漫画は凄いゾ天才的だゾ

 時空監理局副局長とその周辺によって構成されるバカ5人は部下から舐められているが優秀な精鋭である。

たくっちスノー、君の作ったG-lokシステム面白いね!俺もよく使ってるよ」

「おいポチ、使うってまさかエロいことに使ってないだろうな?なんか問題起きて怒られるの特許持ってる自分だからね?」

「大丈夫ちょっと議論しただけだから」

「議題は?」

「メスのケンタウロスって人間の部分に既におっぱいはあるけど、馬のおっぱいも下半身部分にあるのかって話」

「本当にちょっと気になる議題だな……後で健全な文章に修正して論文で報告してくれたら許すよ」

 彼はポチ、局長直属のサポーターであり奴隷。
 時空随一の性欲の持ち主であり時空新時代によって多額の罰金を背負っているが、エロへの探究心から創作力は随一でオタクコンテンツ絡みへの理解度と制作力は5人の中で一番。
 更に女性に限らず人物の情報を集めることにも長けており、情報収集活動に長けるスパイとしての才能も開花しつつあり、彼の前ではどんな女性も文字通り丸裸である。
 個性であり欠点はその強すぎる変態性だが……。

「ねえ野獣くーん、ときめきジャンプ読ませてあげるから俺の論文手伝ってよ〜」

「は?なんで俺がエロ絡みの論文手伝わないといけないんですか(正論)」

「頼む!こんなの頼めるの君くらいなんだ!」

「はぁ〜しょうがねぇなぁ」

 彼は野獣先輩、ニコニコ動画のミームから作られた人間の情報で構成された、マガイモノ
 たくっちスノーは「田所」と呼ぶが大体の人はなんで彼が田所と呼ばれているのか分からないので本人は広めない。
 たくっちスノーのボディーガードであり実質秘書な補佐でもある彼の仕事は雑用、面倒事はしたくない性格なので派手なことは好まないが手が離せない他の四人にとって彼の存在は大いに助かる。
 文句を言いながらも金は欲しいので断ることはないし役に立たないということもない、四人の派手な活躍には地味に必要とされるどこにでもいて、どこにでもいない最強の雑用係……それが野獣先輩という男だ。
 現在はポチと共に論文を書くことになっている。

「で?論文の内容はどうするんスか?」

「テーマは大体異種族の子供の作り方だね、さっきのケンタウロスの話に加えて女性に似た見た目であるアウラウネの種の作り方、ポケモンの卵生成の遺伝子法則や卵生構造の謎、ヒロアカ世界の異形型個性による内臓・生殖器変質の考察と出産のリスクヘッジ!」

「うわ凄いなぁ、エロってここまで考えて突き詰めれば生命の研究になるんスね……ちょっと尊敬しそうになった自分を1回あの世に送りたくなってきた」

「技術の発展はエロから始まるなんて言われるくらいだからね!しかも思いつくだけでもG-rokシステムという優秀な相談相手がいる、後は内容を元に実際に試して修正・検証・再試行するだけだ!」

「くっ……なんか腑に落ちねぇ……!自分の最高傑作がエロ絡みで役立つなんて……!!」

 論文にして反論の方法が思いつかず頭を抱えるたくっちスノーの元にミリィが現れる。
 彼もまたメイドウィンの秘書でポチとは同僚、たくっちスノーの影武者として振る舞う彼は移動力とコミュ力で次々と周囲に独自の関係ネットワークを蜘蛛の巣のように構築、時空を辿れば大体ミリィを知っていると言っていいほどには仲良くしているポチに次ぐコミュ力の塊。
 貸し借りだけは信用できるので人には仲良くしておきたい、そんな時にはミリィが役に立つ。
 ……ただし最近女の子にモテすぎて貞操が危ない。

「たくっちスノー!メイドウィン達からG-rokシステムを使いたいって殺到している!」

「マジか……あっそうか、メイドウィン共は始まりの書があるとはいえ右も左も分からないまま世界創造を行うから、仮想世界を作って検証やシミュレーションが出来るこいつがなければハードモード……!」

