「どうして貴方が何人も目撃されているんですか?」
注射器を引き抜いてさくらはポケットから薬を打ち込む、アンバランスで気持ち悪いからあまり使うなとある人物に推奨されたがエレボス細胞を促進させてコントロールできる薬によってさくらは顔面そのままで体格はレッドの2倍以上の男らしい、簡単に言うとハルクみたいになる。
シエルも確かにこれキモいなと思った。
「この薬、魔法少女に貰ったんですよ」
「魔法少女?いつの間にそんなのと知り合って……というか、時空なんでもありだな」
「その魔法少女の名前はイミタシオ、本名派田中Mさん……別の世界別の案件でシン・ロード団と呼ばれる時空犯罪組織と戦闘中、そこに貴方もいます」
「なっ!?つまりここに黒影はいない、ということは今注射器を投げたのは羽丸!?」
「ちゃんと話を聞いてくださいシエルさん、私が盾になりますから」
「聞きたくないんだよお前のその姿を理解するのに時間がかかるから!二度と私の目の前でその姿になるなよ!」
筋肉モリモリで武器を全然寄せ付けないさくら、更に満身創痍のかすみを掴むと人工呼吸で直接エレボス細胞を送り込むとかすみはまた男の体には戻らなかったが目を覚まして体が楽になったことに困惑したような様子を見せ……改めてムキムキさくらに引いている、目を背けるなお前もそんな感じだったぞ。
「Mさんは貴方に命を狙われていた、それはМさんとシン・ロード団は深い関係にありシン・ロード団を貴方が倒すという自作自演計画のために邪魔だったから、しかしその計画はリアルタイムで行われているナンバーワン戦隊ゴジュウジャーの活躍によって突破されました」
「ナンバーワン戦隊?まだ視認されてない戦隊が残っていたのか……」
「他にも婚薬戦隊ユウアイジャーというものがありますがこれは省略、問題はそこに黒影がいるなら……他がおかしくなるんですよ」
「どういうことだい?」
「グリーンさんが命懸けで調べてイエローさんに記録させていた
時空監理局の活動報告です」
ゴクグリーンは真っ先に時空規模の異常と見て時空監理局を調べていた。
その結果、時空監理局で5人の副局長一派が何十人にも分身して様々な事業を展開していることを知った、これは後に
たくっちスノー自ら分身ハンマーを提出したので会議で問題なしと判断されたのだが……グリーンとイエローはある事実に気付いた。
たくっちスノー達が大量にいる分身達の中で……黒影もまた大量に確認されている。
「時空初の世界クルーズ船『ソラノツミ』、
仮面ライダー白湯という世界、惑星ポップスター、ああゼロワンでもいますね、たくっちスノーさんが管理している
リアルワールドの事件、グリーンさんが少し確認しただけでもこれだけ短期間に黒影が居ることになる」
「分身ハンマーは黒影に使えないのか?」
「使えません
マガイモノ成分を応用しているので彼はマガイモノではないと……なのに、ここにいるはずのもの含めてたくっちスノー先生と同じ数だけ存在している」
「それは何故……はっ!そうか!あったじゃないか、いくらでも人を増やせる手段、同一存在を呼び出せる装置!」
「g-lokシステム……!!」
同一人物を呼び出すことは不可能ではない、花岡さくらとサクラという例が目の前に存在する。
未来の自分を呼び出して特別講師にした理由はパラレルワールドの自分自身を呼び出しても世界に悪影響を及ぼさないかテストしたかったのだろう、現にサクラが何もしていないどころか積極的にさくらに絡んでも何事も反応を見せない。
サクラ自体ただの実験だったのだ。
「さくら……もう君は不要だ、物語は俺の手でゴッドイベントを終わらせてもらう!」
「ああごめん、キミには言ってなかったけど……僕がその花岡サクラだ!!」
さくら……いや、サクラはエレボス細胞を駆使して元の双性の身体に作り直すと飛んでくる注射器を全て指で弾き返してかすみを担ぎ、走ってベビーのところまで戻る。
「お前っ……未来のサクラだったのか!?いつから!?」
「ベビーに会いに行った時からずっと、過去の僕から話は聞いておいたから代わりに行こうと思ってね」
「どっちでもいい〜……時空監理局としてはサクラもいずれ消すつもりだった、こうなったら桃の園ごと……」
「ダメだね、君はゴクグリーン殺しどころかとんでもないことをした」
