ブランド |
WhitePowder |

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ジャンル |
ノンストップハッピーコメディADV |
メディア |
DVD-ROM |
原画 |
muku、おおやまちろる(SD) |
シナリオ |
けっぽし |
発売日 |
2016/06/24 |
定価 |
7,344円(税込) |
選評1
852 :ラムネーション選評 ◆Ra9j1sVq3.:2016/07/03(日) 04:03:40 ID:orwZdYjw
LAMUNATION! -ラムネーション!-
ジャンル ノンストップハッピーコメディAVG
ブランド WhitePowder
発売日 2016年6月24日
価格 6800円+税
謎の新ブランドWhitePowderが6月に放った一作。
体験版が公開されるやいなやその異様な雰囲気にクソゲー警報が鳴り響き、前評判は最悪と所謂見えてる地雷であったが
その実態はただの地雷等ではなかった。
○概要
Saint Aria(セントアリア)というリゾート都市が舞台。
RMCという企業が管理している治外法権地域となっている。
主人公らはそこにある希望島学園の学生。(という設定のようである。)
Welcome to under…じゃなくてSaint Aria.
○登場人物
・紅星 月菜
本作の主人公。
極めてアホ、自堕落、変態的と文句無しのクソ主人公である。
・アスファルトに顔をぶつけると痛いという事すらも知らない。
・下ネタ大好きの小学生以下の知能。
・ガラの悪いルー大柴の様な口調。
・GTAをやってるから運転も大丈夫と豪語。
こんなバカな癖にこの世界の裏について知っており、全てやれやれと言わんばかりに無気力に解決していく。
その正体はRMCが保有する「最高戦力」であり、魔法を使いこなし、この都市の女子トイレと女風呂以外へのアクセス権を有する超人。
・やれやれとチンピラと戦う様子。
・12ゲージスラグ弾はおろか、核ミサイルでも死なない不死身。
・各地の動乱を解決するパブリックヒーローらしい。
とにかくあらゆる要素が不快感を伴うクソ野郎であり、「ガキの痛い妄想」を具現化した様な存在である。
・碧海 らむね
主人公の幼馴染らしい。家業のラムネ工場を営んでいる。
ラムネ中毒者でありとにかくラムネばかり飲む。
何故かラムネをライトセイバーの様に扱える謎の能力を持つ。
ケツだの胸だのアソコだのガンガンいじられまくる、レズプレイもこなすバイである。
・紅星 陽菜
主人公の妹。RMC所属の魔法使い らしい。
らむねを開発しまくるバイである。
ちなみにコイツのルートは事実上のトゥルールートとなっている為、最後にプレイする事を推奨されている。
・アイリス
チェリークラウンダイナーなるレストランを営む双子姉妹の姉。
「~デス」「Bueno!」が口癖。
双子レズプレイもこなすバイである。
・レイラ
アイリスの双子の妹。
なんでも出来るパーフェクトウーマン。
かと思えば突然発狂したりする。
後述するが瓶コーラのキャップを飛ばして攻撃するという波紋使いの様な能力を持っている。
・ナレーション
本作のナレーション。
基本的に本作はエロシーン以外では地の文が無く、全てこのナレーションが代わりに喋る。
ナレーションの癖に登場人物と会話をしたりメチャクチャである。
このクソさについては後述。
○問題点
・ゴミテキスト
本作の最大かつ致命的な問題点。本作のテキスト、文章力は完全にゴミである。
いや、そもそもテキストや読み物と呼べるレベルに達してない。
まずナレーションの仕様がガチクソだ。
先に述べた通り、本作では殆どの地の文をナレーションが代行しているが、この内容が低レベル過ぎる。
と言うのも言う事のほぼ全てが「○○が△△しました。」「□□は××なんです。」という単純な説明文でしかない為、
ナレーションである必要性も利点も全く無い。
凝った仕様の様に見えるが、実際の所は人物同士の会話の流れや地の文で自然に進行する力量がライターに無い為に無理矢理採用した手段に過ぎないと思われる。
ドラえもんで例えるなら以下の様になる。
>のび太「ドラえも~ん!ジャイアンに虐められたよー!」
>ナレーション「のび太君が家に入りました。」
>ナレーション「のび太君が階段を登って部屋に入りました。」
>ナレーション「のび太君はジャイアンによく虐められるんです。いつもボコボコです。」
>ドラえもん「またかい、しょうがないなぁ。」
>ナレーション「ドラえもんが返事をしました。」
