「何が真化だ!戦隊のなりそこないを寄せ集めたパワーアップ形態如きが時空の創造神に勝てると思うのか!?」
「ようやく汚え本性出おったなぁ!!神気取りのド腐れがァ!!」
満身創痍とは思えない速さでサルファは黒影の動きをかわしてカウンターで一発叩き込む。
パターンは20数回の追い込みで大体把握したので後はみなぎる身体をコントロールして攻撃を仕掛ける。
黒影はここにきて邪魔者が入らないようにした血液半分の代償が枷になっている、
たくっちスノーさえいなければこの程度どうということはなかったのだが黒影の場合本気でたくっちスノーが積極的に解決しようとすると思っていなかった。
時空監理局のルールに則りマゼンタと共にアズールの治療と立会人に徹しているがどうにも気に入らない。
一番気に入らないのは3周目のあの戦闘でもそうだったが、自分が遅れを取っていることだった。
「マゼンタ、そろそろアズールも癒える!例のやつ頼む!黒影もそろそろみっともないからやめろ!お前はメイドウィンブラストを使って!あいつは戦隊の力どころかもう魔力も使ってない!やればやるほど無様になるし……つーか他の分身の仕事抱えてんだろ!?TELが山程来てんぞ!!」
たくっちスノーのブチギレ抗議はめんどくさいと感じてるので黒影はシン・ロード団を撃退したという報告書だけ書いてそのまま戻り、サルファはハートを付け戻して元の姿に変化する。
「けっ!ここまでめちゃくちゃやっといてごめんなさいも無しか」
「サルファ!すぐ治療の続きするから動かないで!」
「いやはるか、お前なんか言う事あるんやろ」
「それは倒れてる内に言ったよ……」
たくっちスノーがはるかに伝えるように頼んだこと……それは今回の騒動はシン・ロード団も監理局も利用して自分の目的を果たそうとした存在が明らかになったと報告すること、その存在は……ガリュードである。
ガリュードはリングハンター、目的は全てのセンタイリングを集めて本来の組織に献上することであり、そのために吠の餌として利用した黒影のセンタイリングに目をつけてアピールのために全てのセンタイリングまで用意させる、吠がそれを受け取らないことまで想定の内であり後から時空規模の騒動に便乗して奪い取るつもりだった……真意はともかくこれが真実だったことにして時空を納得させた。
ついでにそのシン・ロード団を倒したのはイミタシオだという宣伝も。
その直後に黒影がマゼンタに掴みかかり、ぴったりのタイミングで薫子が蘇生してぶっ飛ばしたという経緯らしい。
本当にテガソードが危ないタイミングで起こしていたらしい。
「……しかしまさか専属魔法少女辞めますってだけでこんな苦労するとはな、アズールとマゼンタにはだいぶ迷惑かけたわ、すまんかった」
「いいのよ、今はただ帰りましょう」
「その……そういうことなので、ごめんなさい!」
「いやいや、自分のほうこそバカ5人とそのトップの無茶振りに巻き込んで悪かったね、君のライバルである悪の組織にも……」
たくっちスノーはポチに頼んでトレスマジアを元の世界に帰そうと頼むが……。
『ご、ごめん!ちょっと急用頼んでいいかな!?遠野くんが満身創痍なんだ!!』
「遠野さんが!?」
マゼンタ達はポチに特設の
時空の渦を作ってもらい吠の救助に向かう際、たくっちスノーと黒影は軽く会話を交わす。
「どうしてこんなことしたの?おかげで俺のお仕事は台無しだよ」
「仕事の為に
はじまりの書に手を出したのか?自分が気付かないと思うなよ、この件はトレスマジアにもしっかり説明させてもらうのでな」
「……いいよ、他に面白くなりそうな技術はあるし」
◇
「で!改めて全部説明してもらおか、副局長さんよ」
「……それは構わないんだけどさ、なんでウチの所なの!?テガソードの里でもよかったじゃん!!」
「だってたくっちスノーのウチだし」
「自分ちじゃねーよ!自分も居候してる立場なんだよ!」
「そういえば田中とか家にあったけどアレカモフラージュじゃなかったのか」
「それはともかくなんで爆神さん薫子ちゃんに頭下げてるの?」
「テガソードと話出来る方法聞きたがってるらしい」
「いやウチもあれ半ば走馬灯やったからな死にかけた末やぞ」
「それに話聞く限りだと俺達の契約の話とそんな変わらねえだろ」
「遠野あんただいぶボロボロだけど大丈夫なの?」
