「まさか君があの男に喧嘩を売るとはね」
「知っていたんですか彼のこと」
「僕からすれば君と同じで生け好かない男って程度の認識だけどね」
マジアベーゼはポチの
マガフォンや尋問した時の情報から監理局が自分を一番の
時空犯罪者にして何かを企んている事を知った。
本当はもう少し時期を待ってから厳密に作戦を建てて監理局に宣戦布告する予定だったのだがトレスマジアが監理局に乗っ取られた形になったので早急に潰さざるを得ない、個人的な感覚でラインを越えた向こうが悪い。
「しかしうてなちゃんどうするわけ?せっかくゴジュウジャー関係ねえってやったのにアイツら自分の世界に帰るためにアタシら狙うでしょ」
「魔力の性質がバレることは想定の内、だからこそ彼らはあくまでショートケーキ、彼らを倒してしまえばじっくりイチゴを味わうことが出来ると考えると……テンション上がってきたァ〜っ!!」
「こいつ変態性だけならこの間尋問したやつと大差ないんじゃないの?」
「それアイツに言うなよ一緒にされたくないって結構気にしてるから」
魔力変動対策はバッチリで改めて
時空監理局を相手する際の作戦を考える、安易に戦力を過信して勝ちに急いでは前総帥ロードエノルメの世界征服計画と変わらない。
魔法少女以上に相手は時空、戦力的にはアレからレベルアップしたとはいえ真化もあまり済んでいないのでまだ不安が残るところであるが、悪の組織として気に入らない奴を力で叩き潰すのも悪くない。
全ての幹部はそう思い高ぶってキスマークはそんなうてなの姿に恍惚した顔をしていた。
「素晴らしいですマジアベーゼ様……私の知る歴史でも時空で恐れられる犯罪者になりましたがここまで早くこのうな結果に……」
「そういえばキスマーク、貴方の知る歴史にあの局長はいましたか?」
「歴史上は居ましたけど私がエノルミータに入った頃にはとっくに亡くなってました、そもそも
時空新時代に突入したのも結構先の話ですのでぇ」
「こいつの話は全然アテにならないってことね」
改めてベーゼは幹部にエノルミータの新スケジュールを提出、トレスマジアの徹底的監視とトレーニング、星壁獣の研究に
オブリビオンの深掘りなど徹底的に自己研磨と調査を重ねる方針に変更して特に自分自身は押し活に使う資金や時間を削ってでも時空監理局に対抗しようとしている。
自分の部下として集まっていた時空犯罪者だが、ベーゼがA級になった途端に一目散に逃げ出していった。
「リスクがデカすぎたんだな、マジアベーゼを祭り上げて組織に寄生して甘い汁を啜ろうとしたがあまりにもコイツがデカい存在になりすぎた」
「怖気づいて逃げようが私にとっては知ったことじゃないよ、眼中にないし……、すべてはふざけた奴らに人生を弄ばれないために、何より理想の生活の為に私に力を貸してくれないかな」
「そりゃもちろんアタシはうてなちゃんと結婚までする気だからな、アイツラの金からご祝儀奪い取ってやる」
「ま、今更後戻りとか出来ないわな」
「各自、出動」
エノルミータが一斉に
時空の渦に入って行動に移す仲、キスマークがうてなに触れて時を止めて耳打ちを行う。
「マジアベーゼ様、例の局長を警戒するのもですか一番厄介なのは……」
「そのぉ……私の知ってる歴史だとトレスマジアと組んでましたので、気をつけてください」
「わかりました、あと汚いもの押し付けないで今度やったらキウィちゃんに頼んで去勢してもらうから」
◇
「マジアベーゼだ!!マジアベーゼが出たぞ!!」
A級ともなると歩いているだけで別世界人は逃げ惑い切符が飛び交って逃げ出していく、結果的とはいえマジアベーゼが最初に掲げていた自分の世界から他世界人を追い出すという目的は果たしつつあった。
今や彼女は存在そのものがワルのカリスマだが原住民はいつものマジアベーゼと変わらないと気にせず過ごしているどころか今度はどんな風に魔法少女と戦うのだろうと期待する隠れファンまで存在している。
改めて自分がこれほどの存在になったと実感する、そういえばうてなとして町を歩くことよりマジアベーゼとして活動する時間の方が多くなってきた気がする。
散歩するだけでこんな様子では変身を控えたほうがいいのかもしれない。
「こちらはある意味異常なし、ルベルちゃんそっちはどうですか?」
『あたしん所にトレスマジアが居る、向かうか?』
