『第一の店 燃える!大工藤』
この男、
たくっちスノー。
ある事情あり、あらゆる世界を一人旅しているのだが…早くも問題に差し掛かる.
たくっちスノー「サイフの中、もう20
ジーカしかねぇ…」
『ジーカ』
全世界共通の紙幣であり、並行世界を旅するうえで無くてはならない大事なもの
稼ぐ手段こそそれなりにあるが…
たくっちスノー「……仕方ない、世界を越えながらバイトするしかない!」
…
たくっちスノーはバイト誌を読む時は決まって「
バックワーク」と決めている。
この雑誌は条件が厳しい、店が異色だったりとワケアリだったり裏バイトが多いが、その分報酬も多く貰え、一日バイトも多いのだ。
たくっちスノー「つっても、そんな都合よく俺に合うバイトはあるものか…おっ」
『大工藤』
仕事内容:木を加工するだけ
報酬:一つに付き四千ジーカ
たくっちスノー「木を加工する大工のバイト!しかも一本やるだけで四千ジーカ!」
たくっちスノー「十本で四万ジーカだ!やらない選択肢はない!!」
かくして、たくっちスノーは即座にバイト先に向かった……
~大工藤~
工房内では、木材が工房内胃のあちこちの機械で運ばれて家具になっているのが見えた
たくっちスノー「あの雑誌に載っていたバイト先にしてはマトモだな……」
たくっちスノー「で、俺は勤務時間まで木材加工すればいいと…」
たくっちスノー(…ん?機械が自動で家具にするなら、木材も人の手を借りる事はないのでは?)
たくっちスノー(でもノコギリとかあるしそこは人力なんだよな、なんで……)
と、考えている間もたくっちスノーの元に赤色の原木がカゴに乗せて運ばれてくる。
たくっちスノー「ま、さっさとコイツを四角く加工して次の旅代を多くでも稼ぐと……」
たくっちスノーはカゴに入っている原木に手をつけ……
たくっちスノー「あっちい!!!!」
ようとしたが、原木から突然高熱を感じて咄嗟に手を離してしまう。
たくっちスノー「うわっ、びっくりした………この木は一体……」
たくっちスノーは作業を始める前に植物図鑑を持ってきて原木を確認する。
たくっちスノー「……『ネッシュガー』?」
たくっちスノー「気温四十度の高温地帯で育つ原木は熱を溜め込み……」
たくっちスノー「表面だけでも炎の熱以上、か」
たくっちスノー「……まぁ、これぐらいの暑さなら
マガイモノの俺なら耐えられるが……」
たくっちスノー「……ちゃんと斬れるノコギリなんだろうな、コレ」
そう言うと、たくっちスノーは自分で用意したものをネッシュガーに近付けるが、簡単に溶ける。
改めて工房に置いてあるノコギリを取り出し、今度はしっかりと持ち構え、いざ切断を試みるが……
たくっちスノー「あちぃっての!!」
たくっちスノーはすぐさま距離を取る。
たくっちスノー「こりゃ加工どころか斬ることすら至難の業だぞ……やっぱあの雑誌に載ってるだけはありろくでもないバイトだな……」
たくっちスノー(………待てよ?要はコイツの熱が溜まってるから使いにくいんだ、水かなんかで冷やせば……)
たくっちスノー「よし……」
たくっちスノーは背中からポンプを形成し、一気に吐き出す!