「同じメイドウィンなのになんでそんな発想に至らなかったのたくっちスノー!」

「世界なんていっぱい人が死ぬ戦争とか災害とか起きなければなんでもいいじゃんって思ってたんだよ!そんな頻繁に大ピンチ起こるわけでもあるまいし!」

リアルワールドのメイドウィンに聞くだけ無駄だよ……でもよかったじゃん、これで特許代でウハウハだよ」

「後でどういう意図で使いたいって言ってるのかリスト化してくれミリィ……自分ちょっと忙しくてさぁ」

「ん?ポチと野獣が2人して同じ仕事とは珍しいな」

 ミリィがたくっちスノーの話を聞いているところにEXEが帰還。
 たくっちスノーのボディーガードであり戦闘能力ではトップクラス、戦うこと以外は苦手だが揉め事や鎮圧、傭兵業など武力を必要とされる場面では最適解とされておりこの5人で喧嘩したら4対1でも勝利できると推測される。
 つい先程もある世界でドラゴンの喧嘩を両手で止めてきたところだ。

「EXEにも分かりやすく言うと今はポケモンの肉体構造の研究ってところかな!」

「中々興味深い研究をしているようだな、ポケモンはまだ不可解な部分も多いと聞く……」

(実際はポケモンの生殖がどうなってるのかってだけなのにね……)

「EXE、帰って早々悪いが黒影に見せたいものがあるから運搬手伝ってくれ」

「そんなに大きいものを作ったのか?仕方ないやつだな」

 そして、時空監理局副局長たくっちスノー。
 時空最悪の敵から一転して守る立場になった彼はマガイモノを始めとして手に入れた設定の数々の使い道を自身の強化から発明へとシフト。
 数々の設定を組み合わせては、何やら世界の為になりそうなものを開発している善にちょっと傾いたマッドサイエンティスト。
 彼の現在が保たれているのは四人のおかげであり、たくっちスノーもまた四人の活動に貢献している。

 彼らエリートバカ五人衆はそれぞれの個性を活かし、数々の新事業をこなしながら黒影のワガママにも応え、更には時空の平和も守る凄い奴らなのだ!
 それを可能にするのがたくっちスノーの発明した『分身ハンマー』ドラえもんに出てくるような道具をパクリ、殴るとマガイモノ成分が自己を複製するように命令させる道具である。
 この5人は揃ってマガイモノ成分のようなものがあるので、これにより多数の分身が監理局外でも活動出来る……このおかげで上記の無茶なスケジュールも無事にこなせるわけである。
 ただしここにいる5人は重大な問題がある、それは……この場所の5人の仕事は時空出版雑誌の編集者にも関わらずそれが全く手がついてないということである!
 表向きはスパイ活動ということで出版局で働いているポチとミリィはともかく、現在たくっちスノーはネオジャンプをより発展させるために発明品を考えている段階。
 しかし全てを道具に頼るようでは過去にメイドウィンがやってきた魔法や軽いシステム感覚で手を抜いて本を使っていたのと変わらない、なるべくあると楽になるぐらいに便利な物に留めておきたいたくっちスノーのこだわりによって難航していた所だ。

「ちなみに今度は何を作った?」

「今回の奴はちょっと自信あるんだ、漫画のキャラクター診断装置、診断式にどういうタイプの新キャラが雰囲気に合うか判定を……」

「あっ、そこ置いといてたくっちスノー」

 局長室に到着してメイドウィンの居る所に到着、発明品を近くに置いて帰ろうとした時に二人は手招きで呼び出される。
 また新しいものを作れと言いたいのだろうとため息を吐きながらEXEを帰して近づくとどうやら少し事情が異なるようだ。

「いやーあれから頼んだけど随分色々完成したね!最初からこうしとけば良かったよ」

「忘れるなよ黒影、これらはあくまでアシスト……困った時に助けてくれるだけで全部使っても代わりにマンガ作ってくれるわけじゃないからな?」

「まああって困るものじゃないでしょ!これだけあればネオジャンプも大改革できるね!」

 全てはネオジャンプを再起させるため、メイドウィンの目標は時空出版雑誌を作って売り上げを出すことではなく少年ジャンプなども遥かに追い越してトップになること。
 たくっちスノーはそこまで出来るわけないと思っているがメイドウィンは監理局として何が何でもトップじゃないと気がすまない。

「要はナンバーワン以外認めないと、どっかの戦隊みたいだな」

「そこで、ここからはもうネオジャンプを徹底的にトップにするために皆に頑張ってもらおうというわけ、これだけの設備も揃ってるしね」

「まあいいさ、今度は何をする気?言っとくがそういうので一番やらかしているのはアンタなんだけど」

「反省してるよ〜、だからネオジャンプをその分一気に大躍進させようって6人で頑張るんじゃん」

 シャドー・メイドウィン・黒影によるネオジャンプの立て直し計画が始まり論文を書いてたポチと野獣先輩も呼ばれた。
 仕事に次ぐ仕事も慣れたものだがとりあえず話だけでも聞こうと論文の修正と確認をミリィに任せて話を聞くことにした。

