「いや……その俺は一方的な被害者であってね」
「何言うてるんや通信記録見るにノリノリだったやろ、というか卑猥な脅しかけとったの知っとるからな、しばらくウチらに近寄るな」
改めてベーゼとの決死の交渉で話したことをトレスマジアとついでに遠野吠にも共有するがドン引きされており、吠も馴れ合おうとはしないが倫理観は普通なので若干距離を置いていた。
ライン越えかけていることは理解していたのでポチもずっと土下座はしている。
だがマジアベーゼの目的は全ての他世界人の根絶というよりは昔のようにあるべき姿に戻すことであることを知ったものの、マゼンタや吠にはどうしようもない。
「俺が帰れないってどういうことだよ?俺には関係ないことだ、さっさと元の世界に……」
「君に関してはよく分からない、俺の思い過ごしってこともあるかもしれないからとお金も振り込んだんだけど」
「そういえばそんなこともあったな、下ろそうとしたら一瞬で消えた」
何故か吠はこの世界から出られない……ただ出られないようにされてることよりも上位存在だからと好き勝手な事をして利用されているというのが吠にとっては気に入らなかった、おそらくマジアベーゼも同じ気持ちだろう。
ヴァーツはポチがエノルミータに漏らした情報を確認しながら改めて
時空監理局に聞く。
「僕たちはいずれ時空監理局と厄介な付き合いをしていく可能性がある、5人の上層部と局長について」
「そうだね、彼らはどう足掻いても知ることになるだろう、なにせ今新事業でめちゃくちゃ頑張ってるんだし」
直接世界に出向いて分身まで駆使して頑張る5人の上層部、
たくっちスノー、ミリィ、
野獣先輩、Sonic.EXE、そしてポチ。
各々が様々な分野のスペシャリストであり時空監理局が誰でも他世界を超えられる新時代に適応できるように様々な仕事を行っている。
ちなみにこのポチの仕事は思い切りマジアベーゼから虫唾が走ると言われた。
「まあ俺達以外がみんな役立たずってわけじゃないよ!あちこちに色んな部署があって発展に繋がる仕事はしてるんだよ?他人に振る舞う気がないだけで……俺達だって元は他の人達がやりたがらない書類とか後始末の仕事ばかりだよ?」
「そうだよ、俺等奴らからエリートバカ五人衆とか言われてるぐらいだからなぁ」
「貴方たちも苦労してるんだね……」
「それで黒影の話ね?黒影は時空監理局を作ったというのは前に話したけど……一応黒影の仕事は治安維持だね、率先して時空のあちこちに回りバランスを保っている……みたいな曖昧な人」
「はっきり言って皆あいつがなんなのか分かってないゾ、要するにまあ凄いことはしてるけど態度のやり方が気に入らないみたいに思っていいゾ〜コレ」
「最終的な結論はそれかい!」
と、改めて時空監理局について説明を入れたがひねくれた野獣先輩と補佐なのによくわかってないポチのせいで変な伝わり方になってしまったかもしれないが、薫子は『そもそもこんな奴らが上層部の時点で終わっとるやろこの組織』と思っていたので何の問題もない。
ひとまず、時空監理局全体は信用出来ないことは共通認識である。
「まだ分からないことは多いわね、治安維持組織がどうしてあの……センタイリングを十個も送ってきたの?」
「遠野さんの願いを叶えさせたいのかな?」
「それだったら手っ取り早く全部送ってくるだろ」
「それはないよ、向こうのメイドウィンであるテガソードに怪しまれる……あっ、メイドウィンっていうのは各世界に居る神様みたいな人ね」
「メイドウィンってそれ」
「うん!黒影局長もメイドウィンだよ、他のメイドウィン達とは仲は微妙だけど」
テガソードとは吠のいる『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』のメイドウィンであり、指輪を集めさせている存在。
戦士達に願いを叶えさせようとしているが黒影がそれを時空各地にばら撒いた上に何個も特定の人物に提供させるなんて贔屓をさせたらいよいよ黙っていないだろう。
とはいってもここまで乗り込んでくることはない……と信じたい。
というところで真銀はまだ吠の願いがなんなのか聞いてなかった事を思い出す。
「俺の願い?そんなものはない」
「無い!?まあそういう人もいるかもしれないか……」
「願いを持たない……そうか、何となく狙いが読めてきたわ」
