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寝ぐせ

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kuragemaru

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ある朝、俺は珍しく早起きをし、これまた珍しく早々と登校するという、普段の俺とは違う行動を取ってしまった。
別に何があるわけでなく、ただ……そう、ただ何となくそうしただけだった。

駐輪場に自転車を止め、いつものハイキングコースへと足を進める。まだ周りにうちの生徒はいない。
これはこれでなんだか気分がいいな、かといって毎日早起きしたいかと言うと、即座に俺は否定するがな。
ふと、気が付くと俺の横に長門がいた。いつからいたのかは知らないが、とりあえず挨拶でもしてみるか。
「おはよう、長門。お前、随分早いんだな。いつもこんな時間なのか」
長門はゆっくりと俺の顔を見て答える。
「おはよう。わたしはいつもこの時間に登校している」
普段からこの時間か、こいつにも何か理由があるんだろうな。と、考える俺の視界にある物が飛び込んできた。
「長門。お前寝ぐせができてるぞ」
振り向く長門、ぴょこっと動く寝ぐせ。
「寝ぐせ……問題ない」
「問題ないって事はないだろう。女の子なんだからそういう所は気を使うもんだぞ。まあこれはこれでかわいいけどさ」
しばし沈黙する長門。首を傾けて俺の事をじっと見る、それにつられてぴょこっと動く寝ぐせ。
「かわいい?」
「あー、とは言えだな、やはり身だしなみは大切だ。ちょっと失礼するぞ」
俺はなんとなく照れくさくなり、誤魔化すかのように手ぐしで長門の髪を整えようとした。
しかし、長門の頑固な一面が乗り移ったかのように、ぴょこぴょこと寝ぐせは抵抗を続ける。
おまけに長門は何故だか、目を閉じてされるがままになっている。なんだこの状況は。
「な、長門。時間も早いし部室に行こう。あそこでお湯を沸かして、それで寝ぐせを直そう」
熱を持つ顔を冷ますかのように早足になった俺は、長門と共に校門を目指し歩き出した。

長門に鍵を開けてもらい、部室へと入る。俺はヤカンに少量の水をいれ火に掛けた。
「これくらいならすぐ沸くな、ちょっと待ってろよ長門」
「もしかすると手で直るかもしれない。先程の続きを希望する」
長門はなんだかおかしな事を言い俺に頭を差し出してくる。いや、ちょっと勘弁してほしいんだが。
「だめ?」
「お、お湯が沸くまでだからな」
長門に押し切られるように、俺は頭に手をやる。さっきも思ったが長門の髪はさらさらでつやつやで……
俺が忘我の境地で長門の髪をいじっていると、突然ドアが爆発した。いやあくまでイメージだぞ。
「あんた、朝っぱらから何してんの?」
そこに現れたのは、何故か顔を真っ赤にして怒りをあらわにした涼宮ハルヒであった。
「よ、ようハルヒ。お前も随分早いんだな」
すばやく長門の頭から手を引き、俺は手ごろな温度に沸いた湯を取りにコンロへと向かう。
「あんた、ごまかしてるつもりでしょうけど無駄よ。なんで朝から有希の頭を撫でてるのよ、こんな所で」
俺終了のお知らせ。なんてのが頭の中によぎる。いやいやまだまだ試合はこれからだ。何の試合だか知らんが。
「見てみろよハルヒ。長門のこれをさ」
ハルヒはじろっと俺を舐めるように見ながら、長門の側に移動し頭を覗き込む。
「あら、寝ぐせじゃない。ちょっとこれは凄いわね」
「だろ? さっき途中で長門と会ってな、それでこの状態だったんだ。長門が問題ないとか言うから直してやろうと思ってな」
ハルヒは長門の頭から俺の顔に視線を向け、じっと見つめてくる。な、なんだ、まだ文句でもあるのか。
「ふーん、あんたにしちゃ、女の子に対しての気が利いてるわね。あたしはてっきりあんたと有希が朝から秘密の逢引でも
してるのかと思って、後をつけてきたんだけどね」
ハルヒ、それは無い。大体逢引とかお前はいつの生まれだ。
「うっさいわね。でもよかったわ」
「何がよかったんだ?」
ハルヒは顔を真っ赤にしてずんずんと長門の側に戻っていく。いや何がよかったのか説明しろよ。
「なんでもないわよ。さっさとお湯をよこしなさい」
ハルヒはバッグからハンドタオルを取り出すと、俺に向けて突き出した。
俺はお湯をタオルに染み込ませ、ハルヒに渡してやる。
「ちょっと熱いから気をつけろ」
「う、うん」
さっきと違ってしおらしいな。俺がそんな事を思っていると、ハルヒはハッと気が付いたようにタオルをかっさらう。
「さ、有希。あたしが寝ぐせを直してあげるわ」
ハルヒはバッグからコームやらスタイリングミストの入った小さなスプレーやらを取り出し、まずはタオルを長門の頭にあてた。
「有希の髪、きれいよね。さらさらだし光に当たると青っぽく見えるし、ちょっと憧れるわね」
「お前の髪もきれいじゃないか、しっとりしてるし漆黒って感じでいいと思うぞ」
何の気なしにハルヒの髪を触ってみたが、本当に心からそう思ったわけだ、俺は。
「ばっ、馬鹿。勝手に女の子の髪を触るなっ」
「彼に髪を触られるととても気持ちがいい」
「長門。今何か言ったか?」
「何も。多分あなたの気のせい」
長門は何も無かったかのようにハルヒの手直しを受けている。そしてハルヒはゆでだこの様に顔を真っ赤にして作業を続けた。

「ありがとう」
そう言って長門は6組の教室に消えた。
俺とハルヒは、何だか気まずいというかお互い照れくさいというか、とにかく不可思議な雰囲気のまま教室へと入った。
それから授業も始まり放課後もすっ飛ばして、さらには日付も変わり翌朝へと時間は進む。

何故だか俺は昨日に続き早起きをしてしまい、これまた何故か早々と登校している。
ただ昨日と違うのは、俺の横に長門はいなくて、俺の少し前を歩くハルヒの姿が見えることだった。
そろそろとハルヒに近づいてみると、そこには昨日長門の頭にあった様な見事な寝ぐせ。
少しばかり可笑しくなった俺は、悪戯心を出してしまいハルヒの寝ぐせを引っ張ってみることにした。
「おはよう、ハルヒ。見事な寝ぐせだぜ、今日は俺が直してやるから部室に行くぞ」
寝ぐせを引っ張られた事に苦情を言うハルヒを無視して、俺はハルヒの手を取り校門を目指し走り出した。

寝ぐせ おしまい

コメント

スレで「長門の寝ぐせと格闘するハルヒ」という書き込みがあったので、お題にしてさらっと書いてみた。
とは言えハルヒスレなので、キョンも出して絡めてみたりしました。
もう少し膨らます事も出来たんですが、まあ即興的な感じで書いたのでこれはこれで良しとします。

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