この男、
たくっちスノー。
ある事情あり、あらゆる世界を一人旅しているのだが、常に金欠問題に悩まされている。
その為、一日バイトで生計を立てているのだ。
最近は外食を控えて自炊を出来るようにする為、飲食系の一日バイトを優先している。
たくっちスノー「ご飯系…ご飯系…あった!これよさそうだな」
『回転カレー やぶさか』
仕事内容:カレーのトッピング
報酬:一つ10
ジーカ
たくっちスノー「一つ10ジーカ…でもトッピングくらい一秒で何個もできるし、大した問題でもないな」
たくっちスノー「…でも回転カレーってなんだ?」
たくっちスノーは疑問を残しながらも、バイト先に向かう…
…
たくっちスノー「すげえな」
たくっちスノー「まさか文字通りの物が出てくるとは思わなかったんだけど」
バイト先の『回転カレー屋』では、まるで回転寿司のようにレーンの上に隙間なくカレーライスが流れていた。
レーンの始めと終わりには厨房に続く穴があった。
厨房に行ってみると、奥にひたすら手作業でライスを皿に乗せてはレーンに運ぶ人が居て、その先の機械から自動でカレールーが流し込まれているのが見えた
たくっちスノー(ライスの方も自動化しろよ……)
たくっちスノー「おっと、俺の方はトッピングを乗せればいいんだったな」
と、ルーの機械の隣に行ってみたが……
たくっちスノー「そうだ……カレーってトッピングだけは山ほどあるんだよな、まぁほぼ流れ作業だし、回転寿司風の店なら次何流せばいいかも書いてあるだろ」
と、話している暇もなくカレーライスが目の前に流れてくる。
たくっちスノー「この部分はハンバーグカレーだから、えーとハンバーグだな」
たくっちスノーは周囲の棚を開けてトッピングを確認し、肉類を発見するが……
たくっちスノー「少し冷たい……これ冷凍食品じゃないだろうな?」
たくっちスノー「まあ加熱すれば大丈夫か?とりあえず乗せてみよう」
たくっちスノーはハンバーグを乗せた後、カレーの流れに乗ってきた他のトッピングも適当に乗せていく。
流れ作業の為少しの無駄も許されない、今回のバイトは結構ハードだ。
たくっちスノー「……納豆、う、パックから開けるの面倒だな」
たくっちスノー「その次はナスか、まぁバーッと並べておけば問題なし……」
だがその時問題が起きた。
たくっちスノー「おっ、次はトッピングの定番カツカレーか……えーと、カツはどこに」
たくっちスノー「えっ」
カツの棚を開けたのはいい、だが……
たくっちスノー「どれだよ……今入れるべきヤツ………」
そもそも、ただカツといっても数多くの種類がある。
チキンカツトンカツヒレカツハムカツ カレーにはエビカツやホタテクリームカツもある。
更には外面上の判別はほぼ不可能、ただカツだけを並べて中身を当てられるような人間が居たらそれは大したものだ。
たくっちスノー「今要求されてんのはトンカツだよな……この中のどれがトンカツだよ!」
たくっちスノー「いや待てよ……今までのそれがそのカツだったって確信はあるのか?」
たくっちスノー「もしかして……トンカツが入ってたカレーとされるカレーも、実は別のカツだったんじゃないのか?(エビとかなら流石に分かるが)」
たくっちスノー「……」
たくっちスノーは心を無にしてとりあえずカツを置いた。
……
その後食ってみた。
エビとクリーム以外は何がなんなのか分からなかった。
たくっちスノー「もういいや肉なんてどれも同じだ」
自炊を目指しているとは思えない思考である。
たくっちスノー「あ、なんか注文専用レーンがある、やっぱそこも回転寿司風なんだな」
たくっちスノー「ここにサラダとかジュースとか乗っければいいんだな」
たくっちスノーは後ろのサラダバーとドリンクバーからそれぞれ調達して注文専用に配達させる。
たくっちスノー「いや……厨房にバー置いてどうすんだよ、絶対セルフにして向こうに置いた方が早いだろ……」
たくっちスノー「でも人件費節約の為にこういう形式にしたのかもしれないし、まぁいいか」
そしてたくっちスノーはもう何分もトッピングを載せていった。……
たくっちスノー「よし、こんなもんか
たくっちスノー「あとは流すだけ……あれ?」
たくっちスノーは黙々と手元しか見ず作業していた為、今現在まで気付いてなかったが……
ライスしか流れてきてない。
たくっちスノー「あ!?ただのご飯とおかずになってるじゃねーか!!どうなってんの!?」
たくっちスノーは1度すぐ隣のカレーを出す機械を確認する……
たくっちスノー「おい、大丈夫か?」
1度叩いて見たり、揺らしてみたが一向にカレーが出てこない。
在庫切れも考えたがそもそもどこから補充してるのかも分からなかった。
たくっちスノー(………構造自体は単純そうだし、1回バラして直してみるか?)
