京太郎インタビューその6
全国大会の第一戦を難なくクリアした清澄高校。
敗退した高校には、来年頑張って欲しいと願う。
勝者インタビューの意味も兼ねて、SK君に取材していく。
まずは清澄高校の一回戦突破、おめでとうございます。
京太郎「ありがとうございます。でもいいんですか? 3連続跳満出して大活躍だった部長とか、優希や染谷先輩も他を寄せ付けない活躍だったし、そっちの方が良かったんじゃ」
そちらは他の記者に任せて、お前はこっちのインタビューに行けと言われまして。
京太郎「はあ」
ぶっちゃけちゃうと、こっちのインタビューの方が楽しみにしてる人多いくらいなんですよね。
京太郎「みんなもっと大会の方に集中したげて!? 頑張ってるんですから!」
とはいえ流石に白糸台などの有名校への取材には敵いませんが。
京太郎「清澄は人気なしですか……。でも、うちは絶対勝ち進んでみせるので、人気が無いなんて言ってられるのも今の内ですからね」
その意気です。
一回戦では、部長さんは特に気合が入っていたように見受けられましたね。
京太郎「そうですね。3年生の部長は最初で最後の大会ですから、みんなの中でも特にって感じで。実は今回他校をトバしてたのも、「よぅし! みんな見てなさい! 私の番で試合終わらせてあげるわ!」って控室で宣言してからですし」
自信たっぷりですね。
京太郎「あの時点で結構な点差ついてましたしね。でも自信って点で言えば、優希の奴なんかは「よっしゃあー!! このゆーき様の東一局で全てを終わらせてやるじぇー!!」とか言ってましたけど」
そうだったのですか。
京太郎「まぁご存知の通り、あいつの親番は東四局になったんですが」
親決めのサイコロを振った時点でズッコケてたのはそういう理由ですか。
京太郎「ちなみに出番の無かった和と咲も控室で若干ズッコケてました」
一年生のみなさんもやる気満々で、空回りしたんですね。
それで、前回から今に至るまでに面白エピソードはありましたか?
京太郎「俺のインタビューって、そういうの求められてるんです?」
だけというわけでもありませんが、メイン層ですね。
京太郎「あー……。面白じゃないんですけど、ちょっとしたハプニングみたいなのはありましたね」
というと?
京太郎「一回戦はその日の午後にやったんですけど、午前中はその準備って感じで。俺も大会中の食材の買い出しに出掛けてたんですよ」
一回戦でもう買い出しに?
京太郎「調理器具は準備してきたんですけど、食材は現地調達ですからね。部費はいくらか渡されて、レシート持ってきさえすれば後は俺にお任せと」
その道中になにかあったのですか?
京太郎「必要なものは買ってリュックに詰めた後、帰り際ですね。人通りの近くでオロオロしてる人を見掛けたんですよ」
誰だったのでしょうか?
京太郎「宮守高校の臼沢さんって言ってました」
宮守高校、というと。
京太郎「はい。うちと同じ日程で一回戦突破して、次にうちと当たる高校の一つですね」
となると、試合前に一人でオロオロしている所を見掛けたと。
京太郎「むしろ試合前だから余計焦ってたんでしょうね」
何があったのでしょうか?
京太郎「俺も何かあったのかなー、と思って声掛けてみたら、向こうも動画で俺の事知ってたみたいで驚いた後、ちょっと悩んでから「ねぇ! 君の能力を見込んでお願いがあるんだけど、聞いてもらえる!?」と」
能力?
京太郎「事情を聞いてみたら、どうやら試合会場に向かう途中で人混みに巻き込まれて、他の選手の人と散り散りになっちゃったみたいで」
あ、迷子捜索能力ですか。
京太郎「そうなりますね」
S君の事ですから引き受けたのだと思いますけど、時間はあったんですか?
京太郎「ええ。そもそも買ったものも緊急で必要なものじゃないですし、試合に間に合わなかったとしても俺が見逃すだけですから。それに、みんなは勝ってくれるって信じてますし」
成程。それで、その後は?
京太郎「とりあえずは連絡がつくか聞いてみたんですけど、試したけど全員繋がらないと」
みなさん携帯を落としてしまった?
