2:名無しさん:2023/02/28(火) 08:58:47 HOST:M106072032192.v4.enabler.ne.jp ※総評1 ◆FGm7hqbc.Y
商業エロゲー市場の縮小が叫ばれる昨今、クソゲー界にもその余波は押し寄せ、商品未満の手抜き、ユーザーを舐め腐った裏切り、そんな邪悪な姿勢の先鋭化が止まらぬ2021年にあって、エロゲーへの不滅の情熱を見せつけてくれた『Cuteness』はまさに希望だった。
俺たちはまだ、全力で前のめりに轟沈するクソゲーを味わうことができる。
志さえあれば、クソゲーの火は潰えない。
そんな一筋の光にも似た何かを追い求め、2022年もKOTYeはその歩みを止めることはない。
しかしながら、歩めども歩めども、選評が届かないことには始まらないのがKOTYeである。住人たちはいきなりの飢饉に襲われていた。
年が明け、例年であれば年度末の魔物の話題が出始める時期になっても、選評はおろか、クソの気配を感じた住人たちによる一次情報すらほぼなしという有様。
もしかすると、この世からついにクソゲーがなくなってしまったのだろうか……。
常々住人たちが口にする「クソゲーがなくなるのはいいことです」という文句、果たしてそれが実現した世界は天国か、あるいは地獄か。
そんな恐怖に住人が震え始めた5月末、ようやく今年一発目の選評が届いた。
KOTYe開闢以来、最遅記録の更新であった。
一番槍の栄誉をつかんだのは、Luna Prismよりリリースされた『官能小説家』である。
官能小説家である主人公のもとに届いた欲求不満な人妻からのDMに端を発する、人妻寝取りモノを匂わせたロープラ抜きゲーである本作。
ただ残念なことに、いきなりヒロイン側からがっついてくる姿勢や、自分の妻に執着を見せない旦那のせいで、寝取りものとしての盛り上がりは薄い。
Hシーン自体も素材不足が明らかな上に、テキストと画面の連携も拙く粗さが目立つ。
またシステム面にも問題を抱えており、Hシーンごとに大元のボイス音量がまちまちで調整が必要であるにも関わらず、なぜかSEとBGMしか音量変更できないコンフィグ画面、文字数制限がないために、かの『部室』のような遊び方が可能になってしまった名前設定機能など、仕上がりは上々。
参考用に上げられた画像に映し出された、「ずっぷ!」の文字に侵食されたテキストウィンドウは、住人たちにクソゲーの喜びを思い出させてくれた。
商品レベルとして許される最低限のラインを全方位でぶっちぎりつつも、一握りの笑いを添えていくその姿勢は、今年の一番槍にふさわしい優等生であったといえよう。
そして一本目が届いてしまえば蟻の一穴よろしく、続々とクソが押し寄せてくることとなった。
双子のメスガキを分からせるというコンセプトにも関わらず、分からせる前からとっくに堕ちていた『リンパにATATA!』は肝心のエロシーンがボリューム不足だったり、雑すぎる低レベルな罵倒で自身の存在意義を見失い、『イキ過ぎ異文化交流~清楚人妻NTR堕ちっ!~』は、異文化交流もNTR要素も極薄の仕様で完全な出オチになり下がった。
ちなみに『官能小説家』を送り込んだLuna Prismからは、同日に『羞恥隷嬢学園』というタイトルもリリースがされており、案の定同様の病巣を抱えていたことから、きっちりエントリーを果たす結果となった。
連続する初夏の恵みに、住人たちは沸き立った。
半年に渡る飢饉で弱りきった住人たちに優しく染み渡るクソは、彼らの体を大いに潤した。
ただ同時に抱く懸念。そう、薄味すぎるのだ。
昨年までのトレンドである素材ボリュームのごまかし、雑なシナリオ、ジャンルへの不理解、確かにそのあたりはきっちり押さえてきている。
しかし、それだけでしかない。
教科書通りのクソ要素など持ち合わせていて当たり前、そういう手抜きで雑に薄く仕上げられたクソどもは、確かに健康にはいいのかもしれない。
