明日(みょうにち)、皆の治療が終わったあと、ハラオウン家に集まった一同。
海人「・・・さて。今日、君達に話しておくことがある。これは、君達自身のことだ。
しっかりと聞くように。那美さん、お願いします。」
海人は、横に居た那美にそう言うと、壁際にあった巨大なディスプレイに何かを映した。
クロノ「これは・・・?」
那美「この地に眠る、『魔神』と呼ばれる神様です。」
すると、はやてが、
はやて「魔神・・・?魔神ってなんです?」
首をかしげて聞いた。
那美「魔神というのは、各自然を司る神様のことです。炎の魔神『イグニス』、水の魔神『テテュス』、風の魔神『ウィンダム』、雷の魔神『ソア』、光の魔神『エンシェ』と、五つの魔神が存在します。
その魔人と契約した者は、あらゆる危機にも臆しない力を手にするといいます。」
魔人という存在自体どういうものか分からない今素直に、はいそうですかと納得できるはずがない。
しかし、イリーガル・ナイツという強敵が目の前にいるということを考えると、それを信じるしかほか無い。
なのは「でも、魔神と契約するには一体どうすれば・・・」
なのはの言いたい事ももっともだ。
未だかつて、魔神と契約するなどと誰もが経験していないからだ。
海人「・・・その為の下準備はすでに終わっている。あとは、君達の回復を待つだけだ。」
海人はなのはの問いに、凛とした表情で答えた。
シグナム「だが・・・本当に魔神と契約することでことが足りるのか?」
シグナムは初めて、悔しそうな顔で海人に問う。
海人「・・・君達のデバイスを、半ば強引にターミナル・デバイスに強化させる。
勿論魔人の力を借りて強化するんだ。
彼女達、いやイリーガル・ナイツと対等に戦う手段はもはやそれしかない。」
那美「それに、魔神と契約するには訳があるんです。私の神社に、このような伝承があります。
『彼の者、魔を司る神に転じとき、神の守護と魂の守護が在らんとすることを心に命じ、魔を司る神と共に、その身と心は神と共に在らん。』
というように、魔神は契約者の魂、その御身(おんみ)を守ってくれるんです。」
シグナムは確かに半ば強引ではあるが、そういった手段でしか彼女たちを倒すことなど出来ない・・・と、心の片隅でそう思った。
だが全てが確証ではない。自信を持って成功するのかといえば、答えはノーだろう。
しかし、やるべきこともやらずに終わるなど、それこそ騎士の流儀に反している。
やらねば出来ぬことも多々ある。
シグナムは、賭けに出てやろうとそう決意した。
シグナム「私は、異論はない。
レヴァンティンと共にこの戦場を駆け抜けられるならば、それでいい。」
そう言うとシグナムは足早に、部屋を出て行った。
その様子を見て、ヴィータは呆れ返った様子で、
ヴィータ「あ~あ。始まっちまったよ、リーダーの悪い癖が。」
と言った。
フェイト「でも、シグナムらしいと言えばシグナムらしい行動だと私は思うけど・・・。」
そんなヴィータを見て、苦笑交じりに言うフェイト。
なのは「みんな、気持ちは一緒だと思うけど・・・私は魔神さんといろいろ話してみたいです。ですから、絶対に魔神と契約します!」
なのはが、そう言うと次々と候補者が上がる。
エイミィ「なのはちゃんらしい言動だねぇ。いやはや、お姉さんは納得しちゃうよ。」
クロノ「・・・納得するのは個人の自由だが、さっきから手が動いてないぞ、エイミィ。」
エイミィ「あら。これは手厳しいことで。」
クロノとエイミィの漫才も程々に、クロノはすぐに口を開いた。
クロノ「我々の意思は、見ての通りです。こちらの準備が整い次第、そちらの指示に従います。」
海人「分かった。僕等もそれまで、休憩させていただくよ。」
そう言うと海人は、部屋から出て行った。
ベランダから、空を仰ぐ海人と那美。心地よい風が、顔に当たる。
海人「すみません、こんな戦いに巻き込んでしまって。」
那美「べつにいいんです、そんなこと。でも、あの子達に魔神が扱えるでしょうか?」
不安げに海人の顔を見つめる那美。
海人「大丈夫ですよ。彼女達には、表情に見えない闘志と勇気を秘めています。」
そんな不安げな那美に対し、海人は笑顔でそう答えた。
だが、海人は一つだけ不安なことがあった。
それは、八神はやてのことである。いくら、蒼天の書の主と言えど魔神の負荷に耐え切れるかどうかが分からない。
しかし、今は彼女たちを信じよう。海人はそう心に決めた。
なのは達の体力が回復したのは、その日の夜のことだった。
その日は幸い、敵の襲撃もなく魔神の召還にもってこいの夜だった。
結界も張り、準備は万端だ。あとは、那美が召還の儀をしてくれれば何も問題はない。
