ミリオン×ショック

たくっちスノー「なんかさ、たまにカードゲームとかで世界の命運とかかけるやつ。」

たくっちスノー「まぁ俺好きだけどね、そういうキッズ的なの。」

たくっちスノー「今日話すのは、そういう感じ……のようでちょっと変な世界に行った時の話だ。」

【パート4】
『ミリオン×ショック』


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たくっちスノー時空の渦を超えて、1つの世界に降り立つ。
そこはかなり文明が進化した色鮮やかなネオン一色の街並みだった。

たくっちスノー「おーすっげー!サイバーパンクってやつか、こういう所行ってみたかったんだよな!」

たくっちスノーが街に降りて周りを見ていると、少年達がタブレットでゲームをしているのが見えた。

「行くぞ!俺は手札から【幸運の百円玉】発動!今日1日百円玉を拾った数×1000円を俺の通帳に追加する!」

たくっちスノー「おーいおいおい、何よそれ。」

「え?何って、ミリオンバトラーに決まってるだろ。」


………その後、たくっちスノーミリオンバトラーについて色々教えてもらった。
ミリオンバトラーとはこの世界で流行っているデジタルカードゲームで、なんとリアルマネーがそのまま自分のライフポイントとなるのだ。

お金を増やしたり、相手のものを減らしたりする様々なカードで競い合うものらしい。
そして、ミリオンバトラーにおけるライフ……つまり所持金額こそがこの世界における偉さになるという。
もちろん、ミリオンバトラーに使うお金は実際に使用するので頻繁に増えたり減ったりする。



たくっちスノー「なるほどね、どっかに初期デッキとか売ってないかな?」

………

たくっちスノーもまたミリオンバトラー入りタブレットを手に入れて、様々な手段でカードを手に入れた。

たくっちスノー「初期マネーは10万円か……多いっちゃ多いけど、なんか心持たないな………」

たくっちスノー「ま、それを対戦で増やせってことだろうな………あ、おーい!」

「っ!?」

たくっちスノーは対戦しようと近くの女の子に声をかけたら、突然逃げ出してしまう。

たくっちスノー「あ、おい!!」

たくっちスノーから逃げ切れるはずもなく、すぐ目の前に移動する。

たくっちスノー「逃げられるのは慣れてるけど唐突は酷くない?」

「ひっ!?」

………



たくっちスノーは女の子を連れて、ひとまず喫茶店で話を聞く。

たくっちスノー「へー、ミリオンバトラーで1文無しにねぇ……あやかさんだっけ?」

あやか「うん……入れるように勧められて、気がついたらこの金額に………」

たくっちスノー「2円……おいしい棒すら買えん金額だ………」

この世界はミリオンバトラーの強さと金額で決まる、勝負事となれば勝者敗者は自然と生まれ……それが金額なら露骨に差が出てしまう。

たくっちスノー「2円じゃ勝負をするのも躊躇うよな………」

あやかのデッキを確認したが、素人目のたくっちスノーでも問題があるようには感じられない完成されたデッキだった。

たくっちスノー(恐らくこういうのは雑魚狩り……強豪かなんかにカモられて身ぐるみ剥がされた感じか。)

たくっちスノー「災難だったな、俺の5万円分けてやるよ。」

あやか「え?でも……」

たくっちスノー「へーきへーき、俺のデッキはそんなに金なくても回せるし(この世界に長居はしないしな)。」

あやか「す、すみません……」

………

たくっちスノーはあやかに5万円と喫茶店での代金を渡して別れた後、軽く稼ぐためにフリー対戦を転々としていた。

たくっちスノー「魔法カード『連帯保証人』を発動、俺の借金カウンターをお前の通帳に移す!」

対戦相手「そんなのありかよぉおおお!!?」

たくっちスノーは借金の押し付け、踏み倒し、株などのいやらしいカードで連戦連勝を繰り返し、あっという間に50万のマネーを手にした。
カード効果で相手を抑えて苦しめるいやらしい戦法を得意とするたくっちスノーは、この世界の住民から見ればお金を削り取る悪魔のように見えた。

たくっちスノー「へっ!チマチマ稼ぐよりこうして相手をドン底に陥れながら大儲けするのはたまらないね!」

たくっちスノー「そのお金でパック剥いて高レアカードを引くのも最高だ!俺このゲーム好きになっちゃうかも。」


「おい!アンタ!ミリオンバトラーしなよ、また相手してやるってんだよ!」

「や、やめてください!」

たくっちスノー「ん?」

好調子のたくっちスノーが歩いていると、あやかが別の女に絡まれていた。

たくっちスノー(理解、あいつあの女にカモられてたわけね?)