京太郎「いえ、後で聞いた所、マナーモードのままにしてたり周りがうるさくて気付かなかったとか、充電切れてたりしてたみたいで」
それは不運ですね……。
京太郎「それで、まずは迷子になった人達がどういう人なのか聞いてみました」
とりあえず歩いて探すのではないのですか?
京太郎「その方が良い時もありますけど……、えーっと。迷子になると言っても、人によって大体パターンがあるんですよね。咲の場合、道分かんないけどとりあえず歩いてみるっていう一番困るパターンなんですけど」
ふむ。それで?
京太郎「人となりを聞いて、大体この辺りにいそうだなって当たりをつけていけば、探す分には早く見つけられるかな、と」
そして、臼沢さんに人となりを聞いて、当たりをつけてから探し始めたと。
京太郎「はい。それでまず見つかったのが、鹿倉さんですね」
どういう当たりをつけていたんですか?
京太郎「臼沢さんから聞いたところ、鹿倉さんは背は低いけどしっかり者で、部内の風紀委員みたいな人らしくて。そういう人なら、人混み掻き分けてみんなを探しに行きたいけど、身体が小さくて中々踏み出せなさそうだなと思って、大きい人通りに沿った部分で立ち往生してるんじゃないかな、と」
そこまで想定するんですか。
京太郎「ええ。で、まぁドンピシャだったみたいで、スクランブル交差点のとこの人の流れの手前で、右に左にウロウロしてたのが見つかりました」
ドンピシャですか、すごいですね。
京太郎「こう言っちゃ失礼ですけど、まー咲に比べたら素直にそこにいてくれたので、比較的といえば比較的簡単に」
京太郎「とりあえず一人確保して次ですね。エイスリンさんっていう、ニュージーランドの人を見つけようと」
その人はどんな方なのですか?
京太郎「全く話せない訳じゃないんですが、日本語を聞くのはともかく喋る方はあまり得意でなくて、常日頃ボードを持ち歩いてそこに絵を書いて意思疎通を図る人だそうです」
成程。そこからどういった考察を?
京太郎「人が多くて目立つ場所にいて、そのボードでHELPサインを出してる可能性が高いと考えました」
人が多くて目立つ場所……。
京太郎「セブンとかマックとかの全国どこにでもあるような施設の入口だったり、外国人でも知ってるような東京名物になりますね。この場合」
それで、実際どこにいたんですか?
京太郎「忠犬ハチ公像の前でした。あの辺りなら一番目立つ所ですね」
ちなみにどんなHELPサインでしたか?
京太郎「ボードに描いてたのはぴえんの顔文字でした」
京太郎「それで、残る二人ですが」
宮守高校ですと、確か小瀬川白望さんと、姉帯豊音さんですね。
京太郎「そうですね」
どちらから先に?
京太郎「そこでは、姉帯さんの方を先に、という話になりまして」
何故でしょうか?
京太郎「前二人は見つけやすい位置にいるという考察だったのですが、小瀬川さんの場合は先に他の人と合流しているかもと話してたので」
というと?
京太郎「小瀬川さんは普段ダルいダルいと面倒臭がる人だそうなんですが、結構スペックは高くて、大事な所では遺憾なく発揮するタイプらしくて。それなら俺が考える他の人の居場所にも小瀬川さんは当たりつけてて、探して見つけてる所かもって考えたんです」
成程。
京太郎「現実は最後見つけた時に公園のベンチでダル~んと座ってたんですが」
なんだか裏切られた気分です。
京太郎「いえ、まぁ一度探しに行ってたみたいなんですけど、当たりをつけた人が鹿倉さんで、既にこっちで回収してた後だったんですよね」
入れ違いだったと。
京太郎「小瀬川さんは「外してた……ダルい……」って言ってました」
それで、姉帯さんにはどういう当たりをつけていたのでしょう。
京太郎「えーと。聞いてた特徴として、姉帯さんはその時全身黒い服装で、長い黒髪で、俺よりも背の高い女性で」
それだけ特徴的であれば、すぐに見つけられたのでは?