「とんでもないこと?それは一体……」
「あーあーマイクテスト、聞こえるべ未来のサクラちゃん」
通信をかけてきたのはコバルトだ、さくらは実はずっと藍の波止である物を作成しながらグリーンの解析結果を確認していたところだ、そこには……コンペに参加したもの、修学旅行のもの、そして今回姿も見せずに暴れてるもの全てが黒影ではあるものの殆ど様子が一致しない、g-lokシステムで呼び出したパラレルワールドの黒影達と見て間違いないという。
更に『シャドー・メイドウィン・黒影』として以外の戸籍を数多く購入した履歴もあり、その中に『来道羽丸』の姿もあったが……。
「羽丸を名乗ってるやつはちょっと特殊だべ、右の掌だけ別の人間から移植されてるよーな感じ、分かるべ?その手にあるのは……」
「来道梃子と同じユニバース戦士のアレ……」
「うん、切り取って自分が使えるようにしたんだねアバレンジャーの力、ちなみに彼が扱える関係者にリングハンターっていうユニバース戦士の敵が居ることも確認済だ、そしてその切り落とされた男は巡というキミの先生の目的の相手」
「ふざけている……巡先生までもが巻き込まれていたのか!」
「そうだね、僕も本気で過去のシエルや皆と会えて僕よりマシな結末を掴めたと思ったのにがっかりだ……さて、そろそろ出るか」
「出る!?何のためにお前はこの穴を通ってきたと」
「何って普通にかすみさん連れて行く為だけど?あやめさんになんて言われるか」
「え?」
黒影としては穴に連れてきて余計なもの全部奪い取るつもりだったのかもしれない。
しかしこっちだって世界の平和救ってきたのだ、軽はずみな善意で想い付いた作戦を上から潰すのは結構慣れている。
話を聞いて気合でよじ登るマゼンタ、壁を駆け上がるベビーにロープで捕まるサクラ……戻ってきたたくっちスノーはサクラに詰め寄る。
「ほ……本当なのか?君の言ってること」
「残念ながら」
「……待て、それじゃあオリジナルは!?自分達の世界の黒影は一体どこに……」
「グオオオオ!!」
と、簡単に逃がしてくれるわけもなく穴の下から怪物が迫るが当たり前のように持っていた手榴弾を投げて足止め。
なんとかかすみを引っ張り出して桃の園に帰ってくることに成功する。
「しかしこれから……っていうか、君はさくら君に何を作らせてたんだ?」
「ん?何言ってるんだ言い出しっぺは君じゃないか、最近は設備も充実してるし僕もやってて楽しかったよ」
「……えっ?まさか自分まだ作ってる途中の桜花戦隊シュンヨウジャーを!?」
「だってそれどころじゃなかったでしょ?レッドを越えるピンクに存分にやらせてあげないと」
つまり新戦隊を作るための時間稼ぎにさせられているのだ、逃走は未だ止まらずたくっちスノー達と四人は怪物と化したもはや羽丸か黒影かも分からないものから逃げ続けるが、突如として炎が降り注ぐ……その先にはマジレッドが!?
「ああもう!姉御に内緒でこっそり来たけど……面倒事やってるうちにバックレようかな?」
「マジレンジャーのユニバース戦士か!」
「名前は印魔真銀、巡の元世界の教え子だって……それだけじゃないよ」
「えっ……ああ!?」
よく見るとマジレンジャーだけじゃない、ゴーバスターズとリュウレンジャーまでいる。
更に先導を切るのは扇子をもった若々しい男。
「レッドバスターの鳥飼さんは時空で名を馳せてきたフライドチキン店で真銀ちゃんもお世話になってるんだって、ダイレンジャー?いやリュウレンジャーだったか……まあどっちでもいいか、アレの人は常連……ユニバース戦士ってね、案外付き合いは狭いんだよ?」
「でもなんで……敵同士なのに!?なんならあそこにいる熱海常夏はもう負けてるのになんで!?」
「そういう事情も関係ないほどの異常事態、ということだよ」
「ここは我々に任せたまえ!そしてどうか私に清き一票を!アバターチェンジ!」
『ウラ!ウラ!ウラギリンジョウ!ドン!ウラシルバー!』
「ど、ドンウラシルバー!?えっと……あっこいつ自分が作ったアイテムだ!」
「熱海常夏は僕から話を通して君に協力させた、これでイミタシオへの借りは返したよ」
ユニバース戦士達が迎え撃っているなか、遂にさくらから連絡が届く。
