「……面白くなるって黒影は言っていた、それはどういうことかずっと考えていた」
「そのついでで呼ばれたのが俺か、いい迷惑だな」
ポチはミリィに作ってもらった発明品『作戦会議用カルビ店』で即席の焼肉店を作りその中で作戦会議をしていた。
お肉を食べながら秘密の会議を行えるまさに一石二鳥の発明品らしいが欠点は暑いのと出るとちょっと臭くなることだろうか。
「でも面白くなるってどういうこと?」
「あの光景をあいつは予測しとったんや、赤の他人をマジアベーゼが襲う、前に聞いた間抜けとは違う方の
時空犯罪者にするための大義名分を与えたんや」
「何より……この戦いの連続で私も察してきたけど、エノルミータは私達トレスマジア以外には興味を示してないみたい」
「それは黒影局長にとっては都合が悪いね、だからベーゼに遠野くんを……というよりは他の世界の人間を死なせようとした……といってもあの逃げる時の手際の良さだと本当に殺そうとは考えてないだろう」
「それを世間が認めますかって話やな……それで?マゼンタに何を話した?」
「
時空監理局のトップが、もしかしたらマジアベーゼを時空ナンバーワンの最悪な犯罪者に仕立て上げるんじゃないかって……」
マジアベーゼを時空最悪の犯罪者に変える……これがポチが気付いた最悪の可能性である。
何も知らない吠や真銀もいるので改めて説明する。
時空は時監理局局長の
シャドー・メイドウィン・黒影という存在によって作られ、この世界を含めた全てが黒影の手で好きなようにコントロールされてきた、それに相反する史上最悪の時空犯罪者の名は
たくっちスノーで彼らは定期的に喧嘩のように争いあっては黒影が勝利してきた。
しかし現在はたくっちスノーは時空監理局副局長に推薦されてバリバリ働いている、
野獣先輩も元は犯罪者時代からのボディーガードだ。
しかし黒影に問題が出来た、自分から推薦させておいて自分の相手をしてくれる悪がいなくなってしまったことだ。
「相手をしてくれる悪って何?」
「そういえば貴方こうも言ってたわね、貴方の上司は見栄っ張りって」
「うん……まあその、俺はその時のことよく知らないけど実際はあまり評判良くないんだって、今回の新事業だって自分の凄さ知らしめたいからだっていうし昔からそういう傾向があったって」
焼肉食べながら遠回しに自分の上司の愚痴を言う、これは魔法少女達の光景ではないしマジアベーゼが見たらまた解釈違いでバグりそうだが知ったことではない。
ひとまず問題はトレスマジアと遠野吠はものの見事に黒影の自己満足に巻き込まれてしまったということになる、ずっと怪しんでいたサルファからすれば偵察でもなくマジで魔法少女タイアップグッズで監理局のブランドを広めようとしていたことに驚く、今の彼女からすれば監理局は図々しい上に余計なことしかしない銭ゲバの寄生虫ととんでもない悪評である、まあ実際野獣先輩から見ても自分達上層部以外はクソしかいないと思っているのだが……。
「だったらアンタらさっさと帰れ……とも言えないところやな、金ないとか言ってたな」
「うん、だから田所くんは必死こいてアルバイトして、俺もトレスマジアのパン作り任せてもらって生計立ててるところだから」
「俺もバイトはしてるが問題はお前じゃないのか印魔」
「う……あたしは未成年ヒーローだから!保険とか出るから!言っとくけど遠野吠!今回はエノルミータをなんとかしないといけないから一時休戦してるだけで本来あたし達は指輪と願いを奪い合う関係なんだからね!」
「好きにしろ、どの道俺もゴジュウジャーの奴らと離れ離れになっているからな」
「……あっ、そういえば今更なんだけどなんでトレスマジアの3人は変身を解かないの?」
「ああ……言われてみれば俺も変身する前の君等は会ってなかったっけ」
「それは……まだ私達としては貴方達を信用していいか分からないところはあるし」
「俺も魔法少女としてのグッズを頼まれてるからね、正直中の人とかはあんま意識してないのよ」
そろそろ店の制限時間が過ぎるので火を消して吠に肉を食ってもらいシートのように畳む、これさえあればテントとかいらないのでは?と思うかもしれないが外に持ち出すと結構燃費が悪いのだ。
なんなら肉も吠とサルファに結構持ってかれた。