京太郎「ところが本人的にそういう特徴、取り分け高身長をコンプレックスに思ってるらしいので、あまりそれらが目立つ振る舞いをしてないかもしれなかったんですよね。気の大きいタイプでもないそうなので」
となると……道端で座り込んでしまっている可能性が?
京太郎「そういう可能性もあったんですが、友達想いの優しい人だとも聞いたので、そういう事情を押して必死にみんなを探してる事も考えられたので、難しい所だったんです」
それで、実際にどうやって探したのでしょうか?
京太郎「えーと、ですね。当たりをつけるのが難しくて、向こうが目立てないなら、こっちが目立って歩けばいいって事になったんですよ」
というと?
京太郎「エイスリンさんの提案なんですけどね。俺が鹿倉さんを肩車して歩けばいいと」
肩車、ですか。
京太郎「人一人肩車して歩いてればそれだけで目立つし、人混みの多い所でも頭一つ抜ければ、同じく頭一つ抜けてる姉帯さんを見つけられる筈だとなったんですよ」
理屈の上ではそうですけど、年頃の女の子を肩車するのは憚られませんか?
京太郎「俺もそう思うんですけど「今は緊急事態だから無罪!」と鹿倉さん本人に強く言われまして、強行する流れに」
本人にそう言われたら、引き下がるしかありませんか。
京太郎「ですね。それで、臼沢さんが「胡桃と荷物を同時はキツイだろうし、こっちは私が持つよ」と言って、元々持ってたリュックを背負ってもらって。小瀬川さんは人口密度が高いのは嫌いそうだからと人通りの少ない場所を回りつつ、鹿倉さんが声を張り上げて探したんです」
それで、見つけられたと。
京太郎「ええ。どっちも目立ってたので割と早めに。人混みがそんなに無いところで見つけた時に、余程不安だったんでしょうね。姉帯さんがこっちに走ってきて飛びかかるように抱き着いてきまして」
あの身長の人が飛びかかってくるのは中々の恐怖では?
京太郎「それがあの人、見た目美人系なのに中身小動物系で、その時もえらい号泣して「わーん! 会いたかったよー!」って叫んでたので……。なんだか避ける気になれなかったんですよね。肩車してたからそもそも避けらんなかったですし」
成程。ですが、肩車して飛び掛かられたらS君も上の鹿倉さんも危険ではないでしょうか。
京太郎「ええ。鹿倉さんも「わっ、ちょっ、豊音、危なっ……!」って焦ってたんですが、あの人びっくりするぐらい軽かったので。俺が倒れないような姿勢取ったにしても、てんでバランス崩れなかったんですよ」
S君の足腰強過ぎる問題では?
京太郎「そうですかね。まぁ、どっちにしろ怪我が無くて良かったです」
ちなみに、姉帯さんとS君の身長差を考慮すると、S君が腰を落として抱き着かれた場合、ちょうどS君の顔の位置に姉帯さんの胸部が当たると思うのですが。
京太郎「なんでそんな気付かんくて良い事に気付いてそのまま言っちゃうんですか」
どうでした? 抱き着かれてみて。
京太郎「例によってノーコメントで」
その後、小瀬川さんを公園のベンチで発見して、見事ミッションコンプリートしたと。
京太郎「ええ。姉帯さんをあやすのに長くかかったり、小瀬川さんが「バテた……おんぶして……」とか言い出したりと、色々ありましたが、なんとか宮守のみなさんは合流出来てました」
時間は大丈夫でしたか?
京太郎「まーかなりギリギリだったので慌ただしくしてましたけど、向こうも一回戦突破したみたいなので、なんとか間に合ったんでしょうね」
S君も大変感謝されたんじゃないでしょうか。
京太郎「そうですね。荷物を返してもらった後、別れ際臼沢さんが「このお礼は絶対するからね! 絶対だよ!?」って言ってたので、今度会った時に改めて、という感じになるんでしょうか」
宮守の方達はどういう印象でしたか?
京太郎「全員3年の先輩なんですけど、みなさん可愛い人達って感じでしたね。雰囲気がフレンドリーというか、柔らかいというか」
では、最後に何か一言。
京太郎「夏バテ防止の為、水分補給はきちんとしましょう。スポドリに塩をちょっと入れるのがオススメです」
最終更新:2021年08月06日 21:20