ただ残念ながら、我々が求めているのはそんな精進料理ではない。
もっとギトギト濃いめ、ジャンクで業の深い命を削って味わうようなクソが欲しい。
2022年のクソゲーは、いったいどうなってしまうのか…。
そんな思いを知ってか知らずか、以降もクソゲーたちは攻撃の手を休めることはなかった。
夏真っ盛りの8月初旬、意外なところから届いたのが『ジュエリー・ハーツ・アカデミア』だ。
近年は優良なシナリオで継続して高評価を獲得しているきゃべつそふとからのエントリーである。
本作が抱えていた問題点は大きく2点に集約される。
一つはバトルシーンがしょぼいこと。
従来の路線から一転、バトルシーンが多く挿入されているのだが、シーン数の数のわりに素材が貧弱であり、演出があまりに変わり映えなくお粗末であった。
結果、延々と似たような場面が展開してしまい、間延びした画面からは爽快感など皆無、やるならもっと気合い入れてやれと言わざるを得ない。
もう一つは、一本道シナリオの失敗。
もちろん一本道だからすなわちクソというわけではない。
このスタイルで傑作を送り込んできたブランドは過去に数多く存在する。
本作の問題は、個別ルートを犠牲にしてまで見せたかったその展開がグダグダすぎるところにある。
特に最終盤は、ヒロインを犠牲にしてラスボスを倒しビターなエンディングという流れから、やっぱそれなし! と言わんばかりに時間を巻き戻し、突如降って湧いたチートパワーでラスボスを殴り完全勝利に書き直すという力技をやってのけ、ユーザーを悪い意味で唖然とさせた。
ただし、それ以外の部分はよくできているという評価もあり、チャレンジングな部分がことごとく不発だったと考えるのが妥当であろう。
加点方式であれば良作、減点方式であればクソという極端な仕上がりであったようだ。
続いて這い出してきたのがCitrusからリリースの『保健室のセンセーと小悪魔な会長』だ。
本作は「保健室のセンセーとシャボン玉中毒の助手」から続く「保健室のセンセーシリーズ」の流れをくむ3作目にあたる。
要素を個別に見ていくと、シナリオ自体の出来はまずまずで、キャラもかわいい、その他バグなどもなしと、一見ここに来るべきではないクオリティに思われるのだが、圧倒的に売り方が下手すぎた。
先に「シリーズ」と表記したが、実態としては前作までのストーリーを踏襲した上でのルート分割販売となる。
ここで問題視されたのが、誰も快適にプレイできないという点だ。
3作ともプレイしているユーザーは共通ルートを3回見せられて不便であるにも関わらず、3作目からプレイしたユーザーは過去2作の個別ルートの内容を前提としたストーリー展開に面食らう。
加えて、頻出のキャラであっても脇役には容赦なく立ち絵を与えないという素材のケチりようも残念さに拍車をかける、詰めの甘さが実にもったいない仕上がりであった。
クソゲーの夏はまだ終わらない。
ダメ押しとばかりに登場したのが、アトリエさくらが送り込んできた『寝取られ姉妹、美亜と悠美~繰り返される恋人強奪』だ。
かつて付き合っていた恋人・悠美を目の前で寝取られ、それがトラウマとなっていた主人公だが、偶然出会った悠美の妹である美亜と交際を開始、次第に心の傷も癒えていくものの、なんと美亜までもが悠美を寝取った男に寝取られてしまい…という、まさにタイトル通りの概要である。
本作の問題点は、人間関係の描写が薄すぎて寝取られ感を味わうだけの感情移入がまるでできなかったところにある。
悠美との過去回想はすでに付き合っている状態でのスタートであり、美亜と付き合うに至った経緯は主人公のモノローグ中にせいぜい10クリック程度描写されるばかりだ。
ヒロイン自体も、なかなかに面倒くさい性格の悠美はニッチ狙いすぎるし、美亜は絶妙な存在感の薄さで、彼女たちへ愛着を覚えるのは困難を極めるだろう。
