570:選評 セレクトオブリージュ ◆9c8o5hdZvM:2025/01/30(木) 23:46:47 ID:Mpljsj52
タイトル:セレクトオブリージュ
ブランド:まどそふと
定価:
初回版価格:10,780円(税込)
豪華版価格:21,780円(税込)
ダウンロード通常価格:8,800円
発売日:2024年7月26日(金)
シナリオ:若葉祥慶
原画・キャラクターデザイン:柚子奈ひよ/ねじ。(SD)
■キャラクター
明治時代から続く、誇り高き永世華族【一色家】の長女にして、
桜元学園では学生会会長を務める三年生。
両親の死をきっかけに若くして当主の座についたが、
幼少期より受けた英才教育の結果、既に支配者の風格を持つ。
厳然とした言動で他者を寄せ付けず、人前では表情を
一切崩さないが、付き人として共に育った北条姉妹には
心を許しており、時折優しい顔も見せる。
学園の二年生で、学内全ての運動部を取り仕切る運動部総括。
全国優勝を果たすほどに合気道を極めているが、
その強さを決して驕らず、誰にでも分け隔てなく
丁寧に接する振る舞いから、男女問わず学園内の人望が厚い。
警察庁長官を父に持ち、本人も極秘任務のため学生会に所属しているようだが……?
一年生ながら学内全ての文化部を取り仕切る文化部総括。
オートマタ研究において国内でも有数の研究者で、
特に人工知能の開発分野では最先端を行く天才エンジニア。
ただし研究の役に立たないものは切り捨てる合理主義者でも
あり、特に人付き合いや食事に対して一切の興味がない。
研究には莫大な資金を要するが、両親から受け継いだ投資家の
才能を用いて、一代で莫大な財を成した。くくる個人の資産から
融資してもらった部活も多く、みな彼女には頭が上がらない。
凪と同じく珠賀良区の孤児院で育った子供達の一人。
「お兄ちゃん」と呼び慕う凪をサポートするため、
凪とは別の方法で桜元学園へ潜入する。
おっとりとした雰囲気で誰とでもすぐに打ち解けられる
人当たりの良さと、珠賀良区で生きてきた経験から、
何事にも動じない度胸を持っている。
凪に対する気持ちが非常に強く、普段からは想像もつかない
積極性を、凪に対してのみ発揮することがある。
【ワン・ズ・ギフト】当選者のガイド役および
監視役を務める完全自律型自動人形、通称「オートマタ」。
人間より人間らしい言動は、
ロボットであることを忘れさせるほど。
優等生が集う学園において異質な存在の凪に興味を持ち、
職務の範囲内で気にかけてくれる。
学園の三年生で、学生会の副会長。
一色家に代々仕える家に生まれ、
双子の妹である空と共に、奏命を慕い支えてきた。
明るく朗らかな性格だが、
誰が相手でも物怖じしない豪胆さを併せ持っている。
学園の三年生で、学生会の書記。
双子の姉、花とは異なり口数は少ないが、
思慮深く、他者を思いやることのできる心優しき性格。
学園の一年生で、健康的に焼けた肌が印象的。
運動部総括の補佐を務めており、イヴを尊敬している。
学園の三年生で、科学部の副部長。
感情表現に乏しいが、くくるを妹のように可愛がっている。
孤児院の先生で、凪やトウリの育ての親。
過去について一切を語ろうとしないが、
有している技術やコネクションからして
ただ者でないことは確か。
年齢不詳。
凪が暮らすことになる学生寮の管理人。
管理人ではあるが、
寮内でもほとんど姿を見ることのない謎多き人物。
学園の二年生で、凪のクラスメイト。
純真無垢な性格で、人を疑うことを知らない。
学園の二年生で学生会メンバー。風紀委員長を務める。
高圧的かつ狡猾な性格で、楯突く者には容赦しない。
■シナリオ
光と闇、発展と衰退、栄光と没落――
資本主義がもたらした歪な秩序と平和の下、
一握りのエリートだけが富・教育・安全を独占する特別区域。
そこに理外から手をかける男が一人。
名を不波能凪、スラムに生まれ育ち、敗者の一生を定められたはずの男は、
ある日楽園への招待状を手に入れる。
【ワン・ズ・ギフト】