「ええいやかましい!!ウチもそんなに広くないんだからさっさと要件済ませて帰れ!!」
襖の先からロードエノルメの変身前が怒鳴り声を上げて現れる、もちろん本物偽物問わず認識阻害をつけているのでたくっちスノー以外はこれがエノルメであることに気付く人はいない。
そもそもエアプベーゼも突っ込んでいたがロードエノルメ→イミタシオという意味不明な肉体構造の変身を挟むので更に気付くこともないが……。
「たくっちスノー君……女の人に泊めてもらってるの……」
「ちゃんと生活費とかは払ってるよ……えーこほん、彼女はこの部屋の主の田中みち子さんだ」
「一応こいつが来てからはイミタシオの芸能系のプロデューサーも任されている」
「あれ?そういえばそのイミタシオは?」
「奴はまだトップシークレットだ、住所も本名も機密事項で知っているのは私だけとなっている」
「実はその……自分もイミタシオが普段どうしてるかは知らないんだよね、ははは」
そりゃ本人なのだから当然である、お前が始めた物語とはいえみち子はある時はイミタシオの専属プロデューサー、ある時は謎の魔法少女イミタシオ、そしてまたある時は時空犯罪組織シン・ロード団のロードエノルメのトリプルフェイスとして活動することになるがあまりにも過密スケジュールである。
たくっちスノーもみち子もお互いに把握してなんとしてもバレないように目を合わせている。
「それでたくっちスノーはなんでここに?確かこの仕事任されたのって俺と田所くんだよね?」
「ああ、話すと長くなるんだがまず肝心なところから言うと黒影は早い段階でやらかしていたんだ……」
同じ頃、包帯ぐるぐる巻きながらもキウィ達が耳を澄ませて話を聞いていた、トレスマジアを先回りしていたら偶然にも田中家に辿り着いたのだ。
本来ネタバレはうてなの好みに反するが今回は完全にトレスマジアに出し抜かれた形になるのでなんとしても情報を持ってこいというヴェナリータからの指示だった。
「キウィちゃん盗聴はまずいんじゃ」
「ヘーキヘーキ、あいつらだってクソみたいな組織だし」
たくっちスノーとみち子はエノルミータの面々が盗み聞きしていることに気付くが知って欲しかったので何も見なかったことにして話を続ける。
「本来話していいことじゃないんだが、世界にははじまりの書というものがあるんだ。」
はじまりの書とは過去に黒影が作り出した物語のような物が一冊に全て詰め込まれた特別な物、このはじまりの書から時空が広がっていき世界に起きる事件や事象まで全てここに記されている。
メイドウィン達はこのはじまりの書に書いてある通りに世界を導くだけで世界の管理をすることが出来るとんでもない代物だ。
その発言を聞いて竜義が異議を唱える。
「待った、つまり我々の場合……テガソード様は最初から本に書いてある通りに実行しているに過ぎないことになる、テガソード様が最初から出来レースで願いを叶える人間を決めているなんて不公平なことをなさるだろうか?」
「もちろん神様として本に従うがままなのは問題あると敢えて読まずに我が道を行くメイドウィンも多いよ、テガソードもその一人だ……あとこれは偶然聞いたんだけど黒影から本の通りにするなって言われるメイドウィンもいてね」
「それを聞いて安心しました、では続きを」
たくっちスノーは話を続ける、時空監理局は全てのはじまりの書を貯蔵しており実質どんな物語でも知っている。
簡潔に言えば全ての作品の最終回まで知り尽くしている……というのも少し違うがここは割愛。
当然この世界もはじまりの書の通りに動いており、ある少女がマジアベーゼに変身してマジアアズールが1回堕ちかけて戦闘を繰り返してロード団と呼ばれるものが台頭して……というところまでは知っているところでサルファが挙手する。
「じゃあお前は知ってるんやな?エノルミータの奴らの正体とか未来とか色々……」
「知ってるが言わない、監理局のルールだからね……ってのもあるけど普通の人だと膨大な知識が頭に入って弾け飛ぶからね、例外除いてメイドウィン以外ははじまりの書を読めないよ」
そしてここからが本題、黒影は目的こそ分からないが秘匿されていたにも関わらず全ての世界が時空を理解するようになる『
