ファンタジー潰すゾ!

 アニメ「前回までのシオンさん」が急ピッチというにはあまりにも新幹線並みのペースを要求されるのに加えて新しいライバル雑誌が増えてたくっちスノーの脳みそはめちゃくちゃ、脳みそないけど。
 それに加えて作者一同集まった会にて。

「ほ……本当に何があったのか説明してくれるんですよね?」

「ああするよ、編集部並びに時空監理局副局長である自分すら知らなかった黒影独断の事実だからな」

「当然だふざけた話だろう……今週マリアとアリアが突如打ち切られたかと思えば、今度は看板クラスのザンザザーンが打ち切られただと?」

 松山が他の世界から連れてきた仲間とアクアの金でオークションを勝ち取りザンザザーンの世界のメイドウィン権を確保した。
 その後……ミリィとたくっちスノーの推測通り、ザンザザーンが今週打ち切り発表された。
 今回はネオジャンプの陣営だけじゃない、新しく連載される3人の作者も集まっている。

「怪獣キングダムのテラノサウルス先生、黒い鳩の馬淵先生、重電株式会社の金剛マッスル先生も無関係な話じゃないから聞いて欲しい」

 山田グレンの正体、アニメ化シオンさんとミリィが調べた全ての事を作者達にも話すと当然ながら動揺が隠せなかったし、リヴァイアサンですら驚きの顔をしていた、何よりも確信を得るために犠牲にしてしまったザンザザーンに……たくっちスノーはドロドロに溶けそうな勢いで頭を沈めて土下座する。

「すまない……すまないメノン・タケグチ先生!!事実を確かめるためとは言え貴方の漫画を勝手な理由で消してしまった……折角丹精込めて作った貴方の作品でもあるのに!!」

「……ネオジャンプ偽装の件も含めて編集部達は知らなかったって、そこまで編集長が独断で動いて5人が止められなかったという点では非はあるよね」

「それを言われるとオレも何も言えなくなるな」

「でも貴方達はずっと私達や漫画を見てくれたし……本当に知らなかったと私達に約束できますか?」

「約束とか以前に!メイドウィンを増やすのが目的なら最初からネオジャンプとか回りくどい手を使わずにそう言えよってなる!!こっちも結構ワクワクしてネオジャンプ作ってたんだ!!」

「……あっ、おい待ていたくっちスノー、あの馬鹿もネオジャンプ作る気はあったと思うゾ」

「ああ!?なんでいい切れるんだよ!?」

「ネオジャンプのマンガを利用して新しいメイドウィンを作りたい、けどネオジャンプで時空一番最初の共通雑誌にして市場を独占する気は無かったかと言われるとNOじゃねえか?アニメの件とかこれまでの事業とか見りゃ分かるでしょ」

「メイはただ、やりたいと思ったことをまとめてやっているだけということか……そのしわ寄せがオレ達に響いている!」

 これからのネオジャンプは暗雲が立ち込めてくる。
 面白いつまらないではなくメイドウィンのものになればそれだけで打ち切られてしまうので話が続くかも分からない、全員他人事ではないので話の作り方も考えていかなくては。
 これから打ち切られる4人もまた話を作る気はあるが、問題は新たに『週刊ファンタジー』が発売されたことである。

「これから先にはライバルがいる、これからはファンタジーとも比較されるし他に読むものがないからって読んでた連中はまとめて持ってかれる危険性もある」

「オンリーワンなだけでナンバーワンにはなれないってことだね、いずれ相手することになるとはいえ想定よりは早めだったな……」

 この手の物には敏感なポチは週刊ファンタジーの創刊号を既に入手していた、向こうも気合を入れているらしく宣伝チラシやCMも多く流している。
 この手に関してはプロである時空出版局に部があると言えるだろう。
 作者達はそもそも時空出版局とは何か?と思っている、時空にどこまでの組織があるのか把握しきれてないのでミリィが説明する。

時空新時代になるちょっと前くらいから専門職達が時空規模の企業を次々と作っていったんだ、警察官が集まったのが全時空特殊警察連盟、略して特盟……テレビ局とかは時空放送局を結成したし、ライターとかが集まったのが時空出版局ってわけ」