話の中でこれからどうするのか?という話になったが結論は既に決まりきっていた……マジアベーゼを早い段階で倒すしかない。
マジアベーゼは既に邪魔者を次々と倒して星壁獣なるものまで作っているので今のトレスマジアも時空犯罪者を相手取っているがレベルアップには程遠い。
そこでマゼンタはあの配信システムを使い、もう少し魔法少女……でなくても仲間をもっと増やそうと提案した。
自分以外の敵味方を拒むベーゼとは逆にもっと沢山の世界と交流を深めて力を合わせたほうがいいと考えたわけだ。
アズールは異論はないがサルファは呼び出す手段的に黒影の手を借りなくてはならない上にポチですら信用出来るか怪しかったので反対寄り。
普段女の子に甘いポチも黒影絡みとなるとマゼンタに迷惑をかけてしまうかもしれないとあまり賛成は出来ない形だった。
「ならポチさんの知り合いはどうですか?」
「俺の知ってる子……というと
アブノーマルワールドの面々だね、アブノーマルワールドっていうのは俺の管理してる世界の名前なんだけどさ、一言で言うとみんなマジアベーゼみたいな奴なんだよね」
「オッケー論外や二度と誰か呼ぶな」
「あっ待って!!そもそも俺ももっと沢山の知り合いが欲しくて」
「もういいか?俺はこれからバイトの面接があるんだあとにしろ」
「あっそういえばあたし達も明日学校!」
「となると暇してるのは内職してる俺と真銀ちゃんくらいだね」
「あたしまで同じ括り!?」
◇
「はぁ……」
柊うてなはここ最近余計なことが多すぎて魔法少女の推し活も集中できず覇気がない、授業中も上の空で下手したらまた補習になりそうだがそれは嫌なので黙々と勉強は行う。
ニュースも最近はトレスマジアの活躍よりも時空監理局や別世界絡みの物が多くて見てて面白くもない、表舞台に表さず見えてこないくせに何を偉そうに我が物顔で自分達の世界を侵食しているのだろうか、まるで支配者のようだ。
前に戦ったロードエノルメよりもタチが悪いと感じた、不本意だが自分の目的を達成するためにいずれは黒影と戦わなくてはならないだろう。
だがひとまず学業に専念、今回は自分が不甲斐ないからと星壁獣を借りて真珠とネモが活動してくれるので今は今後の事を考えながら勉強しなくては。
「うてなちゃん、これ終わったらスタバ行かね?」
「えっあー……私あそこ行ったことないなぁ……」
◇
そしてトレスマジアの3人組、花菱はるか、水神小夜、天川薫子は何故か真銀も交えてファミレスで作戦会議をしながら話を聞いていた。
「じゃあ二人ともマゼンタからスカウトされてトレスマジアになったのね、妖精さんの協力あるとはいえテレビにまで出て化け物退治って本物の魔法少女みたい、凄いわね」
「本物みたいっていうか本物や」
「……と、私達についてはこんな所ね、今度はあなたについて聞かせて、その指輪のこと」
「この指輪は私も詳しくは分からないの、テガソードっていう神様と契約して全ての指輪を集めると願いが叶うってこと、あと指輪を持つと凄い能力を得られるってことぐらいね」
前に吠が使用した異常なほど優れた嗅覚も指輪の力らしく、真銀はマジレンジャーリングを持っていることで発火(ファイア)の能力を得たらしく炎あるいは爆発の魔法を自在に使えるようになったとか。
そしてリングを集めて他全員を倒してまで叶えたい願いとは……に関してだがよっぽど深刻なのかだいぶ頭を沈めてこっそりの形で伝えようとする。
「私ね……テガソードに本物の魔法少女にさせてもらうんだ、貴方みたいな色んな魔法が使える本物に」
「え?いやいや、あたし達なんてそんな大したものじゃないよ、あたしなんて回復しか出来ないし……」
「回復いいじゃん!どんな怪我しても病院行かずに治せるし、サルファのバリアとか雨降っても傘いらないし災害でも安心!アズールの水分操作なんて洗濯やお風呂、飲水に困らないし……今のあたしの炎と合わせたら生活には困らないよ!」
何か雲行きが怪しくなってきたことを感じた薫子は顔を近付けて話題を変える。
「アンタ……多分高校生くらいか?」
「うん、まさかトレスマジアが年下とは思わなかったけどね」
「卒業したら大学か?それとも就職?」
「どっちも私の雰囲気に合ってなくて……でも、魔法を使えば働かなくても生きられるじゃない?空を飛べば運転免許もいらないし、植物を育てる魔法で野菜を育てて食事も解決!」
