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新鬘

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新鬘 03/11/11

  簾の生成仮説。

  前頭部から薄くなってゆく場合、つまり「気が付けば剃り込みを入れる必要がなくなっていた」形ではない場合、分け目が中央であれば薄くなったあたりが日焼けして益々禿の進行が速まることを恐れて、まず六:四になる。あとは禿げるにつれ分け目が次第に端へ端へ移動してゆき、ついには簾と成り果てる。ある日突然簾を止めて輝かしい前頭部を発現するという勇気はなかなか持ち合わせていないのであって、簾は簾で辛いのだと思う。

  禿を絶対認めない人は、自分で禿げないと信じ込んでいるならプラシーボ効果で禿げない筈だ。このことは二つの可能性を示している。すなわち「プラシーボ効果は無効だから禿げる」「実は心の中で誰よりも禿の進行を信じている。すなわちプラシーボ効果は有効だから禿げる」

  最近禿について色々書くと、前頭部が薄く見えてきたのは気のせいだろうか。

  テレビで驚異的な鬘の紹介を見た。腕から生えて引っ張ると皮膚も持ち上がっている宣伝の奴だ。数分で皮膚に同化するシートに毛を植え付けて、シートが皮膚に同化してしまうと髪もぴったり接着してしまう。てのひらサイズで四万円、十日ごとに張り替える必要あり、との情報が頭に残った。

  企業とは、利潤を追求することが至上命題であり、またその存在証明でもある。

  頑丈で優れた材質の服を提供したユニクロは、その丈夫さ故にリピーターの過少に苦しんでいる。定期的継続的に売上を確保するためには、程々に見栄えがよくて、程々のところで壊れる物を売らねばならない。頑丈一点張りで既にデザインとして完成してしまっているジッポライタは、無償修理を看板にして、しかし「オイル」「ヰック」「フリント」などの消耗品を部品とすることで、継続的な売上を確保している。それにジッポの場合、既にブランドが確立しており、また蒐集品としても手頃な為に様々なデザインが流通させて消費者が飽きない工夫を凝らしている。

  靴など、本当に頑丈なものは高い。適度に安いものは適度に壊れやすく作ってある。頑丈に作るのは簡単であるが、適度に壊れるよう作ることが難しいのだ。そんな研究は消費者から見れば腹立たしい事この上ないが、それが企業の論理であるから仕方がない。

  一度付けたら半永久的に、少なくとも数年単位、しかし外したり付け替えたりする時は簡単にという鬘の技術は、既に存在する筈だ。人間は宇宙にも行けるしバウリンガルで犬と会話も出来るんだぞ。何だったんだろうねあれは。しかし頑丈で長持ちする鬘を公にしてしまうと一時的に殺到しても、後はしばらく用がなくなってしまう。儲からない。鬘業界全体が沈没してしまう。だから小刻みに金を吸い上げる仕組みをせっせと作っている。満足する程に出来が良く、しかし満足したが最後継続して金を吐き出しつづける為に壊れ易いように。壊れなくても十日毎に張り替える必要のある鬘とは、てのひらサイズで十日四万円だから月に十二万、年間百四十四万円となる。これは儲かる。

  壊れない製品を作る消費者の立場に立つのはいつも職人であり、いつも存亡の危機にある。

  「安かろう悪かろう」は安いが故の結果ではない。より儲ける為に意図的により粗悪なつくりでより安く売っているだけなのだ。高い上継続的に金が吸われるシステムを完成させたその鬘メーカーは企業としては一流だ。しかし消費者の立場から見ると「生かさず殺さず」の思想が、透けて見える。
 
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