3: 総評1 ◆ghsNzIGrWM :2018/02/12(月) 23:27:17 HOST:KD111110088150.ppp-bb.dion.ne.jp
2016年のKOTYeは、2年振りにクソの両雄が殴り合う構図となった。
常連の一角、げーせん18が送り込んだ決戦兵器「村正」と、新星しろいぱんつが放った奇作「グリモ」による頂上決戦。
雌雄を決したのは、「じっくりとプレイし内容を考察した上でクソゲー」という、
バグに頼らずゲームの全てを曝け出して、根底からのクソさを見せつけていくグリモの潔さであった。
毎度の如く問われる「クソゲーとは何か?」の問いに対する考察をまた一つ深めながら、
10年目を迎えるKOTYeを前に心身共に引き締め直すのであった。
1月、スレを賑わせたのは、げーせん18が汚名返上するべく送り出した「戦御村正DX」、
なろう小説を原作にザウスが手掛けた「神様のゲーム」、
古豪アーベルソフトウェアの逸品「アッパレーション ~最期の初恋はバッドエンド~」といった錚々たる面子。
強豪来襲の予感に迎撃準備をとるスレ住人だったが、いざ蓋を開けてみれば予想外の結末であった
村正DXは起動時のエラー、諸々のシステム不具合、別ゲーのセーブ流用で回想全開放といった多彩なバグを披露し、当然パッチも乱れ飛ぶ有様。
しかし、無印から様々な要素を削られ無味乾燥となった代償に、
ゲーム自体は遊んでクリア可能となったため、クソゲーとして小粒になってしまった感は否めない。
一方の神様のゲームも、フルプライスとしては低質なグラフィックが話題になったものの、
シナリオが元の小説に忠実であったため、こちらも話題になることはなく、むしろ良作との声も上がった。
また、アッパレーションも触った感触はいつものアーベルだろうという扱いであり、
1月の三強と目された者達は、いずれも選評不着という拍子抜けの結末に終わってしまったのだ。
選評不着で門番不在という予想外の事態は2月になっても打開されることはない。
続く3月も、シナリオを売りにしておきながら、あまりの誤字の多さに専用ハッシュタグが作られた「水葬銀貨のイストリア」、
嘗てのGLaceメンバーが制作し、過去作同様の低質なシナリオを盛り込んだ「甘夏アドゥレセンス」などが話題に上がるものの、
いずれもそれ以外に目立つクソ要素がなく発展には至らなかった。
4月中も選評は来ず、1年のうちの1/3が過ぎてなお選評が1通も届かないという異常事態の前に、
スレ住人はなないろクリップの進展を玩具に暇を持て余すこととなった。
そんな中、ひとりが投下した発言が、まさかフラグだとは、当時は誰も気づいていなかった。
673: 名無しさん :2017/03/12(日) 21:56:17 ID:fOo2ivhk
もしパッと見で分かるくらい絵がクソだったら商売する気あるのかって話だからな
よくよく見るとなんか酷いってのはしょっちゅうだけどね…
停滞していた事態が動いたのはGW明け、弛緩したスレに初の選評が投下され、永き仮初の平穏に終止符が打たれることとなった。
4月末にhibiki worksから発売された「新妻LOVELY×CATION」である。
ヒロインから名前を呼んでもらえるシステムと、恋人になる前後に焦点を絞ったシナリオで堅実な展開をしてきたCATIONシリーズ。
今作は原画に本シリーズ初期を担当した唯々月たすく氏を再び迎え、
シリーズ最終作を有終の美で飾るはずだったのだが、一つの過ちが本作を台無しにしてしまった。
その過ちとは、「発売直前でのエンジン変更」。
体験版で動作確認をし、万全の態勢で臨んだ購入者は、
「インストールして起動する」という当たり前の動作が不具合により出来ない現象に直面する。
何とか自力で認証不具合を抜け出しても、やたら画質が劣化する、動作が激重、いきなり強制終了するといった新たな敵と戦わなくてはならない。
これらは全て先のエンジン変更のせいであり、その理由も、
「割れ対策の為体験版からエンジンを変更した」というものだから購入者からしたら堪ったものではない。
「体験版詐欺」という言葉はエロゲー界ではよく聞くが、
流石に動作確認にすらならない体験版が来ようとは思っていなかっただろう。
この低品質な出来に対し、発売日当日に修正パッチ1.01と、高画質立ち絵パッチと2種類のパッチが公開されているが、
このうち修正パッチの方は、イベント発生条件等の細かい不具合は改善されるものの、
