「もうちょっとこう……迷惑被るのは自分達だけ!みたいな安全な都市伝説ないかな」
「自分だけ苦しむのを安全なんて言えるのは自分達だけだぞ、ミリィ……」
前回の怪しいカードゲームの件はメイドウィンや大物までめちゃくちゃ巻き込んでカオスな事態になったので比較的楽しめて自分達だけで解決しそうなファイルを探していたミリィ、その中で興味深い物を見つけた。
『FILE3 ツナカユリコ』
こういった人名らしきものを見るとまさにオカルトという感じで興味深さを感じるんだ」
ツナカユリコとはゲームに関する都市伝説であり、一部のマニアのみが知る……ネットで広がった怪異である。
ゲームの主人公にツナカユリコという名前を付けて遊ぶと不吉なことが起きる……場合によっては『ユリコ』でもまずいという。
「でもこの都市伝説、最近は聞かないよな?」
「少なくとも『ユリコ』だと引っかかる女の子多いからこれは無いよな、ツナカユリコだと6文字でここまで打ち込めるゲームも少ない……ああ、そういえばそもそも名前を変えられるゲーム自体見なくなったか」
デフォルトネームで遊ぶことや条件の難しさなどの時代の変化もありツナカユリコが広まることは早々ない、そもそも『ユリコ』だけでも発動するなんてことが起きたらもっと騒ぎになっていたことだろう、あくまでトリガーはツナカユリコだ。
「ちなみに元の話だと30年も昔から伝わってて、ツナカユリコでゲームを始めるんじゃなくていつの間にかツナカユリコって名前のセーブデータが混ざっていたんだってさ」
「ゲーム風の幽霊ってわけね……でもツナカユリコって名前で打ち込む方が広がっちゃったと」
時空ならいつの間にかツナカユリコがセーブデータに混ざっているというのもありえない話ではない。
ツナカユリコがどれだけゲームをやり込んでいるかもどんなタイミングで現れるかも分からない、元の話では特定のコマンドだとか3年後に突然だとか言われており、確認した人は高熱に見舞われたとか……この時点でオカルトの片鱗を見せている。
実際に調査するために何個かゲームソフトを用意してある、ポチの部屋から取ってきたものだ。
定番のドラゴンクエストを始めとして全て主人公の名前を変更できるものだ。
命知らずな
たくっちスノー達はポチのセーブデータのバックアップを取って一旦パソコンに移し、新しいセーブデータを作成して一通り遊んでみることにする、こういう都市伝説は調査という名目でゲーム出来るのだから悪くない……とはいえ明確に被害を出す危険なものであることには変わりないが。
◇
一通りプレイから2時間後、現状変化などはないままりゅうおうまで辿り着いてクリアしそうになっている。
体調面は
マガイモノなので何の問題もない……普通のゲームもやっているがツナカユリコのセーブデータが混ざってくる事例も無い。
ツナカユリコはドラクエは好みじゃないのだろうか。
「もしかして
リアルワールドのゲームは有名になりすぎたからもう出てこないとか?」
「都市伝説がゲームを入り好みするのかよ……ポケモンはどう?」
「それっぽいものがあったりしつつも、気の所為とも感じられる微妙な範囲といったところだ……あっそういえばポケモンの都市伝説、最近聞いたやつだとポケモンがトレーナーのフリしてジムに挑戦してるやつがいるんだってさ」
「そんな面白い事例、普通に都市伝説じゃない形で見てみたいものだけど……とりあえずドラクエの調査はこのあたりでいいか?」
今のゲームでは何の進展もないただ遊んでいるだけになると判断してドラクエを切り上げてカセットを取り出し、別のゲームを用意する。
次に持ってきたのはリアルワールドで発売されてないゲームである『ソウル・クロニクル』、ポチにも力を借りてツナカユリコの事例を確認されている古い作品であり珍しく6文字も打ち込める……更にここから時空だからこそ出来るアプローチをかける……
時空の渦でソウル・クロニクルに向かい、たくっちスノーが変身して調査を行う。
ミリィからすればゲームの中にたくっちスノーがいることになるのだ。
「……ドラクエの時もそれやればよかったんじゃないのか?」
何はともかくたくっちスノーが時空の渦を作りソウル・クロニクルの世界へと足を踏み込む、ミリィが代わりにプレイしてゲームを行うがNPCに化けたとなると判別の方法など分かるわけがないがめちゃくちゃ挙動がウザい奴が居たのですぐ分かった、少しはゲームの空気を読んで欲しい。
