ブランド |
ソフトハウスキャラ |
 |
ジャンル |
悪の魔法少女教育アドベンチャー |
企画・シナリオ |
内藤騎之介 |
キャラクターデザイン・原画 |
佐々木珠流 |
発売日 |
2018/11/30 |
価格 |
8,800円(税別) |
選評
186: 悪魔聖女選評 ◆DtBkl8z6Jc :2018/12/14(金) 20:38:53 ID:cKXueWiE
タイトル:悪魔聖女 ~ デーモンガール・ステップ ~
ブランド:ソフトハウスキャラ
ジャンル:悪の魔法少女教育アドベンチャー
発売日 :2018年11月30日
価格 :8,800円
紙芝居と揶揄されるように、大多数がADV形式で製作されるエロゲー業界において
毎回しっかり「ゲーム」を作る希少なメーカーの一角がソフトハウスキャラである。
今回の製作は内藤騎之介率いるメインチーム。ここ2作ほど今一歩足りない
クオリティの作品をリリースしており、ファンの間でも動向が不安視されていた。
そして残念ながらその不安は的中。公式サイトのオープンがリリース2ヶ月前で
あろうとも、黙って予約を入れる訓練されたファン達を見事に裏切ってくれた。
本作の問題点は大きく以下の3点に集約できる。
1.ゲーム部分が面白くない
2.システム設計が不親切
3.ボリューム不足
1.ゲーム部分が面白くない
元々SLGやRPGを多く盛り込んできたキャラだが、本作は戦闘風パズルである。
ざっくり説明すると、40ターンを使って行われる戦闘において、事前に
提示される相手の行動に対し自分の行動を選択、相手のHPを0にし、勝利を
目指すというものだ。これが100歩譲れば詰め将棋的なテイストを持っていない事も
ないと可能性があったため、パズルと表現させてもらう。断じてこれをSLGとか、
そういう呼び方をしてはいけない。
行動によって消費するターン数が異なり、例えば通常攻撃なら2ターン分、
強攻撃であれば5ターン分を消費する。この行動コマンドを組み合わせ、相手の
攻撃を防ぎつつ自分の攻撃を当てる。通常攻撃は無限に使用可能だが、それ以外の
特殊コマンドは、バトルごとに合計の使用回数に上限があることも付け加えておく。
これがはっきり言って全く面白くない。確かにある程度は戦術を考える余地が
無いでもないが、いかんせん選択の余地が少なすぎる。取るべき行動がすぐに
パターン化されてしまう。
また、事前のシミュレーションが曲者で、無ければセーブ&ロードを繰り返す
必要性が生まれ最高に不便なのだが、あったらあったで本番の緊張感をごっそり
奪い取る。そしてこの事前シミュレーションがあれば無限にコマンドの組み合わせを
試す事ができるため、わずかに残された考える余地すら奪い取ってしまう。
結果、ある程度考えてどうにもならないと、絵柄の無い真っ白なジグソーパズルを
組み立てる訓練に臨む宇宙飛行士よろしく無味乾燥な試行錯誤が延々続く事となる。
2.システム設計が不親切
さて、上記のように遊び自体の面白さにケチがついているわけだが、それでいて
かつプレイを邪魔するような不親切さを本作は兼ね備えている。
例えば本番の戦闘のみで出現するランダムコマンドの存在。ユーザー側としては
事前シミュレーションで確実に勝てる並びでコマンドを準備している。にも関わらず、
追加で選択可能なランダムコマンドが出るその意味は? コマンドを選択する
ターンが1個ずれるだけで、結果が大勝から大敗に変化するなんてザラに起こるこの
ゲームでそんなものを設置して、一体何をさせたいのだろうか。更に意地が悪いことに、
このランダム出現コマンドで「触手」というものがあり、これを選択しないと
見られないCGが各ヒロインに用意されている。完全に嫌がらせである。
また、選択する特殊コマンド。この各種特殊コマンドとヒロインが紐付いており
準備フェイズでヒロインを選択、そのイベントを見ることでコマンドの選択回数を
ストックする事となる。そしてイベントを見た回数が、ヒロインのエンディングの
フラグとなっている。つまり、エンディングを見たいヒロインがいるならば、
それに向けて戦術を変えなければならないのだ。勝つためのコマンドと見たい