根本的な問題であるプログラムの動作については何一つ改善されず、
高画質パッチも、展開すると4GBになるという地味な嫌がらせが仕込まれている。
その後、5月2日に修正パッチ1.02が公開されるが、これが所謂「バグ追加パッチ」であり火に油を注ぐ顛末となった。
動作の改善は相変わらずされないにも関わらず、それまで抱えていたBGV周りが動作しないバグが悪化し新たなバグが爆誕。
これはBGVの読み込みが失敗し、BGVの断片が延々再生されるというもので、
例えばタイトル画面でこのバグが発生すると、
「新妻ラブリケッ 新妻ラブリケッ 新妻ラブリケッ(略)」と壊れたレコードの如くタイトルが流れ続ける。
ヒロインとの情事の際にも発生し、読み込み失敗したBGVの断片が寝室に木霊する様は怒りを通り越して哀愁を誘う。
更に、バグが発生した本作を強制終了すると、セーブデータが破損する可能性があるという超特大のオマケ付き。
この有様にも関わらず、1.02パッチ配布以降はGWによるサポート中断期間となってしまったため、
GWの間恋人といちゃこらできない購入者からは絶え間ない怨嗟の声が上がることとなった。
結局、これら不具合のうち致命的なものは1.03パッチで概ね修正されたが、
バグ以外の問題点として、複数ライター間の管理統率が出来ていないために、
ヒロインごとの扱いに差が生じているという問題も見過ごせない。
その結果、純愛いちゃラブ中心のキャラゲーにも関わらず特定のヒロインがシナリオ・回想面で不遇な扱いを受け、
一部の暴徒化したプレイヤーにより担当した外部ライターにまで炎上が及ぶ始末であった。
なお、その後の1.05パッチリリースと同時に公式掲示板を予告なく閉鎖し、
此度の騒動について強引に鎮静を図ろうとした点についても触れておく。
同じあかべぇ系列といえ、銃騎士と同じく制作陣の手落ちによりクソゲーと化し、その後の対応も銃騎士同様不誠実なものであったのは何の因果というものだろうか。
選評という恵みの雨が齎されたこともあり、スレはにわかに活気づく。
バグリケに続き、5月末にeufonieより発売された「はにデビ~Honey & Devil」選評が到来。
淫魔に取り憑かれ発情した女の子を性交渉で鎮めよう!というあらすじの通り、エロ重視が期待していた本作。
パンツをおろしてプレイするプレイヤーの前に立ちはだかるのは、悟りを開いた僧の如き主人公であった。
序盤から発情を抑える手段として主人公との性交渉やそれに類する手段が有効と判明するものの、
「好きな者同士でやることだから出来ない」と主人公は拒否。
淫魔の封印方法がやはり性行為であると発覚し、ヒロイン側からも了承を得た後になっても、
「どんな理由があっても、行為の後に傷つくのは女性だ」と頑なに拒絶する。
あろうことか個別ルートに入りヒロインと恋人同士になった後でさえ、
「がっついていると思われたくない」と行為を拒絶する有様であり、
草食系を通り越して不能か超越者のどちらかとしか思えない。
人としての評価は置いておいたとしても、エロゲーの主人公としては完全に失格であり、
購入者からしたら裏切られた以外の何物でもないだろう。
エロ全開っぽい謳い文句ながらエロCG率6割という内容も合わさり、
全体的に何がしたかったのかわからない一本になってしまった感が拭えないだろう。
クソゲーの攻勢はまだまだ終わらない。
6月末にDigitalCuteより発売された「タンテイセブン」は、毎度変化球を投じてくるデジキューの新作であることや、
近年俄かに作数が増えつつある推理モノであり、公式が「濃密なストーリー」と謳うこともあって注目されていた。
しかし、いざ発売されると、パッチを当てないと「体験版」と表示される上に、特定ミッションから先に進めないというサプライズが仕込まれていたのだ。
この心臓を鷲掴みにされるかのような上々な掴みにスレは熱狂、まもなくして選評が投下されることとなった。
まず推理モノの命であるシナリオ。
これがクソの山であった。
本作のシナリオは、公式が謳うミッションシステムというものに沿って展開され、
メイン・サブそれぞれいくつか用意されたシナリオを一つ一つ読み進めることで個々のシナリオが連動し、
メインシナリオの展開に影響が及ぶというものである。
どのサブシナリオがメインに影響するのか推理するということが出来ればまだ救いがあったかもしれない。
しかし、実際のところはシナリオ自体が時系列バラバラで整合性も取れておらず、