そしてゲームの方も以前とは打って変わって様子が一気におかしくなる、古い作品なのでグリッジが見られるのは分からなくもないが一瞬変な映像が見える気がする、そういえば別の都市伝説で画面いっぱいに『すぐにけせ』と表記されるやつもあったような……と考えつつゲームを進行させるがどうにも画面が見辛いので周囲を見渡すと電灯がチカチカと消えそうになっていたので急遽たくっちスノーを呼び出すことにした。
「はー電灯ー?このくらいボロっちい方が怪しい組織っぽくてウケが良さそうだろ」
「いや、一応お客さんが来ることも想定して……ね?ほら、買いに行ってる間にツナカユリコの都市伝説が……」
「しょーがね、スーパー付き合え!」
ということでゲームはそのままにして一旦電灯を買いに行った……それから2時間後、たくっちスノーは流れでツバサ・クロニクルに入りミリィも再プレイするが……ここで二人揃っておかしさに気付く。
バグじみたマークが歩いている、たくっちスノーとミリィが操作するプレイヤーが同時に近付いて接触を図るが、話しかけるボタンを押した途端に画面にノイズが走り、遂には画面が切れてしまう……ソウル・クロニクルのカセットを壊されてしまったらしい、世界の方はあくまでゲーム越しでそう見えるだけなので何の異常も起きていないとたくっちスノーから連絡が入る……何の異常もない、それがおかしいのだ。
確かにソウル・クロニクルに異常が起きてバグまで見ているのに、ソウル・クロニクル世界の人々はそのバグに気付いてなさそうだという、潜入していたたくっちスノーも見ていたというのに他の人物は何食わぬ顔で見ていたという。
ようやく進展が見えてきたところでポチに借りたゲーム壊したのは悪いので急いで復元していると……。
「たくっちスノー!?さっきのドラクエあるよ!ツナカユリコのデータ!」
「何!?マジかよサイン式の脳トレにまでいやがる!達筆だな!」
他に遊んでいた名前を変えられるゲーム全てがツナカユリコに変わり果てていた、現実での怪しい反応も足音がするようになったり物陰を感じていよいよ本格的になってきたではないか。
◇
そこにいたはずのツナカユリコが実際にはいない、口に出してみるとおかしなことでもないが自分達にしか見えていないのがどうにも引っかかる、病気にならない自分達はゲームのやり過ぎによる幻覚など見るはずもないので絶対にあそこに存在していたと断言できる。
一つ可能性を提示するならツナカユリコが居たのは他世界から見えるゲーム越しの景色、だからこそソウルクロニクルのカセットを破壊して突然他のゲームに入り込むというアピールまでやってのけた。
「つまりツナカユリコの本質はデジタル的な存在、バグとかウイルスに近いがそれを超越した……一種の電子生命体じゃないかと推測する」
「でもそれで結論づけて終わるわけじゃないんだよね?」
「ああ、それがなんでツナカユリコなのかとか、なんで怪異的な現象が起こるのかとか……知りたいことはまだ山ほどある!」
ただし問題はこれまでのツナカユリコの反応からして自分達を拒絶していることだ、向こうから拒絶してくれるのは正直言ってワクワクが止まらないがこれから先警戒が必要だろう。
ツナカユリコの都市伝説に何か他の要素が無いのか情報をより探ろうとするが、キーボードが反応しない。
「くっこいつパソコンの中にまで入ってきやがる!」
「もはや例えるまでもなくウイルスだろ、こいつ……」
仕方ないのでソウル・クロニクルの修理を待ちながらツナカユリコが介入したドラゴンクエストをやろうとするが、どうにも真っ暗で右も左も行けない、故障を疑ったがたくっちスノーによるとこれはりゅうおうに『世界の半分』の選択肢を貰った後に送られる闇の世界……最近では『セカイノハンブン』と皮肉られたネーミングを付けられたような場所である、ここに来たらりゅうおうから厳しい条件のふっかつのじゅもんを貰うしかなくなる。
何やら嫌な予感がして、たくっちスノーはポケモンを起動すると案の定、主人公はバグ技を悪用する時に使われる『なぞのばしょ』に閉じ込められていた。
「このままアルセウス捕まえてみる?」
「なぞのばしょのどこだよここ……アルセウスどころか自分達じゃなかったら出られる保証もないぞこのデータ」
だが、歩いてみると時折画面がバグったり異常が発生するので閉じ込めたというよりは話しやすい場所に送り込んだような感じがする、ただ閉じ込めるだけなら歩いたところでツナカユリコの反応を見せる必要はない。
