くらげまるの中身

視線

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kuragemaru

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まただ。またあいつは有希を見ている。

放課後の文芸部室。
あたしはいつもの様に不思議探しと称して、ネットの海を漂う。
団員達もいつもの様にそれぞれ好きな事をしている。
あいつは古泉くんとボードゲームで勝負をしている。
モニタを見る振りをしながら、あたしはあいつを見る。
何気なく目があうとそれだけで嬉しい。でも、そんな事は無く有希を見るあいつがいるだけ。
胸の奥がちくちくと痛む。あいつは有希の事をいつも気にかけている。理由はわからない。
有希の事が好きなの? 問いかけてみたい。でも出来ない。
また、あたしはあいつの事を見てしまう。あたしの方を見て欲しいと思うから。


………
原因不明のエラーを確認。修正開始。処理終了。
彼が涼宮ハルヒを見ている。いつもの光景。いつものエラー。
彼は涼宮ハルヒと目があいそうになると、私のほうを向く。
………
原因不明のエラーを確認。修正開始。処理終了。
私には理解不能。なぜエラーが出るのか。ただ見ているだけで。ただ見られているだけで。
また、彼と目があう。溢れだすエラー。止まらない。
だから私は目を逸らす。彼の目を見ていると、自分が自分でなくなりそうだから。


まただ。またあいつは俺を睨んでいる。

放課後の文芸部室。
俺は古泉と先の見えた勝負をしている。今回も俺の勝ちの様だ。
あいつはパソコンのモニタにかぶりつきで何かを探している。
真剣に何かの情報を見る顔、おかしな話にくすくすと笑う顔、コスプレ衣装でも選んでいるのかニヤニヤとする顔。
くるくるとめまぐるしく変わる表情。俺はゲームの合間にそんなハルヒの顔を見つめる。
視線を感じるのか、あいつはたまにこっちを向いて睨んでくる。
俺は事前に察知する能力でも開花したのか、睨まれる前に目を逸らす。
視線の先には長門がいる。たまにこちらを見るがすぐに視線を本のページに戻す。
古泉が俺の番だと促す。俺はボードに目を戻す。
俺は次の手を指しながら、懲りずにあいつの顔を見る。
睨まれても、それでもだ。俺はいつでもあいつを見ていたいから。

視線 おしまい

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ワープロ専用機でつつましく二次創作していた頃を思い出し、ジャブ的に書いた物です。

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