>ナレーション「ところでドラえもんは狸じゃなくて猫なんだそうですよ。なんでもネズミが怖いんだそうです。」
>ドラえもん「君はさっきからベラベラうるさいなぁ。」
>ナレーション「ごめんなさい。」
>ドラえもん「じゃあこの道具を貸してあげるよ。」
>ナレーション「ドラえもんがポケットから道具を取り出しました。」
と非常に鬱陶しい文体となっている。
またテキスト自体の問題とは別に地の文がナレーションに占拠された事で、ほぼ常に誰かが喋っている状態になり極めて耳障りである。
その割に主人公にはボイスが無い為、テンポの悪さ、落差感を強く感じられる。
喋らない間が殆ど無い事で、話の区切りが不明確で着地点が見えなくなる為、文章力の低さも相まって何を言いたいのか全く分からない。
そしてナレーション以上にクソなのが、ほぼ全編何かしらのネタをパクっているかお下劣な下ネタという、厨二病の中学生はおろか小学生にも劣る文章力だ。
パクリの方だがそのネタ元は極めて広範囲に渡っており、公式ツイッターでの馬鹿な煽りの通り全て理解出来るユーザーは居ないと思われる。
全文量(セリフ量の方が適切か)の8割以上はこの系統だと思って良い。
選評では全てのクソパロネタを紹介するのは無理なので、以下で一部を紹介する。
・クソさ1.21ジゴワット
・何を言ってるんだね君は
・最早何がなんだか
・フルメタル・ジャケット
・落語も引っ張るぜHAHAHAHA
・何も言うまい
・番組の合言葉は?
・絶対に笑ってはいけないクソゲー
・動画でどうぞ
また明らかに同じ元ネタの物が短いスパンで連続して出てくる時がある。
これはおそらくライターがその部分を書いてる時期に知ったり聞いたり、やったりしてた為と思われる。
・嫌味か貴様!
次のセリフ→
・War. War never changes.
その後のシーン→
つまる所クソ寒いパロネタの披露すら特に計画性や基準等は無く、単にその時その時で聞きかじった物を面白がって投入してるだけだという事である。
アフィブログ等を見てネットスラングだの淫夢ネタだので盛り上がり多用しだす馬鹿小学生と同じレベルである。
この体たらくの癖に勝手に使った元ネタの映画を「関連映画」と紹介する厚かましさには脱帽モノだ。
では自分で考えたのであろう部分はどうなのか。答えは文字通り「ウンコ」である。
本作ではとにかくウンコ、オシッコだのゲロ、パンツだので登場人物が爆笑して大盛り上がりするシーンが多い。以下は一例である。
・定番のネタ
・真相は1クリック後!
・そもそもトゥルールートの正解選択肢がウンコ漏らし
・うん こ
今時リアル小学生ですらここまでウンコネタは好まないだろう。コロコロコミックですら打ち切りになるレベルである事は疑いの余地は無い。
加えてまさかリアルでこんな文を書き起こす奴は居ないだろうと思われるレベルのテンプレまんまな厨二展開も盛り沢山である。
・ザ厨二妄想テンプレート「テロリストが乱入してきたら」
まとめると「史上最悪クラスの文章力」である。本作と比較すれば銃騎士ですら非常に奥深いスリリングなアクション活劇にすら思える。
KOTYe的に言うなら「幼児退行した百合倉氏」と言った感じか。
・あまりに陳腐なシナリオ
ゴミすぎるテキストの前では最早どうでも良いレベルだが、本作はシナリオ自体も大変香ばしい。
ルート自体は攻略したいヒロインをマップから一定回数選べば分岐するだけの非常にシンプルな物が3つとなっている。
アイリスとレイラは2人で1ルート扱いだ。
・らむねルート
らむね工場を立て直して人気がでました。おわり。
・アイリス、レイラルート
B級グルメ大会への出場、優勝を目指して優勝しました。おわり。
ちなみに大会の様子は次の4行だけである。
ただ本作がそもそもシナリオを求めている方向性では無い事、ミドルプライスである事を考慮すると先の2つはさほど責めるには値しない。
(B級グルメ大会の描写は最悪だが。)
問題は作中ですら最後にプレイする事を推奨される陽菜ルートである。
そもそも人物紹介の欄で述べた、主人公や陽菜はRMC所属であるとか、魔法使いが云々等はこのルートでしかろくすっぽ語られない。
ちゃんと解説等を折り込んで進めるならまだしも、これらの要素に対するフォローは全く無く当たり前の設定であるかの様に進行する為、
他のルートと比べると別ゲーの様な変貌っぷりである。
そして極めつけが実はこの世界は何度も再構築、やり直しを行っていると判明する極めて陳腐な設定が明らかになる点である。
・主人公がぶっ壊した為に絵と声がなくなり昔のノベルゲー化する。そして修復。
・実はループ世界だったんだよ!