小夜は一つの可能性に思い当たる、ただ1人願いを持たずに叶える権利を持った遠野吠。
彼を勝利者にすることで願いを持たない……その代わりに黒影が枠を横取りする気ではないか?と
あくまで推測でしかないが、野獣やポチからすればやりかねないと思ってる反応してるので小夜は頭を抱えている。
頼むからもう少し予想の斜め下に沈まないでくらいでくれ。
というかそもそも出ていってほしいと言ってるのたがら関わりませんで済む話なのにそれをしないのが不思議である。
「時空犯罪者の言うことに従うべきではないとかじゃなくて、何しでかすか分からないからこの件を黒影局長に報告したくないんだよなぁ」
「えっもう報告したゾ」
「ファッ!?何してくれてるの!」
「だって俺達には関係ないことじゃんアゼルバイジャン、時空監理局は関わるだけで解決するのはその世界の住民ってルールだし」
「それ要するに手は貸すけど責任は取りませんって言ってないかしら」
「そう言われるとクソみたいな組織だね俺らぁ!」
「もういいか?俺はこれからバイトの面接があるんだよ」
「俺はとうとう無職だゾ……やっぱり自称24歳学生は無理があったか」
吠に念の為にそばに居てほしいはるかは閃いて手を引っ張り家まで向かっていく。
引っ張りながらまるで面接のように根掘り葉掘り聞いていく。
「俺に家事代行だと?親はどうした?」
「あたしの家、妹が3人いるんたけど最近は仕事や戦う相手が多すぎて面倒を見れない時間が多いの……親もその、最近は妙に遅くて……バイト代はあたしが出すから!」
「まあちゃんとバイト代をくれるなら付き合ってやる、飯を出して妹の相手をすればいいんだな」
「じゃあ今日からその……よろしくお願いします」
実際にエノルミータや最近の監理局の動きに妨害されてトレスマジアの活動にも支障が出てるのに家庭を顧みないということが出来なかったので吠に家に居てもらおうということになった。
家の中には作戦会議をしていた場所と同じ結界も張ってあるので
時空犯罪者やエノルミータが襲ってくる心配はないが用心に越したことはない。
吠に正体をバラしたことに関しては自分が指輪の戦士でありゴジュウジャーの事も時空にバラす交換条件を向こうから提示しておあいこということになった。
……そう、これからはるかはマゼンタに変身してポチに配信してもらうのだ。
「こ、こんにちは〜私の名前は印魔真銀……指輪の戦士でしたが、こ、今回私はぁ……降伏を宣言します、ではここで私を負かした相手を紹介します、この世界で大人気最新鋭魔法少女チームの……トレスマジアの3人です!!」
ポチはスポットライトから字幕までその場で編集して三人を映し出す、テレビ慣れしてるもののちょっと状況が特殊なので緊張やぎこちない振る舞いになってしまう。
一方真銀はポチにめちゃくちゃ台本叩き込まれたのですらすらと三下の真似が出来るようになった……台本だけのおかげかは分からないが。
「こちらのトレスマジアの皆さんは正義の為に悪の組織エノルミータと戦う一方で願いを叶える為に私のような指輪の戦士を次々と倒してセンタイリングを山ほど集めてるんですよねぇ……あ、姉御ぉ」
「ほら、こいつのもんと合わせて全部で十一個や」
薫子は指に全部はめたセンタイリングを見せつける、なんか色も相まって趣味の悪い成金みたいで思わず笑ってしまった真銀は後ろでオクトパスホールドをかけられる。
こういうものにはなれてないのでカンペチラ見したり噛みながらもはるかが返事をした。
「え、えーと……あたし達トレスマジアは指輪の戦士にはなりませんがこの力を世界平和のために役立てたいと思っています
「その為にもいずれは全てのリングを集めていくことになるわ……本当はこういった私欲の戦いをするべきではないと分かっているけど私達にも譲れないものがあるわ」
「グエエエエ姉御ギブ!ギブ!」
「特に今ウチらの世界にいる遠野吠!いつでも相手してるからな」
「はいカット!」
ポチが撮影を切ってようやく一息ついたマゼンタはサルファから真銀を解放させる。
この配信作戦はわざと指輪の戦士をこの場所に集めさせることで吠の関係者を一気にここに呼び寄せる他にマジアベーゼへの挑発も兼ねている、他世界からの進出を拒む彼女を刺激することで時空全土にお気持ちが浸透していく、更に先ほどの会話からベーゼの動機を知った時空監理局よりも先に行動して動かざるを得なくするというアズールのアイデアである。
