柊うてなが突然7人に増えたという情報はエノルミータ全員を驚愕させた、約2名のみ「うてなちゃんがいっぱいだ!!」「最高ですマジアベーゼ様!!」とテンションがぶち上がったがエアプベーゼと違い殆ど別物な者が6人もいるので混乱してしまう。
本物うてなとしてもカオスな光景になる前に全員回収できて良かったと心から思っている。
よく見ると年齢まで違うものも存在している。
「えーとまず……各自名前は私と同じ柊うてなで良いんだよね」
「だから私はさっきからそう言ってて!名前が同じだけで悪の組織とかそういったものとは無関係だと」
「諦めたほうが良いってバントっちさー、そっちの世界じゃそうだっただけでここはそういうことってわけ」
「……まあそっちの私から聞いて我々もお互いに情報が食い違っていることは分かりましたが」
妙なことに7人の柊うてなの話す内容や知っていることは全てが不一致。
ギターうてなはそもそも魔法少女が存在せず、先ほどから何も言わず佇んでいる傷の多い大人びたマジアベーゼは周囲を確認しているのみ。
そんな中、吠と会っていたうてなが挙手して何かを思いついたようだ。
「あの……えーと、これってもしかしてマルチバースってやつじゃないかな、ほら、ちょっと前にも少年ジャンプで様々な世界線の漫画の主人公が集まる映画がやってたし、キズナファイブでも並行世界のレッドが集まる展開とか……」
「ま、マルチバース?偽物の次はパラレルワールドてすか……いや、あの趣味の悪い局長ならありえますか」
出来ないと考えるのが不自然だ、実際に柊うてなが集まってエアプベーゼのように作り物じゃないのだからそれで納得するしかない。
ドッペルゲンガーは巡り合ったら死ぬとかガッツファイアしそうな気もするがこの人数だと一周回って大丈夫な気がしてきた。
だがうてなとキウィはともかく、真珠らからすれば誰が誰なのか区別がつかないので便宜上の名前をつけて自己紹介してもらうことに。
「まず私が本来のマジアベーゼです!本来って言い方もおかしい気はするけど……念の為!魔法少女トレスマジアの面々と戦って好きなように楽しむがポリシーです!」
「じゃあ私は……ムーンベーゼにしておこうかな、私の世界には魔法少女はいなかったな……あっでも、魔力戦隊サンマジカルってスーパー戦隊がいる、でも聞く限りだと戦隊好きなの私だけみたいだし……」
「前うてなちゃん変身ヒロインはなんでも好きとか言ってたけどマジレンジャーにはなんか違うとか言ってたよな」
「いや違うのキウィちゃん!嫌じゃないよ!?アレも好きではあるんだけどさぁ……ジャンルが違うというか!魔法少女を期待してたときに来るのはカレーライス頼んでハヤシライスが来た時ぐらいの衝撃で!」
「戦隊も戦隊で良いんだけどなぁ……私としては貴方と前から絡んでるナンバーワン戦隊ゴジュウジャーというよが楽しみです!」
「次良いですか、さっさと済ませますよめんどくさいので……私はスローベーゼにしておきます、20代なのは私だけみたいですね、トレスマジアはいますし悪の総帥はやってますけどお給料はイマイチだし貴方達のノリにもついていけないというか……後は会社員とエノルミータの名刺を持ってるのでコレ見て理解してください、はぁぁ……」
「……今でも理解が追いつかないけど、私だけ特異ってことでいいのかな、私は柊うてな芸名マジアベーゼ!ここではボルトベーゼ、エノルミータは悪の組織じゃなくてロックバンド!トレスマジアは魔法少女チームじゃなくて人気アイドル!そういうバトルとかしてないタイプですから」
「私は……そうですねぇ、スカーベーゼということで、私はトレスマジアと戦闘もしていますが皆さんは私の知る方ほど過激な方ではないみたいですね、そちらのトレスマジアとも戦ってみたい……ああそして私のような傷を残してあげたい……」
「え、えっと……レッドベーゼです、私も他の何人かみたいに魔法少女と悪の組織として戦ってますが、そちらの私みたいに破廉恥な事はちょっと……というか、そんな格好私には出来ません……あわ」
「あっ、大トリ?まああーしはそんなに変わんないかな、魔法少女とは戦ってるし悪の総帥だしー、でも皆あーしみたいにパリパリピじゃないっぽい感じ?まあこれが個性なら別に良いかなって感じっしょ、あっ、名前はオルタベーゼで!」
