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くらげまるの中身
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くらげまるの中身

キスしてほしい

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kuragemaru

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あたし涼宮ハルヒは、突然だけどキョンとキスしたくなってる。
普段のあたしを知ってる奴がこれを知ったら、気が狂ったとしか思わないわね。あたしもそう思う。
でもしたいのよ、その気持ちを誰が止められるというのよ。あぁ、これが持て余すというやつなのかしら。
ふぅ……キス、したいな、あいつと。

放課後の文芸部室。
今ここに居るのは有希とあたし、それにみくるちゃん。
古泉君はまだね、あいつもどこをふらふらしてるのかまだ来ていない。早く来ないかなぁ。
と、思ってたらトントンと2回ノック、あいつだ。
「よっす」
寝ぼけた挨拶であいつが入ってくる、いつもの場所に座るとみくるちゃんがお茶を出してあげる、いつもの光景。
でも、いつもと違うのはあたしがじぃっとあいつの唇を見つめている事。
はぁ、なんでこんなに気になるのかしら、って自分でもよくわかんないわよ。ただ、昨日の夜見た夢が原因なんだろうけど。
まだあいつと知り合ってからそう経っていないある日、あたしはあいつと二人きりの学校で不思議な出来事の後に、キスをした。
うーん、されたって方がしっくりくるかしら。まあ、夢の中の話だけどね。
それからというもの夢の中で、あの時の事が繰り返される。また昨日も夢で見てしまった。飛び起きて唇に触れたけどやっぱり夢。
見る度に夢であった事にがっかりする、そして朝あいつに会うとキスしてほしくなる。これはなんて病気なのかしら。
ああ、もういっその事あいつのネクタイ引っ張って、無理矢理しちゃおうかしら。いやいやダメでしょ、どんな痴女なのよ。
「ふぅ、キスしたいな…」
やばっ、口に出しちゃった。誰も聞いてないわよね、って、有希がこっち見てるじゃないの。
「有希……聞こえた?」
「……何も」
絶対聞こえてる、この娘は嘘はつかないって思ってたけど、変な所で気を利かしてるのか聞こえてない振りしてるわね。
「どうした、ハルヒ。なんか見つけたのか」
キョンがこっち来たっ。何でもないわよ、あっち行きなさい。あー、心臓止まるかと思ったわ。
不思議そうに、そしてちょっと不満げに席に戻るキョン。ごめんね、今日のあたしはあんたを意識しすぎてるのよ。
「うう、今日はもうおしまいっ。帰るわよ」
これ以上側にいたら、そのうちキョンにキスしてって口に出して言っちゃいそう。
今までは夢見て気持ちが昂ぶっても2日もすれば落ち着いたから、さっさと帰ったほうがよさそうね。
で、あたしたちは4人で帰り道を歩いている。古泉君は結局来なかったわね、彼も色々あるみたいだしたまになら構わないけどね。
それはそれとして、みくるちゃんと分かれる路地に来た時に事件は起こっていたのよ。

いきなりで何なんだが、俺は今ハルヒを見ている。部室で朝比奈さんのお茶をすすりながら、ハルヒの唇を見ているんだ。
あいつの唇、柔らかかったな。そう、俺は例の閉鎖空間での出来事を事あるごとに思い返している。ハルヒとキスしたことをだ。
そりゃ、最初は気の迷いだとかなんとかと理由をつけて否定してみたけどさ。やっぱダメだわ、俺はあいつに惚れてる。
あいつの顔を見る度に、あの時の事を思い出して身悶えする。もう一度ハルヒの唇に触れたいと、な。
お、何かぼそっと呟いたな。どうした、ハルヒ。なんか見つけたのか。最近じゃ何かとハルヒの側に寄ろうとする。
自分で自分がいかれてるとは思うんだが、どうにもあいつの唇が気になって仕方がない。これもあいつの言う精神病なのかね。
素気無くあしらわれてすごすごと席に戻る俺。俺も変だが最近はハルヒも少し様子がおかしいな、ちょっとばかり心配だな。
あれ? 今日はもう終わりだって。まだ来たばっかりなんだがなぁ、はあ、今日はあんまりあいつの側に居れなかったな。
と言ってもクラスじゃ後ろの席にいるんだがな。まあ、そこはそれ恋する高校生の戯言と思って聞き流してくれ。
朝比奈さんが着替えると言うので、いつもの様に俺だけ部室を出る。その時に何か異様な感触とでもいう様なものを、俺は頭の
中に感じていた。なんだ、これは? と、自らに問いかけるとそれは頭からさっぱりと消え去った。……ただの気のせいか。
いまいち釈然としないのだが、深く考えても仕方がない。俺は窓の外なんかを眺めて、天使の着替えが終わるのを待つことにした。
そして帰り道。そろそろ朝比奈さんとはお別れの路地に近づく。そこで俺はいつもの様に朝比奈さんの肩に手を置き、身を屈めつつ
ゆっくりと朝比奈さんの頬に顔を近づけた。