・しかもプレイヤーを「貴方」呼ばわりするメタっぷり。
この設定自体手垢がつきすぎな陳腐な設定で何の意外性も無い上に、この題材を扱える力量がライターに無い事は明白である。
何より本作の売り文句は「頭を空っぽにして楽しめる」である。一体この題材の何処が空っぽで楽しめるのだろうか。
空っぽなのはライターの頭だけではないのか。
こうした設定もクソパロネタと同じく「最近流行ってるから取り入れてみよう」「聞いた事あるからやってみよう」という適当さが伺える。
また先から散々と「魔法」について述べているが、この魔法なる物や魔法使いというのが一体何なのか作中では全く説明が無いオナニー設定でしかない。
聞いた所ではライターの過去作品である同人ゲームでの設定を引きずっているらしいが、同ブランドの作品ですら無い物の設定を引っ張る事の愚かさは言うに及ばない。
・全く魅力が無いキャラクター
本作の主人公及びヒロインは恐ろしい程魅力が無い。
主人公が超絶クソなのは登場人物の欄で述べたが、他のヒロイン連中も軒並み同様である。
致命的なのは「誰が誰でも同じ」という点だ
本作の登場人物は個々に明確な役割や立場を持たず、ただライターの考えたアホなネタを吐き出すだけのマシーンと化している。
オマケに全員がボケ兼ツッコミなので、どんな内容でも「別にその人物が喋る必要性は無い」という状態になっている。
よって個々のキャラクターに対する思い入れ等はまるで出てこない。
色違いにしか見えない判子絵なのもこの問題点を助長している。
そして前述の通り揃いも揃ってウンコオシッコで喜ぶ低レベルぶりである。
ウンコだウンコだと大盛り上がりする馬鹿女の何処に魅力を感じると思ったのだろうか。
更に謎なのが、何故か全員ヒロインがバイ・セクシャルらしい事だろう。
序盤から既にこの傾向は明らかであり、しかも内容も胸を揉むとかキス等のレベルではなく、どうもラムネ瓶を性器に突っ込む等の
極めてハイレベルな火遊びに興じている事を伺わせている。
かといってレズシーンがきちんと描写されてる訳でもないので、そういった物が好きな諸兄にとっても嬉しくない状態である。
最初から好感度マックスで頭パッパカパーな事も含めてこれほど魅力がないヒロインと言うのも相当珍しい。
・アメリカンってなんだ?
本作のテーマの一つに「アメリカン」な事が有るのだが、これが一体どういう事なのかよく分からない。
確かに背景絵はそれっぽい雰囲気の物も有るが、ただそれだけである。
セリフがルー大柴調である事を指しているのだろうか?
・学園要素無し
主人公らは設定上学園に在籍する学生であるが、これがシナリオ上活かされる事がほぼ無く、まったく意味をなしていない。
せいぜい学園要素が絡むのは、一部テスト勉強に関する会話と、RMCの拠点が学園内に有るという設定くらいな物である。
○その他
一応褒めるべき要素としては以下の点がある。
・声優陣が豪華(こんな酷い内容を見事に演じる様は正に人気声優の実力というべきだろう。大変気の毒ではあるが。)
・音楽は良い
・スキップが早い(苦しくなっても安心)
・チャプター選択等妙に機能は充実している。
・バグらしきものは無い。
・最初から全要素開放機能が有るので、クリアしなくても鑑賞出来る。
・他のクソゲーがまるで名作文学の様に思える。
もっとも焼け石に水なのは言うまでも無い。
重ねて言うが本当に声優陣が気の毒になる。ボイスを聞く度一体どんな気持ちだったのか忍ばれる所だ。
○まとめ
単純な文章力の低さ、クソテキストぶりはおそらくKOTYe史上でも最底辺レベルだと断言する。
ミドルプライスである事を差し引いてもここまでの物はそうそうお目にかかれないだろう。
痛い小学生の妄想にボイスが付いたかの様な低質さは、最早「クソゲー」と呼べるレベルなのかさえ疑わしい。
ブランド名通り白い粉でもキメているのでなければ、大の大人がこんな物を書いて世に送り出せるなんて信じたくない。
選評2
595 : ◆tsp9EYuicE (ワッチョイ d5aa-R7o+)2016/06/30(木) 00:07:12.84 ID:fGLlw9UR0
ラムネーション
メーカー: WHITE POWDER
発売日 : 2016/06/24
●おことわり
ラムネーションについては、本スレでも何度か語られているのだが、
そのほとんどが「ライターがクサい」「シナリオが寒い」といったもので、具体的な評価は全く無いように見える。
