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辛い

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辛い 04/11/23

  極端に辛い物を喰べると様々な変化が観察される。

  ひとまず共通しているのは、最初の一口目は折角作った覚悟をさりげなく躱してひとまず「美味い」の言葉を引き出して安心させておき、覚悟は無駄になったと考えながら二口目を搬入する準備を整えている真っ最中に突然衝撃がやってくる。

  辛過ぎるので触れた唇はたちまち腫れ上がり痛み以外の感覚を全て失ってしまうのであって、咀嚼消化を目的とする品物を唇に接触させることは行儀のよろしいことではないから罰を受けているとの解釈の可能だが、単純に辛ければ辛いほど警戒する本能が備わっていないならば文句は言えない。

  辛過ぎるが故に自動的に洟水が垂れてくるのであって、鼻呼吸を断念して口呼吸に切り替える。すると呼吸毎に出入するほんの僅かな空気が触れただけで口の中は燃えている。「火を吹く」という表現は、呼吸の度に火傷を撫ぜられる感覚を指しているわけだが、吹くという感覚は誇張されているのであり、実際は「辛さの余り火傷した」あたりが適切に思える。

  辛過ぎる余り体温が急上昇するから発汗蒸散で体温を下げようとする反応が認知される。頭皮から汗が吹き出すのは禿げる恐怖を幾分か薄めてはくれるものの、「辛さの余り頭が涼しい」とは原因が辛さではなく汗にあることを認識していないことになる。

  辛過ぎるからそのあたりに漂う空気にも辛い成分が含まれている気がして、その恐怖を感じ取った無意識が涙腺を開放するから結果的に「眼にしみる」と学習してしまう。額からの汗が眼に流入した成果である可能性が考慮されないことは理不尽ながらも、辛さに負けて無様な姿を晒している状態を自覚しているから敵である「辛さ」を強大であると暗示をかけることで、負けても仕方がないとする結論を導き出そうとしている。

  以上の結果、涙・洟水・汗・涎の波状攻撃により思考力は粉砕されて「辛い」「ぅぅ」が精一杯、それ以上の会話は成立しなくなる。

  となると歯の治療で必須とされる麻酔の注射が嫌いならば、直前に気絶するほど辛い料理で口腔を麻痺させておけばよい。ただし治療にあたって口腔内に起こる僅かな風でも痺れは増し、不幸にして治療器具が口腔内を突付いた瞬間は、意思と関係なく空気に向かって拳を繰り出したり蹴りを放ったりの膝下手刀に似た反応が生ずるので、予め手術台に全身を拘束させておく必要がある。

 
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