「念の為警戒はしてください、監理局の人間が現れたら無理に詮索はしないように」
『いつになく真面目だな、従っておくか』
◇
「ってわけだ、しばらく星壁獣ガンバーガーと相手してもらうぞ」
ルベルブルーメは銃を持ったハンバーガーの怪物を暴れさせて街は壊さずにハンバーガー型の弾丸を撃ち込むが、トレスマジアに加えて禽次郎まで現れて即変身に入る。
「コラ〜!食べ物を粗末にするような怪人を作るんじゃない!」
「悪の組織にコンプラなんか説いてんじゃねえ……ああでも掃除アタシらもすると思うとダル……おいガンバーガー、あいつらさっさと始末しろ、作戦通りにな」
影を操る能力で物体を操作し、更にガンバーガーがピストルからバーガーを撃ち出して高速で跳弾させる、禽次郎の授かった異常な視力を逆手に取って動きを目で追わせて攻撃に集中出来なくさせる。
ルベルブルーメが昨日モンハン4Gでクソみたいなヘビの亜種に散々苛ついた経験から思いついた作戦である。
残像のように360°自在に跳ね回るハンバーガーは受け止めることもかわすことも難しく近寄ることも困難だった。
「今だ!テキサスビット発射!」
ガンバーガーはルベルブルーメのこだわりを込めて作られた為スペック盛り盛りでビットまで付いている、リモートコンドルも彼女のアイデアなので実は星壁獣考案では一番貢献している。
ガンバーガーのバーガーが激しい跳弾の末にトレスマジア3人の口にヒット、ゴジュウイーグルは戦隊マスクなので顔に当たっても若干跳ね返るだけだ。
「よっし作戦成功!ガンバーガーよくやった帰還しろ!後は好き放題させてもらうか」
「あっ待たないか!ハンバーガー食べてみたかっただけどこれは……っていう前にトレスマジアのみんなは大丈……大丈夫じゃない!!」
「ま、待てぇ……エノルミータぁ……」
「いやぁなにこの姿……か、体が重い……」
「こいつ……い、一番精神的にくる技使ってきおったな……」
ハンバーガーを口に詰め込まれたトレスマジアの3人は一瞬のうちに衣装がパッツパツでふっくらというかぼっちゃりした肥満体になってしまいある意味では見るに堪えない、前に犬になったかと思えば今度は豚になって散々である。
マジアベーゼが訪れるとムチムチになった魔法少女達を見てこういうのも悪くないな……と思いながら腹をプニプニする。
「あの星壁獣ガンバーガーの出す弾は食べるとそこそこ美味しいですが体重を2倍にしてしまいます、50キロなら100キロになってしまったわけでいつものように戦えますか?」
「ば……馬鹿にしないで!これくらいのことで……ぜぇ、ぜぇ」
しかし思ったより肥満化は枷となりトレスマジアに襲いかかる。
飛行しようとしてもずっしりして浮かぶこともままならず助走するとすぐに息切れしてしまう。
膨れ上がった体が視界を遮って見えない所から鞭を打たれ、ベーゼの姿や武器も相まって本格的なSMプレイになる、ゴジュウイーグルが加勢しようとするが対策として一緒にネロアリスを連れてきた。
ネロアリスは能力だけ見ればエノルミータ最強格、彼女は魔力をフルに使うことで玩具を元に様々な事象を招く。
他世界は新時代まではフィクションと認識されていた、その為世界を巡れば存在していた……ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーの玩具も。
ベーゼはセンタイリング(おもちゃ)を何個か与えていた、これをネロアリスがちょっと手を加えるだけで重レンジャーのユニバース戦士が持つ『復元(リゲイン)』のような事象が行える。
各自それなりに魔法少女以外と戦う時の対策手段は何個も考えているのだ。
「な……なんだ!?敵が増えたぞ!」
「おとなしく戦隊は戦隊とだけ戦っていればいいんです!行きなさい邪悪戦隊集団!」
アバレンジャーから生まれたアバレキラー、ドンブラザーズから生まれたドンムラサメ、キョウリュウジャーから生まれたデスリュウジャーが一斉にゴジュウイーグルに襲いかかり手出しをさせない。
おもちゃのセンタイリングならいくらでも通販局から買えるのでストックにも無駄はない、A級時空犯罪者でも区別なく売り物を出すのがあの組織らしい。
改めて邪魔者はいなくなったので精一杯楽しもうとしたがマゼンタの姿がない……と思ったら若干飛んで真上からボディプレスをしかけてきたではないか。