「要するにめんどくさいこと全部魔法で解決してニート生活送りたいと?」
「今は発火だけとはいえゆくゆくはどんな魔法でも使えるようになって生活を豊かに……あっちょっと!?薫子ちゃん!?」
「すまんなはるか、今からウチちょ〜っとこの姉ちゃんに社会のお勉強ってもんを教えてくるわ」
「薫子ちゃん!?力強いよ痛いよ!?ちょ、ちょっとお友達止めて!!」
「ああ……その、頑張ってください」
「世の中そんなに単純にはいかないってことです」
薫子は力強く真銀を引っ張ってファミレスから追い出す、正義の魔法少女なのであまり手痛いことはしない。
あくまでお話、社会勉強について滾々と叩き込まれるだけだ、いや物理的な話ではなく本当にお話するだけである……はるかと小夜はそう信じたい。
薫子とすれ違う形でハンバーグとキノコパスタを持ってきたのアルバイトをしている吠。
認識阻害があるので自分達がマゼンタであると気付いてないのか料理を置いたあとにさっさと出ていった、ウェイターとしてはかなり無愛想である。
「いや……実際驚いたよね、魔法を私生活で使うってあたしは思いつかなかったな」
「良いのよ思いつかなくて、魔法少女の力を私利私欲に使うなんてもってのほかだわ、私は彼女を肯定することは出来ないわ……私利私欲に……」
小夜はベーゼに色々されていることもあり魔法で好き放題と言われるとあっちを連想してしまうが改めて真面目に今後の進路について考えてみたほうがいいのかもしれないと思ったが突然ファミレス内で騒ぎになる。
無数の男が店を襲撃して吠に襲い掛ってきたのだ。
「あいつの差し金か?」
「そうさ、マジアベーゼ様からお前を倒すように指示をされているんでぐへっ」
話してる途中にも関わらず闇の形相で睨み付けたマジアベーゼが腰に巻き付けて時空犯罪者を縛り付ける。
「あれ〜?私言いませんでしたっけぇ?追 い 出 せって指示したんですよ?それに加えて何回も何回と説明しませんでしたか?一般人に害を与えるなと耳に風穴開けるくらい話しませんと理解できない犯罪者ですか?お願いですから私の負担を考えてくださいよ勉強させる暇くらい残してくれませんか本当に!!」
本当にストレス溜まって限界が来ているらしく遠目で見ているはるかも若干可哀想に感じるくらいには心に来ているようだ、実際うてなとして見てもこれまでの話が分かる面々と違って薫子が言っていたような別世界に逃げてきた誠意も美学もない雑なだけの無法者ばかりなのでコントロールが利かない上にそれが何十人も居る、マジアベーゼに従ってること自体強くて都合がいいだけなのも悪循環だった。
「言っておくが俺はバイト代が貯まったらさっさと帰る、お前に興味なんかねえよ」
「うぐ……本当にそうなってもらいたいところですが……ほら貴方達も!お客さんに迷惑でしょう撤収!今回は全面的にロコちゃん達に任せてるんです!」
「待てやマジアベーゼ、何さらっと帰ろうとしてるんや」
時空犯罪者をこの間のブラックホールが出る銃で手当たり次第詰め込んでいるベーゼの元についさっきまでお話していたサルファと若干腰が低いマジレッドが現れる。
相手はしたいが今はロコムジカ達が頑張ってるしファミレスの迷惑ってレベルじゃないのでベーゼは一旦逃走を選択して連絡を入れた。
「すみませんロコちゃん、どんな感じ!?」
『あー、こちらルベルブルーメ、戦況だが星壁獣はヒーロー10体を撃退したが倒されたぞ』
「充分な成果です、星壁獣リモートコンドルはまだ予備がありますので後は好きなようにライブでもして頃合いを見て撤退するように、ところでそちらに時空犯罪者は」
『ああお前の考えはなんとなく察してたから粛清しておいた』
「やっぱり信頼出来るのは現地の貴方達くらいですよ……」
『大変だな総帥ってのは』
頭が痛くなってきたので戦闘どころではないと判断したベーゼはブラックホールを作り撤退、マジレッドが炎を飛ばすがその前に消えていった。
本当に近頃は様子がおかしい、これまでの生活が壊れてしまうような感覚をサルファは感じ取る。
ベーゼにとってはもうとっくに台無しにされているのだが、改めてポチにも会おうとするが黒影と瓜二つなうえに立場もありグルという可能性も捨てきれない。