エンディングのコマンドが一致しないケースがしばしば発生する。これが非常に辛い。
毎度恒例の周回引継ぎは無いので、ゴリ押しパワープレイでの突破は出来ない。
さらに、相手の行動が明らかになる準備フェイズ冒頭のタイミングで、ランダムに
攻撃力が1.5~2倍になるターンが何箇所か設定されるため、攻略サイトで
必勝のコマンドを共有できない仕様である点を付け加えておく。恐らくは、
他人に頼るな自力でクリアしろという、開発からの粋なメッセージである。
3.ボリューム不足
まあ、こんなゲームが大ボリュームで立ちはだかったら、それはそれで大変な
苦行ではあるが、それにしたってボリュームは足りていないように思う。
プレイ時間は初回クリアまで4~5時間を要した。もっと要領よくパズルを解ける
ユーザーであれば3時間程度まで短縮は可能かと思われる。
ADVパートはいつもの内藤式で、短いイベントを積み重ねることで話が進行する形を
とるが、全体的に説明不足感が否めない。例えば、この苦行をもたらす戦闘パズルで、
一体何と戦っていて、何がゴールとなるのか、非常にぼんやりしている。
魔界がどうとか魔力がどうとか、ある程度過去作をプレイし内藤ワールドに知見の
ある者であればその説明でも多少は理解できるだろうが、果たして予備知識無しの
ユーザーはどうなのだろうか。また、ヒロインの掘り下げはほぼ無いに等しく、
主人公がレイプしたと思ったらいつの間にか懇ろになっている。まあ、いつもの
キャラと言えばそれまでなのだが、従来であればあまりにヒロイン描写に時間を
割きすぎ、ゲームパートのテンポを悪化させないための措置と取る事ができた。
それが本作、そもそもが構造的に、
事前シミュレーションで行動決定
↓
シミュレーション通りにコマンド回数回収のためイベント消化
↓
本番バトル
となる。問題に対し解を見つけたら、まずは答え合わせをしたくなるのが人情で
あろう。そこに時間をおけばおいただけ、ゲームのテンポは悪くなる。そして、
まさにその解と答え合わせの間にイベントを挟んでいる以上、ユーザー的には待ちの
感覚が生まれるのは必然。つまり、どうやってもテンポが悪い。ほのぼのレイプで
駆け足に済ませてなお足りないのである。かつ、イベント選択に左右されない
共通イベントでは、糞どうでもいい茶番を仕込んでくるので性質が悪い。
このように、構造的に冗長感が出てしまうにもかかわらず、説明不足感も味わえると
いう、ある意味奇跡的なバランスを実現したと言えよう。
まとめ
ここ10年のソフトハウスキャラで見て、間違いなく最低の出来である。それも、
意欲的なチャレンジからのクソではなく、随所に手抜き感滲み出るクソなので
擁護の余地は無い。例えば過去、アルフレッド学園魔物大隊のような、微妙な
クオリティの作品を生み出した事があった。結果的には微妙であったが、しかし
そこには新しい面白さを作りたいという熱意を感じる事ができた。しかし本作は
どうだろう。ユニットの増強や育成、周回引継ぎを排除しパズルテイストに
仕上げはしたが、裏を返せばそれらを含めたバランス調整から逃げたとしか思えない。
そしてよくよく公式サイトを見れば「シリアスはあまりありません」との逃げ口上に、
ジャンルが「悪の魔法少女教育アドベンチャー」とそもそも本作はRPGでもSLGでもなく、
ADVなのだ。ご丁寧に「育成」ではなく「教育」という言葉を使っているあたり、
これも逃げの予防線であろう。これは、ゲーム要素はちょっとあれだけど、その分
シナリオを頑張ったから! という意思表示だろうか? それでいて先述の
体たらくなのだろうか? それとも訓練された愚かな信者が、どこまでついてくるか
試しているのだろうか? いずれにしても不愉快であり、長年のファンとしては
昔とは人が変わってしまった友人を見るようなもの寂しさを感じずにはいられない。
以上で報告を終えますが、抜けや誤りがあればご指摘いただければと思います。
ヒロインの魅力不足はじめ、いくつかの理由でフルコンプをせずに選評を書いたため
内容に不備が予想されます。上記全てが解消される要素を見落としていればいいな、と
願うばかりです。
最終更新:2018年12月15日 18:11