一気に水をかけたことでネッシュガーから高濃度の水蒸気が飛び出し……それを払った先には……
潰れて小さくなったネッシュガーがあった、恐らくこれでは木材として使用することは出来ないだろう。
たくっちスノー「くっ……どうしても熱いまま斬らなきゃダメってわけか」
たくっちスノー「それにしてもこの原木、どこで持ってきたんだ……ネットで調べても『ネッシュガーの使い道』なんて名前見たことないし……」
たくっちスノー「……ま、いっか!」
………
たくっちスノー「ぜぇぜぇ……ようやく切れた……」
バイト開始から数時間経過し、ようやくたくっちスノーはネッシュガーを5本ほど木材に加工する事が出来た。
だが……このバイトはまだこれで終わらない事に気付いた。
この加工したネッシュガーの木材を……加工機の所まで運ばなくてはならないのだが……
たくっちスノー「あんな熱いもの、持つのもキツイんだけど……しかもコレ1人で?」
たくっちスノー「めんどくせー……」
たくっちスノーはなんとか木材を抱えて、手が焼ける音がしながら機械に向かって足を運ぶ。
たくっちスノー「ここまで来ると熱よりも重さの方がキツくなってくるな………あーー!!よいしょ!!」
たくっちスノーはどうにか加工機のあるベルトコンベアまで1本運び出し、ゆっくりと流れていく。
中を通過して、あんなに大きな角材がたった一つの椅子や腰掛けに変わっていく。
たくっちスノー「………あんだけ苦労して椅子程度か…………」
たくっちスノー「しかも……なんかこの工房、暑くなってきた……ネッシュガーの熱気のせいだろうか。」
たくっちスノーは横を見て、今も尚用意されていく原木を見る。
たくっちスノー「普通の人間だったら熱中症だな………」
たくっちスノー「ああでもちょっと息苦しい………換気しよ………」
窓を開け、溜まっていた熱気を外に逃がすと、周囲の熱がガラスにまとって瞬く間に曇り、即座に冷たい空気が中に入り込んでくる。
たくっちスノー「うっ寒っ!寒暖差激しすぎだろこの職場!!」
たくっちスノー(とても人を使わないとできないような仕事の割に、このアツアツの木に触れないとならず、窓を開けると冷気が飛ぶ………)
たくっちスノー「火傷と風邪のダブルコンボ……そりゃ一日バイトも頼むくらいワケありだよな」
そもそも、『たった一日だけでも仕事して報酬になる』仕事など怪しい以外の何物でもないことは禁句である。
…………
結局、一日バイト終了の時間が来てしまい、たくっちスノーはさっきの5本までしか斬ることが出来ずに終わってしまった。
たくっちスノー「ハァー………1本四千ジーカで、5本だから今日の収入は二万」
たくっちスノー「そこからこの世界のホテル代が千二百ジーカで、明日には別世界に行くから………」
たくっちスノー「………あまり豪勢には使えないか、どうしよう」
たくっちスノー「まぁ食ってから考えるか」
こういう困った時は、とりあえず飯屋に行くことにしている。
彼は特殊な体質の為、睡眠も食事も必要ないのだが最低限の娯楽として何かしら食べているのだ。
節約の為夜中の1食のみであるが。
たくっちスノー「めっちゃ暑かったり寒かったりしたからあんま体温変わるもの食いたくないんだよな……」
たくっちスノー「お」
大工藤をちょっと歩いた先に、小さな居酒屋を発見した。
たくっちスノー「居酒屋か……そういえば、アイツらにはいつもガキ扱いされてこういうのには入ったこと無かったな」
たくっちスノー「よし、今日はここで食うか」
行き先を決め、足を運ぶ……
ーーーーーー
〜居酒屋 花のみち〜
既に夜中に入りつつあることもあり、居酒屋の中は大いに賑わっていた。
たくっちスノー「居酒屋ってこんな風になってんのか」
たくっちスノー「でもどうするか……居酒屋入ったはいいが、酒無しでつまみ食うこともな」
たくっちスノーは極端に酒が飲めなかった、1口するだけで気持ち悪くなり、立つこともままならなくなる程だ。
たくっちスノー「単品でいけそうなものは……あっ」
たくっちスノーがメニューを確認していると、焼き鳥があった。
たくっちスノー「焼き鳥ならそのままでもいけるしな……焼き鳥適当に10本!」
……
しばらく経つと、注文した焼き鳥の束が置かれる。
『今日のメニュー』
焼き鳥(塩)
種類
- もも肉
- ねぎま
- レバー・皮
- つくね
- ぼんじり
- 手羽先
たくっちスノー「うんまい!これマジで美味いな!」
たくっちスノー「このタレがまた絶妙でいくらでも食べられそうだ!」
10本の串がどんどん無くなっていく、食べることはいくらでも出来るが、流石にやりすぎると今日稼いだ分が無駄になるのでやめておくことにした。
たくっちスノー「相場相場……1本二百ジーカか、こういう店にしては結構安値だな。」
たくっちスノー「世界によっては、あちこちに見えるビールジョッキ1杯分で1000ジーカはぼったくってくる店もあるのにな。」
他世界人はぼったくり被害にあうのも珍しくない。
日本円やドルで500円の弁当でも、ジーカではおよそ3倍の値段で売られているような所も普通にあるのだ。
たくっちスノー「この世界はそういうのが無いみたいでよかった……」
たくっちスノー「よし、そろそろ引き上げるか、明日もまた別世界の列車乗って……そんでまた一日バイトしないといけないからな。」
たくっちスノーは2000ジーカ支払い、店を出て予約していたホテルに入っていく………
今日も一日、よくがんばりました
ーーーーーーー
本日の手当
一日バイト代 20000ジーカ
食費 -2000ジーカ
ホテル代 -1200ジーカ
明日の旅行に必要なジーカ 30000ジーカ
ーーーーーーーー
最終更新:2022年12月26日 07:22