そこに至る過程自体省略されているような有様であり、推理の前提にすら立てやしない。
特定のシナリオに限っては関連する話が丸々抜けているのではというばかりのスカスカ具合。
おまけに、シナリオ中の選択肢もノーヒントで正解を選ぶ必要があり、
プレイヤーは正解を引くまでサブシナリオと選択肢の抽選作業を続ける必要がある。
公式が「濃密」と謳うシナリオとて、推理に必要な探索の描写は皆無に等しく、プレイヤーが気になる点は悉くスルーされる。
一方、クソゲーのお約束である食レポにはやたら注力している他、一部の登場人物が事あるごとにズレた発言をしては他者に突っ込まれるという茶番が繰り広げられるため、まともに読むことさえ苦痛が伴う。
加えて、時と場所を弁えずハートマークが乱舞するため、上記抽選仕様や数々の脱線と合わせテンポの悪さは折り紙付きである。
次にシステム面。
本作では既出のミッションシステムの他、主人公の異能を用いたシナスタジアビジョンやシナスタジアバトルといった要素が用意されている。
しかし、ミッションシステムは既出の通りシナリオを読む上での害悪にしかなっておらず、
それに付帯する秘密文書は全てクリアして尚揃うことは無い。
シナスタジアビジョンは、探索中に怪しい箇所が目立ち詳細に調べられるという探偵垂涎のチート能力だが、
チュートリアルで登場して以降は一切出番なし。
シナスタジアバトルについても相手の矛盾や弱点を突き論破する形式となっているが、
失敗すればバッドエンドという本来の仕様はどこ吹く風、
例え間違えても直前に戻ってやり直すだけで何事もなく進むため、只の作業となっている。
以上のように、推理モノの命であるシナリオが低質であり、そもそもシナリオを読むにも単調な作業を繰り返さなければならないという苦痛を伴う仕様の前に、多くの者が斃れることとなった。
本質的な部分以外でも、CuteMotion2の不具合により立ち絵の首から上だけが浮遊し、
また特定の選択肢を選ぶと強制終了など、バグ方面も強力。
その他にも、予告もなく男同士の絡みをCG付きで複数突っ込む、
「お医者さんごっこ」と謳った店舗特典が只の座薬挿入などと、
火種は探すまでもなく散乱している状況であった。
後々の度重なるパッチで不具合の修正や多少のシナリオ補完などが行われ、
歯抜けで時系列が滅茶苦茶なシナリオも幾分読めるようになったが、
本来購入者が求めたものからの乖離という意味では最後まで解決はされず、
久々の新作を焦がしたDigitalCuteの行く末を好事家が見守るのであった。
少しの間をおいて8月の終わりにやってきた選評は、まさかの「アッパレーション~最期の初恋はバッドエンド~」。
一度は見過ごされたアーベルの新作であったが、選評空白期に再度見直してみるとやっぱりクソということで、あえなく御用となった。
アーベルといえばお粗末なシナリオだが、御多分に漏れず今作も決して褒められた出来ではない。
フルプライスながらプレイ時間4時間という短さであり、ヒロイン5人でこの文章量という時点でまともな内容は望むべくもない。
また、本作の主人公は死ぬと前回の運命の途中から運命を変えてやり直せる能力を持っているのだが、残念ながらこれもシナリオの尺伸ばしにしかなっていない。
そもそも運命の分岐点を作れたところで、プレイヤーが選択できるのは攻略ヒロインの選択のみ。
それ以外は一本道展開であり、実質的なバッドエンドのフルコンプを押し付けられているに他ならない。
体を重ねることで自らの生命を分け与えてヒロインを延命できる能力というのもあるが、
延命セックスして自らの生命を削っては奇襲を受けて死亡を重ねるという、上述のシステムとの合わせ技が待っている。
ルート間による設定の矛盾も日常茶飯事であり、とあるルートで強敵だった相手が別ルートでは瞬殺などは序の口。
病弱幼馴染のルートでは死による別離は運命でありどうにもならないとしながら、別の後輩ルートではさっぱり設定を忘れ、風前の灯火であった後輩に生命を分け与えながら宿敵を倒して一件落着という顛末である。
実質的な大団円エンドであるメインヒロインのルートでは、先程死亡した幼馴染が死神として蘇生するが、ここでも「死神として生まれ変わった際は前世の記憶を失う」という設定は完全無視。
そのまま最終決戦までご都合主義で進んで終わるため、他ルートの記憶などという感慨は完全にパーである。
シナリオ以外に目を向けても問題だらけだ。
