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第二話~共同戦線~

ロストユニヴァース本社ビル30階。
トランスポートの前に一人の少年が立っていた。
「来たか・・・」
その少年の声と同時に、トランスポートが白く光りだす。
白い光の中から、貴明達が現れた。
「・・・っ!って、ココは?」
貴明は目をこすって、辺りを見回した。
「ようこそ、我がロストユニヴァース社へ。」
トランスポートの前に立っていた少年が、両手を広げてそう言った。
「あ~っ!和樹やぁ~!久し振りやなぁ。」
と、間の抜けた、ほわわんな声を上げたのは珊瑚である。
「久し振りだな、珊瑚。・・・しかし、再会を喜んでいる暇は無い。
その前に、自己紹介をせねばならんかったな・・・。
俺は、このロストユニヴァース社の社長兼コフィン達MLGシリーズ開発設計者、山村和樹だ。よろしく、河野貴明。」
と言うと、少年・・・和樹は、貴明に手を差し出した。
「よ、よろしく。和樹。」
慌てながらも、握手をする貴明。
すると、珊瑚は不思議そうな顔をして、
「ん~?和人(かずひと)のおっちゃんは?おっちゃんがココの社長だったはずや。どないしたん?」
と、和樹に疑問をぶつける。
和樹の表情がほんの少しだけ暗くなった。
そして、和樹の口から出た言葉は・・・。
「・・・親父は死んだよ。いや、殺されたんだ・・・“奴”に。」
「・・・そうやったんや。ごめんな和樹・・・。でも、何でウチらに言ってくれなかったん?」
珊瑚は悲しげな顔をしながらも、和樹に必死に喰い付く。
「・・・心配させたくなかった。何せその日は、イルファの起動実験の日だったからな。」
重く苦しい空気が、辺りを支配する。
すると、コフィンがその重い空気を取り払うように切り出した。
「私も詳しい自己紹介がまだでしたね。
MLG-001コフィン・レイトと申します。
MLGシリーズは、ロボット三原則を無視した作りになっています。
ですが、人を傷つけるというのは無視することは出来ませんので、人を傷つけるという行為は出来なくなっています。
そして、もう一つの特徴は『SBS(ソニック・ブースト・システム)』と呼ばれるもので・・・」
コフィンはそう言うと、自分の脚を見せた。
そこには、某ロボットアニメのようなスラスターが付いていた。
「ようは、囲まれた時にいかに速く敵を倒し、いかに迅速にその窮地を脱するかという名目の瞬間離脱戦闘システム。」
コフィンが淡々と説明していると、イルファが怪訝な表情をして問いかける。
「・・・MLGシリーズは、“戦闘用”のアンドロイドなんですか?
詳しく言わせてもらいますと、同じロボットを攻撃するアンドロイドなんですか?」
「・・・それは違う。」
そう口にしたのは、ソウだった。
「MLGシリーズは確かに戦闘用のアンドロイド。
でも、私達が同じロボットを攻撃するなんてありえない。
もし攻撃するんだったら、貴女はここに居ない筈。」
ソウはキツイ口調でそう言うと、小声で・・・
「私は、MLG-002ソウ・イノセント・・・よろしく。」
と言って、そっぽを向いてしまった。
「・・・」
イルファは黙り込んでしまう。
自分がどうしてあんな愚かな質問をしたのか・・・それが不思議で仕方が無かった。
当たり前の答えが返ってくることを予想していた・・・それなのに、どうしてなのだろうか。
そのようなことが、イルファの頭の中を渦巻く。
「キツそうな子ですけど、根はとっても優しい良い娘なんです。・・・まだ、ソウは起動してから間もないんです。
ですから、人との交流が無くて・・・」
そんなイルファに優しく声を掛けたのは、コフィンだった。
「でも、どうしてそんなアンドロイドなんて作ろうと思ったんだ?」
貴明が、心の奥底から思ったことを疑問にして和樹にぶつける。
「奴に“復讐”する為だ。いや、“奴”を倒すために作ったと言っても良い。」
先程から気になっていた“奴”という単語について、
「奴って言うてるけど、奴って誰なん?」
瑠璃が代弁してくれた。
「・・・俺の幼馴染みだ。名前は、我那覇舞。」
「「「幼馴染み!?」」」
珊瑚、瑠璃、貴明の三人は同時に声を上げた。
「・・・ついでに、親父を殺したのもそいつだ。この街のロボットを暴走させたのも、そいつ。
      • 全部がそうなんだ。」
「でも、そんな!何で、和人のおっちゃんを殺してしまうん!?」
「・・・理由は知っているが、詳しく話したくはない。・・・今は、な。」
和樹は、珊瑚を悲しませないように静かに言い放った。
そして、少し緊張した面持ちで貴明に、
「彼女達を護りたいか?自分自身の身で。」と問いかけた。
「え?」
「自分の身で、彼女達を守り抜きたいか?と、そう聞いている。」
貴明は考えるまでも無く、率直に・・・そして真っ直ぐな声で言う。
「あぁ。俺は、珊瑚ちゃん達を『恋人』としてでなく、『家族』として見ているからな。
護りたい・・・護りたいさ!だけど、あんな訳の分からない連中から・・・どうやって珊瑚ちゃん達を護ればいいんだ!!」
しかし、勇猛な言葉も長くは続かず、段々とその言葉が弱々しくなっていく。
頬を伝ったのは、一筋の涙。
すると和樹は、少しだけ微笑み、
「なら、俺達と一緒に・・・戦わないか?珊瑚達を護るために・・・そして、自分の可能性とやらを見出してみないか?」
と問う。
貴明は少しだけ戸惑ったが、
「わ、分かった。・・・協力しよう・・・改めてよろしくな、和樹。」
と、力強く返事をした。
そんな様子を、悲しそうに見ていたのは・・・イルファだった。