「ふぇっ」
後ろにいたみくるちゃんが、変な悲鳴をあげたの。あたしは振り向いてみくるちゃんを見た。右手で頬を押さえて真っ赤になっている。
「みくるちゃん? どうかしたの」
「ええええっと、なななんでもないですよぅ」
ぷるぷると首を振り否定してるけど、誰がどう見たって何かありましたって言ってるようなものね。
「じゃあ、ままままた明日っ」
あ、逃げた。いったい何があったのかしら。キョンを見てみる、いつもと変わらぬボーっとした顔。有希も変わんないわね。
何かあったのは間違いないのに、もう、気になるわね。明日みくるちゃんを問い詰めないとね。
あたしは少しばかり不機嫌になりながら歩き始める、そろそろ有希の家の側という所で有希に振り返る。
「じゃあね、有希。また明日」
「またな、長門」
キョンも有希に挨拶をして、なぜか身を屈めたと思ったら……有希の頬にキスをした。

あれ? 朝比奈さんが変な悲鳴を上げる。おかしいな、お別れのキスはいつもの事なのに今日に限って過剰な反応だ。
ハルヒも驚いてこっちを向く、ハルヒに問われて朝比奈さんはおろおろしている。…やっぱり変だ。
しかし朝比奈さんはハルヒにこれ以上何も聞かれたくないのか、異常なスピードで立ち去った。どうしたんだろうな、朝比奈さん。
ふと、長門を見るとこいつもこいつで俺の事を異常に凝視している。どうかしたのか長門。ふいっと前を向きすたすたと歩き出す。
なんなんだろね。ハルヒも朝比奈さんの態度が気に入らなかったのか、不機嫌そうに歩き出す。
そんなこんなでそろそろ長門の家の側に差し掛かる。ハルヒが長門に挨拶し、俺もまたいつもの様に挨拶をすることにした。
またな、長門。俺は長門の頬にキスをする。あれ? 長門もなんだか反応がおかしい。普段より目を見開いて僅かながら震えている様だ。
どうしちまったんだ、長門。挨拶のキスはもう数え切れんほどしたろうに。

「このっ、バッ、バカッバカヒョンッ。何してくれちゃってんの、このスケベっ」
少し咬みながらキョンを罵倒する。有希にキスした? 何でよ。もしかしてさっきのみくるちゃんがおかしかったのもそうなの?
有希は僅かながらに目を見開いて、頬に手を当てふらふらとマンションの中に消えていった。
「なに騒いでんだ、ハルヒ。いつもの挨拶だろう?」
あれが挨拶って、あんたいつから外国人になったのよ。ふざけんじゃないわよ。
そりゃあんたにキスして欲しいとは思ったけど誰彼かまわずキスするような、不埒者になれとは思ってないわ。
大体いつもの挨拶って何よ、あんたこれが初犯じゃないっての?
「挨拶って…あたしにもする気なの」
キョンはしばらく考えるような仕草で、うーむなんて唸ってる。何よ、みくるちゃんと有希にはあっさりほっぺにちゅーとかしちゃうのに、
あたしにもするのかって聞いたら悩むなんて、あたしとするのは嫌って事なの?
「その、なんだ。お前にはしない」
正直ショックだわ。何かする前に振られたと言ってもいいわね。あたしが沈んでいると、キョンの電話に着信があった、こいつこんな時に
普通に電話受けてるし、もう、なんなのよ。