過去作よりも文章量が減ったはずなのに誤植は増加し、シリアスシーンを度々白けさせてくれる。
エロゲーの肝ともいえるHシーンは実質34回とアーベルにしては破格の多さだが、その多くで前作である「不条理」からの文章使いまわしが発覚。
加えて本作新規と思われるテキストも本作内で使いまわされる有様である。
グラフィック面でも、ピンク色のバニラアイスや、左右の瞳が同色のオッドアイヒロイン等々探すまでもなく粗が見つかる。
システム面も、6年前の当時でさえ時代遅れだった過去作「ゾンビ」からろくに進歩していない。
全方面にそつなくダメという既視感あるクソゲーぶりは、クソゲーマイスターであるアーベルならではといったところであり、
この点に関しては天晴れの評価を付けて良いのかもしれない。
この流れに乗るように、8月発売の新作も立て続けにスレに攻勢をかける。
先陣を切ったのはソフトハウスキャラの「領地貴族」。
新米貴族として領地を発展させ、貴族の派閥争いに首を突っ込んでいくというキャラお得意のADV+SLG形式のゲームスタイルである。
だが、SLGの部分が、元々当たり外れの大きいブランドであることを差し引いても看過できない出来であった。
ゲームシステムは至って単純で、ターン制を採用した領地開発SLG。
ターン毎に行動力を消費し、領地に建物を建設したり、人を雇ったり、イベントを発生させたりというオーソドックスな形式である。
本来であれば限られたターン内で行動力を如何に上手く配分し、領地経営とイベント消化を両立していくかが問われるスタイルのゲームであるが、
本作においては行動力の仕様が全てのバランスをぶち壊しているため、その心配は不要である。
初期状態では1ターンにつき1行動力、つまり1回しかコマンド実行が出来ないのだが、
雇用の際に騎士を雇用すると騎士1人につき行動力が実質1増加する。
騎士の雇用に伴う行動力増加に上限が無いため、騎士の頭数を揃えるだけで1ターンのうちにやりたい放題になってしまう。
行動力消費によって各種資源が山のように手に入る上、人材雇用に対するペナルティも存在しないため、領地経営の問題も騎士さえいればオールOK。
おまけに雇用した人材を2週目にも引継げるため、2週目以降は序盤からゴリ押し可能という親切設計だ。
「行動力を上げて物量で経営すればいい」というスベ理論によって薄味になってしまった残念な1本と言える。
続いて「恋愛教室」もエントリーを果たす。
新ブランドUnN/Aから発売された本作は、事前投票で16人のヒロインのなかから投票によって攻略対象が選ばれるという画期的なもの。
だが、蓋を開ければそこは詐欺にも等しい何かであった。
まずフルプライスながら容量はこのご時世に2GBを割り込み、インストーラーすらまともに起動しない。
ようやくインストールして起動すれば、あまりにも質素なメニュー画面を前に、購入者の心に不安が広がることだろう。
そしてその不安は見事的中する。
まず投票によって攻略対象が決められたシナリオは、残念ながらティッシュペーパーよりペラペラの薄さと言わざるを得ない。
タイトルにある「恋愛教室」についても、共通ルートで1回やった後は一切出番なしである。
特に個別ルートでは、パッケージヒロインの2人をして「問題が発生した!」→「主人公が何とかする」→おしまい という薄さであり、問題の解決についても数クリック触れられる程度である。
投票で選ばれたヒロイン2人の個別ルートに至っては問題すら発生せず、ただ体を重ねてお終い、である。
公式サイトにあった「厳選されたヒロインとだけ愛を育み、体を重ね合い、作品の中でしっかりとした恋愛劇を描きます」の一文と実際の落差が涙を誘う。
ちなみに、その体を重ね合うHシーンについても、このゲームには回想モードが実装されていないため、
回想したいシーンには事前にセーブを設けてそこからロードするという前世紀的な対応が求められる。
本作はバグも強力であり、特定シーンに進行不可能バグが仕込んである。
また、このバグを修正するパッチについても、メーカー自ら宣言した公開期限を踏み倒しており、新ブランドにあるまじき豪快な姿勢をとっている。
パッチ適用後も、テキストと全く関係ないボイスが流れるバグ、会話中の人物の背後に関係ない人物が次々登場しては何も言わずに消えていくバグ、
同じ内容の放課後が2日間繰り返し訪れるバグ、エンディング画面が黒一色でBGMだけ流れるバグ等、細かなバグは残ったままなのも高評価。