海人「那美さん、よろしくお願いします。僕たちも出来るだけのフォローはしますから。」
那美「はい。久遠、危ないから下がっててね。」
那美は、久遠を自分の後ろに下がらせミッド式の魔法陣を形成する。
それを見た一同は、唖然とする。
なのはとはやて以外に、この世界で魔法が使える人物を見たのだ、無理もない。
だが、そんな姿に海人はすかさず喝を入れる。
海人「集中しろ!!そんなことじゃ、魔神は召(よ)ぶことは出来ないぞ!!」
一同「!?は、はい!!」
魔力の渦が、星空に舞う。魔神は契約者が選ぶのではなく、魔神が契約者を選ぶ。
なので、誰に何の魔神がつくか分からない。
魔力によって発せられた光が、一同を包む。
しかし、海人には誰に何の魔神がつくか、大体の予想はついていた。
なのはとヴィータに、風の魔神ウィンダム。
フェイトとアルフに、雷の魔神ソア。
シグナムとザフィーラに、炎の魔神イグニス。
ユーノとシャマルに、水の魔神テテュス。
はやてに、光の魔神エンシェ。
そして、光が止んだ時・・・海人の予想が見事に的中した。
なのはとヴィータの後ろに、風の魔神ウィンダムが佇んでいる。
フェイトとアルフの後ろに、雷の魔神ソアが、シグナムとザフィーラの後ろに、炎の魔神イグニス・・・ユーノとシャマルの後ろに、水の魔神テテュス。
そして、はやての後ろには、光の魔神エンシェが佇んでいた。
海人の賭けは無事に成功。
あとは、各デバイスの強化とフレームの強化、それに魔導師たちの体力・魔力の回復を行えば・・・事は足りる。
だが・・・この胸騒ぎは何だ。妙に落ち着かない・・・何かが起きるのだろうか。
海人は胸騒ぎを覚えつつも、彼女たちの笑顔に便乗して微笑んだ。
そして、次の日の昼・・・なのは達は学校でアリサやすずか達にそのことを話していた。
アリサ「へぇ・・・そんなことがねぇ。」
すずか「魔神って、強力なものなの?」
はやて「詳しいことは、ちょー解らへんけど・・・ウチらのデバイスを強化してくれるから、強力なもんやとは思う。」
すずかの質問にはやてが答える。
はやてがそう答えたのも無理はない。
昨日の夜、召還し、その後家に帰って魔力と体力回復の為に就寝してしまったため、魔神がどれほど強力なのか実際のところ解っていなかった。
フェイト「あまり驚かないんだね、アリサもすずかも。」
フェイトは、魔神のことについてあまり驚いた様子のないアリサとすずかを見て、そう溜め息混じりに言った。
アリサ「色々ありすぎて驚けないのよ・・・。」
アリサは口から魂が抜けていきそうな声でそう言った。
なのはとはやてはそんなアリサの姿を見て、ただ笑うことしか出来なかった。
と、その時・・・なのはの携帯から着信メドレーが流れる。
すずか「あれ?なのはちゃん、携帯鳴ってるよ?」
なのは「あ、ほんとだ!」
なのはが、携帯の画面を見るとクロノからのメールが来ていた。
そのメールの内容とは・・・『イリーガルナイツが現れた。ヴォルケンとユーノ、アルフ、管理局チームがすでに現場に向かっている。
すまないが、学校を抜け出して来てくれないか?』というものだった。
そのメールを見た瞬間、なのはは携帯をすぐに閉じ、フェイトとはやてに、
なのは「フェイトちゃん!はやてちゃん!クロノ君からの緊急招集っ!!あの人たちが現れたって!」
と言った。フェイトとはやては互いに向き合い、「うん!」と合図をして、自分達のデバイスを手に取る。
はやて「あ、そうや!アリサちゃんに、すずかちゃん。」
走り出そうとした足を止めたはやては、アリサとすずかにニッコリと微笑んで、「行って来ます!」と言って、止めた足を再び動かした。
アリサとすずかは、はやての行動に少し疑問を感じつつも、はやての「行って来ます!」に「いってらしゃい!」と、大きな声で言った。
なのは「レイジングハート!」
レイジングハート「Yes,my Master.」
なのはの呼びかけに、レイジングハートは答える。
フェイト「バルディッシュ!」
バルディッシュ「Yes,sir.」
バルディッシュも、主に呼ばれて返事をする。
はやて「いくで、リイン!準備はええな?」
リインⅡ「はい!マイスターはやて!」
三人の魔法少女が、空に舞った。
シグナム「ぐぅ!」
なのは達が学校から、現場に向かっている時・・・現場ではすでに戦闘が始まっていた。
シグナムが、ミカの一撃を受けて唸った。
海人「大丈夫か!?」
海人がシグナムの身を案じてそう言った。
シグナムは、レヴァンティンを構え直し、再びミカに向き合った。
シグナム(何故だ・・・何故・・・魔神と契約したはずなのに、その力が使えない?)