「さて……僕の役目はここまでのようだ、影武者、コピー役のテストにしてはスッキリ出来たよ、後は君達の物語だ」
サクラが撤退していくと、入れ違いに
時空の渦からさくらが着地して急ブレーキ。
さくらが止まったことに合わせてシエル、ベビー、マゼンタ達も動きを止める。
数を確認しながら一人ずつ携帯を渡していく、なんだかんだ戦隊の変身アイテムといえば携帯というのはたくっちスノーからみっちり叩き込まれて定着した、その上で時代に合わせてタブレット端末型、少々デカいが実用性もあるので問題はなし。
まあ、これが開発に時間のかかった理由の1つでもあるが。
「皆さん遅れてすみませんでした!ちょっと気合入れてたら楽しくなっちゃって……」
「ちゃんと全員分作ったんだよな?」
「量産に関しては相田さんに全面的に任せましたので不備はないかと、マゼンタさん、ベビーさん、シエルさん……そして五人目は貴方です、レッドさん」
「オレが?……だが、エレボス細胞が殆ど存在しない、男の体じゃないオレでは……」
「いいえ貴方はこの姿でヒーローになってください、それがおばあちゃんの為にもなりますから、夢なんですよね?」
「どうしてそれを……!?」
かすみがさくらからタブレットを受け取ると、100年も昔の懐かしい思い出が蘇る。
まだエレボスに感染していなかった頃、かすみは病院のベッドから見える景色を眺めることしか出来なかったが……その先に希望なんてものはなかった。
◇
「姉さん、花を持ってこないでくれよ」
「どうして?世の中でお見舞いや祝いにも使える特別な品がフルーツと花よ」
「私は花を見たくない、命を繋げられるのはほんの短い期間……それが過ぎれば醜く朽ちて散っていく、特に桜はそうだ、まるで象徴のように言われているが目立つのは春、それも満開という短い間のみ……」
「そうね、ベストコンディションを常に求められる……さくらって私達が思っている以上に頑張っている……なのに報われてる感じがしないと」
「……それでも桜は嫌いじゃない、その一瞬で数多くの人々を魅了させて元気づけてくれる、私は桜になりたい、ただし春だけじゃない……常に最高潮でどんな時でも人々の救いになる、そんな人間になりたかった」
「まるでヒーローみたいな発想ね、でもとても立派よ」
「身体には見合ってないがな」
「約束する、私があなたを桜にする、どんなに時間をかけても貴方を春を越えても咲き続ける花に変える、人に寄り添い明日へと導く鉄の花、辛いことがあったらこの花を私と思って」
◇
あの時あやめに与えられた花はゴクレッドになって100年経っても未だにかすみの片手で咲き続けていた、エレボス細胞の影響だろうか?
まだ自分は咲き続けられる、どうやらまた桜に助けられたようだ。
タブレットにあの時の花を差し込んで、さくらの頭を撫でる。
「ありがとう、さくら……オレはまだヒーローになれる、桜になれる!」
「なりましょうレッドさん、レッドを越えるピンク……満開の桜に!」
「おいさくら、変身する時の掛け声は決めているんだろうな?」
「えっシエルちゃんそれいる?」
「ヒーローとして必要な行為だ、散々たくっちスノー先生に教え込まれただろ」
「もちろん決めてありますよ!私に合わせて桜の花を描くようにスワイプして叫んでください!」
『桜花継承!!』【満開!天晴桃ノ園!シュンヨウジャー!ピンクナンバーワン!ツー!スリー!フォー!ファイブ!】
掛け声に合わせてスワイプすると桜吹雪と共に見た目が変化して全員ピンク色だが見た目を各自の雰囲気に合わせてアレンジした特殊な姿になる。
マガイモノ成分を利用したコバルトとexeの共同制作のため決まったスーツの為、使用者によって見た目が即座に変化する仕組みになっている。
「ピンク全開!舞い踊る花弁!シュンヨウ……ブロッサム!!」
「頭脳明快!吹き揺れる春風……シュンヨウローレンス!!」
「ときめき満点!藍に生きる伴侶!シュンヨウキャロル!」
「エネルギー全開!決して朽ちない無敵の大樹!シュンヨウマゼンタ!!」
「想いは不滅……赤から桃へと原点回帰!ゴクレッド改め!シュンヨウエレボス!」
「想いが満開し勇気の桜が咲き誇る!桜花戦隊!!」
『シュンヨウジャー!!』
今ここに全員ピンク色全員女性の戦隊ヒーローが誕生した。