このように惨憺たる出来の本作であったが、新規ブランドを謳っていながら、その実態は過去にマスターアップ後の延期やパッチ公開遅延、
更には新ブランド設立後の延期連発&発売後の売り逃げなどやりたい放題やってきたEx-iTの残党であった。
そして、本作は発売後暫くして公式サイトもアクセスできなくなり、またしてもクソゲーの売り逃げであったことが明らかになったのであった。
さて、少々時を前後して、前述のタンテイセブンと同時期に大いに注目された一本があった。
コンプリーツの「ママとの甘い性活Ⅱ」である。
エロゲーに於いては息の長いジャンルである母親モノであり、需要がはっきりしていることから基本的に大きく外すことは無いジャンルである。
では、本作の何が問題かというと、「グラフィック」。
それも、前代未聞クラスの低質さである。
トップページに鎮座するヒロインの絵は、その辺の素人を連れてきたのかという酷さの原画に、同じく素人同然の塗り。
サンプルを眺めても同様のロークオリティの絵が並ぶだけで救いは無い。
それどころか、主人公に至ってはやたら茶色い肌の胴体から腕が直接生えるという人外の様相を呈し、
公式の文章から推測するに23歳以上が確定しているのに、〇学生同然の幼稚な面構えという有様である。
この「お察し」な出来に加え、ミドルプライスという強気な価格設定を前に、
7月末の発売日を迎えてもスレ住人も購入を躊躇。
決死の覚悟で購入した者が選評を上げたのは、秋色深まる9月末になっていた。
それでは、選評によって明らかになった真の実力を見ていこう。
まず本作はミドルプライスのエロゲーであるが、実容量にして300MBを割り込む。犯罪的な容量の少なさである。
ルートは義母ルートが4つ、サブヒロインのルートが1つの計5つであるが、総プレイ時間は僅か1時間。
元々「見えている地雷」であったが、ボリューム面でも文句のない地雷と言えよう。
もっとも、開発スタッフ自体エンドロール1ページに収まる程度しかいないので、このボリュームの無さも致し方ないといえるのだが。
そして、肝心のグラフィックは、想像を絶する世界であった。
何と、これまでサンプルで公開されていたCGは、「まだマシ」なレベルだったのである。
蓋を開けてみれば、瞳孔は見開き、視線は定まらず、手は歪み、関節があらぬ方向に曲がった義母の上に、
歪な丸太に手が生えたような主人公が冷凍マグロのようなカチコチの姿勢で載せられ、
くんずほぐれつしているCGがゴロゴロ出てきたのである。
ものによってはバラバラ死体かと思うような出来のものまで混じっており、
これらの惨状の前には義母の胸の大きさが可変なことや、主人公の腕が伸縮するなどというのは些細な問題である。
この古代文明の壁画ですら裸足で逃げ出すような酷さの前に、最早抜くどころの騒ぎではない。
むしろ「抜けるものなら抜いてみろ」とでも言わんばかりの地獄絵図である。
20年前のエロゲーと比べても本作の絵の低質ぶりは群を抜いており、
絵がダメなエロゲーとして金字塔を打ち立てた「わくわく惑星プリンセス」をもってして、スレ住人に「ママⅡとわくプリならわくプリの方がマシ」と言わせるほどの逸材である。
総プレイ時間が1時間、CG約20枚という犯罪的な中身の少なさも、このCGを前にしては、むしろ救済措置とも言えよう。
選評者をして、「褒める所はこれやったら他のエロゲがすっごい傑作に感じられる位だ」と言わしめるほどである。
この「壊滅的にヤバい絵」の破壊力を前に、スレは一気に沸き立つことになった。
絵の破壊力だけでのし上がる姿勢に前年大賞のグリモと同様の称賛を送る者や、
見た目からして明らかなクソはクソとして扱ってよいのか、嘘偽りの無いクソである以上無罪なのではないかとクソの新定義を唱える者など様々が入り乱れ、今年一番と言える盛り上がりを見せるのであった。
そして、その盛り上がりの最中に、更に選評が舞い込んできたのだった。
9月末にハイクオソフトから発売された「面影レイルバック」である。
延期に定評のあるブランドであり、本作についても案の定延期を重ねた末の発売となったが、
残念ながら延期している間にその中身は朽ち果ててしまったようだ。
本作の問題は、とにかく話の中身が無いことだ。
話のボリュームからして、共通が3時間弱、個別ルートは酷いものでは30分もあれば終わり、
しかもそのうちの殆どが山も谷もない日常生活の話題である。