それは、どんな境遇の若者でも一年にたった一人だけ、
エリートのみが学ぶ ことを許された教育機関『桜元学園』へ入学できる権利。
卒業が叶えば手に入るのは 絶大な地位・名誉・権利。
人生の逆転を目指す凪の前には、
分不相応な異分子に対する、負の感情と謀略が渦巻く。
そして立ちはだかるは学園の支配者たる学生会の傑物たち――
日本を裏で牛耳る華族の当主にして、エリート学園を統べるカリスマ会長 一色奏命
警察庁の極秘任務で動く、合気道を極めたトリックスター 蓼科イヴ
圧倒的な財力を誇る稀代のエンジニア 夜刀くくる
凪は同郷の妹分 トウリ と共に、
完全アウェーなハイ・ソサエティで
生き残りと栄光を懸けた日々に挑む。
■問題点
◯コンセプトとのズレ
完全アウェーなハイ・ソサエティで
生き残りと栄光を懸けた日々に挑むストーリーではない。
ホームページのINTRODUCTIONを見るとコンセプトが学園生活?成り上がりと書いてあり、
「スラム出身の底辺主人公が度胸と機転で逆境を跳ね除け、高値の花を射止める学園サクセスストーリーです。」と続いて説明されているがこれを期待していると裏切られる事になる。
共通ルートこそ入学初日に帝雄(テイオー)が龍司にいじめられているのを度胸で助けるが、龍司に目をつけられてしまい復讐で嘘の告発をされ退学の危機になったのを機転で乗り越える。
しかしその後はだいたいが奏命の権力とかヒロインの力で解決するので主人公がなにかするようなシーンが薄い。
また、「身分違いの恋」「カタルシス」「豊富なHシーン」をポイントに挙げているが、豊富なHシーン以外は誇大広告でしかない。
身分違いの恋というのは設定がそうなっているだけでそれによる障害がほとんど描かれない。
身分が高いという設定のヒロインとスラム出身という設定の主人公が恋愛しているだけでありこれをポイントとして上げるのは微妙だと感じる。
早い段階で高感度が上がっていきイヴに至っては共通ルートで告白してくるがどうして主人公が好きになったのかはよくわからない。
ヒロインの一人のトウリに関しては同じスラム出身である。
カタルシスについても薄い。
共通ルートこそ先述のとおりに龍司により退学の危機を乗り越えるシーンや、
(このシーンも隠し撮りしていた龍司がテイオーを脅す音声を学園の放送でをすというありきたりなものである)
復讐で警察を使って主人公を拘束、拷問をするなどのピンチを乗り越えたりしたのはあった。
(このピンチもイヴと奏命の力で助けてもらっているのでコンセプトに合っているかは微妙である)
しかしヒロインのルートでは問題の解決に主人公が関わっていなかったり、描写があっさりしていたりする。
これではホームページに書いてあるような爽快感を感じる事などできない。
なのでポイントとして正しいのは「チョロイン」「拍子抜け」「豊富なHシーン」である。
◯たいして活かされないよくわからない設定
まず奏命についてだが、永世華族である一色家なので権力を持ってますという事が語られるが、そもそも永世華族がどういう存在だか不明である。
一色家の発展が国家の発展になるなど言われているし、生まれ持つ王の資格など言っているくらいなので現実世界の天皇に変わる何かかと思われるが謎である。
ホームページには明治時代から続くと書いてあるが、明治という年号で天皇の存在があると考察されるので世界観の詰めが甘い。
一色家の血は1000年以上続いているらしいのでホームページにもそう書いておけばよかったのではないか。
イヴについても身分を隠しているが現役警察官で奏命の人格を確かめるという目的があるが目的を達成したかは語られず、その設定がルートで活かされる事もない。
警察庁長官の娘という設定はあるが警察庁長官という存在がどのようなものか不明である。
警察庁長官の立場が世襲であったらだいぶ問題だと思うので身分という言葉が正しいのかもよくわからない。
くくるがアンドロイドを開発しているのは両親が死んでしまったことを理由としていなくならない家族を作ろうとしているというもの。