「おいミリィ、モンハンってあるか?あれならチャット機能が付いているから意思疎通が出来るはずだ」
「え?4Gならあるけどリアルワールドならもうオンライン終了してるよ?はいこれ」
たくっちスノーはモンハンを借りて今では誰一人いない集会所へ、オンライン募集をかけてみるとミリィの言う通りインターネットサービスは終了しているはずなのに部屋が一つ出来ている。
念の為に装備を整えて入ってみるとそこに居たのはユリコという名前のゴア装備一式のハンターがクエストを待機してスタンバイしていた。
普通ならあまりにも地雷すぎて出ていきたいというかそういう意図があるのかもしれないが、ここは普通にクエストに付き合うことにしてミリィにモンハンを貸す。
「次はモンハンの世界行ってくる、ラッキーなことにツナカユリコが選んでるクエストは上位で環境不安定、だから割り込んでも何の問題もないわけだ」
「まさかイビルジョーにでもなるつもり?調子に乗って乙らせないでくれよ」
「それはお前のプレイスキル次第だな」
たくっちスノーはクエスト開始に合わせて中に入ってイビルジョーに変化して乱入、ツナカユリコを先回りしてエリア移動して攻撃しようとするが……ユリコハンターはすり抜けて攻撃も通らない、ブレスも放つが当たり前のように通り抜けてしまう。
やはりたくっちスノーが外部から介入している場合では手も足も出ないのかと作戦を変えてみることにする……このエリアは砂漠なのでゲネポスがいるはずだと足踏みで誘導させて、ゲネポスの飛びかかりを当てるとユリコハンターが吹っ飛ぶ。
「ゲームにいるゲネポスだから当たった?それとも自分がダメなのか?だが突破法は見つかった!ミリィそっちはどうだ?」
「いまレアな鉱石回収してるから待って」
「こんな時に秘境行ってんじゃねーよハゲ!」
仕方ないのでたくっちスノーはイビルジョーの変身解除して即座にドスゲネポスに変化してゲネポスを誘導して攻撃させるがこのゴア一式ハンターは地雷ではなかったので瞬く間にゲネポスがエイムofトリックの錆になっていく、やっぱりこの時期の操虫棍つええわと感じるたくっちスノーはあっさり頭部破壊までされてしまうが背後にはミリィがいる、今回はミリィまで付いているのだ。
ミリィに装備させたのはハンマー、当然ながら相手はモンスターではなくツナカユリコを吹っ飛ばすための物、これが普通のモンハンだったらとてつもない最悪コンボだろうが相手は怪異なので問題ない。
攻撃を当てたあとゲネポスの顔のたくっちスノーがツナカユリコを捕まえる、雑コラみたいではっきり言ってめっちゃキモい。
なんとか捕まえるが何故か突然クエストが止まりNowLoading画面へと移行したかと思えば、たくっちスノーがまるで読み込みからの再生とばかりに戻ってきていた。
モンハンの方には既にツナカユリコはおらず集会所からは追い出されていた。
「チャットで接触できたか?」
「一応会話はしてみたけど……文字化けしてて読めなかったぞ」
「くっ、スクショでも撮っとけばよかったか……だがさっきの通り、ゲネポスは当たり自分の攻撃は外れた……ツナカユリコは完全にゲーム側の存在だ!」
「これだけでもレポートは書けるが、肝心なツナカユリコにおける症状が出てないんだよな」
「そればかりは仕方ないでしょ……ツナカユリコって名前にしてゲームしなければいいって対処法もあるんだしそこまで気になることではなくない?」
「まあそれはそうなんだけどさ、せっかく本格的な怪異が出て誰にも迷惑かけてないって時に……」
「……それにあんまり近づきすぎたら不老不死でも誤魔化せないヤバさになってくるから準備を整えたいんだよな」
「ヤバさって?」
「……なんでツナカユリコはソウル・クロニクルでピンポイントに現れた?」
「えっ、確かにツナカユリコって名前をつけているだけで……俺達に引っかかる要素はあったか?」
カセットを壊してきたりパソコン越しにデータを書き換えてきたり、電脳生命体とかAIを超越したレベルの力を持っていると判断したことで本格的にヤバさを感じた。
こういったもの恐ろしさは学習能力、AIですら異常なほどに賢くなっていくというのに
時空新時代によっていよいよゲームキャラの模倣までしてしまった。
ツナカユリコが真に恐ろしくなるのはここからではないのか?