愛着への共感の欠如は寝取られというジャンルにとっては致命的であり、そもそもの根本を揺るがしかねない。
挙句の果てに、間男が微妙にいいやつで憎みきれないという報告まで上がり、ここまでのジャンルへの不理解は寝取られ専門ブランド的には死活問題ではないだろうか。
過去のKOTYeにも似たような理由でエントリーを果たしていたアトリエさくらであったが、あまり過去に学ぶという発想はないようである。
それどころか、その後も8月から10月にかけて追加で『今夜もあいつに抱かれる彼女』『愛する恋人を大嫌いな旧友に寝取られた件 ~上司で恋人の強気な彼女』『寝取られの教壇~教え子に奪われた愛する恋人』が3本連続で、その後もさらに『裏切りの寝取らせ 心まで堕とされてしまった最愛妻・愛依奈』『ギャル妻・アンリの寝取らせプレイ 他の男の物を咥え、楽しそうに報告をする俺の妻』の2本がエントリーを果たす異常事態となった。
同一ブランドによる年間6本のエントリーはもちろん過去最多の新記録であり、来年以降へのさらなる躍進にいやが上にも期待は高まるが、彼らがいったいどこを目指しているのかは全くの不明である。
そして来る、秋本番。
実りの季節を迎え、ここで明らかに潮目が変わる。
クソであることは間違いがないのに一線は越えない煮えきらなさに歯がゆさを感じていた住人たちは、これまでが今年の前菜に過ぎなかったということを思い知ることになる。
まず襲来したのが『オトカノ ~おとうとの彼女が文系で強め!?~』だ。
North Boxは昨年の『エルフのお嫁さん』から見事2年連続での参戦となった。
ドタバタギャグ+入れ替わりな三角関係の恋愛ADVと銘打たれた本作は、そのジャンル名通り、彼女と姉の人格が入れ替わってしまった主人公たちのドタバタを軸に展開していくのだが、その何もかもが美麗なCGの足を引っ張る要素にしかなっていない。
まずこの入れ替わり要素、実は幼少期にすでに恋人と姉は入れ替わっており、今回の入れ替わりで元に戻っただけというオチなのだが、作中であまりにも匂わせが過剰すぎ、全く意外感がなく茶番になり下がった。完全に伏線の張り方を間違えていると言わざるを得ない。
しかも、弟とは結婚できないなんて! と入れ替わりの原因を作った当の実姉本人が、せっかく入れ替わりを果たしたのに全く主人公にアプローチをしてこなかったり、不要な復讐設定を盛り込んでユーザーの好感度を下げにきたり、設定の詰めや処理の甘さも目立つ。
ドタバタギャグについては、一昔前感が強いパロディネタや「(エ エ)←こんな顔で~」という具合の顔文字ネタなど、単純に笑えないだけにとどまらず、本人は流行りに乗れていると勘違いしているおじさん感が隠しきれておらず非常にキツい。
また、先に美麗なCGと述べた部分についてだが、確かに立ち絵や一枚絵はクオリティが高い。しかし、そこになぜか極端に完成度の低い、というか完全にラフレベルの素材が混入している。
なまじ主だったCGが高品質なため、そのクオリティの落差に住人達もさまざまな推測をしたが、真相は闇の中である。
せっかくの美麗なCG素材という上等な食材を持っていたにもかかわらず、余計な要素をぶちまけて台無しにしていく姿勢は前作のエントリー時からしっかり継承され、どこに出しても恥ずかしくない正当退化作品に仕上がった。
フルプライスの重厚感あるクソの襲来に、スレが沸き立ったのは言うまでもない。
そしてスレが適度に温まったのを見計らったかのように、大物たちが続々と参戦をしてくることとなる。
続いてやってきたのは、しるきーずこねくとからリリースの『ホームメイドスイートピー』だ。
赤の他人同士の主人公とヒロインたちが疑似的な家族を形成するという設定に、巷では「家族計画の再来か!?」と、かつての傑作を引き合いに期待が高まっていた本作であるが、ふたを開けてみれば、かの傑作と比べるのもおこがましい代物であった。