ハルヒに罵倒された瞬間、俺の頭の中で何かが砕ける様な音がした。いや、あくまでイメージだがな。いつもの挨拶? そんな事実は無い。
なにかがおかしいのはもう俺にもわかっている、どうも今の俺は見境無く、頬にではあるがキスをしてしまう奴らしい。
そして俺はそれをいつもの事と認識していた、だがハルヒにはしていない。お、古泉から電話だ。助け舟か、これは。
「やあ、何かお困りではないですか?」
ああ、ちょっとばかしおかしな事になってるようだ。
「ふふっ、ちょっとこちらも手が離せないので単刀直入に言いますが、あなたは今情報操作をされています、涼宮さんに。
恐らくなのですが涼宮さんはあなたとキスしたいと考えたのでしょう、それがどうもおかしな風に作用しているとみられます。
長門さんにもまったく気付かれない様に操作されている、無論あなたにもです。まあ、このままではいささか不都合ですから、
なんとかして頂けるとこちらとしても助かります。こんな事で世界崩壊とか笑えませんからね。そうそう、もしかしてあなたは、
涼宮さん以外の人にもキスしたんじゃありませんか? だとしたら今の僕の忙しさはわかって頂けると思うのですが。
まぁ、これはあなたのせいというより、涼宮さんの願いが若干歪んで叶えられてしまったからなんですけどね」
俺も今となってはおかしいとは思ったんだ。しかし、長門すら気付かんのによくわかるな、そこまで。
「僕は涼宮さんの精神分析において右に出る者はいないと自負してますからね、おっと、仲間の援護に回らないといけませんので
これで、失礼させて頂きますよ。では、また正常になった部室で会いましょう」
ああ、わかった。ふう、やれやれだ。ああ、古泉。電話が切れた後でこう思うのは何だが、お前には悪者になってもらうぞ。

「もしもし。ああ、…何!!ああ、えっ。うーん、やっぱりそうなるのか。俺も今となってはおかしいとは思ったんだ。ああ、わかった。」
キョンはすまんと一言言って電話をしまう、なぜかあたしの方に寄って来て、えっ、肩をつかまれた。どういうこと?
「すまん、ハルヒ。俺は古泉とグルになってお前を試したんだ。お前が俺をどう思っているのか知りたくてな」
えっ、それってどういう事なのよ。あたしの気持ちが知りたいって、もしかしてキョンは…
「朝比奈さんや長門にキスをしてハルヒがどんな反応をするか確かめようって古泉が提案したんだ。むろんキスされる2人も協力者だ」
「みくるちゃんの時にあたし見てないわよ」
「ああ、あれは前振りで本番は長門だったんだ。それでハルヒが何の関心も持たないか只怒るだけなら、俺の恋は脈無しって寸法だ。
だけどな、ここまで来て騙してまで知った気持ちに意味は無いと俺は悟った。だから素直に俺の気持ちを伝えたい。無論こんな事を
してしまった俺だ、振られたとしても自業自得、遠慮なく返事を聞かせて欲しい」
何、何なのよこれ。キョンがあたしの事を好きって事なの。これこそ夢かなんかじゃないの、キョンがあたしに気持ちを伝えるなんて。
ど、どどどどうしよう、心の準備なんか出来てないわよ。
「ハルヒ、俺はハルヒが大好きだ」
うう、鼻血出そう。キョンがあたしに告白してくれた。どうしよう、へ、返事しなきゃ、あたしもキョンが大好きだって言わなきゃ。

あー、口からでまかせってのは本人が思うよりすらすらと出るものだな。まあ、何とかしろって言ったのは古泉だし、古泉プレゼンツの
企画にしたのは許せ。長門と朝比奈さんも後で謝ろう、朝比奈さんには叩かれるくらい覚悟しなきゃダメかもな。
だが、俺がハルヒを好きなのは嘘でもなんでもない俺の本心だ。こんな形で告白とかちょっと想像してたのとは違うが、きっかけが
無ければ俺はずるずると引っ張っていたかもしれんしな。

「……あ、あたしもキョンのこと好きです」
うわ、口調が普段と違うじゃないのよ。あたしってばそんなにテンパってるのかしら。
「そっか、そりゃ嬉しいな。じゃあたった今から俺達は恋人って事でいいのかな」
こくこくと首を縦に振る。まさかこんな展開になるなんて思ってなかったけどね。
「ねえ、キョン。あんたキスしたことある? もちろんほっぺじゃなくて唇よ」
「あー、残念ながら無いな」
ちょっと安心した。あるぞとか言われたら、相手は誰っとか詰め寄っちゃうかもしれない。意外と嫉妬深いのねあたしって。
「ただ、夢の中でならあるな」
「…夢って何よ。そんなんでよければあたしだっていくらでもあるわよ」
あたしの返答を聞いてちょっと難しい顔をしたキョンは、あたしの肩に手を回して自分の側に引き寄せる。
「相手は誰だ」
えっ、えええ、何これもしかしてこいつってば、夢の中の事なのに嫉妬してんのかしら、ってあたしと同じじゃない。
「あの、その、どの夢でも相手はキョンです」
もうっ、また変な口調になっちゃったじゃないの。こんな恥ずかしい事言わせるなんて、このバカキョン。
「ほほう、偶然だな。俺の夢の中の相手もハルヒだぞ」
うわ、こいつも恥ずかしい事を真顔で言ってくるし。ちょっとだけキュンときたのは内緒だけど。
「俺の夢の中では、誰もいない学校に2人だけで居たんだ。俺はハルヒを引っ張ってグラウンドに下りて…」
何かどこかで聞いたような話ね、こいつってばあたしの夢の中でも覗いてるのかしら。
「そして、俺達は初めてのキスをしたんだ。まあ、夢の話だけどな」
「じゃあ、またしてよ。初めてのキス」
またって言い回しは少しおかしいとは思うけど、あの時の夢はあたしにとっては、現実と空想の狭間の様な不思議な夢。
だからまたでいいの。あたしはそっと瞼を閉じてキョンに寄り添う。キョンはあたしの頬に手をあてている。キョンの顔が近づくのがわかる。
ドキドキが止まらない。キョンの胸に手を当てるとキョンのドキドキも伝わってくる。