たくっちスノー「なぁ!」




「ああ!?」

たくっちスノー「その子にあげた5万円、俺のなんだよね!」

たくっちスノー「その子から毟りとるって気なら初心者の俺相手してみろよ!50万円持ってるよ!」

あやか「あ、貴方さっきの………」

「ああ?上等だよ、先にあんたからむしり取ってやる!」

たくっちスノー「やってみな!」

あやか「あ、あの………」

たくっちスノーはあやかを掴んでいた女性から離して、あやかを後ろに回らせる……

たくっちスノー「大丈夫、俺強いから。」

あやかに優しく耳打ちして、たくっちスノーミリオンバトラーの準備を始める。


「そういやアンタ、名前聞いてなかったけど?」

たくっちスノー「俺に名前はない!たくっちスノーとでも呼べばいい!」

「アタシは金剛山セキ!」

たくっちスノー「賞金罰金ノルマはいくらでやる?俺いつも5万ルールだけど。」

ノルマとはゲーム開始時に行われる制度、ゲーム内でどれだけお金が変動したかを表すルール、プレイヤー内で決めた金額まで変動した場合に勝負が決まるミリオンバトラーの大事なルール。
例として5万ルールの場合は、どちらかが5万円分稼ぐと勝ち、5万円失えば負けということになる。

セキ「5万なんて張り合いないね、どうせやるんだ………5000万円でどうだ?」

たくっちスノー「5000万!?んな金持ってねーよ!?」

たくっちスノーは慎重にあやかの方を振り向きながら言う

たくっちスノー「………念の為聞くけどこれで所持金マイナスになったらどうなるわけ?」

あやか「それは………その、口では言えない………。」

たくっちスノー「………やべぇな。」

たくっちスノー「まぁ5000万ルール自体は受けて立つよ。」



たくっちスノー「アンタが後悔しないならな。」

セキ「後悔?ありえないな!アタシからやってやるよ!」

セキ「アタシはまず魔法カード『株価上昇』を発動!このタブレットに登録されている会社の株を全て上昇!」

セキ「そして、この状態で売買することで500万の稼ぎ!」

たくっちスノー「株!?そんなンあり!?」

あやか「セキさんは大手会社の株を沢山持ってて、それをミリオンバトラーに変換出来るの……!」

たくっちスノー「へー……株で一気に底上げってわけね……」


セキ「ほら、アンタの番よ。」

たくっちスノー「俺のターン!ドロー!」

たくっちスノー「要は相手にチマチマ借金押し付けても意味ないってことね!」

たくっちスノーは周りを見渡しながらカードを選ぶ。

たくっちスノー(株ってことは、アイツのデッキは会社を利用したビジネスマン系デッキ。)

たくっちスノー(だが、俺の通称破産デッキはあらゆるものを潰せるんだよね!)

たくっちスノー(ここは『バブル崩壊』で一気に株価を下げてもいいが、ここは……)

たくっちスノー「魔法カード!『ビッグ・プロジェクト』を発動!このカードは特定の企業にプロジェクトを立ち上げさせて活気を上げる!