ならば、どうせ絵買いしたのだし、私が先駆けになってやろうとこの作品に手を出してみたわけだが……
不幸にも(幸いにして?)このラムネ、私の口には青汁程度にしか響かなかった。そんなに不味くない。
本来なら凡ゲーとしてお蔵入りにするところだが、ちょうど話題もないことであるし、
貴重な休日がフキ飛んだ腹いせに筆を取った次第である。
というわけで、本評は『クソゲー選評』のつもりではない。
であるから、総評ではマトモに吟味されることを望んでもいない(選評扱いしていただいても構わない)。
ただ、本評末尾「補足」にある通り、人を選ぶゲームなので、無差別にバラ巻いておけば数人は死傷者が出るかもしれない。
そういう魂胆で、これを『推薦評』として投下することにした。
選評ではない割に、かなり長くなってしまったので、
要点だけ知りたい方は「物語概要」、末尾の「まとめ」、所々のスクショをつまみ食いすることをオススメする。
それでは、頭を空っぽにしてお読みいただきたい。
●物語概要●
太平洋沿岸の超一級リゾート都市「セントリア」、主人公はこの都市に住む、ジャグジー好きの学園生。
「るなちー」こと、「月菜」君である。(他のキャラクター名は、本評を読む上で必要がないので割愛)
そんな彼と、妹や幼馴染らの総勢5名が繰り広げるドタバタな日常を切り取った、
「頭を空っぽにして楽しめるノンストップコメディ」。これが本作である。
===概要おわり===
……ずいぶんアッサリしているが、本当にこれ以上の内容がないので仕方がない。
まあコメディとはそういうものである。何も問題はなかろうと思う。
●シナリオ検証:雑談●
本作品は、コメディの名に恥じず、シナリオの大半が雑談である。
まずはその本作の空気感を掴んでいただくため、スクショを数枚ご覧いただこうか。
……さて、冒頭で「人を選ぶ」と書いた理由をおわかりいただけただろうか?
お察しの通り、本作は極限まで雑談に振り切ったコメディモノで、シナリオなど無いに等しい。
そしてその雑談のセンスがかなり尖っている。
これを見て絶望的な気分になった諸兄もいるだろうが、実際のプレイではノリや流れがあるので、さほどでもない。
しかし言い換えれば、各部分をじっくり読むタイプのプレイヤーには、全編が壊滅的に見えるということである。
とはいえ、これは些細な問題である。
少なくとも、製作者の意図を汲みとってプレイすれば、案ずることは無いだろう。
本作品は「頭をカラッポにして楽しむゲーム」なのだから、全ての思考活動を放棄してエンターキー乱打を楽しめば良い。
きっと、気がつけばチャプターが終わっていることだろう。これを十数回も繰り返せばフルコンプリートである。
●シナリオ検証:雑な展開●
さて、このように、プレイヤーの頭を半ば強制的にカラッポにしてくれるラムネーションであるが、
何もその要因は雑談の性質だけではない。
本作品に於いて、あらゆる問題ごとは雑談の肴、いわば小道具にすぎず、
真剣に考察したり、問題解決に四苦八苦することはほぼ無いと言っていい。
例を挙げるなら――
- 何の脈絡もなくキャラクター同士の魂と身体が入れ替わる事件が発生するが、なんやかんやで解決
- 泥酔した不良と、そのお付きの黒服8名に絡まれるも、ラムネ瓶をライトセイバーにしてこれを撃退
- 武装テロリスト集団をコーラ噴射で撃退、逮捕
- 街を牛耳る超大企業で、最高レベルの権限を持つ主人公が、自給800円のバイト
- セキュリティを突破するためにうっかり世界を滅ぼすも、コマンドプロンプトで復旧
なお、このレベルの雑解決が、シナリオ中に50回程度は余裕で現れる。
おそらくシナリオ執筆中のライターは、プレイヤー以上に頭がカラッポだった違いない。
「泣きゲーのクライマックスでは、ライターも泣きながら執筆しているのだ(要約)」とは、
かのエロゲー黎明期の英雄、KeyやLeafで活躍していた涼元悠一氏の言であるが、
その点、ラムネーションのシナリオがプレイヤーに寄り添う様は驚嘆に値する。
【参考画像】
.>なんやかんやで解決
.>ラムネ瓶をライトセイバーにして
.>武装テロリスト集団をコーラ噴射で撃退
.>コマンドプロンプトで復旧
●コメディ考察●
さて、簡単にシナリオを考察したところで、もう少し深い部分も論じてみよう。
そもそも、「頭をカラッポにして楽しめる作品」とは何か?