ほぼ唯一の山場ともいえるのは、主人公の養子先である建設会社内で主人公とヒロインが進めている事業を、会社の重役に嵌められ失敗させられそうになるくらいだが、
それとてあっさり解決し、盛り上がりの欠片もない。
個別ルートもスカスカであり、話の展開こそ違うものの、色々あったら親しくなって体を重ねて終了といった感じである。
フルプライス作なのだから、付き合うようになってそこからどうなったのかまで書き切るのは義務と言っても過言ではないが、
本作ではクリア後のアフターシナリオ含め、その辺はほぼぶん投げている。
同様に、行方不明な主人公の父親の件や、建設会社内の人間関係などといった伏線も、回収することなくぶん投げている。
設定自体は魅力的なものがあるが、このボリュームの無さでは活かせるはずもなく、
ブランド10周年記念作として集めた期待を裏切る結果となってしまった。
さて、ママⅡの来襲以降大いに沸いたスレであったが、面影レイルバック選評後暫くは選評不着が長く続くことになる。
ママⅡの只者ではないオーラの前に、暗黙の了解が広がりつつあったのだ。
二度目の選評不作が打開されたのは、2017年も末、大晦日の12月31日。
同日発売の「文芸彼女と僕二人だけの愛の巣だった部室にヤリチンが入部してきた!」が、
その日のうちに滑り込みという前代未聞の離れ業を成し遂げたのであった。
では、税込み756円というKOTYe史上最安値の本作は如何程か見てみよう。
本作はタイトルからわかる通り、「寝取られ(NTR)」作品である。
このジャンルではヒロインが寝取られるHシーンの質が重要であることは勿論であるが、
寝取られる前の日常や恋愛描写も重要となる。
この両者が揃って初めて、「寝取られる」という事実がより際立つのである。
ところが、本作に於ける寝取られ前の日常描写は刺身に添えられた食用菊ほどの価値もない。
主人公とヒロインは恋人関係になっているにも関わらず、デート等の浮付いた話は一切なし。
あるのは、「バイト始めました」といったどうでもいい話の他、「目玉焼きにきな粉と黒蜜が合う」といったふざけたものばかり。
そんな無価値な戯言も数刻で終わってしまい、すぐに間男が現れるため、御座なり感に溢れている。
そして、寝取られていくシーンに移っても御座なり感は拭えない。
「寝取られ」を謳う以上、主人公はヒロインに対して恋慕の情を抱いていなければならないのだが、
主人公の心理描写が希薄この上ないため、本当に好いているのかと疑いたくなる程である。
おまけに、前述の通り主人公とヒロインとの日常や恋愛の様子が無いに等しいことも合わさって、
主人公を自己の分身と見ることや、ヒロインへの思い入れを深めるといったことが不可能に近い。
このため、主人公に自分を重ねてヒロインを寝取られた喪失感を味わうということが難しいという、寝取られ作品として致命的な問題を抱えている。
ヒロインはヒロインで早々に間男の肉奴隷と化し、積極的に奉仕を行うようになるため、堕ちていく変化を楽しむことも許されない。
ロープライスという点を鑑みても、ジャンルに沿った需要を満たすことが出来ないようでは、クソゲーの烙印を押されるのも已む無しであろう。
以上が2017年内に選評が投稿されたクソゲー達になる。
だが、昨今のKOTYeでは最早恒例になりつつあるが、年が明けてから「申し開き」をする者が今年も現れた。
まず年明け早々に申し開きを始めたのは、「真・恋姫†夢想-革命- 蒼天の覇王」。
10年の歴史を持つ恋姫シリーズの最新作にあたるが、萌将伝以来久々のエントリーとなった。
まず、公式が「新たな恋姫シリーズのリブートである」と宣う本作であるが、残念ながらこれは嘘である。
というのも、過去作の「真・恋姫†無双」から魏ルートのみ抜き出し、グラフィックの刷新やBGM追加、新キャラ・新エピソード追加を行ったに過ぎないものだからだ。
おまけに本編のテキストはほぼ過去作からのコピペであることから、「真・恋姫†無双の1/3リメイク」と言われても仕方がない。
元々のテキストが良く、また、追加されたエピソードについても内容は面白いのが救いではあるが、
同時に元のテキストと追加エピソードが全く噛み合わないという問題点を抱えており、折角の良テキストが台無しである。
過去作より続く戦争パートについても、今回新たに「熟練度」という成長システムが採用されたが、
熟練度による恩恵は微々たるものであり、おまけに周回時に引き継げないとあっては、