「時空監理局とは別なんですね」

「下手したらメイドウィン以上に目の敵にしてるからな自分の部下達、メイドウィンは目の上だから気に留められないけど他企業は格下……そんなんばっかだよ」

 そんな時空出版局が手を出した週刊ファンタジーを読んでみる、連載作品はネオジャンプと比べると少し少ないが不思議と読み応えがある。
 黒影の意向では全ての人達が楽しめるように世界観をバラバラにして色んなマンガを投稿させている、メイドウィンを増やすため、売り物の為にバラけていたのではないかと思うかもしれないが本気で楽しませるつもりでこの形にしている。
 一方ファンタジーは名前の通り漫画内の世界観を全てドラゴンファンタジー系統に統一、単にドラゴンファンタジーといっても異世界転生にサバイバルに王道の冒険譚から探偵モノ、モンスター育成に異種族の恋愛と飽きさせない幅広いラインナップ、ドラゴンファンタジー世界を実際に旅行して調査してきたとあり、漫画以外にも世界の見所や名物紹介ページまである。

「はっきり言って自分らにも勝てるポテンシャルの持ち主だな、めちゃくちゃ面白いぞこの雑誌」

「そこら辺はプロと右も左も分からなかった俺達との違いだね……このままじゃまずいね」

「つっても実際どこまで売れるかスよね」

「いやドラゴンファンタジーに絞ったのはいいアイデアだぞ?一番身近な異世界のイメージだし宣伝にもなっている、自分の世界とは無縁な存在を異世界として楽しむってのは理に適ってるしな」

 たくっちスノー達は冷静にファンタジーの内容を分析してネオジャンプをどうするか考えて真面目に検査する。
 しかしネオジャンプの場合は面白いつまらないではなくオークション加減で打ち切りが決まる。
 場合によってはファンタジーに移籍しても構わないと告げる、漫画家として大成出来るならそういう選択肢もありで咎める責任もない。
 自分達はあの善意モンスターすらろくにコントロール出来てないのだから。

「それにファンタジーだけじゃない、これから先2つ3つと新しい雑誌が生まれていくんだ、ジャンプ編集部だってそれは分かっているは……」

「たくっちスノー!またニュースだ!今度は他世界の一企業が時空規模出版を始めてる!」

「ファッ!?」

 時空ニュースでは流れてこないのでその世界の新聞を取り出して確認すると確かにある、一面を飾って載っているのは『月刊ギャラクシー』製作決定!
 遂に月刊誌まで登場してしまう、月1である以上少しは余裕があるがこちらはこれまた都合が変わってくる。
 月刊ギャラクシーの特集とは横で……その世界の大物漫画家が掲載決定を発表している!ベテラン作者の新連載はそれだけでアドバンテージになってしまう。
 これが時空に降臨したらマジでネオジャンプは市場独占どころかなんか最初に生まれただけで権威主張してるだけのやべーやつになってしまう。

「黒影に言うか?」

「バカ言え黒影に言ったら絶対ろくなことにならん!ファンタジー潰すゾ!とかですら済まないかもしれん!!」

とはいえネオジャンプは時空監理局の稼ぎ柱の一つ、このままではまずいとテコ入れを考えても一体どうテコ入れすればいいの?って話だった。
 編集長の黒影には絶対に伝えられない……ってやりたいが編集長である以上避けては通れないのでたくっちスノーから話をつけることに。

「しかしまさかあの漫画描いてたのが編集長だったなんて……いや描いてるのかな?」

「ペンを使ってないだけで描いてることに代わりはないんじゃなだろう、問題はあの出来のまま作って奴らが誤魔化していたことだ」

「俺たちも今後の振る舞い考えないとなぁ……今連載してるやつだっていつ終わらされるか分からんぞ?エメラルドゲームとか逆にオークションで売れるまで終わらせられないんじゃないのか?」

 ◇

「週刊ファンタジー、月刊ギャラクシー、コミックバンパイア、更には少年サンデーとマガジンの時空進出が発表、ラノベの方でも電撃が進出して新しく山吹文庫ってのが出たよ……どんどん時空進出していったよ黒影」

 分野を広げて調べていくとここまで時空規模雑誌が広がっていった。
 たくっちスノーもここが正念場というかコレ乗り越えられなかったら商売として終わりと言う目で黒影を見るが、黒影は全く動じていない。
 このままではネオジャンプは危機だというのに。