主人公との恋愛の障害にはならないのでなぜこんな重すぎる設定にしたのかよくわからない。
しかも科学部副部長の七が自分の寿命が近く長くは生きられないと主人公に伝えてきたりするのでくくるだけやたらと重い運命を背負わされている。
これには早くアンドロイドを完成させなければいけないというストーリー上の役割があるが、だったら卒業をリミットにするのではいけなかったのか。
トウリについても孤児院にいるのは全員デザイナーズチャイルドであると発覚するので多分トウリもそうなのだが、個人のルートで何もフォローされないのでわからない。
また主人公が通う学園についても謎がある。
桜元学園はエリートのみが通う事を許されるが、1年に1人「ワン・ズ・ギフト」に当選したものが例外でどんな立場であっても通う事が許されるというもの。
にも関わらず、「ワン・ズ・ギフト」当選者の卒業条件が生徒会役員3人の承認を得て卒業というものである。
その設定があるからか前年度の「ワン・ズ・ギフト」当選者が作中に出てこない。
学校で学んだ内容ではなくどこの学校を卒業したかが重要という現代の学歴社会に1石を投じたいのだろうか。
生徒会3人の承認というも、途中で卒業したらどうするのか謎である。
また主人公が学園に入学するタイミングも他の生徒と同じでない理由もよくわからなかった。
◯アフターストーリーがシーン回想に入っている
各ルートのエンディング後のストーリが用意されているのだが、回想シーンからでしか見られない。
エッチシーンを見たいだけなのにアフターストーリーのちょっとした展開を見せられるのはダルく感じるのでアフターストーリーの中のエッチシーンの部分とわけてほしかった。
◯不遇なヒロインの存在
共通ルートでイヴに告白されてその場では保留にする。
なのでイヴ以外のルートではそれに解答を出さねばならず不遇に感じてしまった。
くくると奏命のルートは普通に主人公から断るのだが、トウリルートにいたっては「もっと強くなりたい」という理由でイヴから告白はなかったことにされるという内容でなにそれと肩透かしをくらう。
またトウリルートが実質共通ルートの延長でありトウリの掘り下げがたいして行われない。
そのためヒロインの役割がエッチをすること以外に存在しないように思えて不遇感が強かった。
ヒロイン4人いて不遇に思えるのが2人というのはキャラゲーとして楽しもうという逃げ道を見出しても辛い。
■各ルートの問題点
◯くくるルート
ファイブがエラーを起こし、それを治すにはくくるに埋め込まれている送信機を取り除かないといけない事が発覚する。
どこにあるかは特定できないので危険な手術になるかもしれないと散々盛り上げておいて結果が「くくるちゃんに埋められた送信機が簡単に取り出せて、本当によかったねぇ」というトウリの説明くさいセリフで終わる。
そしてそのまま何もおきずエンディングになる。
恋愛についても両親が死んでいるので反対する人はいない。
◯イヴルート
イヴが主人公との恋愛にかまけているのをイヴを理想と慕う汐莉が許せずいろいろ策略をしかけてくるというもの。
イヴが汐莉との勝負に負けてしまい対戦相手の研究が足らなかったと反省するのまではよかったのだが、汐莉のデータを用意したのはくくるで主人公は空気感が強かった。
また警察庁長官の娘で親に反対されるという展開があると思ったら汐莉がイヴの父の不倫相手との間に作った子どもであると和解後に発覚し、おまけシナリオでそれを理由に脅して認めさせたというのが数行で語られるだけだった。
主人公は過去にスラムで生き残るためにスリなどをしていたのでそういうのが原因でピンチになると思ってたがそういう事もなかった。
またイヴは才能はないが努力で強くなったという設定はあるのだが、このルートではそのような描写は薄い。
◯奏命ルート
奏命が学園に入学したのは優秀な男を探して優秀な子孫を残すというものだったが、
主人公がデザイナーズチャイルドであり、遺伝子を操作され子供を作る機能がほとんど無いと発覚する。
