冥契のルペルカリア 選評

ブランド ウグイスカズラ
ジャンル ADV
原画 桐葉
シナリオ ルクル
彩色 萩野小唄
サブ原画/彩色 萩野小唄/Ruki
音楽 めと
システム設計 朔月
スクリプト イーサ
UI・ロゴデザイン 夕凪デザイン
映像 有栖
発売日 2021/2/26
価格 9,800円(税別)

選評

【2021】クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 避難所 1本目
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/58331/1612043313/

89: 冥契のルペルカリア :2021/03/23(火) 02:38:08 ID:ZX/T.KdM
  • 発売日 2021年02月26日
  • ブランド ウグイスカズラ
  • 作品HP 冥契のルペルカリア
  • 定価 9,800円+税
  • ジャンル ADV
  • 原画 桐葉
  • シナリオ ルクル
  • 音楽 めと

  • コンセプト(公式サイトより)
「可愛いヒロインたちとの幸せを追い求める、青春譚」
「恋焦がれるほど求めてしまう、恋愛譚」
「虚構が織りなす、切なくて恋しい、幻想奇譚」

  • ストーリー(公式サイトより)
「神々と肩を並べるには、たった一つのやり方しかない。神々と同じように、残酷になることだ」
若くしてこの世を去った天才女優。ある種の伝説的な存在となった彼女は、壮絶なる演劇の果てに一つの真実を得た。

月日は経過し、春が訪れる。主人公瀬和環は新入生歓迎会にてとある演目を目にすることになる。
「劇団ランビリスへようこそ」
ゲリラ的に開催された、学生演劇もよる突発公演。かつて、天才子役としてデビューしながら、演劇の道を断った主人公は、懐かしい思い出に駆られていた。
「ちょっと、見に行こうぜ」
野次馬根性からはじまる、不条理の物語。幕を開けた物語は、終わりを迎えるまで止まることはないのだろう。

  • 購入動機
ウグイスカズラ作品はすべてをやっているわけではなく、水葬銀貨しかやっておらずブランドの作風などは一切わからない状態でプレイ。体験版は大胆にも未プレイ。
演劇経験があったため、演劇を舞台というフレーバー、またコンセプトの恋愛譚・青春譚・幻想奇譚の3つに惹かれて購入。
この声優が出てるから、ライターやブランド買いなどといった事情は一切なし。
フレーバーとコンセプト重視で手に取りました。

  • 総評(結論みたいなもの)
ただただ辛かった。コンセプトを裏切られた。
基本的には「コンセプトと合ってない」の一点につきる。そのためこのゲーム自体がクソかどうかではなく、どういう点がコンセプトと合ってないかという点で書いていく。

1・声優の演技
声優の演技力に関しては圧巻。劇中劇まで対応するのだから素直にすごい。ここに文句は一切ない。
恐らくこの作品の最大のプラス評価ポイント。

2・音楽
暗い。暗い楽曲は嫌いではないしそれ自体は問題ない。が、体感8~9割くらいの割合で楽曲が暗く、日常パートも不気味な印象がぬぐえない。結果日常パートでさえ陰鬱な印象がどこかぬぐえない。楽曲自体はピアノ・オルゴール調がほとんどだが、不快な音楽とかいうことはない。
全編暗い、ただこの印象に尽きる。
ただ主題歌の「ライムライトの残火」はとてもよい。特にクリア後では歌詞の意味がものすごく染みる。

3・ストーリー

  • しつこいくらいのモノローグ展開。
体験版に相当する二章くらいまでなら許容できる程度だが、三章~十章にいたるまで常に「誰かの過去をモノローグで唐突に語りはじめる」展開で構成される。体感半分くらいはこの作品はモノローグで展開していたんじゃないか、と思うくらいである。
しかも別に主人公が過去を聞きに行った、とかでも何でもなく幕間やらなんやらに唐突に突っ込まれる。
最初の方こそ「このエピソードはこのキャラの過去話か」くらいに思っていたものだが、ヒロインどころかサブキャラクターに至るまで唐突にモノローグを展開する。それが最後の最後まで続いていく。
そのモノローグも、過去の挫折、なんなら半数くらいが家庭環境がうまくいってなくてトラウマ抱えてるなど、こう言ってはなんだがマイナス方向でよくある話でしかないため段々特別に思えなくなってしまう。
劇団ランビリス自体がそういうオチこぼれの集まる場所だからある意味必然なのだが、常にそれで話が展開するのはさすがにちょっとだれてくる。
困ったことに明るい日常パートもほぼない。中盤以降は来々と各キャラが衝突しているかモノローグかって感じ。メリハリはやはり欲しい。