「たくっちスノー、本当に基本なんでも買うの?」

「……自分の場合は設定欲しいから特別だけど面白ければ大体買うよ、ただネオジャンプは個性もなくただ新人漫画並べただけだからこのままじゃ埋もれていくばかりだ」

「うーん、週刊ファンタジーはドラゴンファンタジーだけでここまでやったのか、ちょっとめんどくさいな」

「編集部直接潰すのは無しだからな?」

「君俺のことなんだと思ってるの……しかしこのままじゃ俺達の資金源にも関わるからね」

「ほんとそれ、ここの財布抱えてんの大体自分らだならな?……それでネオジャンプをどうすれば人気を維持できるか編集長様にも考えてもらおうと思ってね」

「うーーん、ファンタジーやギャラクシーの表紙でネオジャンプ売るとか?」

「それジャンプ以外でやったらいよいよ告訴モンだぞ……くっ、ザンザザーンの件があるから漫画では強く出れねえ!」

「それにしてもよくもまぁそんないっぱい出るね、ラノベもあるしギャラクシーって確か青年誌の予定でしょ?俺達でも少しは苦労したのに」

「そりゃ自分達は見切り発車で早く売っただけだからな、他はじっくり考えてんのアニメもそうだけど」

「本当にアニメシオンさん来年にしなきゃダメ?」

「本当に来月やりたいなら自分の手でやれアニメ舐めんな」

 結局前回までのシオンさんはたくっちスノーがネットで黒影のせいにして来年に延期することを発表していた、これはもう全部黒影に押し付けておけば自分達が足りない時間でめちゃくちゃなモノを作るよりはファンに喜ばれるだろうという苦渋の決断だ。
 今はネオジャンプをアップデートして対抗する方法を考えなくてはならない。

「ネオジャンプは今のままではダメだ!もう少し個性出さないと!自分達も大物漫画家をスカウトするんだ!尾田栄一郎先生とか秋元治先生レベルの……」

「よし分かった俺たちも新しい雑誌作ろう」

「話聞いてたか頭寒天野郎!!」

 たくっちスノーはどうしてもネオジャンプ以外の雑誌はやりたくなかった、好みの問題ではなくもう仕事が増えるのは嫌だということ作者を見つけたくないという気持ちで睨みつけて威圧する。

「絶対めんどくさいことになるぞ!!やだ!!もう持ち込み嫌だからな!どうせまた持ち込み手当たり次第持っていけと言うんだろ!ポチに言わせれば『チャットAIにフィルターかかってなかったらエロいことさせる』ぐらいに確実だ!」

「コーラを飲んだらゲップみたいなノリで凄い例え方したね、君段々ポチに染まってない?」

 なんだかんだポチは真っ当に仕事してもスケベ野郎なのは相変わらずだし、ミリィやEXEに悪影響が及ばないように徹底的にガードした結果一番ポチの思想に共感する立場になってしまった。
 たくっちスノーもこれだけは後悔している。
 駄々をこねるたくっちスノーにまるで

「まあ落ち着いて、そんなに嫌なら俺一人で次の雑誌作るから」

「次の雑誌って何?漫画系なのはわかるんだけど」

「青年誌とか色々出てきたけどまだ手を付けてないコンテンツはあるでしょ?今度はゲーム攻略雑誌と少女誌を作ろう!」

ゲーム攻略雑誌というのはリアルワールドで言うファミ通などで有名な特定のゲームの宣伝や攻略、裏技紹介やレビューに特別付録まで付いた物でマンガならゲームコミカライズが何本か連載されているものだ。
 別の方向性だがたくっちスノーもありかもしれないと思った。

「ゲーム雑誌はともかく少女誌は表面化されてないだけで既に作られている段階じゃないのか?」

「だからこそだ、真っ先に俺が作れば時空出版局は遅れを取り優位性が出てくるよ、ネオジャンプの時と違い俺自身も雑誌の作り方を学んだしね」

「つまりネオジャンプは?」

「君に一任する、引き続き読み切りを持ってきてくれれば連載を好きにして構わない」

「マジ!?」

 あんなオークションまでしていたというのに連載を一任してくると言い出した、自分達が知ったことを見抜いているのかあるいはどうでもよくなったのか?
 理屈はわからないが黒影の手から離れたことはラッキーなようで……これは罠。
 何かあった時に責任をたくっちスノーに負わせるいわば全逃げ……!だがタチが悪いのはこれもまた善意。
 責任感のある人には大きな仕事を与えたい、黒影はマジで優しさでこんなことをする!