どのユニバース戦士とも関係ないが強い想いを感じるその姿を巡やマーベラスは眺めていた、
「へっ、最高やでお前ら……まさか本当にやってまうとはなあ!レッドを越えるピンク!」
「俺の方もようやく見つけた、この世界の宝……ゴクレンジャーの大いなる力」
「ってそれゴクレンジャーのレンジャーキーやん!?ちゃっかりしとんなぁ海賊は……」
そして、たくっちスノーとexeも降り立ってゴーカイガレオンの上でさくらの様子を眺める。
「ええんか?俺らの可愛い教え子の晴れ舞台やで」
「そんなことになったのは遠からず僕の責任だ、ただでさえ桃の園にも情けで残してもらったのにこの真実じゃ僕は会いに行く資格すらない」
「それで勝手に出てったら俺もさくらも怒るで」
「分かってる、今の僕は教師だ……今僕がさくら君に出来るのは……!!」
「たくっちスノー先生!オリジナルは貴方が責任を持ってなんとかしてください!その代わり残りの邪魔者は全員私達がブッ潰します!!」
「わかった!!さくら君ありがとう!!黒影の前にその怪物だがそいつはゴーバスターズのダンガンロイドを元にしている!エレボス細胞が高度に含まれている!」
「了解!皆さんいきますよ!」
「待ったさくら……生身でいいのか?我々は」
「はい、なんだかんだ言ってもこれがしっくりきますし」
「ああ、そうだなっ!!」
シュンヨウジャーは一斉に飛び出して怪人を各々の得意技で蹂躙していく。
その最中にも黒影からどこからともなくメッセージがテレパシーのように聞こえてくる。
「結果的にシュンヨウジャーが完成した、
時空ヒーローが増えたことになるね」
「ゴクグリーンの殺害は?」
「
はじまりの書には影響を及ぼさない、前にも言ったけど俺のやること全てが秩序だ、俺達監理局はバランスを取るための組織で世界の為には合法的に他所から見たら悪と思われることも多い行為も行わなくてはならない、むしろたくっちスノーがグリーンを殺してくれると思ったんだけど」
「……お前、僕が善人になるって言ったの忘れた?」
「そんなことはどうでもいいよ、結果的に俺のおかげで桃の園世界も更に成長して良くなっていくし」
「いったい何をしたの?時空跳躍学は相田コバルトが発見したしエレボス細胞の研究も殆ど……いやそうか」
黒影にはちっぽけな悪意すらない、エゴが強すぎて一周回ってめちゃくちゃ自分本位なのに大真面目に誰かの為と言う。
ゴクグリーンに恨みはない、嫌いじゃない。
かといって仕方なく殺したわけでもない、ただ単に興味がないだけなのだ、自分や世界の為になって監理局を助けるために誰が死んだり壊れたりしても代わりさえあればいいと思っている。
そう、あの怪人たちやパラレルワールドの自分自身さえ使い潰しているのがそう。
問題は自分はそういう奴で許されるのは自分が誰よりも一番で逆らえないからと自覚している、トップであることは理解しているからだ。
――ゆえに、足元を掬われることになる。
(そうか……多分あいつは僕ら5人のことも面白い事をしてくれる手足にしか思ってない、それも外れたら義足義手にすればいいだけのパーツ扱い、でもそれが普通だと想ってる、まるで非常に贅沢な環境で育ってるやつみたいだ……どんな人生送ってきたんだコイツ)
「ティー……どうする?」
「あのさ、exe……さくら君でもここまでやったんだ、まだ空論上だけどやらなくちゃいけないことがある」
「そうか、オレ達はあいつらに勇気を与えたな……それで、いつ行う?」
「近いうち絶対だ!少なくとも分かってることは……炭さんの未来より先に!さくら君がゴクレンジャーを越えて新しいピンク戦隊を作ったんだ、こっちだってやってやる!目標は『黒影を必要としない時空監理局』だ!!」
「真・桜花一拳!!」
強烈なアッパーカットで怪人をぶっ飛ばすさくら、はぐれ戦隊のスペックから200倍も差がある想定だ。
この様子なら彼女たちも問題はないだろう。
「んで実際だティー、メイが意識を向けてないだけで何も解決してない問題はどれだけある?」
「うーん山程ある、これを解決するためには……やっぱりまださくら君に頼っちゃう形かもね」
「そうだな、オレも定期的に記憶共有しているがむしろオレ達は事業の中で助けられてばかりだ」
最終更新:2025年08月06日 22:46