先述の通り、本作は赤の他人同士が疑似的な家族関係を持ち、それぞれの関係性を家族の役割に落とし込み絆を育む物語…になるはずだった。
しかしてその実態は、とにかく話を進めるために延々とちぐはぐでつじつまの合わない言動を繰り返す登場人物たち、ドヤ顔で見当はずれな言動ばかりの主人公、その場その場で話の帳尻を合わせるためにライブ感満載で付け加えられるその場限りの後付け設定に、結局つじつまは合わないシナリオ、挙句の果てにはそれすら放棄して「なんかそんな気がした」で済ませようとするご都合主義と、住人たちが目にしたのは構成という概念を次元の彼方に置き去りにした何かだった。
まず主人公だが、大学4年の春に一人暮らしを始めるための部屋探しのため、目的の駅に17時に降り立ち、そこから不動産屋探しを始め、そこで初めて部屋を借りるには保証人が必要という世間のお約束に気づくという奇行をぶちかましてくる。とてもではないが突っ込みが追いつかない。
プロローグでこれである。ちなみに宿の予定も当然ない。
ヒロインはヒロインで、両親不在で転校手続きはおろか教師との三者面談まで難なくこなす小学生、ぺーぺーの若手が町内会のお祭りを主催・運営をした功績で上司ともども出世できたり、プライベートの飲み会の帰りにタクシーの領収書を切れる謎企業に勤めるOL、両親の行方や自分の家も思い出せなくなるレベルの家出をかまし、死んだ兄から時空を超えた手紙を受け取るギャルJK、担ぎ込まれた病院でなぜか全然関係ない不妊の診断を受けその原因まで明らかになってしまう小説家など、実にバリエーション豊かで大変に支離滅裂である。
加えて疑似家族の絆が描かれると期待されたシナリオも、過程も理由も特になく非常に軽いノリで各ヒロインが参加を決定し、特に家族として何をするわけでもなく唐突に恋人関係になりそのまま即Hシーンという、お前ら家族はどうした家族はと突っ込まざるをえない。
他にも、何も考えずに他で見たよさそうなパーツをとりあえず持ってきて継ぎ接ぎしたんだろうなと思われる部分が多く見られ、特にHシーンでヒロインが吐く吐息にだけなぜかモーションを付けてしまったところなどはそれが顕著であったことから、チェイサー大佐と揶揄されてしまった。
ちなみに余談だが、チェイサー大佐とは、子供向けアニメに喫煙シーンを映せないアメリカでアニメワンピースが放映された際のスモーカー大佐の名称である。葉巻を取り上げられ謎の煙を口から吐く彼の姿は、なるほど確かに本作のヒロインたちそのものであった。
CGは良好、目立ったバグもなく、シナリオの不出来さただ一点で勝負するストロングスタイルがこの令和の時代に拝めたことに、住人たちは歓喜した。
だが直後、クソゲーのジャンクさに脳髄を痺れさせる彼らに冷や水を浴びせかけるような新たなクソの報告が届く。
やってきたのはLump of Sugarからリリースの『ゆまほろめ ~時を停めた館で明日を探す迷子たち~』だ。
リリース直後からちらほらと危険視はされていたものの、まあランプだしとスルーされていたところに検証のメスが入り、その実態が明らかとなった。
本作をざっくり説明すると、精神世界に存在するらしい謎の館に迷い込んだ主人公たちが、館の探索をしたり探索をしたり、探索をしたりするいわゆる館モノである。
基本的には全方位、商品ラインギリギリに見える風に作られているのだが、残念なことに致命的な点を抱えていた。
すなわち、探索をしすぎたのである。
本作のシナリオの7割以上は探索に割かれ、探索→何も見つからない、という流れを延々と繰り返し続ける。
作中では時間が止まっているという設定だったが、止まっているのは登場人物たちの思考であったようだ。
しかも、この賽の河原式の虚無を乗り越えた先にユーザーを待ち構えているのは、とってつけたようなヒロインの問題を主人公が一喝して解決するという、実にチープでインスタントなオチであった。