そこでサルファは一旦はるかに連絡を入れた上で別の所に行くことにした。
「おい印魔、ここから別世界行くといくらかかる」
「あっはいお金出しますので気にしないでください姉御」
「いや今後困るんやわ金銭感覚、あとなんで舎弟みたいになっとるねん」
◇
「もう嫌だ……私の新部下ろくなやついなさすぎ……」
「ほいうてなちゃん氷」
頭部からとんでもない熱を発してるうてなは氷を何度も乗せながら作戦会議を実行、最近の悩みは遠野吠を始めとする邪魔な連中……よりも自由が利かない時空犯罪者の部下共であった、カリスマで従ってるように見えて全然言うことを聞かないので思い通りにはいかない。
それにポチの事を真珠が調べてくれたので今回の件は時空監理局が絡んでいることをエノルミータの方も気付いた。
時空番号を特定して遠野吠が『失踪』扱いになっていることも分かった、ただしうてなは黒影の真の目的までは気付かないだろう。
「それでそいつは金貯まればウチらには関係なくとっとと帰るとか言ってんだろ?こっちで匿名で振り込んじまえばそれで終わりなんじゃねえのか」
「アタシもそれは考えた、ここからその世界まで新幹線でちょっと飛ばすくらいの金しかかからないはずだけどさ」
「よほど例の局長さんは彼に入れ込んでいるか、あるいは私に嫌がらせをしたいのでしょうね……迷惑なことに」
「確かにこれは由々しき事態だ」
会議に割り込んできたのはトレスマジア側のマスコットであるヴァーツに瓜二つのヴァナリータ、うてなやキウィを言葉巧みにエノルミータにスカウトしたうてなにとっては始まりの存在。
元々エノルミータに対して何か不審な行動を取っていることも多いが黒影の気まぐれで引き起こしたことに関しては彼も想定外ばかりだったろう。
案外うてな以上に現在の状況に不満を感じているのはヴァナリータかもしれない。
「君の考えた星壁獣、もう少し手を加えてみないかい」
「星壁獣を?でもあれは元々トレスマジアと楽しむために支配の鞭をちょっといじってそれっぽい名前を付けただけなんですが」
「いや充分だよ、これをもっと上手く改造すれば監理局にも匹敵する存在まで発展するだろう……
オブリビオンくらいにはね」
「オブリビオン?それって前に聞いた『最初から存在しているモノ』ってやつか?」
オブリビオン、それは時空が生まれる前から存在する過去の歴史『骸の海』から溢れ出した存在。
猟兵と呼ばれるものにとっては敵だが同じく過去の存在であるうてな達にとっては厄介ではあっても特別害はない。
オブリビオンは
時空新時代になってからその存在が一般市民にも広まったが極稀にヴァナリータのように黒影に気付かれず存在を認知していたものも存在する、
ヴァナリータがスケッチブックのようなものをうてなに見せる、この世界に存在するオブリビオン『アクマジア』のデータであり、その全てがうてなが所属する前のトレスマジア並びにその他魔法少女チームが倒している。
「オブリビオンは倒しても死なない不死身の存在だ、トレスマジアには効かなくとも奴らの足止めにはなるだろう」
「こんな奴居るのによくロードエノルメは利用しようとは思わなかったな」
「僕も利用したいところだったがオブリビオンを上手く見つけられるようになったのはここ最近だ、この男が動かした時代の変化というものが作用したのだろうね」
使えそうなものは全部使う、たとえそれが未知の生物でもなんでも。
どの道自分の乾きを満たすためには時空監理局を叩かなくてはならないのだ。
遠野吠はともかく次に解決しなくてはいけない課題がもう一つある。
「真珠ちゃんとネモちゃんは引き続き調査を行ってください、オオカミのように手当たり次第吠えてるだけのあの男は少なくとも後回しで問題ありません、気になるのは」
「現在トレスマジアの直ぐ側に居るポチという男だね、僕も興味があったところだよ」
◇
「マジアベーゼは着々と時空犯罪者としての地位が大きくなっていったところか、君のお気に入りの吠もどこまでになるのかなぁ、ねえガリュードくん」
シャドー・メイドウィン・黒影は世界を箱庭のように眺めながら着々と多数の仕事を片付ける、それが今の彼に出来ること。
「出来の悪い家族を持って優秀な俺たちを世間に見せつける、最高の娯楽だよね?」
最終更新:2025年04月22日 21:40