たくっちスノー「食品会社ホクホクベーカリー、ビッグ・プロジェクト始動!」

セキ「甘いね!その会社の株も持ってるんだ!会社の勢いが増して、アタシは更に10万円獲得!」

セキ「もう負けを認める気になったかい!?」

たくっちスノー「なぁに、時期に分かるさ……俺のデッキは普通に稼がないのでね………」

セキ「アタシのターン!魔法カード『バブル発生の訪れ』発動!次のアタシのターンにバブル景気が訪れ、自動的に会社から5000万円支給されるわ! 」

たくっちスノー「バブルってそういうのじゃねーだろ!………てかあれ?5000万!?」

たくっちスノー「俺このターン返せなかったら負けじゃん!!」

あやか「で、出た!セキさんのバブルコンボ!」

セキ「もう終わりよ!精々足掻いてみなさい!ハッハッハっ!」


たくっちスノー「………でもそれ、次のターンにしっかりバブル景気だったらの場合だろ?」

セキ「え?」

たくっちスノー「俺のターン!!バブル景気が近いことにより、ホクホクベーカリーのビッグ・プロジェクトは95%まで完成し、数多くの会社とコンタクトも取れた!」

たくっちスノー「これなら充分だ!!」

たくっちスノー「アブノーマルカード発動!!」


セキ「あ……アブノーマルカード!?」

たくっちスノー「アブノーマルカードは魔法カードと違い1ターンに何枚でも発動できるが、その分俺や世界にリスクが伴うカード達だ!」

たくっちスノー「さぁ行くぜ!!」

たくっちスノー「アブノーマルカード『資金持ち逃げ事件』を発動!このカードはクズ社員にプロジェクトに使用される大金を持ち逃げさせるカード!!」

たくっちスノー「この効果で俺は1000万円獲得!」

セキ「もう遅いわ!1000万円程度稼いだところで………」

たくっちスノー「俺の狙いは金じゃない……なぁ?会社の運命を傾けるような一大プロジェクトがパァになったらどうなると思う?」

セキ「ま、まさか………!!」

たくっちスノー「そう!!この効果によりホクホクベーカリー、破産!!」

たくっちスノー「こんな大事件が起きればバブル所じゃねぇぞ!」

セキ「ぐっ………!?アタシのバブルコンボが……!?」


たくっちスノー「おっとまだだぜ?」

セキ「え?」

たくっちスノー「まだ俺はエースカードを出してない!」

あやか「え、エースカード……!?」

たくっちスノー「最強のアブノーマルカード発動!『狂社員の逆襲』!」

たくっちスノー「この世界に存在するブラック企業を3つ指定して効果発動!」

たくっちスノー「じゃあそうだな………大澤カンパニーと自動車の丸山とまわ寿司で!」

あやか「ぜ、全部名前だけは聞いたことあるレベルの大企業………アレが全部ブラック企業!?」

セキ「う、嘘よそんなの!」

たくっちスノー「それはどうかな?このカードは恐ろしくてね………指定したカードが本当にブラック企業なら……」

たくっちスノー「虐げられた奴隷社員を暴走させ、会社を内部崩壊させる!!」

たくっちスノー「そうらまず1個目!!」

たくっちスノーが、指を鳴らすと………株価が真っ逆さまに落ちていって、やがて販売停止になった。

たくっちスノー「2個目、3個目!!」

こうして、このターンだけで現実に4つの会社が潰れることになり………

たくっちスノー「あ、俺別にこの会社と契約してないけど、そういう人たちへのダメージはでかいんじゃないかな?」

セキ「あ、あ、ああ………ああああああああああああああ!!!?」

セキ「損害賠償請求32億ううううううううううう!!?」

たくっちスノー「ほい、5000万以上お金が減ったからお前の負け!!」


…………

あやか「……あ、あの、ありがとうございました………」

たくっちスノー「いいのいいの!ああいう悪いヤツ見てると痛い目合わせたくてね。」

たくっちスノー「………カード効果とはいえやりすぎちまったかもしれんけど。」

あやか「はい、これから大変かもしれませんけど………地道にコツコツ稼いで、普通に生きます!」

たくっちスノー「ああ!ゲームで金稼ぎなんて馬鹿らしいわな!」


たくっちスノーは土産としてミリオンバトラーの入ったタブレットを持ち帰り、悠々と去っていった……




一方同じ頃世界で数多くの人間が失業し、同じく賠償金スパイラルに囚われた人々が数百万人に到達し、ミリオンバトラーは禁止となってしまったことをたくっちスノーは知らない。
最終更新:2022年02月05日 17:26