719 名前:Secret Agent~騎士学園の忍びなるもの~ 選評者[] 投稿日:2020/06/09(火) 23:58:21 ID:k/aYQkkk
Secret Agent~騎士学園の忍びなるもの~
発売日: 2020/05/29
制作会社: ensemble
ゲームジャンル: 騎士×忍者、園潜入アドベンチャー
原画: 武藤此史 オダワラハコネ 綾瀬はづき 淡夢
シナリオ: ギハラ 中島大河 桃ノ雑派 甲二
◎あらすじ
主人公、御影迅の家は江戸時代から国防を担う忍者の末裔でありそこで生まれ育った迅は、秘密諜報部員である母親の後を継ぐべく、修行中の忍者の卵である。
そんな彼に世間を騒がせる通称「蝙蝠事件」の解決のため、冬華学園への潜入捜査が命じられる。
相棒のAIであるモモカとともに学園への潜入を果たした迅は、クラスメイトのカノン・メイフィールド、騎士である白鐘神楽や団長である蓮城寺舞、後輩である雨ノ森ゆいたちと仲を深めつつ、怪しまれることなく任務をこなしていた。
しかし、あるハプニングによりカノンに迅の正体がバレてしまう。
正体がバレることは任務の失敗を意味していたが、「私を、忍者にしてくださいっ!!」
迅の正体を誰にも言わない代わりに、忍者にしてほしいとお願いされることに!
はたして迅は無事任務を達成する事ができるであろうか。
本作はensembleの女装もの以外の久しぶりの作品で設定や体験版の段階で既に黄色信号ではあったものの最期の望みを託したが、複数ライターの致命的な弊害の塊となってしまった。
◎問題点
本作の最大にして唯一の問題点は設定がチワワのごとくぶれにブレブレなところである。
悪事を働いてきた人物を貶めていく『蝙蝠』が現れるようになって話の舞台となる学園都市。
自分たちの『組織』に近しい行動を取る人物の調査として現場に落ちていた羽の装飾を元に長官である母親の命で主人公は潜入に向かう。
冬華学園を中心とした閃来学園都市を舞台としているのだが、この都市では生活の基盤がAR・VR・MRで成り立っていて信号などやニュースなどの情報媒体などもまとめて支給される端末に特定のアプリを入れて眼鏡やコンタクトレンズを通して生活することが義務付けられている。
研究の一環でもあり、個人が何をしたのかもアプリを経由してすべて都市に情報が集められるということではあるが、主人公の端末は持ち込みで組織御用達端末には相棒のAIが入っている。
そして、街には生活サポートAIのアナトが常時情報収集もかねていつでも現れるようになっている。
この段階で端末の持ち込みがOKであることが説明にないとかそんな技術都市の中で忍者としては難しそうなのにAIに任せきりで田舎のアナログ生活で機械に疎いとかは気にしない。
冬華学園では警備や学生主体の校風を支える学園運営を行う『騎士制度』が存在していてこの都市を代表する象徴となっている。
学院では決闘を行って負けたら勝った者に従うという義務が発生して決闘ではAR装備で装備が削られたりして相手の武器を落としたり負けを認めさせたりして勝敗が付く。
また、年に一回剣闘祭という企業アピールも兼ねたトーナメントもあり、この都市での研究の中枢である上級院には優勝しなければ資格が与えられない。
……はずなのだが、武芸なぞ縁遠いヒロインのゆいの双子の姉はとび級で入っているしそも大学のような建物なのかもロクに説明もなし。
神楽√ではOBも参加可能と突然言われてどんな意味のある大会なのかもよく分からない。
おまけに騎士たちは年500万もする高額の学費で騎士関係者に与えられる『特権』が支えられながらも常に赤字、優秀な人手不足、騎士の横暴な特権の乱用、不要な部署の山などなどの問題づくし。
『蝙蝠』の持っていたモチーフは『称号』持ちの騎士見習いではない15人ぐらいしかいない騎士が持っているはずのものだが一切関係のない真の黒幕が持っていたりその15人ぐらいの騎士も称号が明かされるのは神楽ぐらいで後では騎士の称号は欠片も話に出てこない。