マゼンタ肉とコンクリートに押し潰されて名前通りベーゼは彼女にキスをするような形で圧迫される。
「ぐええ……つ、潰れる…でもこれはこれで悪くない……いややっぱりダメだ暑い!!キスマーク!!」
「わかりましたマジアベーゼ様!私の能力をユーベルコードとして共有します!」
「時間を止めてもしょうがないんですよ!もっと何か無いんですかパワーが増えるものとか!」
「ありません!オブリビオンは基本的に3つしかユーベルコードを使えないんですよ!というか私もアズールとサルファに潰されました〜」
方や悪の女幹部がぽっちゃり系魔法少女に押し潰されて、方やちゃんとした戦闘……というところで突然マゼンタ達の姿が消える、どうやらトレスマジア募金が発動して別の世界に強制的に派遣されたらしい、あの体型のまま。
勝手に楽しみを奪われたマジアベーゼは舌打ちしつつもネロアリスが眠くなって魔法が切れそうだったので撤退することにした。
「キスマーク、後始末頼みましたよ」
「お任せくださいマジアベーゼ様♡あと私のユーベルコードは副作用でちょっと股間に私と同じ物が生えちゃうこと伝え忘れてました」
「オッケー!貴方後で私と一緒に去勢!」
「な……なんなんだ、あいつら……」
◇
「それでトレスマジアはどうしたんだ?」
「よく頑張ったんだけどねぇ、デブの魔法少女なんかいらないって呼び出しておいて監理局からすぐ戻されて今必死に走り込みしてるよ」
「そうか、まあ俺としてはその分こいつらの面倒を見る時間が増えてアイツからバイト代が貰えるからいいけどな」
戦いが終わってテガソードの里。
上記の説明の通り即座に帰されたトレスマジアはリベンジも兼ねてダイエットに必死になっていた。
痩せられるかよりもこの文字通りの重荷を抱えたまま戦闘を安定させるための鍛錬でありポチと禽次郎が一緒に付き合ってくれている。
ゴジュウジャーもマジアベーゼを倒そうと手は打っているが向こうからすれば本気で相手をする理由がないので中々バトルまで持ち込めずのらりくらりとかわされてしまう。
気が付けば陸王達もトレスマジアと長い付き合いになっており、トレスマジア募金の確認をしたりダイエットに効く料理を爆神がまかない飯として用意して、というところで代理で面倒を見ている吠に角乃は離れた所に連れて疑問を問いかける。
「…………今更だけど、この子の親はどうしたの?だってマゼンタ……花菱はるかってまだ中学生じゃない?それなのにずっとこの男が構わないといけない上にバイト代はあの子が直接出してるのよ、おかしいと思わない?」
「おかしいかもしれないが関係ないことだ、本当に親が忙しくてこの世界からも離れてるだけかもしれねえだろ」
「確かに彼女達は魔法少女だけど私達と違って正体は秘匿している……マジアマゼンタとしての一面を知らない者からしたらただの子供、その家族も特別性はないわ」
角乃は元の世界で自分の目的の為に探偵を行っている、その傍らでこの世界について色々調べ、指輪の加護で読心術を得たことで住所くらいは特定した。
ちなみに過去に1回マジアベーゼにも触れたが彼女の変態性以外は何も見えなかった、指輪を持っているようには見えなかったので外部から強力なプロテクトがかかっていると見た。
話を戻して角乃は3人の家を調べてみたが家族が居た痕跡がどこにもなかった……監視もしたから間違いないという。
「お前それ……トレスマジアにバレたら捕まるぞ」
「そうね、正直リスクは高いけど何か嫌な予感がするのよ……マジアアズールが言っていたでしょ?時空監理局がマジアベーゼを利用している、実際奴は犯罪者の中でもトップ級になった、自分のエゴの為にやるような男って確信も出来たのよ……これはトレスマジアだけの問題じゃない、私達の世界にも迷惑をかけることになるのよ!?」
吠は少し考え込む素振りをしたあとに古くなった写真を見る、懐かしい家族写真。
ノーワンワールドに幼少期に漂流した吠とその兄は十年ものの長い歳月を苦しみながら生き続けて希望なんて持っても苦しいから望むことを捨てろと言われ生きてきた。
その兄も行方知れずになり帰ってくる頃には……十年という年月は家族に会いに行くには遅すぎる時間だった。
もう自分には関係ない存在……しかしそんな人達が自分のせいで迷惑を被る?
