ハロウィン……こんな感じかな
「ただいま~!」
「あら、お帰りなさい」
日向に伴われ、珠希が学童保育から帰ってくる、いつもの五更家の風景。
いつもと違うのは、珠希が三角帽子と黒いワンピース、マントを着ていることだ。
「ハロウィン、どうだったの?」
「はい! 姉さまの作ってくださったいしょうをほめてもらいました!」
「そう、よかったわね」
「たまちゃん、『このまま帰る』って聞かないから、根負けしてこのまま帰って
来ちゃったよ……まあ、今日だけのことだし、ルリ姉と一緒にいるよりはマシだけど」
学童保育でハロウィンパーティがあり、子供たちがそれぞれに仮装をすることになっている、
と知った瑠璃は、週末を利用して珠希のサイズに合わせた魔女装束を縫い上げていた。
「確かに、学童の先生も『お姉様の手作りなんですって? お裁縫上手なのね』とか
『お料理も上手なんですってね、いつでもお嫁に行けるわね』なんて誉めてたよ。
でもさあ……」
日向に言わせれば、学童の指導員たちは本当の瑠璃を知らないのだ。
彼女たちが知っているのは、時折制服に身を包み、買い物の前に、あるいはそれを
済ませてから息せき切って学童に駆けてくる小柄な、おとなしげな姿だけなのだ、と。
「おまけに、この衣装の生地ってあれだよね、ルリ姉の『闇の衣』の余りだよね」
「ええ、珠希もそろそろですもの。我が魔力のかけらを少しずつ植え付けていけば、
もう少しすればきっと目覚めてくれるわ」
「わーい、たのしみです~」
「でもね珠希、今度からはもっと早く教えて頂戴ね。もう少し時間があれば、この死霊や
精霊が現世に現れるこの日のために、貴方のための闇の衣を、魔道具を作ることも
できたのに」
「はいですぅ~」
「絶対ダメ~ッ!」
こんな姉に妹を染め上げられてたまるか、と言わんばかりに日向が怒声を上げる。
「ひ、日向……ごめんなさい、貴方の気持ちを考えていなかったわ」
珍しく反省した様子の瑠璃に、日向もそれ以上怒る気をなくす。
「いや、ルリ姉が好きなことしてるのはいいんだよ? でも、たまちゃんまで……」
珠希を自分の趣味に染めようとするのはともかく、共働きの両親の代わりに忙しく
家事をし、自分の時間を取りづらい中で趣味を楽しんでいる姉のことをそう悪し様にも
言えない。
「そうよね……珠希の前に貴方よね、日向。任せておきなさい、冬までには貴方の
ための魔道具を作っておくから、それを着て新たな力に目覚めて頂戴ね?」
「そうじゃな~~い!!」
自分の思いはどうやったらこの姉に届くのだろうか?
徒労感を覚えながら、いつものように姉にツッコミを入れる日向であった。
「ただいま~!」
「あら、お帰りなさい」
日向に伴われ、珠希が学童保育から帰ってくる、いつもの五更家の風景。
いつもと違うのは、珠希が三角帽子と黒いワンピース、マントを着ていることだ。
「ハロウィン、どうだったの?」
「はい! 姉さまの作ってくださったいしょうをほめてもらいました!」
「そう、よかったわね」
「たまちゃん、『このまま帰る』って聞かないから、根負けしてこのまま帰って
来ちゃったよ……まあ、今日だけのことだし、ルリ姉と一緒にいるよりはマシだけど」
学童保育でハロウィンパーティがあり、子供たちがそれぞれに仮装をすることになっている、
と知った瑠璃は、週末を利用して珠希のサイズに合わせた魔女装束を縫い上げていた。
「確かに、学童の先生も『お姉様の手作りなんですって? お裁縫上手なのね』とか
『お料理も上手なんですってね、いつでもお嫁に行けるわね』なんて誉めてたよ。
でもさあ……」
日向に言わせれば、学童の指導員たちは本当の瑠璃を知らないのだ。
彼女たちが知っているのは、時折制服に身を包み、買い物の前に、あるいはそれを
済ませてから息せき切って学童に駆けてくる小柄な、おとなしげな姿だけなのだ、と。
「おまけに、この衣装の生地ってあれだよね、ルリ姉の『闇の衣』の余りだよね」
「ええ、珠希もそろそろですもの。我が魔力のかけらを少しずつ植え付けていけば、
もう少しすればきっと目覚めてくれるわ」
「わーい、たのしみです~」
「でもね珠希、今度からはもっと早く教えて頂戴ね。もう少し時間があれば、この死霊や
精霊が現世に現れるこの日のために、貴方のための闇の衣を、魔道具を作ることも
できたのに」
「はいですぅ~」
「絶対ダメ~ッ!」
こんな姉に妹を染め上げられてたまるか、と言わんばかりに日向が怒声を上げる。
「ひ、日向……ごめんなさい、貴方の気持ちを考えていなかったわ」
珍しく反省した様子の瑠璃に、日向もそれ以上怒る気をなくす。
「いや、ルリ姉が好きなことしてるのはいいんだよ? でも、たまちゃんまで……」
珠希を自分の趣味に染めようとするのはともかく、共働きの両親の代わりに忙しく
家事をし、自分の時間を取りづらい中で趣味を楽しんでいる姉のことをそう悪し様にも
言えない。
「そうよね……珠希の前に貴方よね、日向。任せておきなさい、冬までには貴方の
ための魔道具を作っておくから、それを着て新たな力に目覚めて頂戴ね?」
「そうじゃな~~い!!」
自分の思いはどうやったらこの姉に届くのだろうか?
徒労感を覚えながら、いつものように姉にツッコミを入れる日向であった。