時空新時代』に突入してからというものの黒影がはじまりの書を途中から改変しようとしていることを知って分身を増やして確認していたというのだ。
「ポチがさっきお前田所が一緒に来てたって言ったよな?」
「ああ、あの辛辣な色黒の男な……ゴジュウジャーが来たあたりで帰ったと聞いたけど」
「実は田所がその例外で何の支障もなくはじまりの書を読める存在なんだ」
「はあ!?」
実は
野獣先輩はポチがトレスマジアと一緒に居て仕事をしている間にバイトとは別ではじまりの書の解析を行っていた結果、遠野吠が巻き込まれた時点で今更だが既に本来の歴史からだいぶ離れてしまったという。
「もう無関係な物で言うとマゼンタの真化かな」
「え?あたしの真化に何か起きるの?」
「田所によると元々マジアベーゼは戦闘時に暴走する予定だったらしい、その際に異形の怪物になって魔力のある程度がマゼンタに注がれる……あっ、それがこの写真ね」
「えっ!?なにこれ、えっ!?これあたしなの!?」
「うわぁ……さすがにあいつの余計なもの注がれてるだけあるな、これ出てきた時のトレスマジア相当大混乱しとったな……あっそういえばウチも真化しとらんかったか?」
「うん、名前は『電撃天使』で見た目も能力もシチュエーションも全く違うけどね」
「おおええな、ならウチの今の真化は『従雷天使』にしとくか」
「……ネタバレやめてもらえあばばばば」
「ベーゼちゃんが最悪な未来をネタバレされてバグってる……」
これが何故回避されれたのかというと、暴走するはずの膨大な魔力は今回シン・ロード団の戦闘でロードエノルメへの殺意へと矛先が向いて『世反獣』に向けられてしまったのでマゼンタの闇堕ち風形態もそのまま途絶えてしまったということだ。
他にもシン・ロード団は出てこない事とか……特にキスマークという存在は本当に聞いたことがない。
とにかく黒影が理由は分からないが物語の改変をしようとしていたことは確かだ。
「そして自分は田所から黒影がイミタシオを始末しようとしてることを知って、前もって彼女に会いに行ったというわけだ、本来なら別の仲間と合流して『シオちゃんズ』というチームを組む予定だったんだがどうやらその子に会う前に襲われたらしく……」
「その件に関してはイミタシオが後から合流する予定だそうだ」
「……ん?待って、じゃあみち子さんは本来無関係ってこと?」
「ん?あ、ああ……そうだった……のかもしれないな……たまたまこいつがイミタシオを連れて私の家に上がり込んで来て……な」
言えない、改めて自分がイミタシオであることなんて……。
◇
みち子は回想する、ロード団としてマジアベーゼに敗北してまるで子供のような扱いを受けて弄ばれて心が完全にぐちゃぐちゃにされた時のあの屈辱……そして最強と思われていた自分の力は全てヴェナリータの借り物の力と知らされ……総帥の地位も力も全て失って命からがら逃げ出す。
そして本来はこれまで奪い取ってきた魔法少女の変身アイテムをくすねてイミタシオに変身し、かつて見逃した存在と共にシオちゃんズを結成して打倒マジアベーゼを誓うことになるのだが……。
ポチがトレスマジアの元に現れ星壁獣と戦っている間、みち子を歓迎していたのは世界観に似つかわしくないロボットの大群と……
「マガマガの震怒竜怨斬!!」
それを一瞬で大きな剣で消し飛ばす首のない化け物の姿であった。
「なんだお前は……エノルミータの新人か?それとも魔法少女か?」
「うーんどっちも不正解だ、自分はアンタを守りに来た。」
たくっちスノーはみち子に素性を明かして将来イミタシオという魔法少女になること、上司がその未来を都合が悪いとして殺そうとしていたことに気付き止めたことを話す。
時空新時代のことは知っていたし、かつては世界征服を本気で考えていたのでみち子の受け入れは早かった。
更にみち子の現在の目標はマジアベーゼへの復讐、たくっちスノーとしても黒影が新しいライバルとしてマジアベーゼを利用している噂を聞いたので潰したいという利害は一致して共同生活へ、更にポチへの協力として魔法少女イミタシオをプロデュースすることにしたのだ。
予想外だったのはシン・ロード団の存在、こんな形で自分を利用されるとは思わなかったがロードエノルメが2人いては都合が悪いので直属で消そうとしたことは納得がいった。