このテーマについて少し考えると、凡百のエロゲー群と本作が大きく離れている理由が理解できる。
普通のエロゲーでは、プレイヤーは常に主人公の視点を意識しつつ、ゲームを楽しむことになる。
対して、動画やTV視聴などに代表される「漫然と垂れ流せる娯楽」では、視聴者が第三者である点が決定的に異なる。
そう、この作品では、漫才をテレビの画面越しに見るように、箱庭を外から見守るのが正しい楽しみ方だ。
そして、その為に「いかにプレイヤーを第三者たらしめるか?」――要は「没入させないこと」が大切である。
この点、本作品は素晴らしい。
演出面では、個々のシーンをブツ切りにすることで、プレイヤーに頭の切り替えを促し、
場面切り替えに一瞬のフラッシュを多用することでブラックアウトなどという冗長な表現を極力カット。
ボイス付きのナレーションの存在などは、まさにメタ視点を推す最高のスパイスである。
そしてシナリオ面。
まず、「超一級のリゾート地」という舞台選択から、非現実の極みである。
また、主人公が奇行を繰り返す非常識人なのは、プレイヤーから距離を取っているがゆえだ。
シーン締めで展開をぶん投げたり、キャラクターがナレーションに反応するのも、作り物感を増すためで、
たまに出る数年前の廃れた時事ネタだって、その一環に違いない。
プレイヤーが途中で寝落ちするのだって、当然開発の掌の上である。
考えてみて欲しい、目が冴えるほど興奮できたとして、それは脳が活性化している証拠である。
果たして「頭をカラッポにして楽しんだ」と言えるだろうか?
【参考画像】
.>主人公が奇行を繰り返す非常識人
●システム考察●
また、本作品には、「全要素開放」のボタンがタイトル画面に配置してある。
これはコメディの「どこを切り取っても良い」性質を逆手に取って、プレイの手間を省くと共に、メタ感まで与えるニクい演出である。
なお、全要素開放せずとも、「チャプター選択」を選ぶとすべてのチャプターを見ることができる。
私のように、訳もわからずハーレムルートの最終チャプターから遊び始めてしまうこともあり得るわけだ。
ゲーム開始からわずか15分でエンディングを見せてくれるあたり、社会人に優しいゲームでもある(※)。
げに、数々の要素が見事なまでに「コメディ」の一点に収束する様は、本評を書きながら私自身も震えているほどである。
※私はやらかしましたが、好奇心でいじりまくらない限り、最終チャプターから始まることはありません
●憂慮点●
さて、以上がラムネーションの考察だが、このままでは神ゲーオブザイヤーになってしまうので、
些細ではあるが、気になった点を挙げていこう。
1.
Hシーンのほとんどが主人公絡みである。
何を当たり前のことを、と思う方もいるだろうが、前述の通り主人公はネジが吹き飛んでいることをお忘れなく。
想像してほしい。漫才でいうボケ役のセックス、そんなに見たいだろうか?
都合よく、作中で大量に遭遇するガチレズ描写、
幼馴染と妹は完全に下の口まで乳繰り合っているし、4ヒロイン全員組んず解れつしていそうな描写もある。
ギャグの1つとして出しているのは理解しているが、なぜCG付きのその手のシーンが1つしかないのか。
2.
次に、シナリオがそこそこに短い。正味20時間は掛からない程だろうか?
コメディが長編映画並に続いても困るだろうと、制作陣のイキな計らいなのかもしれないが。
3.
そしてギャグこそマシンガンの如く出てくるが、シチュエーションの引き出しもかなり少ない。
- 雑談
- 何かを尾行/追っかける
- 武装集団を撃退する
- 主人公が脱糞する
などでシナリオの5割が語れるのではないだろうか?
シナリオの都合上、いくつかのイベントが被るのは仕方が無いのだが、
たとえば「主人公とヒロインとのデートを、他ヒロインが尾行する」
といったシーンがどのルートにもあったりなど、そのパターン被りは目に余るものがある。
(「シナリオの都合」の詳細については本編をプレイされたし)
「ルート分岐した程度で現実の出来事が大きく変わるわけねーだろ」と言われればそれまでなのだが……
4.