「ここまで聞いてどう思うキウィちゃん」
「全員全然イケる」
「趣味傾向の話はしてないよ」
うてながそれを言うのかというツッコミはさておき、聞いて回った限りだと魔法少女ではなく戦隊オタクのムーンベーゼ、社畜となってやる気を感じられないスローベーゼ、アイドル系の世界観となったボルトベーゼ、魔法少女の行いが過剰すぎるスカーベーゼ、本来と逆でエッチなことが苦手なレッドベーゼ、そして更にうてなと逆で陽キャで金髪黒ギャルなオルタベーゼ。
個性の暴力でついていけなくなりそうだが、話しているとヴェナリータがようやく現れる。
「おっと、まさか事実だったとはね」
「あっヴェナっち〜」
「あれなんかヴェナさん小さくないですか?私の組織だともうちょっとドラゴンみたいになってましたよ」
「えっなにこのマスコットみたいなの……!?」
「あっお疲れ様ですCEO」
うてな達によってヴェナリータへの反応も様々である、本当に細かいところで違いがあるようだ。
しかし本家うてなとヴェナリータにはまだ課題がある、この大量のうてな達をどこに隠しておくということだ。
「マジアベーゼとしてはともかく柊うてなが何人も居たら世界は大混乱ですよ……」
「うーん、ウチもこれだけの人数を隠すスペースを作るのは時間がかかるからね」
「実際私達もそれは困っていました、戸籍もないし貴方のお母さんにも頼れないし……元の世界にも帰れなくなっちゃって」
「アタシが全員分面倒みよっか?」
「ああ良いですね金持ちの年下のヒモというのも……ああでも私会社ごと転移してるんだよなぁ」
「キウィちゃん!別世界の私を甘やかしちゃだめ!」
ただでさえ個性の塊の変態であるうてなが7人も居て意見がまとまらない所だったが意外なことにスカーベーゼが手を挙げてアイデアを思いついた、念の為マジアベーゼ親衛隊代表としてキウィが耳打ちして聞いてみるとめちゃくちゃ興奮した顔で鼻血を出してグッドサインを出した。
「一体何を提案したの!?」
「まあ見ててください、私とて悪の総帥、生活面や資金面について考えたりはするんですよ」
「わ……私嫌な予感がしてきた」
「う、うん私も……」
レッドベーゼとボルトベーゼが冷や汗をかく中、遂に平行世界の魔の手が迫る……!
◇
一方トレスマジア達もアズールにも事情を説明して平行世界の自分達が集まってきていることを話し終えたところだった。
「私達が各自3人ずつ……まさか私がバンドやってたり、はるかが魔法少女じゃなくなってるとはね」
「あたしとしては魔法少女になってることにびっくりしたよ、魔力戦隊サンマジカルっていうのもあたしだけみたいだし……」
「お前なんでカレー食ってたんや、てかまだ山盛りの食ってるやんフードファイターか?」
「アホか、あいつに勝つにはこれくらいのカロリーとそれを消費するトレーニングが必要や」
「過度なエネルギー消費と肉体負荷のトレーニングは非効率よ、悪に対する鍛錬の方法なら私が指南する」
それぞれはるか、小夜、薫子が3人ずつ。
元の世界である3人を除けばそれぞれ2人ずついることになる、はるか達がパラレルワールドと決定付けたのは
マガイモノと違い血が流れたこととそれ以外に怪しいものが何も無いことにある。
それぞれはるかは戦隊ヒーローと高校生でアルバイター、小夜は仮面をつけたバンドマンと人形のように無機質で冷たい印象、薫子はスケバン姿とストイックに鍛錬を続けるもの……とうてな達と比べると変化は少ない。
しかしどうにも初遭遇だけで息が合わないような雰囲気がした。
たくっちスノーとイミタシオも事情を聞いて駆けつけてくる。
「誰や?あれ」
「みんなイミタシオ知らないの?」
「いえ……私の世界にはあんな魔法少女はいなかったはずよ」
「おいアホ♡これでお前の戦犯確定したよ?」
「……イミタシオムライス50000人前責任を持って作らせていただきます」
来て早々正座しながら厨房を借りて新商品を作らされているたくっちスノーに代わりにイミタシオがはるか達に状況を説明する。
どうやらたくっちスノーの分身の一人が好きなように『もしも』の世界を作り出したり好きなように眺められる装置『g-lokシステム』を別の案件で作成していたらしい。
適当な単語を打ち込んで