話の後、各部屋が与えられ、珊瑚、瑠璃の二人は余程疲れたのか、ベットに横になると可愛い寝息を立てて寝てしまった。
そんな様子を、イルファと貴明は互いに微笑んで見ていた。
「じゃあ俺も・・・少し休ませてもらうね。」
ソファーに横になろうとした貴明に、イルファは・・・
「あ、はい。・・・あの、貴明さん。」
と、呼び止める。
「ん?」
「少々、お話に付き合っていただけませんか?」
貴明は、そんなイルファに「まぁ、少しだけなら・・・」と言い、肩を並べてソファーに座る。
「それで、話っていうのは?」
「あの、先程のお話なんですが・・・本当に戦うおつもりですか?」
イルファは震えながら、貴明に問う。
そんなイルファの肩を抱き寄せ、貴明は静かに耳元で囁く。
「うん。さっきも言ったけど、俺はイルファさんや珊瑚ちゃん達を失いたくないんだ。だから戦う。
戦って、イルファさん達を護れるなら。」
「貴明さん・・・。でも、その戦いで傷ついていく貴明さんを・・・私は見たくないんです。
もし、その戦いで貴明さんが死んでしまったら・・・私は・・・私は・・・」
泣きそうな声で、貴明に抱き付くイルファ。
「・・・死なないよ。イルファさん達を残して、俺だけ先に逝ってたまるか。」
それは一種の愛の告白である。
その言葉に、顔を赤くするイルファと貴明。
すると突然、
「やっぱり、いっちゃんと貴明は・・・らぶらぶや~。」
と、後ろから珊瑚が元気良く“るー”をしながら言った。
パタリ・・・。
どうやら寝言だったらしい・・・まったくもって心臓に悪い。
「何だ、寝言か。びっくりしたぁ」
「そ、そうですね。」
気まずくなり、慌てて互いの距離を離す。
愛想笑いをしつつ、再び見詰め合う。
そして、互いの唇と唇が重なる。
しばしの沈黙のあと、貴明は「安心した?」とイルファの頭を、わしわしと撫でる。
「はい・・・おかげさまで。」
目を細めて嬉しそうにするイルファ。
「あ・・・あわわわ・・・」
と、入り口付近からコフィンが顔を真っ赤にして、うろたえていた。
「えっと・・・どこら辺から?」
貴明が恐る恐る聞くと、「最初から・・・です・・・。」消え入りそうな声で答えるコフィン。
「あっ!でも、このことは誰にも言いませんから!ハイ!」慌てて後ずさっていくコフィン。
イルファが近付こうとすると、更に後ずさっていく。
そして、「お、お幸せに――――――!!」と叫んで、逃げていってしまった。
「・・・何だったんだ?」
「・・・何だったんでしょう?」
貴明とイルファは互いに顔を見合わせて、コフィンが走り去ったのを見て呆然とした。

社長室の椅子に深々と座るのは和樹。
そこに、「コーヒーを入れてやった。飲め。」と、舌足らずな声を響かせてコーヒーを運んできた猫の耳と尻尾を生やした少女が入り込んできた。
「ほぅ・・・社長に命令とは、いい身分だな?猫耳娘。」
そう言いつつ、和樹はその少女からコーヒーを分捕った。
「そりゃ!香鈴が一番偉いんだから!」
えっへんと胸を張る、猫耳娘こと猫草香鈴。
「そうか、そうか・・・偉いのはお前か・・・。なら、PS(パワードスーツ)隊の隊長さん、何でここにいる?」
額に青筋を立てて、腰のハンドガンに手を添える。
「サボってんじゃないもん!ただ、暇潰しに来ただけだ・・・あ・・・。」
本音を言ってしまう香鈴。
「出・て・行・けぇぇぇっ!!」
和樹の怒鳴り声が、会社中に響き渡った。
慌てて飛び出していく香鈴。
ゼェゼェと肩を揺らしながら、和樹は再び香鈴の入れたコーヒーに口をつけた。
「・・・ガラにも無いことをまたか・・・」
和樹はふと気付く。
独り言が多くなっていた・・・しかも、あの香鈴を会社に入れてから鰻上りである。
――黙っていれば、可愛いものなのだが・・・――
などということを考えていると、机の隅にあった電話が鳴った。
「どうし・・・何?敵の第一陣が三時間後に来るだと?分かった、皆に知らせてくれ。俺もあとで行く。」
――今更、何を考えている・・・我那覇。――
受話器を置くと、妙な胸騒ぎを覚えた和樹だった。


久遠「・・・第二話、長っ!自分で言うのもなんだけど、長っ!
イルファと貴明の登場回数が多い!と、お思いの方にご説明。
それは、珊瑚と瑠璃は寝てましたからw
では、次回第三話~接敵(エンゲージ)~を、お楽しみに!」
最終更新:2013年08月21日 17:29