それを奏命に伝えると私に不可能はない、優秀な子ではなく主人公の子供がほしいと言う。
ここまではいいのだが、直後Hシーンに突入するとまさかのパイズリであり、しかも2回イかせてる。
一応その後本番をするのだが、この流れでパイズリはないだろと突っ込まざるを得ずエッチシーンに集中できない。
婚約を披露するパーティで主人公のいた孤児院の先生が主人公は子供を作る能力がないと暴露する。
(これは奏命の父親が死ぬ前に結婚する時には試練を与えるように頼んだという理由がある)
それに奏命出した解答が一色家に不可能はないと宣言する、主人公も少なくとも子供を3人は作ると宣言するという実質気合でなんとかしますと言っているようなもの。
その後いい感じのBGMを流してイヴとくくるがという身内が承認して周りの人も認める雰囲気ができてくるが根本はあまり解決していないし、学園以外の権力者があまり出てこないので納得感のあるものではない。
この後なにかあると思ったら何もなくエンディングとなった。
おまけシナリオで妊娠している事が1行で語られるがなにか処置をしたとかは書かれていないので本当に気合でなんとかしたらしい。
しかも結婚式を挙げるまでにできているのであまり苦労してなさそうだった。
また子供を作る機能がほとんどないという設定はこのルートでのみ発覚するが、他のヒロインのおまけシナリオ等で子供を作って幸せになろうと発言させるのはライターに悪意があるか何も考えていないかのどちらかであると感じる。
◯トウリルート
最も問題なのがこのルートであると思った。
主人公の目的は桜元学園で権力を持った結婚相手を見つけて同じ孤児院の家族を助けるとというのが目的だ。
が、序盤でトウリは人と人を繋ぐ力があると奏命に認められて一色家に入る事になるので解決する。
しかしそれがわかるようなシーンは誰とでも仲良くなれるという感じであり、そのへんのおばちゃんでも持ってそうで掘り下げ不足感がある。
せっかく本来の目的より愛を優先し、それでも主人公がなんとかするという見せ場になりそうな設定だったのにもったいない。
その後はひたすら共通ルートの延長のようなシナリオが続く。
主人公がテイオーのいるゲーム部に所属し、ゲーム部が作ったゲームがヒットしたのでテイオーが会社を立ち上げるのを決めるが経理ができるのが龍司しかいないというもの。
(主人公は本当にちょっとした手伝いでなにかするわけでもない)
だが龍司が主人公の育ったスラムの風俗店に出入りしているようでそれについて主人公は調査することになるが、龍司がスラムの最も危険な場所にいると発覚した。
それを主人公と護衛のイヴ、テイオーとトウリで連れ戻しに行くと龍司は学園に薬を売りたい売人に拘束され脅されているところを見つける。
主人公がなにか機転をきかせるような展開があると思ったらイヴが強すぎてあっという間に制圧してしまう。
そして龍司を説得してテイオーのいる会社の経理をやってもらい、男3人で会社を経営していこうというのでエンドを迎える。
この内容であれば共通ルートでやればいいし、主人公もトウリもあまり関係がない。
トウリのキャラクターの掘り下げというのが不足しており、なんだこのルートと唖然としてしまった。
ヒロインのルートでヒロインの役目がデートとエッチとちょっと他の男を説得するのみというは不満しかない。
だったらテイオーと龍司を女性にし、テイオーの見た目をトウリにしてヒロインにすればよかったのではないか。
◯まとめ
コンセプトやポイントに挙げられていた点は共通ルートにちょっとあるのみでヒロインのルートではほとんど描写されない。
それを抜きにしてもせっかっくいい題材があるのに活かされず、ちょっと盛り上がりそうになってもさらっと流されるので盛り上がらずに不満、
かといってキャラゲーとして楽しめるかというと不遇に感じてしまうヒロインの存在と、キャラクターの掘り下げがそれほど行われないと不満。
とにかくコンセプトをぶらさずにきちんと書き切るか、キャラゲーに合ったコンセプトに変えるかしてほしい。