メイドウィンブラストを打ち込むとその希望通りのパラレルワールドから来るキャラクターを呼び出せるそのシステムによって……ということで完全にこいつのせいという雰囲気が出来ていく。
「な、なんだよもう!自分の分身がやったって決まったわけじゃないだろ!?」
「でも作ったのはお前で」
「そのシステムが監理局にあって……」
「黒影どころかバカでも動かせるくらい使い方は簡単と」
「基本的に兵器を作るやつとロックを簡単にしたやつは戦犯って知ってる?」
こうして変なところで抜けているのでわりと
時空犯罪者としても監理局としても情けない男扱いされるのである……そもそも男なのか?とポチは変なところでツッコミながらイミタシオムライスをつまみ食いする。
とりあえず今の問題はパラレルワールドのはるか達をどうするかだ、たくっちスノーは呼び出したはいいが帰す方法までは開発してなかったというのでいよいよ袋叩きにされる。
「全体的にお前が戦犯やないか!!」
「痛い痛い!!だってこのシステムはあくまでもしものシミュレーションとして仮想現実を見れるだけで、実際に呼び出せるようには作ってないはずなんだ!!もしもボックスとは絶妙にわけが違う!!」
「じゃあどうするんやウチら含めた6人!!お前ん所の居候が泊めてくれるんか!?」
「出来るわけあるかそんな数!ウチだって狭いんだぞ!!…………ってプロデューサーは言うと思うな♡」
思わずみち子の素で反応してしまうくらいイミタシオも狼狽えるが兎にも角にもはるか達の住処をなんとかしなくてはならない、というところでアルバイターのはるかがどこでもテントと作戦会議用カルビ店に目をつけて皆の方を見る。
「これ、魔法で良い感じに作り変えられそうだと思うけど」
「ま、まさかお前本気なんか!?」
「まあ……またミリィに作ってもらえばいいし」
「俺そこでバイトしていいか?」
◇
そしてパラレルトレスマジアとパラレルうてな達は思った。
こんなに数多くいるんだから全員でかかれば余裕なんじゃね?と。
そう思った一同は全員で戦闘を行おうとして、ものの見事にマジアベーゼ7人とトレスマジア9人が対峙。
あまりにも多すぎるのでレオパルトやゴジュウジャー達は近くで待機。
「あ……案の定そちらも増えてましたか」
「うわぁ……あれ全部マジアベーゼなんだ」
本家ベーゼを中心に魑魅魍魎のように個性の塊が集まる姿はさながら七つの大罪、お互いが気合い充分の中スローベーゼはこんな様子でも欠伸をしてやる気がなさそうだった。
「ちょっ……こら!スローさん!年上だからってその態度はいただけませんよ、真面目にやりなさい!」
「ええ……でもこんなにいるなら私が頑張らなくてもいいじゃないですか、お給料も大した事ないし……まあサクッとは終わりますけど、んじゃあお仕事頑張りまーす」
と、めちゃくちゃやる気のない態度でスローベーゼが真っ先に立ちトレスマジアの所へとトロトロとした動きで走っていく、構えているのはその雰囲気に似つかわしくない巨大な斧、それを片手で難なく振り回して襲いかかってきた。
「あ……あの人意外とパワー系なんですね」
大人数相手には巨大な武器は有利に働くが散り散りになっていき、わざわざ動くのは面倒と判断したのか斧を下ろしてそのまま立ち寝を行う。
「な……なんてやる気のない悪の総帥なの……」
「アタシも初めてみたよ、戦闘中に堂々と居眠りするようなバカ……」
ロコルベコンビもまさかコレがマジアベーゼの一人であるとは思えずその能天気というか気怠さに呆れることしか出来ないがその中であの高校生のマゼンタが一気にマジアベーゼに詰め寄って魔法をかけるが掴みかかる。
「貴方今回復魔法をかけましたね……?我々の世界で回復魔法は御法度、回復の魔法とは言わば疲労の逃避と肉体的の興奮による一時的な麻痺……正直エナドリ飲むのと変わりません、こちとら悪の組織とOLの掛け持ちで合わせて40連勤もしてきたんです、エナドリなんて正直身体が慣れてきてるんですよ」
「そ……そんな!?あたしはバイト中に一日3回使うくらいには効くのに!?」
「バイト中に頻繁に使ってる時点で手遅れって言っちゃダメよね?」
回復魔法をかけても若干起きられるくらいの出力にしかならないスローベーゼは斧を握って地面に振り下ろし周囲に大きな衝撃波を放ち……。
◇
「あ……あれ?」