実際マゼンタ達にとっても自分の世界を好き放題されるというのはあまりいい気分がしないものであるらしい。
「遠野さんにはアルバイト頼んでもらったばかりなのに悪いことしちゃったな」
「正体をバラしていいって言ったのはあちらでしょう?マジアベーゼも時空犯罪者を利用しているのだから、私たちも少しは監理局や彼らを出し抜かないと生きていかない時代になったと割り切るしか無いわ」
「せやな、皆が皆あいつらのように楽には済まんやろて」
小夜と薫子が冷静に分析している中
マガフォンから着信が入ってくる、マガフォンにかけてくる相手なんて大体上層部の他の面々か黒影くらいである。
ポチはサルファにも繋げた上で応対すると……黒影だった。
声色からだいぶ苛ついてるのが感じ取れる。
「センタイリングもう少しこっそりとしてくれないかな?俺それ用意するの苦労したんだよ?」
「テガソード様がお怒りなのかな?大変そうだよね局長のワガママな態度でメイドウィン達のご機嫌取りも大変そうだしってサルファが言ってた」
「おいボケ」
「……まあお怒りなのは事実だね、俺の力でゴジュウジャーを手配するからなんとしてもそいつらでトレスマジアを倒させてセンタイリングを彼らの元に送るんだ」
「あれ?じゃああれ吠くんに渡すつもりだったんだ、何のために……あっ切られちった」
とりあえずアズールの考えた作戦は時空監理局側には大成功したと見ていいだろう、彼女からすれば思ってたより煽り耐性がなかったことに驚きだが彼の振る舞いをもっと知っておきたいところがある。
「さて、私たちはこれからこの指輪を目当てにそのゴジュウジャーという存在と戦うことに……いやその前にマジアベーゼが乱入してくるのね」
「それはもう明らかやな、ヒーローとヒーローの戦いとかあいつの趣味傾向から考えると烈火のごとくキレ散らかすのが目に見えてるわ」
「うーん渡そうと思っても今はサルファの武器にしてるもんね……真化したらゴジュウジャーの皆さんに送るって感じで良いのかな?」
「うちは別に構わんわ」
段取りは組めたのでひとまず作戦会議とゴジュウジャーの待機の為に外に出て地域活動を行おうとした時だった、どこでもテントを外して歩いて数歩の所に奇妙な喫茶店があった、名前は『テガソードの里』……。
(手配早っ!!ていうかめちゃくちゃ強引な手段取ってる!!)
四人は一斉に同じツッコミを脳内で発した、どう考えてもこれまでの傾向から本拠地ごと無理矢理転居してきたとしか思えない発想、というかこんな所に今日たった今まで店なんて無かったはずなので引っ張り出してきたと見て間違いない。
心の準備も出来てなかったので冷や汗をかいていた。
「え〜どうしよう……キレたベーゼが石とか投げてきたら俺の責任にされちゃうよ」
「……そういう明確な嫌がらせはやってきたことは無いとは言え最近のことを考えるとね」
「とりあえず先制攻撃いっとくか?」
「何やってるんだお前ら……ってなんでテガソードの里がここに」
悩んでいる所にちょうどはるかの妹達にくっつかれて絡まれてる遠野吠が来た。
事情を話すと何食わぬ顔で帰宅するかのように中に入ろうとするが当然の如く扉を超えてふっ飛ばされる。
「一体どこでどんな道草食っていたので遠野ぉ……この店のツケがどれだけ溜まってると思って」
「ま、まあまあ!ちゃんと吠っち帰ってきたんだから」
「いや帰ってきたっていうかお前らが俺の所に送られてきたっていうか」
「何をわけのわからないことを……」
「ああ……竜儀、どうやら彼の言う事本当みたいだよ」
「えっ?」
「あ、ああ……どうも」
こうして遠野吠のナンバーワン戦隊ゴジュウジャーとトレスマジアが合流。
さきほどの配信で彼女達が指輪を11個も持っていることを知ると吠がちびっこ達を中に入れてそのまま戦闘態勢に入るのだった。
トレスマジアも狙い通りだったのでそのまま戦闘に入る、他世界の戦闘力の指数にもなるし本気で傷付ける気はないが警戒は怠らない。
それにどの道……。
「悪く思わないでね、君達が指輪の戦士じゃなくても持っている以上はこういう手段で取るしかないんだ」
「しかしまさかこんな子が十個もね……」