そして、あたし達は2度目のファーストキスをした。

さて、翌日の事は俺が語ろう。
古泉には俺からハルヒに告白したと伝えた。その際に今回の件は古泉が首謀者となって仕組んだものだという事にしたと。
「素直におめでとうございますと言えないのが今の気持ちですね。おかげで僕はこのざまですから」
団長を騙した罰ゲームとして、メイド服で女装の上におかえりなさいませご主人様と叫びながらグラウンド5周という罰ゲームを終えた
超能力者は苦笑いをして俺に語った。すまん、今度奢るから許せ。
長門と朝比奈さんにも、俺が2人にキスをしたのはハルヒの能力による物だと説明した。
2人とも怒っていたと思う、だが俺の渾身の土下座でもってその場は治まったとだけ言っておこう。
そして、放課後の文芸部室にて。
俺とハルヒ、長門と朝比奈さんが揃っている。古泉は機関に報告があるらしく既に帰った。朝比奈さんは制服のままお茶を淹れている。
「このあと鶴屋さんとお買い物に行くんですよ」
俺にお茶を出しつつ朝比奈さんは言った。何故か湯飲みの下に紙切れが挟まっている。
――涼宮さんの能力の為とはいえ、少し嬉しかったんですよ。でも告白に利用しちゃうなんてあんまりです。だから罰を与えちゃいます。
なんだこれは。えーと朝比奈さん、やっぱりまだ怒ってらっしゃるのでしょうか。問いかけようとする俺に一冊の本が差し出される。
「読んで。今すぐ。ここから」
あからさまに栞の飛び出た本が、長門から手渡された。うーむ、栞に書かれていることを読むのが怖い。
――あなたはわたしという個体の心をもてあそんだ。罰を受けるべき。
長門さんもまだ怒ってらっしゃるのですね。
「それじゃあ涼宮さん、今日はこれで失礼しますね」
「わたしも図書館に返却に行く、また明日」
2人揃ってお帰りの様子。ところで俺に与える罰って何なんだ。
「キョン君、また明日会いましょう」
「また」
長門と朝比奈さんは俺に挨拶をすると、左右それぞれの頬にキスをした。
「あなたへの罰はこれ。嫉妬に狂った涼宮ハルヒに、あなたは刺殺される可能性がある。が、私達は関知しない」
長門は俺に耳打ちすると、朝比奈さんと部室を出て行った。
「キョン。今のはどういうことかしら」
ああ、どういうことなんだろうな。俺が聞きたいよ。
刺殺は無いだろうがそれなりのことは覚悟した方が……
真っ赤な顔で迫ってくるハルヒを、俺は抱きとめる。その拍子によろめいて、ドアに背中を打ち付けてしまった。
「キョン、あたし以外の女の子からキスされるなんて許し難い罪よ」
「だろうな、おれもそう思う」
俺とハルヒの顔は、もうわずか数センチという所まで近づいている。
「罰としてもういいって言うまで、あたしにキスしなさい」

それは罰じゃなくてご褒美じゃないですか。なんて古泉の声がどこかでしたような気がするな。
そう考えながら俺は後ろ手でドアに鍵を掛けた。

キスしてほしい おしまい

コメント

なんというか、超展開シリーズとでも名付けましょうか。
勢いだけで後先考えないとこうなるという、自分の悪い所を集めたかの様なお話です。
だからと言って、これ以外の話が出来がいいのかと問われると自信を持ってそんな事は無いと言いきれますが。
この話も細かいシチュエーション単位で見ると、悪くないなと。結局はまとめる人次第なんだなあ、と他人事のように思ったりもします。

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