じりじりとにじり寄って来るミカを尻目に、シグナムは焦る。
ミカ「どうした?シグナム。お前の力は、この程度か?それで騎士を語るなど・・・!!」
次々と繰り出される刺撃。それを受け続けるシグナム。
しかし、三度目の攻撃を受けた時点でバランスを崩してしまう。
シグナム「くっ・・・!(しまった!)」
そのチャンスを逃さまいと、ミカが最後の一撃を加えようとグングニールを構え直す。
シグナムは不意に、レヴァンティンを構えた。
その時、レヴァンティンが主を守ろうと吼えた。
レヴァンティン『Quadrat Schneider(クヴァドラート・シュナイダー)』
紫色の炎を纏った、防壁魔法が発動する。
ミカ「何ぃっ!」
レヴァンティン『Zwilling Schwert form!(ツヴィリング・シュベーアト・フォルム)』
シグナムの左手に、もう一つのレヴァンティンが握られる。
シグナム「(何が起こったかは知らんが・・・こちらにとっては好都合だ!)行くぞ!レヴァンティン!!」
レヴァンティン『jawhol!(了解!)』
二つのレヴァンティンに、紫色の炎が灯る。
ミカは驚愕と共に、焦りを感じていた。
シグナム「紫炎・・・双閃!!」
ゴオォォォッ!!
ミカ「くっ・・・!グングニール!障壁!!」
グングニール『駄目です・・・間に合いません。』
ミカ(くっ・・・何事だ。反応速度と魔力が、先日より強くなっている。何が、何が奴を変えたというのだ・・・!!)
心の中でそう思うと同時に、ミカは衝撃に備えるために身構えた。
その瞬間、ミカはとてつもない衝撃と痛みに襲われた。
吹き飛ばされるミカを見て、フリアは、エンディニティ・カノーネを握り締め、
フリア「なめてんじゃないわよ!管理局の犬共が!!カノーネっ!終わりに消えろ、彼方までっ!!」
カノーネが、まるで対戦車砲のような形に変わった。
カノーネ『Teufel Schluss(トイフェル・シュルス)』
反動で飛ばないようにしているのか、カノーネの所々から自分と主を止める金具のような物が出ていた。
と、その真上に居たなのはが、アクセル・シューターを放つ。
フリア「これでぇ・・・終わ・・・!くぅああぁぁぁぁっ!!」
突然のことで、何が起こったかわからないフリアは、魔力充填も不完全なまま、トリガーを引いた。
行き場を失った魔力砲撃が、味方であるはずのティアに命中する。
ティア「うあぁぁぁぁぁっ!」
そこに止めと言わんばかりの、はやての砲撃が降り注ぐ。
はやて「穿て、血の雨!!轟け、嵐!!ブラッディ・レイン!!」
リインⅡ「行けぇぇぇぇっ!!」
はやてとリインの掛け声と同時に、ティアの頭上から、右方向から、左方向から、真下から・・・ブラッティ・ダガーの大群が降り注ぐ。
フェイト「何とか・・・」
なのは「間に合ったかな?」
はやて「シグナム!シャマル!ヴィータ!ザフィーラ!大丈夫?」
フェイトとなのは、それにはやてがそれぞれのデバイスを手に持ち、イリーガルナイツに向き直った。
ティア(ちぃ・・・このままじゃ、やられるのを待つだけか。それなら、撤退するしかないようね。)
ティアは痛む体を抑えながら、ミカたちに思念通話でそう伝えた。
ミカ(そうだな。それが妥当だ・・・フリア、退くぞ!)
フリア(りょうか~い・・・)
フラフラの状態で、フリアが返事をする。
去り際に、ミカが、
ミカ「シグナム・・・次こそは必ず・・・」
と言って消えていった。
次回予告!!
シャマル「新たな力で、イリーガルナイツを撃退した私達。」
はやて「そして、その次の日に現れた人とは?」
シャ&は「「次回!魔法少女リリカルなのはA’s~闇の慟哭、光の不死鳥(フェニックス)~
第四話~裏切った聖槍の騎士~に、『ターミナル・イグニッション』!!」
なのは「いつの間にか、役が取られてるし~!!」
最終更新:2013年08月21日 17:47