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マジックハンド
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マジックハンド 03/04/22
マジックハンドというものがあって、騙される。
まず割り箸を両手にしっかり握ってへし折る仕種をすると連結していた腕が一気に伸び、遠く物を掴めるという他愛もない下らない、しかし一度は手にしたことがある筈の玩具だ。
腕の部分は「折り畳みスライド式の車庫の門」を極端なまでに省略した原理で、遠くのものとは言え精々50センチ先に届くかどうかの、まずは三日で飽きる代物だ。
先が手の形になっているものがある。ただしあれは腕を完全に伸ばし切った時にのみ掴むことが出来るが、手元に引き寄せようとすると腕は折り畳むことになり、同時に掴んでいた先が開くので、そこで少年は万有引力を発見する。
先が吸盤になっているものもある。しかし吸盤で吸着出来る程平らで空気の漏れない物体など玩具の中にそうそうあるものではないし、あったにしても相当勢い良く「ぴたっ」と命中させなければならない。当然命中させるには腕の伸び具合を計算し、方向を定め、上下の角度も確認したうえで一気に伸ばす。しかし勢いがついているから当初の構えの位置にある自分の手を動かさないようにするのは至難の業で、必ず前後どちらかに空振りする。
更にまずいことに、この手の玩具は粗悪なプラスティック製であり、連結している部分の止め具も緩いことが多い。つまり伸ばし切ったとき、先っちょが垂れ下がるのである。標的の照準を修正し、何度かゆっくりやってみて、距離と角度を完全に把握すると、それまで溜め込んだ期待と緊張を込めて一気に伸ばす。
しかし吸盤が空しくも弾かれてしまうのは、左右の吸盤が同時に当たらなかったからで、片方だけ勢い良く当たっても吸着しない。同時に反対側からも押さえ付けなければならないのだ。抑えなくてもくっつくような物体は重すぎてマジックハンドで弄ぶ対象とはならない。実は既にこの段階で、「少年がマジックハンドに弄ばれている」のだが、単純な原理でありながら複雑な計算を要求する玩具だとは気が付いていないので、めげずに再度修正をする。
「標的をもっと掴みやすい位置と角度で置こう」
最早マジックでもなんでもない。ゴミ箱に投げたゴミが入らなくて拾ってきては元の位置から投げ続ける馬鹿と変わらない。そんなことをずっと繰り返していると偶然吸盤にびったり掴むことが出来る。
そしてその瞬間飽きるのである。実はもっと早くに飽きていてもなんとなくやめるきっかけがないまま意地と惰性でやっていただけである。
これを「玩具で遊ぶ」と言えるかね?「玩具に遊ばれている」としか言えなくはないかね?そんなことを考えていたのは、高枝切鋏の原理の玩具が「マジックハンド」として売られいるのを見て時代の流れを感じたからだ。
あの頃にこれが欲しかった。
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