更に打倒マジアベーゼを掲げて自分のされた屈辱を語り、イミタシオが幼女っぽいのも多分アイツのせいなどと愚痴ったところ、たくっちスノーからすればベーゼの所業にドン引き物な上にポチという似たような同僚が居たので変態性の愚痴り合いによってビックリするほど意気投合、シオちゃんズほどとは行かずとも息の合ったコンビになってしまったのである、偽物(イミタシオ)と
マガイモノというなんとも縁のあるコンビだが。
更には時空で通用するスペックになるためたくっちスノーから直接手ほどきも受けている、A級
時空犯罪者は伊達ではなくどんな相手や状態も想定した姿に変身できる彼は特訓相手として最高峰であった。
もちろんここまでは内緒にしており、自分の住処はたくっちスノーの関係者に手を回して『イミタシオ魔法事務所』となりみち子はプロデューサーでたくっちスノーは所長、イミタシオはこの事務所でスカウトした期待の新人としてポチのサポートを借りて時空に広める予定であった。
聞くだけ聞いて……吠がようやく口を開く。
「こいつらの事情は分かった、けどなんで俺は関係ないのに巻き込まれることになった?」
「確かにゴジュウジャーはトレスマジアとは無関係だ、マジレンジャーのユニバース戦士に関してもここに来たのは偶然だしね……だからこれだけはマゼンタと相談して考えた推測になっちまうな、話してくれ」
「多分遠野さんの場合は……順著が逆だったんだと思うの、黒影局長が関わったんじゃなくて、そっちの世界の人が利用して同じタイミングのあたし達と混ざる結果になった」
「そして利用してきた人物がガリュード……というわけだね?」
「ガリュードは俺の事をよく知っているような言い方をしていたが、俺に知り合いなんて……知り合いなんていねえ、そいつが利用して結果的にそんなことになったなら今回の件は俺のせいということになる」
「あまり気に病むな遠野、こんなもの突然の災害に見舞われるようなものだ」
「そうだよ、予想できるわけないんだから吠っちが悪いとは思わないし!」
「分からないことが最後に一つ、イミタシオと常夏熱海は繋がってるの?元総理大臣と新米魔法少女、変な組み合わせじゃない」
「えっ総理大臣!?おいあいつそんな凄い奴だったのか」
「あっごめん時間ないから言えてなかった……常夏総理はゴジュウ側の自分の協力者だ、遠野吠の情報を集めてたら向こうから来て、随分アプローチしてくれたよなぁ……商品開発とか宣伝とか協力してもらったんだ」
「そうか、あいつは元気にしてたか?」
「そりゃもちろん、君のことをサンシャインベストフレンドなんて呼んでやかましいくらいだよ」
「そうか……」
「……遠野さんが嬉しそうにしてるところ初めてみました」
「……で?話は終わったんだろ?これからイミタシオのグッズ開発の計画など予定も多いんだ、さっさと帰れ」
「確かにちょっと長居しすぎたかも……失礼しました!」
トレスマジアとゴジュウジャーはこれで出ていった、バレないようにエノルミータも撤退してようやくみち子は一息付く。
たくっちスノーもまた後始末の為に一度時空監理局に戻っていった。
後日、たくっちスノーは時空全土に様々なことを発表した。
トレスマジアはメンバー、マジアサルファの訴えによって専属魔法少女から解雇、新たにイミタシオという新人を配属。
マジアベーゼがA級時空犯罪者にランク付けされたことに関しては黒影の気の迷いとバッサリと切り捨てて適切なS級辺りまで一気に降格。
しかしAからSとなるとゲーム脳だとよりランクアップしてるようにしか見えないので余計に勘違いされたことはまた別の話。
更に
ジーカの独占として黒影が行った他世界救助の代金も批判して免除、今まで通り
時空ヒーローは好きに活動出来るがその代わり
時空監獄のペナルティが上がりマナー違反を犯したものは速攻で処罰されるようになり……結果的にトレスマジアとマジアベーゼが望んだ余計な事をしてこない世界に近付いたのだった。
そして黒影は……たくっちスノーが作ったあるシステムに目をつけていた。
「面白いものを作ったねたくっちスノー……これを使えばもっとお話を面白く出来るぞ……g-lokシステム起動!」
黒影がボタン一つ推すだけで世界がまた一つ歪む。
柊うてなとその世界にまた大きな脅威が待ち受けていることを知らない。
最終更新:2025年04月30日 20:43