「ネオジャンプを大いに盛り上げるそうだけど」

「うん、まず手始めに君等はときめきジャンプの編集とスパイ活動を辞めてネオジャンプに復帰ね」

「まあ構わないよ、協力者に連絡入れて異動したってことになるようにしておく」

「ときめきジャンプ、俺らが居なくても安定はしてるからね」

「そして次に……ゲームチャンピオン廃刊ね」

「……は?はぁァ!?」

 唐突にゲームチャンピオンの権利も本も消滅して存在そのものが消えてなくなるかのように突然の廃刊宣言。
 これには編集者のたくっちスノーも驚いたしexeもどういうことかと目線でメイドウィンを見るがゲームチャンピオンの看板はあっさり外されて廃刊という情報が即座に電波内に拡散。

 「おい黒影!なんでこっちは廃刊なんだよ!売り上げで言えばネオジャンプ以上だし人気もあった……史上最強のRPG計画だって成功しただろうが!!」

 「ネオジャンプより上なんだよね、人気順でゲームの雑誌が……ネオジャンプの方が本命にしたいからそれ以外が人気になるのはなんか違うじゃん?」

 「だ……だったら廃刊にしなくても、ホワイトとかつばめみたいに権利を何処かに売っちまえば……!」

 「それこそダメ、それで売ったホワイトとつばめはどうなった?ゲーちゃんで同じことをしたらますますネオジャンプが不利になる、狙うなら時空ナンバーワンだ!せっかく俺が考えた雑誌を惨めにしたくないんだよ!」

 「ゲーちゃんとネオジャンプ両方買ってる読者だっている!自分だってジャンプネオジャンプ両方買ってる!」

 「ファンレターの数はどうなの?買うだけの行為は立派でも何でもないよ」

 「だからって潰すことは……いや、どうせ言ってもムダだろう次」

 (いいのか?)

 (神様特有の見栄っ張りにどう口を挟めってんだよ、儲けたいとか面白いことを考えたいわけでもないし夢でも見せてやろうぜ)

 メイドウィンとたくっちスノーの口論に対して野獣とexeは耳打ちで話をしてどう便乗するか冷静に考える。
 そもそも黒影がどうしてネオジャンプに急に拘るようになったのか考えていると野獣は1つの結論に達して質問する。

 「もう踏み込んだ質問するっスけど、アンタが最初ネオジャンプにお熱だったのはアマチュアに新しいはじまりの書を作らせてジャンプではなくオークション会場で売りさばきこっちで収入を得る為……だからつまらないからじゃなくて買い取られたら打ち切っていたスね」

 「……なんで知ってるのかはともかく、最初の動機はそうだね、でも今は違うもん」

 「それは分かるっす」

 「田所どういうこと?」

 「今のコイツにはマンガの新連載を作らせて載せるなんて面倒な手段を踏まなくてもいいんスよ、これまでの魔法だとかスタンプペタペタも漫画や雑誌作りが本心じゃなくてはじまりの書を量産したいだけと考えると辻褄が合う……お話の出来なんて世界が作れることに比べたらカスって事ゾ、更に今は……もっと気軽に楽して世界のネタを作れる……もう分るっしょ」

 「まさかG-lokシステムの事を言ってるのか!?」

 G-lokシステム、これに作りたい世界の情報を送ってやればいいアイデアを浮かばせることが出来る、メイドウィンにとっても革新的なその技術はマンガやゲームを一から作って固形化させるよりもよほど効率的でありまんがタイムつばめなんかよりも気軽に作れる。
 そして、ネオジャンプはオークションも密かにexeやミリィ達によって機能しなくなりはじまりの書製造機としての役割を失ったネオジャンプに残った物は『人気にさせる』という最初に作った仮初の目的だけだ。
 野獣に言わせるなら、どうせならネオジャンプが時空で一番になるという事だけでも達成させておきたいのだろう。