マジアベーゼは気が付くとアジトで起き上がる、それ以外のベーゼ達も同様だったがスローベーゼが布団に入ってガッツリ熟睡しており、置き手紙が残されていた。
一枚は達筆なスローベーゼの物でもう片方はヴェナリータのものだ。
『疲れを取るにはしっかり寝ることが一番です、私の魔法を使えば全員眠らせることも容易です、ですが全員引っ張るのは疲れたので後で経費をヴェナリータCEOから貰っておきます』
『どうやら彼女は魔法少女を無力化することに特化したビジネス系幹部のようだ、あくまで仕事として……といっても早急に戦いを終わらせて体を癒すみたいだ、コレだから社会人は扱いにくいんだよね、君を『色欲』とするなら彼女は『怠惰』だ』
「な……なんてマイペースな……」
どうやらスローベーゼはあの瞬間に魔法を使いマジアベーゼもトレスマジアも、すぐそばで見ていた面々までまとめて睡眠魔法で眠らせて面倒事にならないように全員引っ張って回収してきたらしい。
「ああっ!!私サンシャインマゼンタの変身ポーズ見てない!!」
「どの道ベーゼもマゼンタも1人ずつしか戦闘してないから意味ないと思うけど」
「でもよかった……私戦いとか本当はあまり好きじゃなくて……ヴェナさんにも無理矢理幹部や総帥にさせられて困ってたんですよ」
「そういえば私も最初はそうだったなぁ……それでどうするの私一同、こうやっていつまでもあの怠け者の大人の私に頼れるわけじゃないよ」
「というか私そういう戦いとか出来るタイプのうてなじゃないので巻き込まれたくないんだけど……」
柊うてなも千種万様、むしろやれないことも多いので総帥としてしっかり考えなくてはならない。
まず最初に考えたのは役割分担だった、戦隊が大好きなムーンベーゼにはゴジュウジャーとの戦闘、労働経験のあるスローベーゼには時空の書類などの事務仕事、スカーベーゼはまだ残っているナメた時空犯罪者の教育、オルタベーゼにはエゴサやSNSアカウントの管理。
レッドベーゼとボルトベーゼはまだ保留というところで自分より先に目覚めていたキウィがウキウキ笑顔で現れる、片手には大量の服が。
「うてなちゃん!バッチリ全員分用意しておいたよ!」
「へ?全員分ってなんのことキウィちゃん、その服は一体……ぎゃーっ襲われる!!」
しばらくしてうてなが鏡を覗いて見ると……なんと自分が着ていたのは執事服、その中からサラシで胸を抑え込んでメイクまでいつの間にか済ませており完璧な男装、いつの間にか自分以外のうてなも男装執事姿となっており、寝ているスローベーゼまで済ませてある徹底ぶり。
興奮したキウィとキスマークが何回も連写して自分の世界に入り込んでいる中、うてなはなんとかチラシを確認するとそこに書いてあったのは……。
「こ……こ、コンカフェ!?」
スカーベーゼが提案していたのは男装執事のコンセプトカフェ、大半が未成年どころかバイトも出来る年齢じゃないのに働くなんて無理があると彼女を探していると浴場に居た。
いつの間にか服を脱いで一緒にいたキウィはスカーベーゼの身体を洗う、触れている右腕は弾痕や火傷痕が多く激戦を感じられる。
「ちょっとあの……どういう事です、大体私の大半がまだ働ける年齢じゃないけど!」
「シークレットブーツを履いて髪型も弄れば悟られることはありませんよ、幸いにも大半が突飛した個性を持ちますのでマンネリ感も……」
「それ以前に私は学校!」
「ああ、貴方の格好は貴方の愛人が勝手に用意したものなので問題ありませんよ」
「問題あるよそれはそれで!」
「にしてもすげー傷だな、向こうの魔法少女が過激なのは知ってるけど一体誰に付けられたんた?」
「……さあ、相当昔なので忘れましたよ」
「え?……失礼ですが貴方っていくつなんですか、スローベーゼよりは年下ですよね?」
「もう数えるだけ無駄なのでやめましたけど……最後に覚えてたのは65くらい……?アズールはもう200年は生きてますよ」
「えっ」
「えっ」
◇
「あっつ……」
「ほら、早くお肉用意してください吠さん」
「なんでウチら全員でこんなこと……」
魔法少女達の変身前の焼肉店と、うてな達の男装執事コンセプトカフェ。
全てを知ってる状況のみち子はたくっちスノーに結構冷たい眼差しを向けた。
いや本当にどうするんだよこんなの。
最終更新:2025年05月11日 07:07