自ら旨味を台無しにしているとしか言えない。
1/3リメイクという点を置いておけば魅力的な要素が多かっただけに、それすら自ら殺していく本作目にシリーズファンは只嗚咽を漏らすだけであった。
続いての遅刻組は、Galetteより発売の「お兄ちゃん、右手の使用を禁止します!2」。
2014年に萌えゲーアワード金賞を受賞した過去作「お兄ちゃん、右手の使用を禁止します!」に、新たにヒロイン2人を加えての続編である。
だが、無印の製作スタッフは1人も残っていないことから、警戒信号も同時に点灯しており、
いざ蓋を開けてみれば、予想を遥かに下回る出来であることが発覚したのだった。
まず、イラストについては、無印ヒロインは立ち絵と一部CGはそのまま過去作から流用されているが、
それ以外の新規CGでは作画が別人の為かデッサンは狂い顔も面影が無く、無印プレイ済には只の思い出ブレイカーでしかない。
追加2キャラ分については立ち絵・CG共に一から描いていることもあり、無印組と比べると違和感は少ないが、
それでも質は平均以下であり、作品通しての絵のクオリティはお察しである。
おまけにCG差分も少なく、差分不足のため主人公のアレが下着を貫通してヒロインと結合していることもある。
シナリオについては、文章量自体はそれなりにあるが、質自体はこれも残念レベルである。
第一に、誤字脱字は探す気が無くとも向こうから勝手に飛び込んでくるくらいの頻度で出現し、主人公の名前の取り違えもクソゲーの嗜みとばかりに標準装備。
CGとテキストの状況乖離も日常茶飯事であり、テキスト自体も「7人用のバスを11家族で貸し切り」と一目でおかしいとわかる内容のものが多数転がっている。
加えて、本来は「主人公が右手を怪我して使えないために、妹たちが右手の代わりにお世話する」というのがゲームの趣旨であるにも関わらず、
主人公は平然と右手を風呂に浸し、砂浜で砂遊びに興じ、
果ては妹と駅弁スタイルで致す始末であり、コンセプトからして破綻している。
本作では過去作から声優も全て入れ替わっているが、これも盛大なクソである。
シリーズ中に声優入れ替えの時点でクソ扱いされても致し方ない上に、
此度の声優は殆どが素人演技であり、棒読み声優まで混じっている。
また、声優演技以外にも本作は音声周りに不具合を多々抱えている。
NGボイスはそこかしこに混入しており、声優の咳払いや言い直し、台本捲りといったノイズが複数入っている他、
酷いものでは20分近くに亘って収録現場の音声が録音されたものがそのままゲームに入っている。
他にも本来分けるべき台詞が15個繋がった状態で収録されていたり、
Hシーン中に本来再生されるべき台詞から全て1つずつずれて再生されたりと、
エロゲーより声優収録現場を知る資料としての価値の方が高いのではと思われる程。
ゲーム側もこのボイスの質の低さに匙を投げたのか、所々ボイス再生をさぼる始末である。
それ以外にも、CGが表示されるべき場所で表示されずに真っ暗であったり、真っ黒背景に立ち絵だけが表示されたり、
コンフィグ上でカーソルを載せただけでフルスクリーンに切り替わったりと、バグもより取り見取り。
一応修正パッチが公開されており、「setup.exeをインストールフォルダのsetup.exeに上書きして下さい」と書かれているのだが、
インストールフォルダにsetup.exeが無く上書きしようがない状況であり、ゲーム内容の改善はされるわけもない。
元々ブランド前作である「ちっちゃな花嫁」の出来が散々であったことから、その内情が危惧されていたGaletteであったが、
人気を得た作品の名を借りて尚、商品未満のものしか作れなかったという事実に、
昨今の制作事情の厳しさが改めて浮き彫りになった1作であった。
さて、エントリー作品を紹介し終えたところで、本年の大賞と次点の発表に移りたいと思う。
まず次点は、
「恋愛教室」
「お兄ちゃん、右手の使用を禁止します!2」
そして大賞は、
「ママとの甘い性活Ⅱ」
とする。
本年はKOTYe10年目となり、創設された当初とはエロゲー事情も大きく変化している。
当然、今年エントリーしたクソゲー達にも、近年のエロゲー事情が多分に反映されている。
そのなかでも、クソゲーとして高い「質の低さ」を確保しながら現代のエロゲー事情を反映している2作について、次点とした。
「恋愛教室」はエロゲー業界で繰り返される「ブランドロンダリング」の悪しき見本として、