 「つまりは、ネオジャンプというブランドを立派にして監理局の凄さを知らしめたいってわけ」

 「うんうん、口は酷いけど君って話をまとめてくれるの上手いよね」

 「アンタの考えがひでより単純なだけなんだよなぁ……」

 「まあ田所のおかげで言いたいことは分かったよ、その為の発明品ね?……時空で一番の雑誌になる為に手段を選ぶなと」

「そんな悪い言い方しなくてもいいよ、監理局が皆の上を行くのは当然のことなんだ、むしろこれまでがおかしいんだよ」

「俺がネオジャンプがジャンプの寄生虫って言われたって話したのよっぽどムカついたんだろうね……」

「ムカついてないけど寄生虫呼ばわりは酷いよね、ネオジャンプだって元々はジャンプより知名度が上になって貢献しているって想定のはずだったのに」

「まるで監理局がそこらの会社より立場が下って思われるのが気に入らないと?」

 たくっちスノーの発言に辺りは静寂とした雰囲気になるがEXEが嗜めて無理矢理座らせる。
 EXEには度々言われる、人の言い方を尖った見方ばかりして優しく解釈できないのは悪いことだとボディーガードの分際でキツキツに言ってくる。
 だがこいつにコミュ力でとやかく言われるのは屈辱的なので従っている。

「で、ネオジャンプを時空で一番にしたいと?」

「うん、言っとくけど俺や君の他の分身たちにもナンバーワン目指してもらうから」

「からあげグランプリ並に1位狙いまくってんじゃん、露骨すぎると卑しく思われるよ」

「まあいいんじゃないの、そのために発明品作ってるんだし向こうもマッドサイエンティストだから上手くいくでしょ」

「うちらネオジャンプ組は5人揃ってるからこんなこと言えるけど、残りの面々はそうもいかないぞ?」

 新事業を行う分身はいくらでもいるが、大体は派遣されているのは1人か2人、全員が揃っているかもわからないし情報共有も出来ない。
 何をしてどうなったのか把握するには分身を合体するしかない、本体と呼べるものはなく一つ一つが同じ個体なのだから融通は利かない。
 1人や2人の力でナンバーワンを目指せるか怪しいし時空の治安を考えるとそれどころじゃないというのもあり得る話。

「とりあえず自分達は自分達でネオジャンプ頑張りましょうでいいけど、他はあまり期待できないよ」

「いいよ、これからは皆ネオジャンプ一本にしてなんとしてもトップシェアを狙うというよりは『あるべき場所』を陣取る、これだけは忘れないで」

「はいはい、自分としても発明品を無駄にしたくないから……はいこれ説明書、存分に使うなら一通り目を通してね」

「多スギィ!」

 発明品自体も複雑なのにそれが山ほどあるので取扱説明書も国語辞典なみのものから薄い本までズラリと並びこれが5人分、間違いが起こらないようにするためにも徹底的に読み込まなくてはならないので既にミリィなんかは読み込んでいる。
 漫画で絶妙に使えそうなそうでもなさそうな物ばかりまであるが、たくっちスノーが言った通りこれだけでは漫画は作れそうにない。

「コミカライズゲームシミュレーター、誤植チェッカー、逆張り危険信号、センシティブブロッカー、くるくるコンパス、ジャンル診断装置、ゲーム連動キャンバス、猫背改善ドリンク、集中うちわ、セルフ編集AI以下略!とにかく色々作ったけど状況に応じて使いこなして欲しい」

「確かにこれ、直接漫画作れないしなんというか思いつきの塊みたいな奴だな……」

「たくっちスノーは引き続きネオジャンプに使えそうな発明品を考えて、時空で一番になれるような凄いやつも」

「じゃあ黒影も本気でナンバーワン目指してるならそれ相応の動きをするべきじゃない?」

「それもそうだね、じゃあ俺も張り切っちゃおうかなー!」

 主人公は遅れてやってくる、神は必ず苦行の前に現れて救いをもたらす。
 自身の振る舞いはそうであると信じ切っているメイドウィンはネオジャンプへの救済にかなり乗り気であり、自分が本気を出せばすぐに解決するだろうと腕を鳴らす。
 しかしたくっちスノーから見ればこれは救済ではなく試練、ここに待ち受けているのは正念場……メイドウィンがどんなことをするのか警戒して挑む。
 なにせホワイトやつばめの件……さらにはネオジャンプで起きたピンチさえもこいつのせい!
 たくっちスノーが腹を括ってやる気を出すように誘導したのもこれ以上のめちゃくちゃも受け入れてやるという姿勢である。

「いいかお前ら……これから起きるのは絶対想定外の出来事だ、避けられるなんて考えるな……リスクを最低限に留める事を考えておけ」

「一体どんな地獄を想定してんだよ、なんか俺巻き込まれたくないんスけど」

「たくっちスノー、少しは上司を信用してあげなよ……」
最終更新:2025年03月23日 20:47