一応、センターヒロインであるミーナにはグランドエンド的なものも用意されているが、こちらはオチへの匂わせがきつすぎ、今更感がぬぐえない結果に終わってしまった。
ただでさえ薄いプロットを探索パートで限界まで希釈した極薄カルピス作戦に、住人たちは戦慄した。
そんな特濃ジャンクから虚無への温度差に混乱する住人達に箸休めなどさせまいと、続いてやってきたのがCalciteからリリースの『気になるあの娘はえろちゅーばー!』である。
近場にネット配信者がいるっぽいから正体暴いてエロいことしようぜ! という本作、それ以外の部分があんまりにもあんまりすぎた。
Hシーン以外のシナリオ展開があまりにも強引すぎ、必要な情報を出すための会話がお互い相手のボールを捕球するつもりがない電波なキャッチボールになってしまったり、完全にエスパーすぎる推察や、都合のよすぎる話題が都合のよすぎるタイミングで相手の口から出てきたりと、これがご都合主義だと言わんばかりの光景がユーザーを襲った。
登場キャラが何を言っているかはわからないが、一つ確かなのは制作陣が「配信者によるエロいこと」以外はまったく作る気がなかったのであろうことだ。それだけは理解ができる。
潔いといえば潔いが、それにしたって最低限のクオリティというものがあるだろう。
雑な作りに定評のあるCalciteが、今年もしっかりやってくれた格好だ。
例年にないスロースターターぶりから尻上がりに調子を上げてきた22年KOTYe。
迎えた年末であったが、期待作たちは残念ながらエントリーできるクオリティではなく、実におとなしいものであった。
……のだが、年が明け、申し開きの気配もないまま住人が22年を振り返りだした頃、遅れてやってきた年末の魔物、いや悪魔が、あろうことか住人の福袋に潜り込んでいた。
バチあたり極まりない奇襲を仕掛けてきたのはWendyBellからリリースの『悪魔と夜と異世界と』である。
本作はおそらく、伝奇系バトルとなろう系の合いの子なのではないかと思われる。
というのも、あまりにもテキストのクオリティが低すぎて、それが遺憾なく発揮された作品紹介のあらすじを読んでも、本作がどんな作品なのかさっぱり理解ができないのだ。
それはもちろん本編も同様で、感感俺俺的なくどい言い回しがあったかと思えば、主語が足りていなかったり、あるいは過剰にあったり、中二病を拗らせたようなメタい発言をこれでもかとぶち込んできたり、とにかくキツい。
そんな有様であるから、バトル描写についてもお察しいただきたい。
CGも順当に低クオリティで、さっぱり勢いを感じられないバトル用のCGよりも、ヒロインのキス顔アップCGの方がよほど迫力があるという、なんとも皮肉な状況であった。
しかも、フルプライスで60枚という寂しめの枚数には立ち絵を流用したものまでカウントしてしまっているので、こちらも数字以上の残念さである。
これらにやたらと古臭いシステム周りが相まって、15年20年前の作品と言われても違和感がない仕上がりとなってしまった。
11月にリリースされたものが福袋に打ち込まれるだけの何かは持ち合わせているのだろうと覚悟はしていたが、まさかここまでのものは想定しておらず、しまいには錯乱した住人達によるあらすじの日本語添削大会が開催されるに至ったのは、一周まわって微笑ましい光景であった。
申開きにはもう1本、SAGA PLANETSの『AMBITIOUS MISSION』も滑り込んだ。
こちらは体験版部分で見せたガジェットを駆使するスリリングな怪盗劇が、話が進むにつれて世界観がバリツ無双のギャグ時空に吸い込まれていき、そのギャップが大変な顰蹙を買ってしまった。
実績あるブランドであっても、期待されたものを期待されたとおりに作り上げる難しさを、改めて我々に教えてくれた格好だ。
さて、2022年のKOTYeを振り返ったところで、さっそく大賞を発表しよう。