「おに禁2」は原作スタッフ不在のまま商品未満のものを発売せざるを得ないという「人材不足・資金不足」の好例として、
それぞれ現代のエロゲー制作事情の厳しさを負の面から端的に示していると言えよう。
そして、その極地にいるのが大賞「ママとの甘い性活Ⅱ」だ。
最低限の体裁だけ作って流通に乗せなければいけないという「大人の事情」が無ければ、
これほどまでの負の逸材が日の目を見ることは恐らくなかったであろう。
ここで問題になるのが、「発売前から見えているクソゲーは果たしてクソゲーか」というテーマである。
酷い出来が見えている以上覚悟して購入しているはずであり、買って受けるダメージも少ないのだからクソゲーではないだろうという主張だ。
確かに、期待して購入したものが予想に反して低質であった、もしくは求めているものを満たさなかったという地雷要素はクソゲーに於けるひとつの評価項目である。
しかし、KOTYeは「その年に発売されたエロゲーから一番のクソゲーを決める」ものであり、
地雷要素のみを競う地雷ゲーオブザイヤーではない。
最重要視されるべきはクソさ、つまり絶対的な質の低さである。
バグやメーカー対応といった付加的要素でクソさが増すことは有れども、これらはあくまで後付けの調味料のようなもの。
これらは後から修正が効くものであり、言わば芸術点としておまけで評価するようなものである。
地雷要素についても広義のメーカー対応として捉えることが出来、メーカー側の告知不足が故に起こる結末であり、
後出しでも告知対応をすればそれ以降の被害者はなくすことが出来る。
一方、絵やシナリオやボイスといった素材が根本からクソなものについては、素材自体を丸ごと差し替える以外に修正が効かず、事実上不可能と言っていい。
また、特定の状況に発生するバグや特定層に指向性地雷となるメーカー対応とは異なり、
絵やシナリオといった作品の根幹はプレイ時間中常に付きまとうものであり、
そこがクソであれば、プレイヤーはゲームをプレイしている間常に肥溜めにぶちこまれているのに等しい。
このため、絶対的な質の低さとは後からの誤魔化しが効かない酷さ、すなわち絵やシナリオや演出等の作品としての核の低質さを主軸に評価されるべきものであり、
バグ等は核の低質さにおまけして追加評価扱いすべきものである。
その視点で見た際、前代未聞クラスで絵が壊滅的に酷く、本来の用途にすら使うことを躊躇うママⅡは、
クソゲーとして持つ絶対的な負のポテンシャルで比較した際に、他のクソゲー達とは核の低質さで明らかに異なる次元に立っている。
そして、その次元の差がバグやメーカー対応といった芸術点の累積で覆せるレベルでは到底ないことも明白である。
故に、2017年KOTYeの大賞は「ママとの甘い性活Ⅱ」とする。
今年は例年と比べエントリー数が伸び悩み、10年目としては少々寂しい結果となった。
これらの要因としては、前年のグリモ・村正、それ以前の戦極姫6、そしてチーズと、近年のクソゲーが大型化していた点が挙げられよう。
特にチーズに関しては3年前のゲームにも関わらず、全方位に隙のないクソの御大として未だに多くの民に畏怖の念を植え付け続け、クソの新基準となりつつあった。
そのため、「並のクソゲーではこの先生きのこれない」という概念がスレに暗雲のように立ち込め、普通に見ればクソかもしれないゲームでも選評が届かないという異常事態が発生し、
結果、本来はプレイした人がクソと感じれば選評をエントリーする形であるKOTYeにもかかわらず、4ヶ月間選評なしという状況になったのだ。
だが、人の価値観が千差万別であるように、クソゲーという評価も人によって変わるもの。
エントリー制という形式をとるKOTYeだからこそ、クソゲーと感じたら選評を書いてほしい。
貴方の選評を読み、貴方と共にスレでクソゲーを楽しみ抜き、貴方が感じた哀しみ・怒りを笑い流すことを我々は待っているのだから。
では何故そこまでしてクソゲーを求めるのか。
それは我々に備わる本能ともいえるものである。
本能が故にクソゲーを求め、余すところなく味わい、共感し、笑いあうのである。
本能が故に、クソゲーが世からなくなるその日まで、クソゲーを求めてしまうのである。
その真理を示す語として、ある僧の格言を拝借し、本年の結びとしたい。
「ココロというものは、穏やかなシアワセという良作よりも、
劇薬のような刺激が一気に得られるクソゲーという餌を、好んでしまうものである」