何故、コメディに半端なシリアスをぶち込もうとするのか。
妹ルートの最終盤で、そこそこに重いテーマと決意で、ある問題が提起される。
主人公とヒロインは決意を胸に、相変わらずのノリと勢いを維持して問題解決に旅立つ。
第二部オープニングであろうか、疾走感溢れつつも少し切ないムービーが流れ、さあこれからといった所。
――そしてわずか数十クリック、他ルートの超圧縮ダイジェストを経て即エンドとは誰が想像しただろうか?
なお、先述のムービーとは別に、その直後にエンディングムービーがキチンと流れる。
本当に、1つ目のムービーは何のために作ったのだろう?
例えばAsaProjectのフルプライス作品で見られる、
「共通ルートは中身ゼロのギャグ一色、個別に入ればシットリ進行」の手法。
フルプライスゲーは要求ボリュームが多く、ギャグ一本を最後まで保つのが厳しい。
古くはプリズムシリーズから、多くのギャグゲーが取り入れてきた優秀な問題解決法であるが、
これも「シットリ」の部分を充分に魅せてこその話である。本作にはそれがない。
本来は長いトゥルーがあるはずだったが、製作期間が足りなかったのか?
はたまた、チラ見せシリアスを茶番で締めくくるタイプのギャグなのだろうか?
仮にそうだとして、もう少しスピード感良くやってくれないと笑えない。
なおこの感覚は、原作版『生徒会の一存』のシリアスパートとよく似ている。
あの超有名な作品に似ているのだから、間違っているのは私の感性の方なのかもしれない。
5.
最後に、この「ノンストップコメディ」とやら、これが絶望的にゲームに向いていない。
収束がどうのと大袈裟に書いてきたが、こんな事はこれまでテレビが数十年やってきたことで、
ライトノベルでも散々使われた手法である。
そしてコメディというのは、享受者が集中しなくてよいから娯楽として成り立つものだ。
対して、PCゲームは、
- 手動クリックかオートモードの二択。
- PCモニターを大きく占拠するウィンドウ
- 音まで活かすコンテンツ、しかもエロゲーの性質上ヘッドホンかイヤホン必須
- そもそも「読む」モノである
……とまあ、少なくとも片手間に楽しむのが困難なのは同意いただけるはずだ。
そもそも、Wheelの「ひのまるっ」を代表に、
「テレビ番組路線」を銘打って沈んでいった駄ゲーは、この業界で数知れない。
なぜ同じ轍を踏もうと思ったのか。
●まとめ
長々と書いてきたが、まとめると「よく見かける、コケたコメディ」程度が妥当な評価である。
本作品はコメディとしてはそこまで悪い出来ではない。
一部で叫ばれている「シナリオが寒い」というのも、私はあまり感じなかった。
問題解決をぶん投げるのも、あれだけ大量に、しかも意図的にやられればもはや気にならなくなる。
絵やBGMもシナリオの雰囲気も合っているし、スクリプトもそこそこ豪華に組まれている。
ことコメディの見せ方については、演出やスクリプト、舞台設定など各面から一応は吟味されていたように見える。
最終的にボケ倒すにせよ、キャラクターごとにネタ・ノリ傾向が異なり、ギャグゲーには珍しくキャラクター個性もある。
ついでに、軽快な雑談に混じる「Bueno!」などの特徴的なセリフは、つい口ずさみたくなるだろう。
しかし、コメディとしてケア必須の部分にことごとくノータッチのうえ、
不足気味のボリュームで追い打ちを掛け、晴れて凡ゲーの評価に留まった。
コメディとしての割り切りの良さなど、アサプロ等にはない魅力もあったので、
是非とも独自路線を突っ走ったまま、短所を克服して次回作に挑んでいただきたいものである。
●補足
本作には、私が気にしなかった懸念事項がいくつか――いや、おそらく無数にある。
たとえば、このシーンはスカイツリー状の建造物の屋上らしい。
また、地の文(全く遭遇しないが)が絶望的にヘタクソだというのもある。
誤字脱字は少ないが、重複表現などデバッグ不足も見受けられる。
これらはそう大きなクソ要素でもないし、面倒なので検討しなかったが、細やかな諸兄の追記、または選評をお待ちしている。
最後に、本作品に以下の言葉を掛けることで締めとしたい。
最終更新:2016年07月04日 20:27