それだけじゃない、今世界を荒らされたらまた次の選挙に向けて総理になるべく頑張っている熱海常夏にも被害が及ぶ。
……自分にはそれだけしかない、だがノーワンワールドで言われた通り希望なんて持つだけ無駄……失った時に苦しいだけという言葉がフラッシュバックする。
「……俺はどうすればいい?マジアベーゼはそんなことをしないって信じるしか出来ねえ、家族は俺とはもう関係ない人たちだ……だから俺のせいで迷惑をかけるなんてことも許されない」
「いいえ、それこそ信じるだけ無駄よ……これは警官時代からの私の予想だけどもし黒影がマジアベーゼを利用する気なら全員にとって最悪の一手をここで打ってくる、近い将来必ず……」
「た、大変だよ二人とも!!ニュースを見るんだニュース!!時空規模のものを!!」
禽次郎が血相を変えてスマホを持ってくる、スマホ画面にはニュースアプリの緊急速報を見せてくる。
その内容を一目見て言葉が出なくなるが表情から吠でも何が言いたかったのか伝わってくる。
『遅かった』と……。
マジアベーゼが時空で殺人を行った。
時空監理局運営のニュースサイトでそう特集されていたのだ。
「なんだよこれ……あいつが……人を殺したってのか?そんなこと出来るやつには見えねえ」
「見える見えない、出来る出来ない、やったやってないの問題じゃない、いい?考えてみて……あいつの肩書はA級時空犯罪者!大きなブランドは尾ひれが広まって存在だけでも凄く見える……今の彼女がそう!」
「……つまり?」
「マジアアズールは正しかったのよ……大物という肩書きにして知名度も恐ろしさも細工すれば何も本人を直接コントロールするまでもない!!」
◇
「してやられた……ッ!」
一方エノルミータの方も即座に状況を把握してアジトに全員収集、うてなはこの時初めてヴェナリータが狼狽える様子を見た。
実際今回のニュースは身に覚えが全くない為偽物を用意したと見て間違いないが最悪レベルの時空犯罪者が行ったという状況だけで信憑性ははるかに増す、たくっちスノーももしかしたら記録に残っている犯罪のうち何割かは本当ではないのかもしれない。
ただし今回の件は適当にでっちあげたわけではないというのが大きく問題となる点だ、真珠にエゴサを、キウィにはヴェナリータを連れて現地に出向いてもらったのだが……。
「正直な所かなり胸糞悪くて熱り立ってるし信じたくないけど間違いなかった、見た目、魔力、技……傍から見ればベーゼちゃんにしか見えない、アタシに言わせれば中身は本物に全く劣るって印象だけど」
「だが妙だ、あまりにもそっくりすぎる……時空監理局が模倣したとしてここまで精巧に作れるはずがない、見た目はまだしも能力や魔力の反応は変身者の精神が作用される、それ故に100%のコピーなんてものは作れるはずがないんだ」
「ヴェナリータさんから見ても99.9%どころか100%一致……ありえないと言いつつもこれは現実です」
直接顔を見たキウィは振る舞いがベーゼちゃんらしくないということで便宜上その偽物を『エアプベーゼ』と名付けた。
エアプベーゼは現在進行形で各世界に回り様々な過激行為を繰り返して人々を恐怖に陥れる。
まさか自分自身に解釈違いを感じるとは思わなかったが黒影も黒影でこんなことで自分をアピールして……トレスマジアをエアプベーゼと戦わせる、いやそれどころか引き立て役にする気だ。
「あいつライン越えたな……!!」
「うてなちゃん、例のそいつから緊急配信だってよ」
「後でリストにして、今は苛立って話を聞くだけで手が出そうになるから」
「いや、それがそうもいかない」
キウィが見せたスマホには黒影が如何にも大きなデスクに座り深刻そうな顔をして語りかけてきた。
よくあるやつである。
「皆さん、ついにマジアベーゼが行動を起こしました、俺は以前から危ないと目をつけており……そして遂に!マジアベーゼを影で操る巨悪の存在を確認しました!」
「は?」
「そして、その人物からメッセージも届いています!それがこちら!」
「……は?」
そのメッセージの内容にエノルミータ全員が呆然とする。
だがそれは彼女達にしか理解できないだろう。
『時空全土の数万を超える世界の諸君、我々の名は……シン・ロード団!』
最終更新:2025年04月30日 20:41