たくっちスノー(いやでもまだ店やってるし……つってもこのままじゃカレーの無いカレー屋になるわけだが)
たくっちスノー「ちょっと蓋開けるだけならいいかな……念の為配線チェックだ」
たくっちスノーはざっと表面を開けてみると……
たくっちスノー「うわ、よく見たらこれ電源ケーブルないぞ……こりゃ買い換えないとダメだな」
たくっちスノー「ん?中のこれは……お湯を沸かすポットみたいなヤツじゃないか」
たくっちスノー「ということは……このボタン……なんか嫌な予感してきたぞ」
たくっちスノーに寒気が走る。
そんな事も気に留めず機械は動作を開始する。
つっかえ棒がボタンを押すと、内部の機械からお湯が出て、内部でカッターが動き、排出口が2つ開く、そのうちの一つはカレーが出てきた方だ。
たくっちスノーはすぐさまもう片方の排出口の先を見た……ゴミ箱があり、見覚えのある袋があった。
たくっちスノー「………ピーモンドカレーの袋」
たくっちスノー「これただの自動レトルト作成機じゃねーか!!!」
たくっちスノー「よそってるライスも妙に冷たいから多分パックご飯だし、冷凍・冷凍・冷凍の3コンボじゃねぇか!!」
たくっちスノー「よくこんなんで店としてやっていこうと……」
たくっちスノー「これレトルトカレーから作ってたなら在庫ゼロだから詰みじゃね?」
結局カレーが無くなった為レーンをおかず付きライスが埋め尽くすという異常事態となり、バイトは終了した。
たくっちスノー「あーあ、バイト代はたったの4500ジーカか……」
たくっちスノー「あんなチマチマとした仕事を一日でコレなんだからまあいい方なんだが酷い店だったな。」
たくっちスノー「しかも全部レトルト、レトルト、レトルトだから何のノウハウも得られなかった……」
たくっちスノー「あーーー仕方ない、今日も外食で済ませるかな…………今日の店はどこにするか、出来ればカレー以外で。」
たくっちスノーが周りを見ると、定食屋を見つける。
たくっちスノー「………カツかぁ、まぁカレーに比べたらいい方か」
〜かつのツーカーホーム〜
たくっちスノー「ここだと……カツ丼かな、どれも同じだろうが………」
たくっちスノー「ん?」
たくっちスノーはメニューを見てみると、食べ比べカツ丼セットなるものがあった。
牛・豚・鶏の3種類のカツが全て乗った豪勢なものらしい。
たくっちスノー「食べ比べねぇ……まぁ肉の違いも分からない俺には丁度いいか、これ食べよう。」
………
しばらく待つと……
たくっちスノー「うおっ!!」
そこにあったのはカツ丼三個分ぐらいに見えるビッグサイズな料理であった。
たくっちスノー「た……食べ比べって、わざわざこのサイズにしなくてもよくないか」
たくっちスノー「まあいいか、俺だったら余裕で食えるサイズだ」
モッモッモッ
たくっちスノー「カツでっか………そんでもって衣分厚い」
たくっちスノー「そんでもって………」
たくっちスノー「結局肉の味が分からない、なんだろう、プロには分かるのかな、牛とか豚とかの違い。」
たくっちスノーは____とてつもない貧乏舌だった。
だがボリュームはあったし、シンプルにカツが揚げたてで美味しかったので普通に満足した。
マガイモノはどれだけでも食べられる体質の為、カツ丼3杯分であってもあっという間に平らげていった。
たくっちスノー「うん!予算はかかるがこういう巨大飯はいいな………」
「はああああ!!!?3500ジーカ!?ふざけんな、ぼったくりにも程があるだろ!!」
「あ!?ちっちゃくマイナス10倍セールとか着いてやがる!詐欺だ詐欺だこの店!ぶっ殺すぞ!!」
今日も一日、よくがんばりました。
本日の手当
一日バイト代 4500ジーカ
食費 -3500ジーカ
最終更新:2022年12月29日 19:06