「ということでツナカユリコは時代の流れで停滞したかと思えばどんどん危険度を増している都市伝説ということでレポートを残しておけ」
「分かったけど……もしかして他にもこんなのがうようよいるのか」
改めて実感するが都市伝説はとても危険な存在、ホラーだと怪異より生きた人間が怖いなんてオチもありふれているが結局のところ恐れているのは考えの予想に反した物が意味分からないので怖いので怪異も人間も特に違いはない。
ツナカユリコの調査はChannelどころか
時空監理局の規模で行うべきであると考え、ちゃんとした設備も検討しようとこの都市伝説の話は一区切りにしたのだったが、ここでミリィがツッコミを入れる。
「なんか俺達……都市伝説調査してる割には中途半端だったりしてること多くない?一時期の調査という名目で何も分かってないクソサイトみたいになってるよ」
「それは……まあそうだな、そうだけどツナカユリコ捕まえる手段が現状ないんだよなぁ、ガチの都市伝説を追いかけるのがこんなに大変だと思わなかった」
用意したゲームもポチの借り物だし、そうじゃなかったとしても調査の為にゲームを破壊されそうになるリスクがあるのは少々危なっかしい。
それに……これまでの脅しのような怪奇現象からして今更逃げられるとも思えない、というか既に被害が出ている。
パソコンの様子がおかしいのだ、勝手にAIチャット画面が起動したどころか何の会話もしていないのに話しかけてくる、そんな事が出来るのはこれまでの流れから1人しかいない。
これまでの流れから考えると完全に立場が逆転……たくっちスノーじゃなければ明らかに
バッドエンドみたいな状況だが案外のほほんとしている。
「まあいいんじゃないの?うちのチームにも花が欲しかったし」
「よくねえよ!?どう見ても監視されてんだろ俺等が!」
「まあモンハンで吹っ飛ばしたことは悪かったって後で謝るしさ、ネウロのあかねちゃんみたいなものだと思えば」
「えらくハイテクなあかねちゃんだな!ってかたくっちスノーまさかマジでこのままツナカユリコをChannelの新メンバーにする気なの!?」
「ユリコさんはいいよね?」
たくっちスノーがパソコンに返事をするとチャットが起動してアスキーアートが生成、グッドサインが作られたのでユリコも案外乗り気らしい。
こうしてマガイモノ二人、都市伝説の電子生命体が1人というChannel要素が増えながらもカオスな顔ぶれとなっていくのだった。
「……でもさ、ツナカユリコが協力してくれるのはいいんだが何が出来るの?」
「ほら、ここまで手軽にゲームとか行き来出来るし情報集めとか楽になるんじゃないか?ユリコさんの情報量が自分たち以上なのは身にしみて理解したろ?」
「俺たちちゃんと情報集め出来てたか?まあ……だいぶ苦労かけることになるけどよろしく」
当たり前のようにユリコさん呼びしているたくっちスノーだが、実年齢で言えば都市伝説としてだいぶ名前が残っている彼女と生まれたての彼らではだいぶ年が離れてるのですぐに年長者として溶け込んだということだ。
「あっそうだ、ユリコさんにトムの地下室と例のカードゲームのレポートとか調査の続き頼むのは?」
「ココ・ヘクマティアルVSツナカユリコ……?」
「Z級映画すぎて逆に気になってくる内容だな……いや何考えてんの、普通に裏取りとかそういうの!」
「まあいいか、ユリコさん後はよろしく……それと、別で頼みたいことも。」
その3日後、たくっちスノーは全分身に情報を共有してデータを公表。
ツナカユリコと
メイドウィンブラストによって時空で最も優れ『もしも』を出力してパラレルワールドを作成出来る時空新時代の新世代AI『g-lok』を完成させたのだった。
そして……このAIが時空に多大な影響を及ぼすことになることを知らない。
最終更新:2025年05月23日 06:53