498: 領地貴族 選評 ◆Ra9j1sVq3. :2017/08/30(水) 21:37:23 ID:qJrzUEJM
領地貴族
ジャンル 領地経営SLG
ブランド ソフトハウスキャラ
発売日 2017年8月25日
価格 8800円+税
ADV+SLGの形態で多数の作品を排出しているお馴染みソフトハウスキャラの最新作。
元より当たり外れが激しいメーカーではあるが、本作は飛び抜けてやらかしてる感を発揮してしまっている。
◯概要
新たな領土を封ぜられた新米貴族として領地を発展させ立身出世し、後継者争いで揉める派閥抗争にも手を出そう!
貴族社会では下半身の交渉術も武器だぞ!
というエロゲーとしては中々魅力的な題材である。
ヒロインや住人、派閥との接触を描くADVパートとメインたる領地経営を行うSLGパートをこなす事でゲームを進める。
1季節1ターンとし、基本的には5年でEDの条件を満たす様に進める必要がある。
この為1週はサクッと終わるのだが、埋めたEDの種類に応じて住人(後述)を引き継げる数が増すので周回する程最初から強くなっていく。
◯問題点
・戦略性0の領地経営
本作のSLGパートで出来る事は大きく分けて
・施設の建設
・イベントの消化
の2つであり、施設の数やそれが産出する資源がイベントを進めるトリガーとなっている。
(例:商業地を建設すると金銭収入&商会のヒロインが登場等)
通常であれば領地の経営と、目当てのヒロインやルートに必要な施設との兼ね合いを検討するのがSLGエロゲーであろうが、本作の場合これについて大して考える必要はない。
何故かと言うと最序盤を除けば飽きる程施設も建造出来るし、資源も腐るほど余るからだ。
これらのやりくりに苦労するのは1週目の序盤のみである。
具体的に言うと初期状態では1ターンに実行出来るコマンドは1回(行動力と言う)と非常に限られているのだが、毎ターン変わる雇用可能な住人で現れる騎士を獲得することで永続的に実行動力が1回増える。
この効果は複数の騎士で重複する上に、特に行動力の上昇限界は無いのでゲームが進む程青天井に伸びていく。
前述の住人引き継ぎでもこの騎士は選べるので周回プレイ時には最初から複数回行動可能となる。
領地発展には人材が必要と説明が有るのでこの仕様自体はまぁ良いのだが、ゲームバランスを考えると諸悪の根源と言っていい程狂ったバランスとなっている。
ある程度騎士が集まれば1ターンの内に施設も雨後の竹の子の様に生えだし、イベント消化も1ターンの内にビュンビュン進んでいく。
これらの行動には資源(金銭、木材等)が必要なのだが、これも行動力によるゴリ押しで方が付く。
各施設は特定の季節に施設数に応じて資源が得られる。(例:農地ならば秋に食料等)
しかし実際には1ターンに1回出来る各種施設への振興政策コマンドを実行する事で毎ターン大量に入手可能となる。
以上の理由から行動力さえ揃えば建造&振興のルーチンで領地経営は解決してしまう。
更に単調さを加速させているのが、これらの施設や雇用している騎士や住人に対する維持費やペナルティが存在しない事である。
シムシティ等の様に稼働させている施設や住人に応じて費用がかかるのであれば、上記の物量作戦にも歯止めがかかるので戦略性が生じるが
実際には金銭等の資源は施設建造時とイベント消化時以外には全く消費されない。
土地問題も無く、建造した施設は勝手にマップ上に無造作に配置される上に外見上埋まっても既存の施設にグラフィックが上書きされるだけで数値上は残り続ける。
クソゲーお馴染みのフレーズで言うならば「行動力を上げて物量で経営すればいい」である。
雇用できる住人には騎士以外にも多様な能力を持つ人々が居るが、結局の所騎士以外は基本的に不要と言って差し支えない。
ゲームの制限ターンを伸ばす占い師なる住人も居るが、行動力さえ上げれば規定のターン以内で余裕なのでやはり不要である。
資源以外の数値として兵力とその性能が有るが、こちらについてもあまり気にする必要がないお気楽仕様だ。
対応施設を建造する事で上がるのだが、そもそも兵力を駆使する場面は一部の展開に進んだ時のみであり、必要になっても件の行動力パワーで何とでもなる。
こちらも大軍を保有していても維持費がかかる等といった事は無い。
・薄味過ぎる中身
本作はとてもフルプライスとは思えない程厚みが無い。
シナリオの量自体は恐らくいつものキャラ(この基準もどうかと思うが)程度であろうが、メインのSLGパートが上述の通りなのでは如何ともしがたい。
行動力を行使すれば1ターン中にガンガンイベントを起こしてシナリオを進められる仕様もアッサリ感に一役買っている。
これでは単に選択肢を選ぶのが面倒な普通のADVと言っていいレベルだ。
喧伝していた内容も尽く肩透かしで、派閥抗争云々は最もたる物である。
派閥との折衝や交渉と言った事に気を使う必要も無く、単にイベントを進めたい派閥にお百度参りすれば勝手にデレデレしてくれる。
更に特定の派閥に与してると行動が制限されると言った事もなく、行動力パワーによって各種の派閥やヒロインを1週の内に食い荒らす事も造作ない。
・何してるのか分からない感
1ターンに一気に、かつ複数の対象を並行して進められる結果どうなるか。
この様な状況下だと一体今何のルートを進行中なのか、どこまで進んでいるのか分からなくなるのだ。
シナリオチャート等も無い上に、一回のイベント辺りの分は短い為ゴチャゴチャ感を拭えない。
更に言うと主人公であるジーク男爵のモチベーションが低い事も一因である、
主人公の口自体からは特に野心が語られる訳でもなく、反応も薄い。
例えば状況に応じてハーレムを酒池肉林を望んだり野心を剥き出しにしてくれればプレイヤー側もそれに沿おうと言う気も起きるが
ジーク男爵は単に領地経営を上手くやりたいとうそぶくばかりである。
その領地経営自体も部下のヒロインらが実務をこなす間接型の統治なのでイマイチ経営している感もない。
(この仕組み自体は鬼畜王ランス等でもやっているので、これ自体が悪い訳ではないが描写の問題だと思われる。)
肝心のEDも時期が来れば唐突に始まり、すぐに終わるので達成感はまるで無い。
◯まとめ
SLGパートがメインのはずが行き過ぎた簡略化とバランス放棄のせいで完全にただの面倒な手間になっている。
これならばADVパートのみの方がゲームとしては余程上等であったのではなかろうか。
もしくはフルプライスではなくミドルプライスならばまぁ・・・と言った感じ。
絵やエロシーン自体の質は安定の出来と言えるので安いならばやってみる価値はあるかもしれない。