一般学生は高すぎる学費や騎士の横暴な態度に大勢が嫌っており、それでありながらも注目の的のようになっている。
学生のデモは各ルートで盛んであり、一般学生側も騎士側も力で制圧のような流れにもっていこうとしては主人公の周りの人物に何とか抑えられる始末。
共通√では『蝙蝠』にそそのかされて穏便にすまそうとする騎士団長の舞に反発して陰でクーデターを起こそうとしたアルフレッドなども敵ながらも優秀だからと問題が解決すればその人物の穴に悩まされる。
理事長が『蝙蝠』の被害にあって暴露から学園に居なくなったあとも経理面を理事に押し付けていたために手に負えなくなるなど騎士以外の手も借りてズブズブで何とかなっている現状。
それでも騎士制度は本来学費が払えなかったり生活の困窮な生徒にプライドを傷つけない程度に支える学生を辞めさせないための奨学金もどきの制度でそれを残そうとして改革を推し進めようとする舞に教師の九鬼誠士郎が立ち向かうも庇っていた生徒は爆弾テロを計画。
……もうやればすべてが裏目に出る。しかも、話の中で財政破綻寸前の騎士システムの解決方法は出てこない。
もう騎士内部だけでも設定面でお腹いっぱいだが、ヒロイン面も中々に酷い。
財閥の娘で留学生のカノンは将来設計が全て決められていて自由がないといいつつも葛藤もなく主人公と付き合い、その父親は一般人だと思っている主人公に冗談で言った『腹を切る覚悟』を真に受けて財閥関連で誘拐された娘の事件を知って何もできなかった主人公に失望したりと無茶ぶりが過ぎる。
それ以外にも研究施設を目指しながらも剣闘祭ばかりに全力な神楽や主人公と淫らな行為をしたと噂された騎士団長は決闘場でH。
貧乏騎士学生には目を向けずに特権はく奪の改革を進めたり財政破綻の解決策を出さずに海外留学へ行ったっきりエンドをかまされたりともう無茶苦茶である。
そして、忍者サイドだが主人公は先述で機械に疎いためAIのモモカがサポートするも夕方に上級院に忍びこんで帰りに一般人のカノンに見つかったり夜に忍び込んで教師に見つかったりカノンの父親を守るためにクナイを投げた後平然と表に出てきていたりとちっとも忍んでいない。
忍術も基本は手裏剣クナイ体術とワイヤー芸ぐらいでアルフレッドや黒幕を追い詰める(正体がバレても何故か決闘場に行って逃げずに律義に待っている)時にはアプリで分身を作って追い詰めたり携帯フラッシュをしたりと見せ場ではちっとも忍者らしくもない。
最初のひったくりを捕まえるために追いかけては見失い、AIとドローンのお世話になったり犯人の無力化は怠り敵だったアルフレッドがいきなり出てきて「自分は味方だ!」と言われたら追求せずにいたりと大丈夫か忍者......
それ以外にも設定説明は共通でアイキャッチ感覚で挟まれるAIさんに聞いてみようコーナーが中々にうっとうしい割に説明の殆どがそこに入っていたりヒロインにすら半分バレバレながらも正体は明かさなかったり、なぜかTrue√は全員のシナリオ後の流れでまるで全員と付き合っているみたいな流れだったりともう勘弁していただきたい。
それでありながらも話は短くで説明不足と救いようがない。
◎まとめ
整合性を語る以前の問題レベルで戸惑うことも出来ないが、すべての要素を20点×3ぐらいにした感じで何故か何とか読める作品ではある。
しかし、一つをツッコミ出すと気になりすぎてシナリオが頭に入らないので何度もプレイして何とか理解が追いついたが救いようがない。
例えて言うなら外国人が「サムライ、ニンジャ、フジサーン」といっているところにダメ出しをして「キシ、ニンジャ、ミライギジュツー」を言ってバカにされているようなものである。
こういう理由があるから良いといったことは直後には問題を起こしてしまいありとあらゆる人物がただの無能。
真の黒幕すらバレバレだったあたりも許せないが、せめて問題を提議したなら解決策は置いてほしい。