  • 恋愛
中盤以降、この世界が何者かにゆがめられた「虚構世界」であることが判明して、ヒロインを一人ずつ現実世界に戻していく展開のだが……。
ヒロインとの恋愛やエッチシーンがあるのがその虚構世界でのみである。
現実での恋愛は一切ない。そのうえ、その虚構世界でのエッチはそのままEND、スタッフロールもなく実質的なBADEND。
グランドルートの先で恋愛要素が待ってるわけでもなく、恋愛譚ってなんだっけとなってしまった。虚構であっても求めるという意味ではコンセプトとして間違っていないんだろうか? でもほぼBADENDという形でしか結ばれないのはどうなんだ? 別にハッピーエンド至上主義ではないけれど、エロゲーという点を考えても全然萌えない(虚構だとプレイヤーがわかってしまってるし)状況なのはいかがなものか。
虚構世界で二人にとって都合のいい世界になっているため、わざと他の描写が完全にカットされてるのは世界観としてはうまいと思ったが……同時に気持ち悪く、現実逃避でしかなく、そんなものを恋愛と呼んで欲しくはなかった。

  • 白髪赤眼の是非
旧作紙の上の魔法使いを未履修の人間にはサッパリわからない。
未来が虚構世界を構築できる根拠が「白髪赤眼」という程度しかルペルカリア内では根拠がない。話の中核なのになんでそこまで大それたことが出来るのか説明が無いと何かどうでもよくなってしまう。
グランドルートまで来たのに説明がほとんどないのはさすがにかなりおいてけぼりをくらった。

  • 「冥契のルペルカリア」のタイトル是非
グランドルートもしくは妹ルートでは「劇団ルペルカリア」を設立するためそれがタイトルにつながると思うのだが。
めぐりが「ルペルカリアは2月の豊穣祭よ」的なつっこみをするにもかかわらず、語呂がいいとかそんな感じで押し切られる。劇団結成は4~6月。本編中の虚構世界も基本4月~の話で、どう頑張ってもルペルカリアを持ってくる必然性がなくて、作品タイトルとしての意図はものすごく謎。というかめぐりの突っ込みが適格すぎてもやもやする。
同じ女神マイアに祈りをささげるなら、五月に祭りがあったはずだが……(前夜が確かヴァルプルギルの夜)

  • コンセプト詐欺感
楽曲と虚構世界でしか恋愛をはぐくまないという性質、やたらと多い各キャラのモノローグ、それも一個も明るい話がない!という徹底ぷりに「青春譚」と「恋愛譚」はほぼ埋もれていたように感じた。
過去作を全部知らないからなのかそれを作風、とは割り切れなかった。
コンセプトと乖離している、のは広告詐欺みたいなものと感じてしまう。
しかも幻想奇譚もなんで虚構構築できるかの根拠が薄く、話としてもどうにもスッキリしない。

  • まとめ
ブランドの作風と言えばそれまでだが、だったらなおさらコンセプト詐欺はやめるべき。
コンセプト二つが感じられないのではちょっといただけない。
正直コンセプト、売り方さえ間違えてなければ作品としては別に悪くない。
広告詐欺は本来欲しい人に届かず、期待した人が地雷を踏むという事故を起こすためにやはりよくない。

以上

補足


94: 冥契のルペルカリア :2021/03/23(火) 13:25:09 ID:ZX/T.KdM
90>補足
そもそも虚構世界で既に何人か故人であることが判明するためなおのこと青春どころではない。確定死者が複数いる中で青春という気持ちにはなれませんでした。
虚構世界自体が主人公を終わらない地獄に閉じ込めるための舞台装置であり、ヒロインたちはそこに迷いこんでしまった存在。
トラウマを克服して現実世界に戻った一同だが、そもそも現実は劇場が火事真っ只中。何人か既に焼け死んでいる。主人公やヒロインたちが何とか生き延びてみんなで劇団を立ち上げてそこでグランドEND。
辛い事件を乗り越えたここから恋愛がはじまるとか、劇団で青春をやるとか、コンセプトをこの先にこそ突っ込める状況なのがもったいない。
最終更新:2021年08月28日 20:31