「せっかくの機会や、このままお前らの指輪もぶんどって時空にウチらの強さ見せつけたろか」
「その勝負待ったーーーーーーーーッ!!!!」
と、まだ始まってもないのに遮るように黒い流れ星が落ちて2陣営を吹き飛ばす、作戦通りマジアベーゼが激昂してわざわざ大空から落下してきたのだ。
勢いが強すぎてツノがコンクリートに根元までぶっ刺さっており逆さまでびょんびょん跳ねながら抗議を行う。
「如何なる事情や巡り合わせがあれど
正義の味方で戦い合うなど言語道断!善は悪のみと戦いエゴのみで戦う存在は善にあらず!!トレスマジアはそんなことをするような存在ではなかったはずです!!いけませんいけませんいけませんいけませんいけません」
「さっきからなんなの」
「俺今面倒なのに絡まれてるんだよ」
「何を他人事みたいに言ってるんですか貴方は!私は貴方みたいな別世界人には他所でやってほしいって言ってるのになんで増えてるんですか!5人ってもうオールスターじゃないですかマジの抵抗じゃん!」
キレ散らかしてるベーゼは刺さったままトレスマジアに抗議を行いトレスマジアVSゴジュウジャーをなんとしても行わせないようにするが思ったより深すぎたので引っ張ってもツノが抜けない、吠に引っ張ってもらいなんとか解放されるがそれはもう放置したら何時間も言ってきそうなくらいグチグチ言われた、とりあえずゴジュウジャーの四人も戦う気は失せた。
「……で!ずっと黙って見ている監理局の貴方!どうせ貴方のボスの差し金でしょう何か言うことは!」
「これに関しては本当にすみません!でも思わないじゃん局長がお店ごと転移させてくるなんて!石とか投げるのはやめてね!」
「あいつマジアベーゼにはあっさり腰下げるよな」
「よっぽどあの拷問がトラウマになったみたいね……」
「おいマジアベーゼ、そんなに俺達を追い出したいならお前の方から力付くでやってみろ」
「それは……まあ、そうなんですけど、魔法少女以外だとやる気出ないんだよなぁ……まぁこの際贅沢は言ってられませんよね、ではトレスマジアとゴジュウジャーで私を袋叩きにするということで」
「この子自分が不利になるとしても趣味優先する気だ!」
「いやそれだとしたら降りるべきでしょ女の子をよってたかっては……」
ベーゼが幹部を集めれば5対5になってゴジュウジャーとも対等だがゴジュウジャーだけと戦うのはなんか嫌なのでめちゃくちゃ不利な条件のままじりじりと近寄ってくるが、吠はここであることに気付く。
「というかリングを持ってるのは金髪のそいつなんだろ?だったら代表してそいつ一人がタイマンすれば公平じゃないのか?」
「あっ確かにそうですね、ではそちらも代表で一人決めて3人で戦うということで」
「どんどん話がこじれていく!」
「代表といったら僕だよね」「いやここは同じ黄色として私が」「何言ってるの相手は2人とも女の子よ私でしょ」「吠っちは?」「俺はこいつらの面倒見るバイト中だからな」「じゃあ僕もそっちに加わろう」
とゴジュウジャーが代表で揉めている間にベーゼはこそこそと小さくしておいた星壁獣リモートコンドルのスペアを容易、おもちゃのリモコンから作られたこの星壁獣は電波を指定することで対象を自由にコントロールすることが出来る。
ベーゼはこれをこっそりいじってサルファを指定すると……さりげなく尻を持ちながら持ち上げていき……。
「貴方の狙いのリングとマジアサルファは貰いました!!」
「あっズルいぞあいつ!!」
「というか足速い!!」
ベーゼはサルファを抱きかかえたまま一目散に逃走、悪の組織の幹部が汚い手を使って何が悪いとばかりに悪びれず街の果てまで走り去っていきもう既に見えなくなってしまう。
トレスマジアと吠と緑色の人を除くゴジュウジャーはそれどころではないと一斉に追いかけていき、ポチは取り残されてしまった。
というかこの状況でバイトを優先する吠はなんなのだと思いたいが、この数もあり追いかけるまでもないのだろう。
「あっそうだ田所くんに連絡を……えっ!?急に別の仕事入って抜ける!?君バイトしかしてないじゃんしかも俺一人に……あっ切れたぁ、俺これからどうすればいいんだよぉ心細いよぉ」
「おい犬っころ、暇ならお前も手伝え」
「はいはい、争いごとは若い女の子に任せようかね~」
最終更新:2025年04月22日 21:47