22年の大賞は『ホームメイドスイートピー』、次点は『ゆまほろめ ~時を停めた館で明日を探す迷子たち~』『悪魔と夜と異世界と』とする。
ここ数年の流れであるが、今年も例に漏れずユーザーを舐め腐った手抜きの姿勢が目立つ1年であった。
その際たるは「NTRってこんな感じにしとけば喜ぶんでしょ?」と言わんばかりにジャンルへの不理解を示してくれたアトリエさくらなどの一団である。
ユーザーへのウケなどは度外視で、それっぽく見えるハリボテを作る最低限のラインを探ることに全身全霊の姿勢を見せつけてくれた。
それだけに飽き足らず、虚無による水増しで強引にフルプライスまで価格を吊り上げてみせた強欲さを称え『ゆまほろめ ~時を停めた館で明日を探す迷子たち~』を次点とさせてもらった。
さて残る2本であるが、いずれも手抜きや不誠実さ、そういう次元にとどまらないクソぶりを見せてくれた。
『ホームメイドスイートピー』はその圧倒的な構成力と整合性の欠如で、『悪魔と夜と異世界と』は絶望的なまでの古臭さ、素人臭さで、クソゲーのクソゲーたる底辺を体現している。
では、この2本の明暗を分けたものは何か。
それは「誰のためを思って作られているか」という点である。
確かに『悪魔と夜と異世界と』は擁護のしようもない、まごうことなきクオリティのクソだ。
だが、この中学生が初めて書いた「ぼくのかんがえたさいきょうのラノベ」的なテキストからは、書いた人間のオナニーの形跡が見て取れる。
すなわち、ユーザーを置き去りにして本人だけが気持ちよくなっている気配が漂うのだ。
客観的な視点というものを持ち合わせているなら、こんなものが日の目を見ることはなかったであろう。
一方で『ホームメイドスイートピー』である。
残念ながら、何を狙って作っているのか全く見えてこないし、当初のコンセプトが描き切れているとは到底思えない程度にはぐっちゃぐちゃだが、考えようによってはユーザーを喜ばせるために、他作品の面白かったところをひたすらにかき集めてぶち込んだ結果とも見て取れる。惜しむらくは、壊滅的にそれらを構成しきる力が無かったのだ。
シナリオ以外にも目をやれば、十分以上のクオリティのCG、それなりに用意された立ち絵の衣装差分やポーズ差分、意図は分からないが住人を模した人形の演出や暴走気味のポエム演出など、ありったけの思いを詰め込もうとした形跡だけは散見される。
ただそれが、全く効果的ではなかっただけなのだ。
これだけの情熱がありながら完膚なきまでに空回りしきって見せたその姿は、昨年の『Cuteness is justice』を彷彿とさせるものがある。
良ゲーとクソゲーは表裏をなす存在だ。
光あるところに闇があり、光が強くなればそれだけ闇も濃くなる。
それはすなわち、エロゲー業界全体が盛り上がり良ゲーが生まれれば生まれるほど、その裏ではクソゲーもまた生まれるということだ。
その点で考えれば、2022年前半のようなクソゲーが全くないという状況こそ、我々だけではなくエロゲー業界全体が真に恐れるべき事態ではないだろうか。
良ゲーは良識あるユーザーが消費してくれる。
ではクソゲーは?
安心してくれ、それが全力で前のめりな姿勢を保ち続けている限り、我々がいくらでも食いつくしてくれよう。
その思いを新たにさせてくれた『ホームメイドスイートピー』にこそ、2022年の大賞はふさわしいと判断した。
依然としてエロゲー業界の見通しは不透明だ。
我々もいつまでクソゲーを食らい続けられるかはわからない。
しかし、希望だけは持ち続けよう。
それさえあればきっとこれからも、KOTYeの歩みが止まることはないだろう。
最後に、チェイサー大佐ことスモーカー大佐の名セリフを借り、2022年KOTYeの締めとさせていただく。
「おい君、しるきーずこねくとの社員共に伝えてくれるか。クソ喰らえってな!」