオのクソさを武器に戦い抜くという本作の姿勢は、
難解シナリオ一本で勝ち抜いた2009年の覇者『りんかねーしょん新撰組っ!』に通じるものがあり、瞬く間にスレを熱狂させた。
それだけではなく、検証により序盤の主人公名入力の文字数制限を超えて255バイト分まで入力できる方法が発覚。
更には、主人公名を長くすることで既存メッセージを次のウィンドウに押しだせる仕様も見つかり、
『部室』は一瞬にしてスレ住民の玩具と化した。
その結果、作品キャラの台詞を自由に改変できるだけでなく、
メッセージ枠にずっぷやイラッシャイマセー、ハッピー&スマイルマンなどのAAが踊るスクリーンショットも誕生し、
『部室』の凶悪さと冬の寒波に身を震わせる住民をほっとさせるのであった。



以上が2013年に発売された主要エントリー作品である。
この贅沢な顔触れを総覧頂いたところで、2013年の次点、そして大賞の発表をさせて頂きたい。
2013年の次点は
『リア充爆発しろ! ~変身能力手に入れたんだけど質問ある?~』、
『少女神域∽少女天獄』、
『バルドスカイゼロ』、
『雛といっしょ』とする。
そして、栄え有る大賞は『明日もこの部室(へや)で会いましょう』とする。



2013年のクソゲー達は「低品質なシナリオ」と「企業側のモラルの低さ」が問題視されることが多く、
企業の倫理観が問われることになった一年と言えよう。
近年業界の盛り上がりに欠けるエロゲー業界であるが、
その原因は多々あるものの「体裁を繕っておけば買う奴はいるだろう」という企業側の姿勢から来る粗製濫造も一因である。
エロゲーといえど客商売であるということを今一度メーカーには再認識して頂きたい。
そのような意味を込めて、2013年の評価では例年通りの「クソの詰まり具合」だけでなく、
上記の「低品質なシナリオ」と「企業側のモラルの低さ」も加えて評価させてもらうこととする。

そういった観点から、次点の面々を振り返ってみたい。
前年度の覇者SEX戦争から反省の色が見えず、丸投げの設定とやりたい放題な超展開は相変わらずなのに加え、
肝心のエロシーンをコピペして手を抜いた結果プレイヤーが抜けない有様である『リア充爆発しろ!』。
ライターが好き勝手した結果シナリオが大惨事になったのに加えて、
雑誌インタビューで「そこはLassということでご理解頂ければ」と自己弁護をするだけでなく、
Webラジオでは作品の不評を声優のせいに仕立て上げるなどメーカーの倫理観の低さが露呈した『少女神域∽少女天獄』。
原形を留めない原画シナリオの変更と前作から劣化しかしていないシステム、
そして前言を易々と撤回してゲームよりも喧嘩を売っているとしか思えないメーカーの対応が目に余った『バルドスカイゼロ』。
「 ー 」と言われる通りの中身の薄っぺらさと、宣言した期日すら守れないという
非常識なメーカーの対応を見せつけ、その名の通りエロゲー業界からexitしてほしい程であった『雛といっしょ』。
次点のいずれも、ゲーム自体の出来の悪さもさることながら、メーカーの姿勢や対応も問題だらけと言う他ない。
それ以外でも、利益優先でボイスを過剰に削った為に抜きゲーとして使い物にならない『マヂゆり』や『ブリュパン』、
開発陣は同じとはいえ他作品から説明無く設定を流用した『TE』など、
2013年は企業側のモラルについての話題は絶えることが無かった。

それらの贅沢な顔触れの中でも、『部室』は前時代的なインターフェースと作画、シナリオと整合性が無いに等しいキャラ設定、
斬新なフラグ管理、突き抜けて訳のわからないシナリオとあらゆる面で低品質さが際立っていた。
次点の面々は「作品として何がしたかったのか」は辛うじて垣間見ることはできるものの、
『部室』はそれすら感じさせないという支離滅裂ぶりも特筆に値する。
また、サンプルCGやボイスを殆ど公開せず、未だに作品HPで「発売予定」のままとなっていること、
更にはサイト中で自社の名前を「ミクルプリン」と間違えるなどと企業側の意識の低さも存分に見せつけ、
コミケ前の7月に見切り発車しただけなのではないかと思わせる有様であった。
そもそもミルクプリン自体がクソゲー量産機Potageの姉妹ブランドであり、
そういった面でも何ら反省していないと言わざるをえないだろう。
中身は低品質ながら何かとネタに溢れ笑いを誘い、ぎっしり詰まったクソを笑いに昇華できるだけでなく、
2013年のトレンドをも兼ね備えた『部室』は強者揃いの2013年でも別格の存在であり、故に大賞とすることとした。


途中までは不作と言われていた2013年だが、終わってみれば12の月全ての作品から
質・量共に兼ね備えたクソゲーの選評が届き、「選評十二宮」の名も出るほどの豊作であった。
惜しくも次点となった4作品や次点とならなかった作品でも、
生まれる年が異なれば次点や大賞に成り得た可能性は十二分にあるだろう。
既に本家KOTYでお馴染となりつつあるステルス性も遅れながらエロゲー界に浸透し、
ネットの充実により情報網が発達した今なお、未報告の地雷が多数存在しているという恐怖を叩き込まれた年でもあった。

2014年は次点を擁する4社全社が早くも新作を発表するという予断を許さない状況である。
また、急増しつつあるお客様の一部が勝手に選評を取り消すなどといった過激な行動を起こしていることに対し、
スレの在り方すら再検討する必要があるかもしれない。
先行きが不透明で今後どうなるかわからないKOTYe。
しかし、巷に溢れるクソゲーをネタに昇華し共有するKOTYeは、
不毛な地雷原を歩くエロゲーマー達にとって無くてはならない心のオアシスであり、欠くことのできない存在である。
多くの人々が協力し、KOTYeが弛まぬ前進と更なる発展を遂げることを願いつつ、
見事大賞に輝いた『明日もこの部室(へや)で会いましょう』の題を借り、次の言葉を贈ることで2013年を締め括りたいと思う。

「明日もこの板(スレ)で会いましょう」

最終更新:2014年08月04日 02:56