「……ジャンプと違って自分の設定得るためにゲーム企業とは何個か連携してるからゲーム雑誌は作れるけど少女誌なんてどうするんだ?揃いも揃って野郎の集団で女の心を掴むマンガなんて判別できるか?」

 少女漫画は求めてる対象が違うのだから見つけるマンガの勝手も変わってくる、ネオジャンプのノウハウなんて通用しないのにどんな手を使って漫画を作るのか気になった。

「タイトルはゲーム雑誌の方はゲームチャンピオン略してゲーちゃん、少女誌はホワイトでいくからよろしく」

「……分かった、ただしホワイトやゲーちゃんでトラブルが起きても黒影がなんとかするんだぞ」

「小さいトラブルならなんとかなるから!」

「大きいトラブルも自分でなんとかすんだよ!!」


 ということで話を4人にも共有、ネオジャンプは自由にさせてもらえたが黒影がまた新たな雑誌を2冊作成していたという事実はEXEですら冷や汗モノだった。
 一方ゲーム雑誌には興味津々のポチ、自分も似たようなものを作っていたがゲームのデータ解説や攻略はついででヒロインの裸体図面や乳比べなどしょうもないデータばかり気合入れていた記憶がない。

「とりあえずネオジャンプを任せて貰った以上唐突な変な打ち切りがなくなるのはいい、しかし黒影一人で雑誌作るというのも不安だな……」

「てかゲーム雑誌ズルくねえすか?新作ゲームとか遊ばせてくれるんでしょ宣伝で」

「アホか!仕事でやらされるゲームほど苦痛なものはない、読書感想文とか実況動画とかやったことないからんなこと言えるんだ……ってかあの件掘り返してやろうか」

「すいません許してください!なんでも許してください!」

 あの件については今回は割愛する、ネオジャンプを任せて貰ったからには徹底的に改革するしかない。
まず新連載の際には良さそうなネタをジャンプラからも参考にして面白い作者は引き抜きを図る、タケグチ先生にはお詫びにもならないがザンザザーンを移籍という事にして続きをジャンプラで描いても構わないと告げる。
 マリアリと配神者にもそれ相応の処置を行い、改めてアンケ結果やネットの評判を元に打ち切り会議を行う。

「ついでにポチはゲーちゃんの告知と良さそうな新作ゲームの情報探してくれ」

「あいさー、付録作りも任せてくれ」

「改めてこの変態親父バケモンすぎねえスか」

「下手したら監理局内だとオレ達より仕事してるぞ……」

「まぁ俺はその分君等と違って世界乗り込んで戦闘とか事件解決とか難しいタイプだからさ、一長一短!可愛い女の子のゲームやりたいなー!」

 こうして少しずつではあるがネオジャンプも発展したしこれまでのこともあったので作者には気を遣った。
 それでも何人かは別の雑誌に移籍してしまったが、新たな作者が出てきたり向こうでも頑張っていると報告がくると我が子の成長のように嬉しくなっていく。
 そして黒影の方も遂に時空初のゲーム雑誌『ゲームチャンピオン』と少女誌『ホワイト』の創刊号を作成!

 ゲーちゃんは速攻でポチが購入して中身を確認したが、その時の彼は「何も聞かないでくれ」以外の言葉を発することはなかった。
 ホワイトは無難な作品だったが、お互い干渉しないことが約束だったのでたくっちスノーも何も言わなかった。
 フィルトナはたくっちスノーに一通り手ほどきを受けて最近ではたくっちスノーの作画を借りずとも自分だけの作品を作れるようになっていった。

「フィルトナ、この作品どうやったら終わるとか考えてる?」

「え?終わり……そっか、いつか終わるもんね『お姉ちゃんって呼ばせて』も」

結末のない物語なんて黒影は言うがそんなものはない、いつか終わりは来るんだ、物語も人の命も世界さえも……お菓子を食えば空になるみたいに」

「でも私達マガイモノに終わりはあるの?」

「……あるんじゃないのか、いつか自分達も死ぬ時が来る、マガイモノのことなんて自分自身すら分かってないんだから」

 フィルトナは長らく会えなかった知能を持つ同胞、一体誰が作ったのか彼女自身も分かっていないと言うが、たくっちスノーすら作ることは不可能だった人間と変わらない知能のマガイモノは野獣とEXE、ミリィ以外に見ていない。
 ジルトーも知らなかったのでデータを集めながら漫画に付き合う。

「ねえたくっちスノー、黒影の作ったホワイトとゲームチャンピオン、どう思う?」

「どうかな……失敗してこっちにしわ寄せさえこなければいいんだけどって感じやね」

 たくっちスノーと黒影、それぞれの思いを込めた3冊の共通雑誌は時空に何をもたらすのか……。

最終更新:2025年02月25日 19:16